物事には最適な時期という物が存在すると私は思う。
果実で言えば熟したとき、『食べごろ』というやつだね。
その変わり目を見抜くのは至難の業であり、達人ですら頭を悩ませる。
長年の経験と知識、そして勘に頼るしかない。


今、私はその『時期』を見極めようと息巻いている。
胸が大きく高鳴る。少し興奮気味だ。


―――――――――放送を、流そうか。



 *  *  *




 あーテス、テス……ピザ……ピザ、モッツァレラ♪ レラレラ……ふう、大丈夫だね。

 こんばんは! もうわかってるよね。第三回放送の時間だよ。 
 太陽も完全に沈んでいよいよ夜がやってきたぞ。
 闇に生きる者たち、ようやく君達の時間だ。思う存分に暴れて欲しい。
 ああそれとね、僕は君達に謝罪をしなければならない。
 第二回放送を覚えているかな? 
 あの時に私が発表した死者はわずか7名なんだけど、私はこの数字を聞いたときガッカリしたんだよ。
 このゲームは思ったよりも長期化するんじゃないかってね。
 ところがどうだ。この6時間で何人が死んだと思う?


 発表しよう―――――――






  ウィル・A・ツェペリ、タルカス
  花京院典明、ホル・ホース、ミドラー
  噴上祐也、虹村形兆
  セッコ
  空条徐倫、ウェザー・リポート、F・F、ナルシソ・アナスイ、エンリコ・プッチ神父、ジョンガリ・A、リキエル




  以上15人だッ! 過去最高なんだなこれがぁぁぁぁッーー!
  みんなやれば出来るじゃあないか。私は猛烈に感動しているよ。
  引き続き殺しあってね。多分深夜0時頃には現在の半分位にはなってるでしょ。
  そして禁止エリアの発表。今回加えられるエリアも『3つ』。
  ちゃんと聞いててね? 該当するエリアは――――



   まず19時、つまり午後7時からI-6
   次に21時、つまり午後9時からE-3
   次に23時、つまり午後11時からE-7





 わかったかな? I-6、E-3、E-7の3つ。
 うん、もう言わない。


 そして、もう一つ……とても……とても重要な事を話そう。
 僕ね、今から『主催者』を止めようと思う。

 『主催者』兼『参加者』になることにしたよッ!

 君たちと同じように首輪も付けるし、道具は支給品だけ。
 DIO君の分が残ってたんでそれを使わせてもらうよ。
 君達は詳しいことを知らないと思うけど今、かなりクライマックスなんだよこのゲーム。
 もうね、見てるこっちがハラハラしてくるぐらいねッ!
 本当は最後まで教会に閉じこもっていようと思ってたんだけど、いいかなぁ~なんて


 ……………………………………ま、まぁ、い、いきなりこんな事を話すのはフェアじゃあないな。


 君たちだってどうすればいいのか困るだろうし、まだ生存者だって16人いる。
 16人全員と戦うのは別に構わないんだけど、
 君たちの中には『最後の1人になって僕から優勝を許可してもらいたい』者だっているだろう。
 それなりのご褒美も考えているつもりだ。信用するかどうかは勝手だけどね。

 ……だから6時間待ってあげる。

 その間に君たちは色々考えておいてね。
 『荒木のごほうびが欲しいから荒木を守りたい! 』『これはチャンス、荒木打倒の仲間を探して荒木をリンチだ! 』
 『荒木打倒のフリをして仲間を集め、隙を突いて全員殺して荒木の好感度UPだ! 』
 『荒木が参加するならもう駄目だ、死のう!』『でもそんなの関係ねぇ!皆殺しだ!』……君たちはどれを選ぶ?


 ンッン~夢が広がるとは思わないかッ!?
 絶望によく似た希望、あるいは希望によく似た絶望というべきか。
 いいかい? 6時間後だよ? 

 さて、ちょっと喋り過ぎたかな。
 16人の参加者のみんな、確かに私は話したからね。
 次の放送は死者の発表だけじゃあなく、参加者としての私の門出も祝うイベントになるわけだ。


 その記念すべき瞬間に、また私の声が聞けるといいね―――


 *  *  *



教会の内部に並ぶ長椅子の一つに腰掛けると、僕は天を仰ぎほっと一息つく。
遂にしたのだ。私は宣言を彼らにしたのだ。
両手は汗をかきながら振るえ、心音はより一層激しくなっている。
これは18時間参加者達の戦いにあてられて、自分も参加したくなったという『思い』のせいなのか?
好奇心?武者震い?……いや違う。

『恐怖』だ。

6時間の猶予を与えると思わず口走ってしまったあの瞬間。わずかに頭が真っ白になったような気がする。
あれは彼らのためではなく、自分のための6時間だったんだろう。
私自身が私に言い聞かせたんだ。『心の準備が出来ていない』と。
私は何を思い止まっているのだろうか。『覚悟』が彼らよりも足りないのか。
エルメェス君達がどんなにあがこうと絶対的優位は私にあるはずなのに。だけど――――――

「6時間待つのはやっぱ無し……ってのも今更カッコ悪いよなぁ」

誰も見ているわけでもないのに、私の口は言葉を放つ。
もう後には引けない。ここまで来たからには引き返す事なんて難しい。
ジョルノ君、君たちが憎い。
君たちが私に直接挑んできたせいで、私の心は大きく揺さぶられてしまった。
自分でもこれまでの行動が……どこまで自分らしいかさえもわからなくなってきたよ。
でも、それだけ人を動かす魅力が君たちにはあったのだろう。







正直、ちょっとうらやましい。





【教会(A-1地下)/1日目/夜】
【荒木飛呂彦】
[スタンド]:『バトル・ロワイアル』
[時間軸]:???(想像を絶する大昔の模様?)
[状態]:無傷
[装備]:DIOの支給品一式。
[道具]:???
[思考・状況]:
1)あと6時間の内に腹を括ろう。
2)6時間後の第四回放送後に参加者として参加するよ。
3)みんなはどうするんだろうな。居場所を知っているエルメェス君に期待出来そうだな。
4)(心の底)ウェザー君達もジョルノ君と一緒だ。僕を神を見るような目で見る。

[補足1]:どうやら荒木がゲームを始めた背景には、“人間として見て欲しい”と望む事と、荒木の過去に原因があるようです。
[補足2]:荒木は、エルメェスがウェザーの舌から情報を得たのを、首輪の盗聴器を通して知りました。

【残り 16人】



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97:神への挑戦2 荒木飛呂彦 121:『箱庭の開放』(前編)~絶大は絶対の前には無力~

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最終更新:2009年09月20日 10:29