思えば、目の前の男と剣を交えるのは、これが何度目だろうか。
少なくとも、この時代に来てからは3回目の筈だ。
本来ならば、2回目で決まっていた筈だった。勝敗と、生死が。
だが如何なる因果か、それとも誰かの策略によってなのか。外見も中身も完全に変貌し、それでも尚、目の前のロックマン・ミラージュは自分との決着を望んでいる。
それも、今度は互いの認識が一致した、殺し合いと言う形で。
それがロード――否、ロックマン・ロードには、この上ない満足であり、そして同時に、この殺し合いを制す事でしか、前に進めないのだと自覚していた。
無数の兵士達に囲まれながら、それでも尚目の前の相手だけに集中し、ミラージュとロードは走り出す。
だが、途中でロードは気付いた。その無数の兵士達の様子が変わっている事に。
しかしその兵士達の様子を完全に把握する前に、ミラージュの間合いへとロードは足を踏み入れてしまっていた。
途端に刃が自分の喉元目掛けて飛んでくるのを察知し、剣で受け止めるロード。
彼は反撃に出ようとするが、同時に思い直して後ろへ後退する同時に、接近してきた兵士の喉笛を回転しながら剣で掻っ切った。
再び血が舞い散る。最大限ミラージュを警戒しながら、ロードは周囲の様子を眺め、そして目を見開く。
「こいつら…!」
リゲルがミラージュに敗れる前はただ周囲を取り囲んでいただけだった兵士達が、今はその包囲を狭め、更に数名は二人に襲い掛かってきていた。
ミラージュの方も、接近してきた2名の兵士を瞬時に斬り捨てている。
包囲していながらわざわざ数名で至近距離まで接近してから発砲しようとしているのは、流れ弾による同士討ちを避けての事なのだろうとロードは推測した。
そして、推測しながら、彼は激しく苛立った。
今の彼はこれ以上も無いほど高揚しており、ミラージュとの決戦は臨む所だった。その闘いに非常に邪魔な形で水を刺されてしまったからだ。
「(これ以上、邪魔をされるのは我慢ならん。ならば俺は…!!)」
次の瞬間、ロードはミラージュへ向けて一直線に走りながら、声を上げていた。
「ミラージュ!!」
声を受けて、ミラージュはロードへと視線を向ける。ロードは割り込んできた兵士を次々と斬り倒しながら、ミラージュへと突進した。
ミラージュも身体を回転させながら周囲の兵士を斬りつつ、ロードの斬撃に合わせて刀を斬り込む。
鍔迫り合いが起こったのは一瞬で、次の瞬間には刃は離れ、二人は互いの背後から襲いかかってきた兵士を斬り捨てていた。
「はぁっ!!」
兵士を斬り捨てた瞬間に、ロードは背後にいるミラージュへと振り向き様に剣を横へ薙ぎ払う。
「!!?」
だが、そこにミラージュはいなかった。
直後に上から殺気を感じ、ロードは剣を構えると共に見上げる。果たして、そこには跳躍して上からロードへと刀を振り下ろそうとするミラージュの姿があった。
再び剣と刀が激突し、辺りに甲高い音を立てる。直後に、横から二人へ向けて発砲しようとする兵士を視界の端に捉えたロードは、ミラージュの刀を弾き飛ばすと同時に、躊躇無くその兵士へ向けて剣を突き刺した。
が、全く同じタイミングで、刀を弾き飛ばされ着地したミラージュもその兵士へ向けて突きを見舞っていた。
二本の刃に胸を突き刺され、その兵士が吐き出した血がガスマスクの下から滴り落ちると同時に、その全身が痙攣する。
刃が引き抜かれ、再びミラージュとロードは血の付いた刃で鍔迫り合いを演じた。
「邪魔なデコイ共だ…お前もそう思わんか」
苛立ちを募らせたロードは、思わずそう口走る。
だがミラージュは答えず、相変わらず鋭い殺気をロードと周囲の兵士へと振り撒いたままだった。
紙一重で刃をかわすロードだが、反撃を行う前に第二撃が飛んでくる。ロード自身、リゲルが斬られた光景を目の当たりにして覚悟していたが、刃の速さはミラージュの方が上だった。
第二撃をもかわし、後ろへ跳んで距離を置く。周囲の兵士達を警戒しながら、ロードは剣を構え直した。
そしてその瞬間に側面から気配を感じ、それが接近してきた兵士だという事を確認して切り伏せようとしたロードは――その寸前に、飛来する刃に気付いた。
「くっ!!」
投擲されたナイフ。それが、ロードが接近する兵士に気を取られた一瞬の隙を突いて、飛来してきたのだ。
側面の兵士は既にアサルトライフルを構えている。ナイフを剣で叩き落とせば、その瞬間に兵士に蜂の巣にされるのは目に見えていた。
ロードはその瞬間に、決断した。首を狙って放たれたナイフを腕に直撃させて防御し、そうして剣で兵士の首を斬り裂く。
引き金が引かれぬまま、アサルトライフルを構えた兵士は首を失い、その場に崩れ落ちる。
だがロードは油断しなかった。ナイフはアーマーを貫通し、腕に深々と突き刺さっている。そしてその隙を利用して、ミラージュが襲撃を仕掛けてこない理由などなかった。
既に至近距離まで接近してきたミラージュの刃。兵士に剣を振ったばかりのロードに防御の術はなく、咄嗟に彼は身を引き、身体に走る斬撃の威力を弱めるしか手はなかった。
胴から肩部へかけて切り裂かれ、鮮血が飛ぶ。苦痛に顔を歪めたロードだが、剣から手は離さなかった。
「(この兵士共すら利用するとはな…甘かったのは俺の方か…!!)」
ミラージュの憎悪の眼は、未だにロードへと向けられている。だがこの絶好の機会に追撃はしなかった。ミラージュもまた、接近してきた兵を斬り捨てねばならなかったからだ。
ロードは体勢を整えながら、冷静さを失わないように努め、ひたすら思考した。
自分はリゲルには敵わなかった。そのリゲルを、ミラージュは斬り捨てた。今の自分がリゲルと同じようになっていない理由は幾つかある。
今の自分がリゲルのように慢心していない事。兵士が襲撃を仕掛け始めた事。そして幸いにも、ミラージュの闘い方を知っている事。
最も、そのミラージュの闘い方は、相手の命を奪う事に目的が変えられたせいか、少し前までとは違う。一撃一撃の向かう場所も、相手の致命傷となりうる箇所を狙っている。
だがロードは、ミラージュの『この戦闘法』すらも、覚えがあるものだった。
「(ミラージュ…お前は死んだと言ったがな、今のお前は紛れもなく…昔の『ロックマン・ミラージュ』そのものだよ!!)」
再度接近してきた兵士を、今度はミラージュへ向けた目を離さぬまま蹴り倒し、再びロードはミラージュへと跳びかかった。
そして、再度の鍔迫り合いへと持ち込まれる。
刃が離れ、やはり接近した兵士を斬り捨てつつ、両者は後退した。だがロードは構え直すのに対し、ミラージュは刃を鞘に収める。
「(!居合いか…!!)」
左手を鞘に添え、右手は柄の近くで構える。ミラージュのその姿に、ロードは生唾を飲み込んだ。先程リゲルを屠ったのは、紛れも無くその居合いだったからだ。
ミラージュの殺気は、相変わらずロードに集中している。ロードも、それに応じて剣を構えた。
「(落ち着け…感覚を総動員し、奴がどこを狙ってくるかを把握しろ…。速さでは奴の方が上でも、殺気の矛先さえ分かれば先に動きが読める筈だ…!!)」
そう思いつつ、ロードは接近してきた兵士を振り向き様に斬り捨てると、向き直って再び構え直した。ミラージュの方も兵士が接近してきたが、次の瞬間アサルトライフルの銃身を斬り飛ばされ、首を刈られていた。
そして、ミラージュは再び居合いを構え、ロードへと視線を向ける。ロードは冷静にミラージュと周囲の兵士達に注意を向けた。
「(前みたいに横槍が入らなければいいがな…今度あんな事が起これば、今度こそ俺の命はあるまい…!!)」
以前の闘いで、天井から落ちてきた破片が頭に直撃した事を思い出す。ましてや今回は周囲に兵士がいる。その存在が前と同様に横槍となる危険性を、ロードは注意していた。
「(今度は前と同じような失敗はしたくないが…奴以外に注意を向けられるほど今の俺には余裕は無い…)」
ロードがそう考えていると、遂に痺れを切らしたのか、ミラージュは構えながら走り出した。ロードへと一直線に。
ロードは凄まじい緊張を覚え、そして笑みを浮かべる。
「(いいだろう…ミラージュ、お前を殺して、俺はこの世界を破壊する…!!)」
覚悟を決めたロードも、剣を構えたまま走り出した。周囲の兵士に気を配るが、不思議と接近してくる兵はいない。
脳内で分泌されるアドレナリンの作用か、ミラージュが近づいてくるのがスローモーションに感じられる。ロードはその瞬間に、五感を総動員させ、ミラージュがどこを狙ってくるのか予測した。
やがて、互いの間合いに両者が足を踏み入れる。
次の瞬間、ミラージュの刃をロードの剣が受け止めていた。
ミラージュの目が見開かれる。対してロードは笑みを浮かべた。
「(ミラージュ…感謝するぞ。これで俺は、リゲルを超えた!!)」
刃が離れる。ロードは間髪入れずに第2撃を繰り出し、ミラージュも同時に刀を振る。本日何度目かの、鍔迫り合いが展開された。
剣と刀が交差し、火花を散らせ続ける。
目の前の相手に集中していたロードだったが、不意にその集中が揺らいだ。原因は、横から現れた気配によってだった。
顔は動かさず、視線を横へと向ける。丁度ミラージュとロードが鍔迫り合いを行っていたのはドームの中心付近で、ロードの視線はそこから延びる複数の廊下のうち、中央の廊下のある方角へと向いていた。
兵士達の包囲が、そこだけ割れている。
そこにいたのは、ロックマン・テスタメントだった。
先程とは違い、黒いアーマー――かつてミラージュが見た姿だが、ロードは初めて目にした――を纏っている。だが以前とは違い、鎧の頭を覆っていた部分が無く、その為そこにいたのがテスタメントだとロードにも理解できた。
ロードはテスタメントを睨む。今の彼には、テスタメントが相手でも負ける気はしなかった。
「何だ、貴様か。今いい所なんだ、水を差すなら容赦は…」
「そこでいつまで、そうしているつもりだ」
テスタメントが不意に発した言葉。それがロードに向けられたものではない事は、内容からしても、そして彼の視線の向かう先からしても明白だ。
何を言っているのか分からず、ロードはテスタメントを観察する。そしてその瞬間、ロードは悟った。テスタメントが視線を向けているのは、『ミラージュとロードの向こう側』だと。
同時にロードは、ミラージュの注意が『ロードの視線とは正反対の方向』へと向いている事にも気が付いた。
それを理解した瞬間、ロードは即座に廊下と反対の方向、祭壇へと視線を向けた。
「っ!!?」
その光景にロードの背筋が凍りつく。
そこに、リゲルが立っていた。
白いスーツの上着は脱ぎ捨て、襟の付いた長袖の白いシャツ姿となっている。ミラージュに斬られた筈の傷は、シャツの表面に赤い痕が残っているのみで、既に出血している様子は無い。
だが何よりもロードの背筋を凍らせた原因は、そのリゲルの表情だった。
ミラージュに斬られても尚、浮かべ続けていた筈の笑みは消失し、眼を瞑ったまま額に皺を寄せ、口を真一文字に引き結び、まるで苦悩しているかの様だ。
突然、ロードの剣にかかっていた重圧が瞬間的に倍加した。驚愕と共に後退したロードは、そこでようやく目の前のミラージュに視線を向ける。
もはやミラージュの眼にロードは映っていなかった。剣ごとロードを押し飛ばすと、刀を鞘に納め、同時にリゲルへと走り出す。
そして、先程リゲルを斃した居合いで彼に斬りかかった。
が、その刃は、次の瞬間2本の指に捕らえられていた。眼を閉じたままのリゲルの指に。
その光景に目を見開くロード。リゲルは、やはり眼を瞑ったまま静かに言った。
「…感謝するぞ、ロックマン・ミラージュ」
先程とは全く違い、落ち着いた声。リゲルの纏う雰囲気は、斬られる前とは一変していた。
「お前のお陰で・・・目が覚めた」
そう言った瞬間、リゲルは眼を開けた。その両の瞳は、テスタメントと同じく、金色に変貌を遂げていた。
次の瞬間ミラージュはリゲルから発せられた衝撃波に刀ごと吹き飛ばされ、ドームの端に近い床に叩きつけられる。
ミラージュの身体は一度床に叩きつけられバウンドするが、彼は空中で体勢を立て直し着地すると、リゲルを睨んだ。
当のリゲルは、ミラージュ、ロード、そしてテスタメントを順に見回し、やがて言った。
「今確信した。どうあがいても、『あの男』の筋書きからは逃れられない様だ」
その言葉に、その場の誰も言い返しはしなかった。それを承知しているかのように、一拍の間を置いてリゲルは続ける。
「…ならば、仕方が無い。今一度、戻るとしよう…粛清官として。傍観者達を悦ばせる…ただそれだけのために!」
ミラージュも、ロードも、テスタメントも、そう語るリゲルを睨みつけるのみだった。ただし、ミラージュとロードにはその視線に、リゲルの言葉に対する疑問も混ざっていたが、テスタメントだけは全てを承知しているかのように、ただ一点の曇りも無い眼でリゲルを睨んでいた。リゲルは最後に言い放つ。
「そうさ…きっとこれが宿命だ。これが…『ロックマン』だ…!!」
リゲルの言葉に、ようやく口を開いたのはロックマン・テスタメントだった。
「そうだ。これは宿命だ。しかし、忘れるな。ロックマン・ミラージュも、ロックマン・ロードも、そして私がここにいるのも、誰の筋書きでもない、自分自身の意思によってだ。そしてそうなったのも…お前が全ての原因だ。お前の、狂気が!!」
テスタメントが声を張り上げる。リゲルは僅かに眼を細めてテスタメントを眺めると、やがて言った。
「いいだろう。ここで決着をつけよう。我々の、宿命に!!」
次の瞬間、リゲルは右手を広げ、頭上に掲げる。
途端に凄まじい威力のバスターが発射され、ドームの天井を突き破り、そのほぼ全てを崩壊させた。
ドーム内に天井の破片と埃が舞い散る。ただし破片と言っても、リゲルのバスターで大半は消滅し、パラパラと細かいものが落ちてくるのみだった。そして一瞬遅れて、天井付近に設置されていたステンドグラスがドーム内の各所に落ち、甲高い音を立てて砕け散る。
ようやくバスターが途切れた時、リゲルの全身が輝いた。その光量は凄まじく、辺りはその光に包まれる。
凄まじい光に、ロードは目元を手で覆う。だが、指の間から油断無くリゲルを観察した。最も光源である以上、そのリゲルの様子が分かる筈は無かったのだが。
だが、やがて光量が更に増し、ロードは眼を硬く閉ざさるを得なくなった。
どれほどの時間が経っただろう。ようやく光が収束し、ロードは目元から手を離そうとして――驚愕した。
ドーム内いっぱいに、無数の羽根が舞っていた。
純白の羽根。一瞬雪と見紛う程に、それらが辺り一帯を覆っている。
ロードはひらひらと舞うその羽根の一枚に触れようとして、止めた。頭の中で、警報が大音響で鳴り響いたからだ。嫌な予感を覚え、フードを頭に被りながら、彼は視線を上げた。
羽根の持ち主は、すぐに分かった。
先程までリゲルのいた場所に、巨大な翼が存在していた。翼は、『本体』を守るように、丸く閉じられている。だがやがて、不意にその翼が開き、広げられた。
リゲルの姿は、全くの変貌を遂げていた。
全身を純白のアーマーが覆っている。身体のラインに沿うように細く、鋭角的なデザインのアーマーだ。手首と足首、それから胴体に、金色のラインが走っている。
だが一際眼を引いたのは、先程全身を覆っていた純白の翼だった。2対存在し、背中と、頭部から生えている。
その頭部はやはり純白にして鋭角的なヘルメットで覆われ、頭部の翼はそのヘルメットの額辺りから頭の横へ向かって展開されていた。
リゲルは眼を開けた。やはりその顔をしかめられている。
彼は、先程自らが大穴を明けた天井から見える空を見上げると、怒気を含んだ声を張り上げた。
「見てるんだろう、タナトス!!」
ロードには、不意にリゲルの言った言葉の意味が理解できなかった。横に視線を向ければ、ミラージュもテスタメントも先程と同じ場所にいて、どちらも油断無くリゲルを見据えている。リゲルは続けた。
「お前の望み通り、踊ってやるよ!!」
タナトス。その名を一瞬思い出せなかったが、リゲルがそこまで言った所で、ロードは思い出した。
ベテルギウス。奴の、3千年前の名だった筈だ。ノアがそう言っていた。
「(奴が、ここにいるというのか…!!?)」
だが周囲に目を向けても、彼の気配は無い。リゲルの言葉にも、姿を現す様子は無かった。
しかしそれを承知しているかのように、やはりリゲルは言葉を続ける。
「だが、覚悟しておけ…!この戦いが終わったら、必ずお前を殺してやる…!!」
そこまで言うと、リゲルはようやくロード、ミラージュ、テスタメントへと視線を向けた。
同時に、先程から感じていた凄まじいプレッシャーが、その矛先を自分達に向けたことも、ロードはその肌で感じた。
「さあ、始めようか、ロックマン。もう一度、同族同士で、殺し合おう…!!」
言葉とは裏腹に、リゲルは少しも楽しそうではない。やはり先程までとは雰囲気が全く違っている。
ロードには、リゲルの言っている言葉の内、意味が理解できないものが多かった。だが、どうやらリゲルが何かを知っているらしい事を彼は確信した。
そしてリゲルは、名乗りを上げる。
「我が名は――」
その言葉と同時に、ロードの脳裏にロックマン・エナミスの死に顔が映った。
その意味を、リゲルの上げた名乗りと共に彼は理解した。
「ロックマン・ジーザス!!」
乾いた拍手の音が響き渡る。
拍手を送るのは、燕尾服にシルクハットをした、ベテルギウスと名乗っていた男――タナトスだった。
モニターでその光景を眺め、拍手を終えると、彼は一言呟いた。
「実に、素晴らしい」
「…そう。良かったわね」
言葉通り、嬉しそうに呟いたタナトスに対し、その斜め後方でモニターを眺める女性――デウスは、何の感情も表さない声でそう言った。
しかしデウスは感情を出さないながらも、タナトスに問いかけるような視線を向ける。
「こうなる事が、望みだったの?」
タナトスは首を傾け、後方にいるデウスを見つめると、言った。
「無論、その通りです。御覧下さい」
タナトスの合図で、モニターはその場所にいる四人の人物のうち一人――たった今変貌を遂げた、ロックマン・ジーザスを映し出す。
「純白の『勝利』」
タナトスがそう言い終えると、モニターは血塗れのフードとマントを纏った男――ロックマン・ロードを映し出した。
「鮮血の『戦争』」
タナトスの言葉が合図であるかのように、モニターは更に別の人物を映し出す。今度は漆黒の鎧を身に纏った男――ロックマン・テスタメントを。
「漆黒の『飢餓』」
そして最後にモニターが映し出したのが、刀を持ち、紺色のアーマーに白髪をした男――ロックマン・ミラージュだった。
「そして…青白き『死』」
そこまで言うと、タナトスはデウスに向かって振り向き、両腕を横に広げて言った。
「これこそが、世界の終末を紡ぐ物語…『黙示録』の光景なのです」
デウスは目を見開くと、低い声で言う。
「そう…全てはこの時の為だったのね。遺跡でロックマン・テスタメントを殺さなかったのも、ロックマン・ミラージュをわざと先に進ませてロードと対決させたのも、そして…」
一拍置いて、デウスは続けた。
「『ノア』の正体を知っていたのに、誰にもそれを伝えなかったのも」
デウスの言葉が、室内に響き渡る。
それを聞いたタナトスは、ただ口元に笑みを浮かべるのみだった。
デウスは僅かに眼を細めると、真っ直ぐタナトスを見つめ、口を開く。
「そろそろ、あなたの目的を聞きたいのだけど」
それを聞いたタナトスは不意に口元から笑みを消し、言った。
「そうですね。そろそろお話しておきましょうか。私の目的を」
そして彼は再び視線をモニターへと移動させる。
「まぁ、あまり期待しないで頂いて結構ですよ。私の目的など…あなたという存在に比べれば、矮小なものですから」
デウスは、しばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。
「それにしても…そこでそうしてモニターを眺めている姿は、まるでこの星の支配者の様ね」
その言葉を聞き、タナトスは思わず苦笑を漏らした。
「まさか、よりによってあなたにそのような言葉をかけられるとは」
二人がいるその部屋は、『ヘブン』と呼ばれた星の、『マスタールーム』と呼ばれた場所だった。
最終更新:2012年11月24日 00:16