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一人の女が、絶望の底にいた。
ただ希望だけを求め、彼女は足掻く。しかし現実は無慈悲で、彼女が救われる事は無かった。
誰も彼女を助けなかった。
誰も彼女を許さなかった。
死ねばその時点で、哀しむ者はおろか、憶えている者さえいなくなる。
彼女は、そんな存在だった。
だからその男は、ここにいる。
そんな、この世界が許せないから、ここにいる。
男は憶えていた。
彼女が最期に口にした言葉は――


ロードは、必死に思考した。
脳裏に浮かんだロックマン・エナミスの死に顔。彼女が死ぬ前に呟いた言葉。その意味が、目の前の存在へと収束している。
「(ずっと忘れていたのに…何故、今になって…)」
彼は頭を抱えたくなるのを必死に堪えて、今しがた名乗りを上げた存在を見据えた。

ロックマン・ジーザスは名乗りを上げた後、しばし眼を瞑り、深呼吸をしていた。
やがて彼を眼を開けると、静かに言葉を紡ぐ。
「いい香りだ。煙と血の匂い…ようやく思い出した。これが…戦場だ」
そして彼はまず周囲の兵士達へと視線を向け、その眼を細める。
その仕草だけで、その場の全員に彼の意図を読み取る事ができた。
『邪魔だ』と言っているのだ。
意図を察し、兵士達は次第にドームから姿を消していく。ミラージュとロードによって20人近くの兵士が斬られてその場に横たわっていたが、それでもまだ無数の兵士がいた。
やがて兵士達が去り、ドーム内を静寂が包む。

そしてようやくジーザスは、テスタメント、ミラージュ、ロードへと順に視線を向けた。
その視線に、ロードは生唾を飲み込む。
剣を握り直し、いつでもジーザスへと跳びかかる準備は出来ていた。だが、身体が動かない。
決して動けないわけではない。だが、仕掛けようという気になれなかった。
この羽根のせいだ。
ドーム内の全域に舞い散る羽根。おそらく、フードを被った自分の身体にも付着している筈だ。
これはただの羽根ではない。自分の本能がそう言っている。
横を見ると、ロックマン・ミラージュも今の自分と同様の様だ。ジーザスへ向けて殺気を放ってはいるものの、踏み込めないでいる。
ジーザスは、まずそんな自分とミラージュを眺めると、言った。
「賢い選択だ」
そしてジーザスは、軽く片手を振った。

次の瞬間、ドーム内に散る全ての羽根が、金色に輝いた。

「(…!!?)」
その光に見覚えがある。そんな結論は出したくなかったが、認めざるを得ない。
先程、アーマーを纏う前のジーザスが指から射出していたモノと同じ。

この羽根は全て、ビームサーベルだ。

ロードは、身震いした。視界をビームサーベルの光が覆い尽くしている。
彼には信じられなかった。ビームサーベルには、射出口が必要な筈だ。だがこれは、ビームサーベルの刀身だけが、羽根と同じ軽さで宙に浮き、空間を覆い尽くしている。
フードを被らなければ、確実に頭部にも接触していたろう。幸いマントとフードのビームコーティングで防御し切れる出力のビームサーベルだった様だ。
だが、動けばマントで覆っていない箇所のアーマーに確実に接触する。事実上、ロードは身動きできない状況に立たされた。
一方で、テスタメントは涼しい顔をしていた。身体の表面にビームシールドを張っていたのだろう。周囲のビームサーベルは、一瞬彼に接触すると、弾かれて遠くへ飛んでいく。
ロックマン・ジーザスは、三人を観察していた。そんなジーザスに対し、唯一動く事のできるテスタメントが、右手を広げ、彼に向ける。
だが、その腕に内蔵されたバスターをテスタメントが発射しようとする前に、状況に変化が起きた。ミラージュが、左腕のエネルギーシールドを前面に展開しながら、ジーザスへ向けて突進してきたのだ。
前面に展開されたエネルギーシールドによって、ビームサーベルの羽根が次々と弾き飛ばされていく。ジーザスは、突進してくるミラージュを見据えると、右腕のビームサーベルを起動させた。
ミラージュはジーザスを間合いに収めると、前方に向けてエネルギーシールドを展開していた左腕を横へと移動させ、同時に右手に持った刀で斬りかかる。
ジーザスもそれに応じ、右腕に内蔵された幅の広いビームサーベルで刀を受け止めた。
「その眼は、見覚えがあるぞ。ロックマン・ミラージュ」
次の瞬間、刃を押し切られ、後ろへと跳ぶミラージュ。そんなミラージュを、ジーザスは指差した。
「っ!!?」
途端に、無数のビームサーベルと化した羽根が、ミラージュへと殺到していく。ミラージュは反射的にエネルギーシールドを構えたが、その体勢のまま動く事ができなくなった。
「あの絶望の底からここまで来たのは賞賛しよう。だが…まだ浅い…!!」
そう言うと、ジーザスは右腕をバスターに変形させ、身動きの取れないミラージュへと向ける。
だがそこで、即座に彼は視線を横に向けた。遂にテスタメントが動き出し、ジーザスへと迫っていたのだ。
テスタメントのアーマーが変形し、今まで露出していた頭も黒い鎧に覆われていく。そして彼の片腕が変形し、バスターの様な射出口が形作られた。
その射出口から高出力のビームサーベルを発生させ、テスタメントはジーザスに斬りかかる。ジーザスも応戦し、右腕のビームサーベルを射出した。
「随分と懐かしいな…3千年ぶりだ」
「無駄口を叩く暇など、与えん…!!」
そう言うと同時に繰り出されたテスタメントの一閃をジーザスが防御し、続けて放ったジーザスの一撃をテスタメントが防御する。二人の接近戦での攻防が展開され始めた。

ロードは素早く動き出すと、そのジーザスの背に飛びかかった。
テスタメントと攻防を繰り広げるジーザスの隙を突いたのだ。ジーザスの、翼の中央に位置している背に向かって、彼は剣を振り下ろそうとする。
「…甘い…!!」
不意にジーザスの呟きがロードの耳に届いた。その途端、無数の羽根がロードへと殺到する。
「(…!!?)」

次の瞬間、殺到した羽根がロードのアーマーを切り裂き、更には羽根の一枚一枚が全て、小規模の爆発を起こした。

「がはぁっ!!?」
その衝撃に吹き飛ばされるロード。マントとアーマーで致命傷は免れたが、彼は必死に起き上がると、戦慄した。
「(あの羽根が死角を全てカバーしているのか…!!)」
視線を上げると、ロードと同じように今度は居合いで側面からジーザスに奇襲をかけたミラージュも、無数の羽根に吹き飛ばされるのが見えた。
テスタメントは未だにジーザスとビームサーベルによる打ち合いを演じている。両者一歩も退く様子は無い。
周囲に浮かぶ羽根型のビームサーベルは減る気配を一向に見せず、それもロードとミラージュにとっては十分な脅威となっている。
ロードは必死で思考した。
「(考えろ…!幾ら体内にアーマーと武器を内蔵していると言っても、それだけではこの異常なエネルギー量は説明が付かない。どこかから補給しているか、これから補給を行う筈だ…!!)」
だが、ジーザスの戦いぶりを見る限り、これから彼がエネルギーを補給するようにはとても見えない。

現在のところ、ロードはジーザスとテスタメントが攻防を続けている様子を側面から見る形となり、ミラージュは彼らを挟んで反対側にいる。そのミラージュは、再び立ち上がって走り出そうとしていた。
「(いいだろう…次はあの羽根、全て叩き落してやる…!!)」
ロードも意を決した。
そして、ミラージュに合わせ、彼もジーザスヘ向かって突進を開始する。
途端に、無数の羽根がロードへ向かって殺到していく。彼は前方の羽を剣の一振りで舞い散らせるが、流石に全ての羽根を吹き飛ばせず、幾つか肩や腰に接触し、爆発を起こした。
「ぐぅ…だがぁ!!」
それでも、頭や胴に食らわぬよう剣をもう一度振り回し、ジーザスへと突撃する。
そして遂にジーザスを間合いへと納めた彼は、全力を振り絞って剣を振り下ろした。

甲高い音がドーム内に木霊した。

「!!?」
次の瞬間、ロードは自分の眼を疑った。
彼は『ミラージュと』鍔迫り合いを演じていたのだ。ミラージュの方もこの事態に目を見開いている。
視界の端に、テスタメントが上に向けて掌を掲げているのが見えた。ロードも状況を察して、ミラージュとほぼ同時に頭上を見上げる。
その瞬間、本日何度目かの、背筋が凍りつくあの感触を覚えた。
天井付近まで浮遊したジーザスは、右腕をバスターに変形させ、三人へと向けていたのだ。
「浅はかだ」
無感情なジーザスの、その声もまたドーム内に木霊する。
途端に、凄まじいエネルギーの奔流がロード、ミラージュ、テスタメントの三人を飲み込んだ。


「私の目的は…人という種が、あの星の呪縛から解き放たれる事なのです」
モニター上での戦いを眺めたまま、ただただ淡々と、タナトスは呟いた。
「この3千年…ヘブンという文明の栄枯盛衰を眺め、そして私は一つの結論を下しました」
一拍の間を置き、タナトスは語る。
「人の文明は、既に地球という星に拘らない方が進歩する事ができると」
「…理由が知りたいわ」
デウスの言葉に、タナトスは僅かに微笑みながら、続けた。
「ヘブンの支配者達が行ってきた事を思い出して下さい。デコイの環境適応の度合いを調べ、いずれ本物の人類が地球に住めるよう、環境の改善を進めていく。それを数千年という単位で行い続けてきたのが、彼らです」
そこまで言ってから、溜め息を一つついて、タナトスは言った。
「しかしその行動は、紛れもなく停滞なのです。デコイという人類の代替品を犠牲に築かれた平和。それを引き換えに、ヘブンという文明はその技術的進歩の速度を、時を経る毎に緩やかにしていきました」
「何が言いたいの?」
僅かに表情を曇らせたデウスが、眼を細めて尋ねる。タナトスは言った。
「分かりませんか?全ては地球という星の浄化に拘ったからこそ、ヘブンは…人という種は、歩みを止めてしまったのですよ。挙句の果て、事実上ヘブンを支配していたマザー達は、ヘブンに残る優れた文明と技術さえ捨て去り、あまつさえ人類の代替品であった筈のデコイと共存をしようとしている…」
「勿体無い…とでも言うつもり?」
タナトスは、そこでモニターに目を向けた。
モニターに映る、ロックマン・ジーザスを。
「あれを御覧下さい。3千年前でさえ、ヘブンはあれほどの破壊力を持った『兵器』の製造を可能としたのです。その技術力を、地球環境の再生という目的にのみ用いた結果が今の状況にあるのならば…」
そこまで言って、ようやくタナトスは結論を口にした。
「人という種にはもはや、地球という母星など、必要無いのではないでしょうか?」
デウスは、ただ静かにモニターに映る光景を見据える。


「ぐっ…」
閃光が晴れた時、テスタメント、ミラージュ、ロードの三人はまだ健在だった。
テスタメントがジーザスのバスターを防ぎ切ったからだ。
だがその影響からか、テスタメントがその場に片膝をつく。

そんな彼の姿に、ミラージュとロードが一瞬気を取られたのが間違いだった。

ミラージュは突如現れたビームサーベルの閃光に、咄嗟に刀で防御するのが精一杯だった。
そのまま押し切られ、かなり遠くの壁まで叩きつけられる。
同じようにロードも、突然目の前に現れたジーザスの足先が胸の中央に直撃し、吹き飛ばされた。
そうして二人を吹き飛ばしたジーザスが、目の前のテスタメントを見下ろした。
「テスタメント。まだ先程の、貴様と1対1だった時の方が手応えがあったぞ。あの時はまだ眼が覚めていなかったという事もあるがな…」
「ぐ、うっ!!」
それでも尚、右腕にビームサーベルを射出させ、テスタメントはジーザスに斬りかかった。
ジーザスはその場から一歩も動かずに、右腕のビームサーベルで受け止める。彼は無表情のまま、冷徹な視線をテスタメントに向け、言葉の続きを紡いだ。
「今度は、お前の目が覚めていない様だな」
「な、にぃ…!!」
テスタメントがそう言った瞬間、彼のビームサーベルにかかっていた圧力が増す。たまらず彼は、サーベルを弾くと同時に地面を蹴って後退した。
「くっ!!?」
だが、その動きにジーザスはついてきた。
テスタメントが体勢を完全に立て直す前に、ジーザスは彼の至近距離まで接近し、再度サーベルを振るう。
体重をかけるのは困難だったが、テスタメントは咄嗟にサーベルを横に薙ぎ払った。
「今のお前は…」
だが、ジーザスは地面を蹴り、サーベルどころかテスタメントすら飛び越え、空中で一回転し、彼の背後へと着地していた。
振り向き様に、ジーザスがビームサーベルを振るう。
だが、テスタメントもかろうじてまだその動きについていく事ができた。ジーザスが自分を飛び越えたのを察知した瞬間、薙ぎ払ったサーベルをそのまま勢いを殺さずに背後まで振り切ったのだ。
再びの鍔迫り合い。ジーザスは、再度口を開く。
「殺意を隠し切れていない。殺したいのは、私だけではないのだろう?」
その言葉に、テスタメントは一瞬硬直した。
ジーザスは、やはり無表情のまま続ける。
「手に取るように分かるぞ。この場に至ってもまだ、私以外の者への殺意を殺し切れていないのが…なぁ!!」
そう言うと、ジーザスは鍔迫り合いを行っているサーベルを勢い良く上へと弾いた。
「ぐうっ!!」
やられる。そう確信したテスタメントは、すぐに上へと弾かれたサーベルを、ジーザスへと振り下ろした。
だがその一撃は、ジーザスの左腕の、5本の指先から射出されたサーベルに阻まれていた。
それを確認すると、即座にジーザスは、右腕のビームサーベルをテスタメントへと振るう。
だが、ここに至ってテスタメントは、左腕からもビームサーベルを射出し、ジーザスの一撃を受け止めていた。
両腕を使った鍔迫り合い。互いに退く事無く、ジリジリと続いてゆく。
そして、次の瞬間。

ジーザスの頭部から生えた翼が、テスタメントのビームサーベルごと、その右腕を斬り落としていた。

「ぐっ…がああああああぁぁぁ!!」
後退しながら消失した右腕の傷口を抱え、テスタメントが叫ぶ。彼はそれでも、かろうじてジーザスから距離を取る判断はできたのだが、ジーザスにとっては彼のそんな行動など何の意味も無く、すぐにでも首をはねる事ができた筈だ。
だがジーザスはそうはせず、代わりに一言呟くと同時に、振り返った。
「その腕が代償だ。今度は、私がお前の目を覚まさせてやる」


ロードは、ジーザスとテスタメントの闘いを観察しながら、素早く動いた。
悔しいが、彼一人では――否、テスタメントとミラージュの三人がかりでも、ジーザスには勝てない。そうロードは判断した。
だがそれでも、ロードはこの手でジーザスを打ち倒したかったのだ。
ロックマン・エナミスが死ぬ間際にその名を呼んだ。恩人であったプロキオンは彼に裏切られた。それらの事実もあるが、何よりロードは、初めて会った時からリゲルが――ジーザスが、気に入らなかったのだ。
そして、事この場に至り、圧倒的な実力差を目の当たりにしても、いや目の当たりにしたからこそ、ロードは自分の手で彼を葬る事を決意した。
ロックマン・ミラージュと同じだ。自分の手で決着させなければ、この先、前には進めない。
たとえ、どんな手を使ってでも。

テスタメントの腕が斬られ、ジーザスが無慈悲な言葉を紡ぐ。
「(頭部の翼であんな事が可能とはな…あれでは副腕と変わりが無い)」
そう考えつつ、ロードはその瞬間にジーザスの背後へと、剣を構えて飛びかかった。
「(だが…これで終わりだ!!)」
腕を斬られた以上、テスタメントはもうこれ以上ジーザスと対等に渡り合う事は不可能だろう。
つまり、奇襲をかけるのは、これが最後のチャンスだった。

ジーザスは、その瞬間に振り向いた。

今まさに、ロードがジーザスへと飛びかかった、まさにそのタイミングで。
「こいつを…殺す事でな」
ジーザスは、ロードの思惑など完全に予想していた。それをロードが悟るには、全てが遅すぎた。
「く…おおおおぉぉぉぉ!!!」
ロードは、それでも構わず剣を振り下ろす。たとえ予測されていたとしても、ジーザスが振り返った時には、既に彼はロードの間合いに入っていたからだ。
だがジーザスは、そんなロードに対して、ただ右手の人差し指を向けただけだった。
たったそれだけの動作に、ロードの脳が急速に反応する。

その瞬間、彼の脳裏に、その人生の全てが超高速で再生された。

「さよなら」

次の瞬間、ロードの身体が木の葉の様に吹き飛ばされる。
更には空中で無数のビームサーベルに彼の身体はズタズタに切り裂かれ、最後には大理石の壁に激突した。
壁が砕ける。それだけでなく、壁に入ったヒビは大きくなり、遂にはその一部が崩壊して倒れ伏したロードの身体の上に降り注いだ。
ロードはピクリとも動かない。

動かなくなったロードに、テスタメントは、愕然とした。
腕を斬られた事もそうだが、何より自分の心の底までジーザスに見抜かれた事も彼に衝撃を与えていた。
確かに、最初にこの大聖堂でリゲルと戦った時は、今とは違い1対1だった。
だが、今は違う。この場には――彼の主を殺した、ロックマン・ロードがいた。
ロードも含め、今ここにいる三人が纏めてかからねば、ロックマン・ジーザスを打倒するのは難しい。テスタメントはそう割り切っていた筈だった。
だがやはり、心の底では、憎しみを抑える事などできなかったのだ。その事実から眼を背け、戦いに望んだ結果がこれだ。
未だにジーザスは無傷。
まさに、絶望的と言う言葉が生温く感じられる状況だった。

「こうなる事を、望んでいたのだろう、テスタメント」
「ジー…ザス…!!」
向き直り、再びジーザスはテスタメントを見下ろした。テスタメントは歯を食いしばり、ジーザスを睨む事しかできない。
ジーザスはしばらくそのまま、眼を細めていたが――次の瞬間、その場から飛び退いた。

「…ほう」
飛び退いたジーザスの頬が僅かに切れ、血が流れる。
彼は、前方を見据えた。
「光学迷彩…形振り構わなくなってきたな、ロックマン・ミラージュ」
そこに、何も無い筈の空間からロックマン・ミラージュが現れた。
ジーザスの言う通り、光学迷彩で姿を消したまま、彼はジーザスに奇襲をかけたのだ。
とは言え既に満身創痍で、肩で息をしているが、その眼には殺意が衰える事無く漲っている。
「何が古き神々だ。何がロックマンだ。貴様も…ただの人間だ…!!」
そう言ったミラージュの刀は、今しがた付けられた、ジーザスの頬の僅かな切り傷へと向けられていた。
その切り傷から、赤い血が一筋、ジーザスの頬を流れ落ちる。
ミラージュの言葉に、ジーザスはしばらく無言だった。
だがやがて、ゆっくりと溜め息を吐くと、彼は平然と答える。
「…そうさ、その通りだ。この3千年、それが分かっていない者ばかりだった」
そして、ジーザスは右腕のビームサーベルを起動した。
ミラージュも、刀を構える。
「だがお前は、果たしてこれから…」
「ロックマン・ジーザス…」
ロックマン・ミラージュとロックマン・ジーザスは、同時に言い放った。
「ただの人間でいられるかな」
「貴様は俺が殺す」
そして両者が地面を蹴ったのは、ほぼ同時の事だった。


最終更新:2012年12月20日 02:28