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荒れ果てた大地で、男は眼を覚ました。
眼を開けた途端、即座に身体を起こす。そこでようやく、彼は傍らにいた女性に気付いた。
「気がつきましたか?」
「私は、確かに死んだ筈…!」
記憶を遡る。自分の意識は、戦っていた相手――まるで天使の様な姿をしたモノ――がその翼を広げた所で終わっていた。
その時、自分は死んだと確信していたのだが。
女性に説明を求めようとする前に、彼女の方から口を開いた。
「貴方の戦い、見ていました。今の私では、祈る事しかできなかった」
まるで既に自分の事を知っていたかのような口調。だが男には、女性の姿に見覚えなど無い。
しかし、その女性の口調、そして纏う雰囲気は、確かに男の記憶の底にあるものだった。
どうやら自分の頭はまだ正常らしい。記憶からその女性の正体を引き出すことに成功した男は、そう考えると同時に、目の前の女性に対し、跪いた。
「申し訳ありません、マザー・ディエス様。任務を達成できませんでした」
「…どうやら憶えていないようですね」
その女性――マザー・ディエスの言葉に、男は疑問符を浮かべる。
ディエスは、不意に視線を、横に広がる地平線の彼方へと向けた。
「確かにあなたは、ロックマン・ジーザスに敗北しました。でも、あなたは命を奪われはしなかった」
確かに、ディエスの言う通りだ。男は自分が今生きている事に、改めて疑問を抱いた。
その疑問の答えを、彼女は口にした。
「ロックマン・ジーザスは意識を失った貴方に止めを刺そうとしましたが、その瞬間、彼のエネルギーも尽きたのです。彼は無言で、この場から去りました」
おそらく、ディエスが視線を向けている方角へとロックマン・ジーザスは逃亡したのだろう。男はそう思った。
そしてようやくディエスは、男に視線を向ける。
「つまり、相打ちに近かったのです。あのロックマン・ジーザスが意識を失った相手の命を奪う事もできない程に、彼を消耗させたのですから」
励ますようなディエスの言葉。しかし男は俯き、言った。
「…お言葉ですがディエス様、いずれにしても私の敗北である事に変わりは…」
「私には、これから成さねばならない事があります」
ディエスが不意に口を開き、男の言葉が断ち切られる。だが男は、ディエスの次の言葉を待った。ディエスは少し俯き、言う。
「おそらく、これからどれほどの年月がかかるかも分からない任務です」
そう言って一拍置くと、ディエスは男の眼を真っ直ぐ見据えて、言った。
「協力してくれますね?ロックマン・テスタメント」
男――ロックマン・テスタメントは、再度跪き、ただ一言、「はっ」と答えた。
「ですがテスタメント。私がもし先に命を落とすような事があれば、その時あなたは…」
ディエスの言葉に、テスタメントは思わず顔を上げる。
だが彼は、言葉を発する事ができなかった。僅かに眼を細めたディエスの表情に、何かを読み取ったからだ。
後でテスタメントは思い返し、考える事になる。この時、彼女の表情に表れていたのは、『憂い』とでも言うべきものだったのかもしれないのだと。
「自分の信念に従って、行動して下さい」
そう言うと、そこでようやくディエスはその顔に微笑を浮かべた。


ミラージュの刀が、ロックマン・ジーザスに迫る。
首を狙って放たれたその一撃を、ジーザスは片手のビームサーベルで防御した。
「少しはやるかと思ったが、その程度か?」
直後に、ジーザスの頭部の翼が迫り、ミラージュは後退せざるを得なくなる。
翼の射程外まで後退し、ミラージュは再度刀を構えた。そんなミラージュに対してジーザスは、少し退屈そうな目で彼を眺める。
「まだ真正面から戦う気でいるのか」
ミラージュは殺意を漲らせた目でジーザスを睨むばかりだが、それを承知でジーザスは言葉を続けた。
「先程私の前に立った時と比べ、殺意だけは些かの衰えも見せていないのは評価しよう。だが、体力の方はどうだ」
ジーザスの言葉に、ミラージュは答えない。だが今の彼が必死に肩で息をしている時点で、答えは明白だった。
「もはや手を隠す局面でないのは分かる筈だ。全てを用いて、私を殺してみろ…ロックマン・ミラージュ!!」
ジーザスの言葉と同時に、ミラージュが走り出す。
だが今度は、ジーザスの間合いに入るかどうかという所で、その姿が『消えた』。
しかしそれを確認しても尚、ジーザスは右腕のビームサーベルを横に薙ぎ払う。しかし、その腕に獲物を捕らえる感触は無かった。
「また光学迷彩か…」
言うなり、ジーザスは後ろを振り返り、やはりビームサーベルを薙ぎ払う。
しかし、やはり感触は無い。その直後、ジーザスは左手の5本のビームサーベルを真上に向かって無造作に振った。

一本の刀と5本のビームサーベルが接触する音が聞こえたのは、その直後だった。

ジーザスが真上を睨みつける。鍔迫り合いは続いたままだ。
真上から一撃を繰り出し、その体勢のまま鍔迫り合いへ持ち込む。このような動作をするには、空中に停滞でもしていなければ無理な話だった。
「反重力装置か…!」
直後にビームサーベルにかかっていた圧力が無くなり、ジーザスは左腕を下ろした。
ジーザスの持つビームサーベルの羽根は、最初に彼が真の姿を現した時のままで、無数に散らばって空中に停滞している。
「(その中で、今のような動きが可能か…少し期待できるという事か)」
そうジーザスが考えていると、再度真上から、攻撃が来た。
「ほう…!!」
無数の羽根の間を縫う様に、何本ものナイフが雨のように降ってくる。
殺到するナイフの群れ。ジーザスは、頭部の1対の翼を広げた。
翼は広げられた後、流れるように巧みに動き、次々とナイフを叩き落としていく。

だがその瞬間、ジーザスは気付いた。
姿を消したミラージュの気配が、すぐ目の前に迫っているという事に。

即座に振られたジーザスの右腕のビームサーベルと刀が、再度火花を散らした。
「ここまでの撹乱で精一杯か?」
「…」
ミラージュは答えの代わりに沈黙を貫いたが、次の瞬間光学迷彩が解除され、彼の姿が露となる。
ジーザスは、あからさまに失望したような表情を浮かべた。
「だとするなら…残念だ…!!」
そう言うと、左手の5本のビームサーベルを起動し、ジーザスはミラージュへ向けて薙ぎ払う。

だが、そのビームサーベルがミラージュの首の間近まで来た瞬間、ジーザスの動きが止まった。

「!!?」
ここに来て初めて、ジーザスは驚愕したかのように目を見開いている。
その視線は、今自分のビームサーベルと鍔迫り合いをしていた、ミラージュの刀へと注がれていた。

先程までミラージュが使っていた刀は、両手用の、刀身の長い代物だった。だが今は、片手用の短い刀を握り、ジーザスのビームサーベルと迫り合っている。
ならば、先程までミラージュが使っていた刀はどこにあるのか。

それは、ジーザスの傍らの地面に突き刺さっていた。

そして次の瞬間、ジーザスの頭部の翼のうち一枚が、根元近くから切断され、大理石の床に落ちた。

「…!!」
ジーザスが驚愕したその隙を突いてミラージュが追撃しようとした時、逆に自分の刀にかかっていた圧力が強まるのを感じ、彼は地面を蹴って後ろへ跳ぶ。
ジーザスは、床に落ちた翼を眺め、次にミラージュへと視線を移すと、言った。
「投げていたか」
ミラージュの方は体力が限界に近いらしく、相変わらず肩で息をしているが、その眼はやはりジーザスを睨んだままだ。
「最初に真上からナイフを投擲したがアレは囮。私がアレに対応している間に至近距離から攻撃を加えるが、それが察知される事も予想していたのだな」
そこまで一息に言うと、ジーザスはその姿になって初めて、僅かに顔を綻ばせた。
「自分さえ囮にし、空中に意識を向けさせないとはな。それも最初にナイフを仕掛けたお陰で、それを全て凌がせた事で逆に空中への注意を削ぐとは」
だがジーザスの言葉も意に介さず、やはりミラージュは光学迷彩で姿を消す。
「認めよう。少々、侮っていた」
ビームサーベルを消すと、ジーザスは無表情で次の攻撃を待つ。

再び無数のナイフが、背後から迫り来るのをジーザスは察知した。
振り返り、頭部の残った翼でそれらを全て叩き落とす。
そして次の瞬間、上から来た殺気にジーザスはビームサーベルを上方へ向けて薙ぎ払う。
だが手応えは無い。
「その手…二度は食わん!!」
そう叫ぶと同時に、彼は背後を振り返ると同時にビームサーベルを薙ぎ払った。
こちらも手応えは無く、ビームサーベルは空振りする。
だが次の瞬間、ジーザスは片足を勢い良く蹴り上げた。

蹴りを片腕で防御するミラージュの姿が現れたのは、その時だった。

「くっ!!」
「やはり…!」
腕ごと身体を蹴り上げられながらも、ミラージュは刀を振り上げる。
だがその身体は、ジーザスの頭部の翼により木の葉のように吹き飛ばされていた。
「返すぞ!!」
遥か向こうの壁にミラージュが叩きつけられようかという瞬間、ジーザスは追撃に、傍らに刺さっていたミラージュの刀を投げつける。
壁に叩きつけられたミラージュの胸と左肩の間辺りに、深々と刀が突き刺さった。

「ぐうっ!!」
大量の血が、傷口から流れ落ちていく。
ミラージュに突き刺さった刀は、そのまま背後の壁まで突き刺さり、彼を縫い止めていた。
「我が翼を斬り落としたのは評価しよう。だが、これで終わりだ」
ジーザスはそう言うと、右腕をバスターへと変形させ、ミラージュに向ける。
ミラージュは壁から離れようと身を捩り、突き刺さった刀を抜こうとするが、深く突き刺さった刀は簡単には抜けそうも無かった。


今まさにバスターが放たれようとした時。
不意に横からの殺気を察知し、ジーザスは反射的に振り返る。

その瞬間、ビームサーベルがジーザスの残った頭部の翼を斬り裂いた。

「っ!!?」
ロックマン・テスタメントが、残った左腕からビームサーベルを射出し、ジーザスに奇襲を仕掛けたのだ。直前まで全く気配を察知できなかったジーザスは咄嗟に身をかわしたが、頭部の翼だけは避け切れなかった。
根元近くから斬られ、傷口が焼ける。その傷口を手で触りながら、ジーザスはテスタメントを睨んだ。
「まだ戦う気があったとは驚いた」
テスタメントは答えず、ただジーザスを睨む。ジーザスは続けてミラージュの方にも目を向けた。
ミラージュは自らの血に塗れ、壁に縫い止められたままだった。突き刺さった刀を抜こうとしているが、上手くいかないらしい。それでも彼は、殺気の漲った視線をジーザスに向けることだけは忘れていなかった。
ジーザスはそんなミラージュとテスタメントを眺めると、言った。
「いいだろう。お前達のしぶとさに、最大限の敬意を表しよう」
その言葉に、テスタメントが僅かに目を見開く。
「まさか…貴様…!!」
「その、まさかだ!!」
そう言うと、ジーザスの身体が宙に浮いた。そのまま、彼の身体は上昇していく。
大聖堂のドーム内を更に上昇し。
やがては、既に破壊された天井をも越えて。
そして、ドームの床に立っている者からすれば、真上の太陽と丁度折り重なる程の位置にまで、ジーザスは上昇した。
「テスタメント。この位置から私がこれから行う攻撃にどんな意味があるか、分からぬお前ではあるまい」
テスタメントは歯を食いしばり、言った。

「貴様…まさかこの街ごと…!!」

ジーザスは、無慈悲にして冷酷な視線で、テスタメントを見下ろす。
「もはや不要だ、全て。忌まわしい過去と共に、この街ごと消えるがいい」


「分からないわねタナトス。人という種を地球から独立させる事と、彼らを戦わせる事に、何の関係があるというの?」
僅かに顔をしかめて、デウスはタナトスに問う。
タナトスはやはりモニターへと視線を向けたまま、言った。
「直接の因果関係はありませんよ。あの戦いは、私のもう一つの目的のためです」
「もう一つの目的?」
デウスの問いにタナトスは彼女を振り返り、笑みを浮かべた。
「神話の創造です」
そう言ってから一拍を置き、タナトスは続ける。
「この地球上で最後に行われる、あの戦いを、後の世に語り継ぐ神話として創造すること。それが私の、もう一つの目的なのです」
「その『神話』を、地球から独立した人類に語り継がせる…という事?」
デウスの言葉に、タナトスは頷いた。
「3千年前、あの星の荒廃を決定的にした最終戦争…その原因が何であったのか、あなたは知りますまい」
タナトスの言葉に、デウスは首を傾げる。
彼は楽しそうに言葉の続きを紡いだ。
「あの戦争は、『宗教戦争』という、もう一つの顔を持っていたのですよ」
そしてタナトスは再びモニターに目を向け、口を開く。
「血縁というものを除き、人と人とを繋ぐ最も強固な鎖とは何だと思われますか。それは、『思想』です。同じ思想の者同士ならば、争いの起きる確率は決定的に低くなる。つまり…繁栄を存続させる最も有効な手段は、『思想統一』であると、私は結論を下しました」
「『思想統一』…」
デウスの言葉に、タナトスは相槌を打つ。
「ええ。その為に、彼らの戦いを神話として創造し、それを土台に『思想統一』を図る。それが私の目的であり…この戦い全ての、意義なのです」
デウスは、僅かに眼を細め、モニターを眺めた。
「その『思想統一』とやらのために…今彼らは、殺し合いを演じさせられ続けているのね」
タナトスは苦笑を漏らしつつ、言葉を返す。
「勘違いしないで頂きたいですね。彼らは誰に操られるでもなく、彼ら自身の目的のために戦っているのですよ。私はそんな彼らの生き様を、有意義に利用しようとしているだけなのです」
「…そう仕向けたのは、あなたでしょうに」
デウスの言葉に、タナトスはただ口元に笑みを浮かべるのみだった。
やがてモニターの中では、ロックマン・ジーザスが、大聖堂の上空まで昇って行くのが映し出される。その様子を眺め、自嘲する様な口調で、タナトスは言った。
「ですが、もしロックマン・ジーザスのあの攻撃で全てが終わるなら、そんな私の目的も水泡に帰す事になるでしょうがね。それはそれで…面白くもあるのですが」
デウスはただ、モニターを無表情で見つめた。


一人の男がそこにいた。

太陽を背にし。まるで、太陽の中にいるかのように。

背中の翼を大きく広げ、ロックマン・ジーザスはそこにいた。

「名残惜しいが、終わりにしよう」
そう宣言したジーザスの頭上に、僅かに光が集中する。
光は収束していき、やがてそこに、光の輪が現れた。
大きさはさほどのものではない。直径がジーザス自身の肩幅よりも少し大きい位だ。
ジーザスの姿も相俟って、それはまるで天使の輪の様だった。
その光景を見て、テスタメントは眼を細める。

いつか、このような事態になる予感はしていた。
その覚悟もしてきたつもりだ。
だが、それをいざ目の当たりにして、彼は初めて恐れというものを感じた。
それでもどうにか、彼はここに踏み止まっていた。
頭部を覆ったアーマーを解除し、クリアになった視界で周囲を見回す。
ロックマン・ロードは瓦礫に身体の一部を埋めたまま、ピクリとも動かない。
ロックマン・ミラージュは、まだ突き刺さった刀を抜こうとしながら、それでも頭上にいるジーザスを睨む。
しばらく、テスタメントは硬く目を瞑った。
そうしていたのは一瞬だったが、それで十分だった。追憶も、改めた覚悟も。
彼は眼を開け、まずミラージュの方へ視線を向けると、静かに言った。
「後を、頼んだぞ」
そして、彼は頭上のジーザスを見上げ、残った左腕を掲げた。

ジーザスは右腕をバスターへと変形させる。
そしてそれを、ゆっくりと頭上に掲げた。頭上の、光の輪に向かって。
そうしてからバスターを下ろし、改めて眼下の大聖堂へと向ける。大聖堂のドームの、床から見上げているテスタメントに向かって。
ジーザスのバスターの動きに、光の輪が追従する。これから発射させるバスターが中心を通過するように、眼下へと向けられたバスターの銃口の前に光の輪が浮かんでいる形となった。
「お前の考えている事は分かるぞ、テスタメント。だからこそ、残念だ」
ドームにいるテスタメントを見下ろし、ジーザスはそう言った。
光の輪が僅かに拡大する。そして、遂にジーザスは言い放った。
「さらばだ!!」

遂にジーザスのバスターが放たれ、発射されたエネルギー波が光の輪を通してその出力を何倍にも拡大し、街へと降り注ぐ。

その出力は、既にドームや大聖堂に留まらず、この街全てを飲み込まんとする勢いで、破滅の光となって降り注いだ。

同時に、テスタメントは左腕に内蔵されたエネルギーシールドの出力を全開にして発動させる。

エネルギーシールドは大聖堂よりかなり上空に、それこそ街全てを守らんとする程の規模で展開された。

たちまち、凄まじいエネルギーの奔流と巨大なエネルギーの盾が衝突する。

時刻は正午を過ぎる頃だった。雲一つ無い青空と太陽。それにも関わらず、街の空は巨大な雷が発生したかのように、光に埋め尽くされていた。

音は無い。まるでそれだけは抜け落ちたかのように、街も、大聖堂も、そしてドーム内も、ただただ静寂が包んでいた。

やがて――


「…こうなると思っていた」
どれほどの時間が経ったのか。それとも時間など経っていなかったのか。
空の光は消え去り、ロックマン・ジーザスはドームの中に降下した。
ロックマン・ミラージュは未だ肩に刀が突き刺さったまま、壁を背に座っている。俯き、意識があるのかどうかも分からない。
そんなミラージュの様子を一瞥した後、彼は目の前にいるロックマン・テスタメントを眺めた。

テスタメントはそこに立ち、頭上に左腕を掲げたまま、微動だにしなかった。
金色だった髪も瞳も、灰色へと変貌させて。
彼は、自分の生命エネルギーすらも全て消費し切っていた。

「…お前の勝ちだ、テスタメント」
ジーザスは、命を燃やし尽くしたテスタメントを見つめる。
彼は本気で、この街を焦土に変えるつもりで、自分の全エネルギーを込めてバスターを放った。
だがテスタメントは、そんな全力のジーザスの攻撃を相殺し切ったのだ。
ジーザスも、テスタメントが自分の命すら顧みずに、そんな行動を取る事は予想できていた。だからこそ彼も全力を出したのだが、結局、テスタメントの底力の方が上回った形となった。
ジーザス自身は、頭部の翼を失ってはいるもののほぼ無傷だ。だが、彼は本心から、テスタメントの勝利を認めた。

そんな万感の思いと共に、彼は静かに目を瞑る。
祈りなどではなかった。ただ、3千年前より続いてきた因縁が、今ようやく終わった事を噛み締めるために。


そんな彼の背に、剣が突き刺さったのはその時だった。



最終更新:2013年01月13日 01:34