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ノアは、真っ直ぐクロウを見た。
その表情に普段の余裕は無く、その態度にも煙に巻くような様子は無い。
周囲は銀色の仮面を被った黒装束の者達が遠巻きに取り囲んでいる。
そんな中でクロウは、今しがたノアから聞いた話を再度、一から思い返した。
そして、彼は確信する。ノアの話す男がどれほどの存在なのかを。
ディエスの行動を三千年前から看破しながらも泳がせ、イデアに凄惨な拷問を行い、そしてノアをこの世に生み出した、その男。
「一体…何が目的だ、その男は」
「…残念ながら」
クロウの問いに対し、急にノアはそう言うと、振り返った。
ノアの視線の先では、銀色の仮面の者達の囲みが割れており、そこに二人の人物がいた。
タナトスとゼゼが。
ゆっくり、そして堂々と、二人は歩いてくる。
その姿をようやく視認したクロウは、青ざめた。特に、ゼゼの姿を目にした時に。
「ゼゼ、お前…何やってる…」
ゼゼは答えない。
代わりにタナトスが、朗々と声を上げて言った。
「ノア。貴方の選択には、少しばかり驚きましたよ。ロックマン・ミラージュと死闘を演じ、その上全ての事情を話して差し上げるとは」
「そうかね」
ノアは不快そうにそう答える。
「しかし、これで…思い残す事はありませんね?」
笑みを浮かべながら、タナトスがそう問う。
即座に、クロウが怒りの表情を浮かべた。
「それはどういう意味だ…!」
だがそんなクロウに対し、ノアはどこまでも無表情のまま、言った。
「ミラージュ君。君は先へ行きたまえ」
「…何?」
刀の柄に手をかけたまま、クロウはノアの背に視線を向ける。
ノアは振り返らず、言った。
「ロックマン・ジーザスと戦い、そしてついさっき私とも戦ったんだ。君の体力も限界に近いんだろう。こんなところで時間を潰してる暇など無い筈だ」
突き放すようなノアの言葉に、クロウは抗議の声を上げる。
「だからといって、この状況を捨て置けるか!!」
そう言うとクロウは、タナトスの傍らにいるゼゼを真っ直ぐ見つめた。
「ゼゼ、操られてるならとっとと眼を覚ませ。お前は命令が果たせなかっただけで死のうとしたほど、ノアに忠誠を誓っていた筈だろう…!!」

「黙れ」

初めて、ゼゼが言葉を発した。それにも驚愕したが、そのゼゼの言葉の内容に、クロウはもっと驚愕した。
ゼゼは、更に言葉を紡ぐ。
「そんな記憶は無い」
「御覧の通りさ」
ゼゼの言葉に続いて、ノアがそう言う。
そして彼はクロウに向かって振り返ると、僅かばかり寂しそうに、言った。
「彼女についてはもう、詰んでるんだよ」
「お、前っ…!!」
クロウの表情が歪む。ノアはタナトスに向かって向き直り、言った。
「で、ミラージュ君は先に行かせたいが、いいかね」
「勿論ですとも。彼にはまだ、舞台が残っているのですから」
満面の笑みで、タナトスはそう答える。
ノアはその笑みに対し僅かに不快そうな表情をしながら、言った。
「行け。この先に、ヘブンへの扉がある。そこでデウスが…待ってるよ」
クロウは納得できない表情で答える。
「言った筈だ。捨て置けるか!その傷で、どうやって切り抜けるつもりだ!?」
「ミラージュ君」

ノアが再び、クロウに向かって振り返った。

その顔には、いつも通りの不敵な笑みが浮かんでいた。

「私を、誰だと思っているんだね?」

その笑みには、決して有無を言わせないものが秘められている。
このままでは、クロウ自身が去らないと状況は動かないだろう。
彼は奥歯を噛み締めた。
「…糞!!」
そしてノアの傍を通り過ぎ、タナトスとゼゼの傍を通り過ぎ、銀色の仮面の集団を抜け、彼は走り去っていった。


クロウの姿が暗闇に消える。
ノアは、タナトスとゼゼを真っ直ぐに見据えた。
「さて…まだ、彼女がここにいる理由を話していませんでしたね」
タナトスは微笑と共にそう言った。ノアはそんなタナトスを睨んだまま反応しない。
「リゲル…ロックマン・ジーザスが貴方の島を襲った時の事を憶えていますか?」
やはりノアは答えない。それでも構わず、タナトスは続けた。
「出撃前に、彼に頼んでおいたのですよ。生死に関わらず、貴方の島にいた高位のリーバードを連れてきて欲しいと。何故そんな事を、私が頼んだと思います?」
「今更そんな事実、どうでもいい」
楽しそうに話すタナトスとは対照的に、ノアは不愉快そうな顔のままである。
答えたノアに、更にタナトスは言った。
「では聞きましょう。何故、彼女を殺せなかったのです?」
タナトスの質問に、僅かにノアが目を見開く。そしてそれを、タナトスは見逃しはしなかった。
「ロックマン・ミラージュも、このゼゼも、貴方は『駒』だと謳って味方に迎え入れた。『駒』という事は、幾らでも切り捨て、補充が可能であるという事。それを二人に認識させた上で、貴方は彼らに選ばせた筈だ」
一拍を置いて、タナトスは続ける。
「という事は、まさにこの様な状況になれば、貴方は躊躇無く彼女を殺す筈だった。彼女もそれを理解して、あなたの『駒』となる道を選んだのです。なのに、貴方はできなかった」
「…それがどうした」
無表情にノアはそう言い放つ。タナトスはそんなノアの言葉を待っていたかのように、笑みを浮かべて言った。
「それこそが、貴方が遂に気付く事のできなかった、貴方自身の『弱さ』なのです」
「弱さだと?」
ノアの問いに、タナトスは微笑を浮かべたまま頷く。
「そう。まず貴方と、オリジナルであったイデアとの間には、決して埋められぬ違いがあるのです。それこそが貴方の弱さを生んでいる」
再度一拍を置いて、タナトスは続けた。
「貴方は自身の本質を、憎悪にあると思った筈だ。貴方の出自を考えれば、そう思う事は必然だったでしょう。事実、貴方はマザー・ディエスを謀殺し、そして今私を殺したくて仕方が無い筈だ」
そこまで言って、タナトスはニィ、と笑みを更に深くする。
「しかし、その憎悪の源であったイデアは、その感情の中に憎悪だけを宿していたのではないのです。彼はディエスへの信頼や、ヘブンにいたオリジナルの人間達との絆。それらを持っていた。だからこそ、彼らが自分を助けるつもりが無いと分かった時、それらの感情が一気に憎悪へと転じたのです」
ノアの表情が、僅かに変わった。目を見開き、顔色が僅かに曇る。
紛れも無く、彼は愕然としていたのだ。
「もし生き残ったのが、貴方ではなくイデア本人であったなら、きっと幾度も迷った末に、ディエスを殺さぬ道を選んでいたでしょう。だが、貴方はディエスを謀殺した」
そこまで言うと、タナトスは自身の言葉を強調するように、ノアを指差した。
「だから私は確信したのです。貴方はイデアではない。イデアの持つプラスの感情を、全く持ってはいない。だから、彼女――ゼゼが使えると、確信した」
「そ、れは…何故だ…!?」
ノアの顔に、明らかな焦りが生まれている。
これまで自分の存在意義であり、自分を支えていたモノ。それが今、揺るがされているのだ。
それも、全ての元凶たる者の手によって。
「それは…貴方が『愛情』や『信頼』といった、プラスの感情を全く知らなかったからですよ」
「な、に…!?」
「貴方が生まれた時点で、イデアから引き継いでいたのは『憎悪』のみだった。それを糧に貴方は三千年、古き神々を打倒する事に心血を注ぎ、味方も僅か二人に限定し、それも『駒』という、切捨ての効くモノとして彼ら自身に認識させて仲間に引き入れた」
動揺するノアの様子を眺め、タナトスは微笑み、そして続ける。
「だが『切り捨てる』という事に対して最も覚悟が足りていなかったのは、ロックマン・ミラージュでも、このゼゼでもない。他ならぬ貴方だったのですよ」
ノアの眼に、更に動揺が色濃く映る。タナトスは続けた。
「貴方はイデアから『憎悪』ばかりを引き継いだせいで、他人から『忠誠』や『信頼』『愛情』といったものを与えられる事に慣れていなかった。そんな貴方が、『切り捨てる』という事を一瞬の判断で、どうして出来ましょう?」
「違、う…私は…!!」
声を荒げるノアに、しかしタナトスは容赦なく言葉を浴びせる。
「違うのならば何故、今の貴方はかつてないほどに動揺しているのでしょう?」
タナトスの言葉に、ノアは反論できない。そしてそれをタナトスはとっくに承知し、その上で、遂に決定的な言葉を浴びせた。
「ノア。貴方はどうしようもなく、弱い存在なのです」


言葉を失うノア。
しばしこの場所に、自身の言葉が浸透していくのを待って、タナトスは言葉を付け加える。
「しかしながらノア。貴方のその弱さこそが、私の確信をより深くさせてくれました」
もはやノアに、彼の言葉が届いているかは定かではない。
それでも、彼は喋り続ける。
「人は弱い。貴方のように」
歌うように。
「理性、本能、倫理、欲望」
響かせるように。
「それら弱さと強さに折り合いをつけ、人は途方も無い時間がかかりながらも、ここまで文明を進歩させてきたのです」
朗々と。
「それこそが人の価値。そしてそんな文明を作り上げるに至った、人という種を生み出した…」
恍惚と。
「地球という星の、価値なのですから!!」
こうして、タナトスは締め括った。


タナトスの言葉が響き、やがて消えた、その瞬間にゼゼが銃を発砲する。
銃弾はノアの右膝を貫通し、彼の体勢が崩れる。
だがノアは抵抗しない。
もはや彼の頭には、生き延びる策など無く、既に存在意義を見失った彼の表情には、絶望しかなかった。
「ノア。貴方に最後のチャンスを与えましょう」
まるで楽しくて仕方が無いとでも言うように、タナトスが言う。
「貴方の命はゼゼに奪わせます。だがもし貴方に、ゼゼを殺す覚悟があるなら、或いは生き延びて、いつの日かこの私の息の根を止められるやも知れませんよ」
タナトスの言葉にノアは反応せず、ただ俯くのみだった。

「(はは、何という皮肉だ。先程ミラージュ君に指摘した事柄が、全て私自身に返ってくるとは)」

ノアは視線を下に向け、ただ自分が殺されるのを待っていた。

「(滑稽だ。滑稽にも程がある)」

ゼゼが、銃を構えて近づいてくる。俯くノアの視界に、彼女の足が映る。

「(ゼゼ、すまない。せめて君は助けたかった。だが…無理みたいだ)」

ノアが、すぐ舞い降りるだろう『死』を覚悟し、目を瞑る。
だが、予想に反して、最後の銃弾は中々発射されなかった。

「(…?)」

眼を開ける。ゼゼは目を閉じる前と同じく、目の前に立ったままだ。
しかし、銃弾が発射される様子は無い。
ノアが、顔を上げる。


ゼゼが銃を向けたまま、大粒の涙を流していた。


銃を持つ手はカタカタと震えている。まるで、引き金を引こうとする力に全力で抵抗しているかのように。
「ゼゼ…」
ノアが自然とその名を呼んだ。
操られたゼゼが、目から流す涙と思い通りにならない自分の手に動揺する。
「なん、だ…これ、は…」

そして、その光景を目の当たりにしたタナトスは――歓喜した。

「素晴らしい…!!ゼゼ、まさか貴方が、意図に抗えるとは…!!」

そして更に興奮したタナトスは、言葉を続ける。
「ならばゼゼ、貴方の根気に、敬意を表しましょう!貴方自身の主と共に、退場という形で!!」
次の瞬間、タナトスの操る無数の『糸』が、ノアとゼゼに襲い掛かった。

無数の糸が、ノアとゼゼに殺到していく。
それを視界の端に捉えたノアが、せめてゼゼだけでも助けようと身を起こすが、もう遅い。
やがて糸が二人の間近まで迫った時。

全ての糸は、止まった。

それはタナトスも予想できない事態だった。
「何…!?」
糸は、受け止められていた。刀によって。
時間差を経て、光学迷彩が解除されていく。

「これ以上…お前の好きにさせるか、タナトス!!」

黒いスカーフをたなびかせ、クロウ・エリュシオンはそこにいた。


時は少し遡る。
クロウが、ノアとゼゼとタナトスから離れて走り去った後。
走り続けた先に、彼は石造りのゲートを見つけた。
「あれが…出口か」
ゲートは虹色に光っており、その先にうっすらヘブンのマスタールーム周辺に広がる草原が見える。
クロウは恐る恐る、そのゲートを通り抜けた。

そこは本当に、ヘブンだった。
視界の先にマスタールームの建物が見える。
周囲を見渡せば、やはり遠い昔に見た記憶のある、草原が広がっていた。
「本当に…ヘブンなのか」
しばらく周囲を眺めた後、マスタールームへ向かおうとした時、彼は立ち止まった。
一瞬、誰かの声が耳に聞こえたような気がしたからだ。
『それでいいの?』
確かにそう聞こえた。だが、確信を持てるほどハッキリとはしていない。
「…誰だ」
誰にとも無くそう問うが、誰の声かは既にクロウには分かっていた。
もう声は聞こえない。自分の声が辺りに木霊するだけだ。
クロウは、先程聞こえた言葉を反芻した。
「…いいわけないだろう。だが、ノア自身が俺を先に行かせたんだ」
そう呟き、彼は足を踏み出そうとする。

だが、止まった。

思い出したのだ。先程見たタナトス。以前一度だけ、実際にあの男を見た。
その時、あの男はどうしたか?丁度、先程と同じだった。

自分――ロックマン・ミラージュを先に行かせる。

そうして以前は、ロックマン・テスタメントが動きを封じられ、結果的にディエスがシリウスに殺された。
ノアの話を聞いた時と同じ感覚が、クロウの内に甦ってくる。
そう、これは――操られているという感覚だ。
まるで人形のように。
「…糞…」
片手を額に当て、目を瞑る。これでいいわけが無い。このままだと、ノアのみならず、全ての者にとって良くない事が起きる。そんな気がする。
クロウは眼を開けた。
ここで立ち止まらせてくれたのは、間違いなく『彼女』のお陰だろう。
『彼女』が本当の所は何者で、自分が『彼女』に出会った時にどうすればいいのかは、まだ分からない。
それでも…倒すべき敵ではないと、そう信じたかった。
「ありがとう…レノア」
そう呟くと、クロウは振り向いた。
『忘れ物』
もう一度、声が聞こえた。

振り返ると、目の前の地面に、黒いスカーフが落ちていた。

それを手に取り、しばらく眺めていたクロウだったが。
「…すまない」
そう言うと、黒いスカーフを首に巻いて、クロウは今自分が出てきたゲートに再度飛び込んで行った。


タナトスは、信じられないような目でクロウを見る。
クロウはそんなタナトスを睨んだまま、刀を構えた。
ノアとゼゼに向かっていた糸は、クロウに阻まれると再び周囲に遠のく。
そんな糸を一瞥し、クロウは思考した。
「(あの糸はどういう事だ…?タナトスが操っているにしては、タナトス本人が手を動かしている様子が無い。手を使わずに操作する手段があるのか…?)」
そんなクロウに向かって、タナトスがようやく言葉を紡ぐ。
「一つ、お教え頂きたい。何故戻ってきたのです?」
「お前が古き神々だから。これでは不服か」
答えたクロウを、タナトスはしばらく眺めていたが、やがて言った。
「その首に巻いたスカーフ。先程ここを離れた時は巻いていなかった筈だ。どうやって手に入れたのです?」
「…拾っただけだ」
クロウは警戒しながらも答える。タナトスはしばらく思案している様子だったが、やがて納得したように頷いた。
「なるほど。ではもう少し…物語に脚色を加えるとしましょうか」
仕掛けてくる気だ。そうクロウは判断し、数歩後ずさる。
そして、背後にいる筈の、ゼゼに銃を向けられているであろうノアに向かい、振り返らずに言った。
「ノア、聞こえてるんだろう。何があったか知らないが、もう死にそうなのか」
タナトスが何か号令をする直前のように、鷹揚に片手を振り上げる。その光景を緊張の面持ちで眺めながら、クロウは言葉を続けた。
「俺もゼゼも、お前の駒なんだろ。ならばさっさと、次の一手を指示してくれ。でないと…お前が勝てない相手に、俺が一人で敵うとも思えない」

ノアは、クロウが戻ってきた事に驚いていた。
だが、それでも何も変わらない。クロウ一人が戻った所で、既に自分は戦術でも戦略でも、そして心理面でもタナトスに完全に敗北したのだ。
今更クロウ一人が戻った所で、戦況が好転する筈もない。ノアは頭の中でそう結論付けようとしていた。
だが目の前の光景――涙を流し、タナトスの支配と戦い続けるゼゼ――を再度眺めて、考えを変える。
そうだ。諦めるにはまだ、早過ぎる。
タナトスにとって、ロックマン・ミラージュは彼の役者――それも、彼の創造する物語の主人公となっているのだ。
つまりタナトスにとって、クロウは死なせたくない人物だろう。
ノアはゼゼを見つめたまま、体勢を変える。
膝が砕けた右足を懸命に床に押し付け、左足を伸ばし、立ち上がる。
激痛が走るが、それでもノアは、渾身の力を込めた。
「ち…ぃ…!!」
それだけでも多大な労力を費やす。こんな感覚、恐らくこの生涯で一度も味わっていないだろう。
ようやく立ち上がった彼は、とりあえず笑った。
「くっ、くくっ、はははははははは!!」
急にノアが立ち上がり、笑い始めたので、クロウは思わず振り返っていた。タナトスですらも、虚を突かれたかのように片手を振り上げたまま、目を見開いている。
「私も、堕ちたものだ…駒に元気付けられるとは」
そう言うとノアは深呼吸し、身体の状態を再確認する。
体内の狂ったナノマシンは、未だ自身を蝕み続けている。だが、当初よりもその勢いは強くはない。正常なナノマシンの修復活動と、速度は互角となっていた。
「(まだ大丈夫…だな)」
そう確信すると、彼はクロウに視線を向け、声を上げた。
「ミラージュ君!5分…いや3分でいい。時間を稼いでくれないか」
言われたクロウは、即座に答える。
「分かった…可能な限りやる。何分でもな」

そしてクロウは、タナトスに向かって刀を向けた。
「そういうわけだ。さぁ、来い!!」
タナトスは薄く笑うと、答える。
「いいでしょう。3分間、貴方もゲームを、存分に楽しんで下さい」
そう言ったが、まだタナトスは手を下ろさない。最後にこう付け加えた。
「但し、貴方が乱入者となったゲームだ。それ相応の難易度は、御覚悟の程を!」
「望む所…!!」
クロウが答えると同時に、タナトスは上げた片手を勢いよく振り下ろした。

ノアは、クロウが答えた時点で既に彼とタナトスに視線を向けなかった。
ただ、ゼゼのみに。
そして、彼は微笑んだ。
「ゼゼ、そんなに苦しまずとも、私は死なないよ」
「っ…!!?」
そう言って、彼は両手を広げた。
「証明する。さぁ、撃ってくるがいい」
次の瞬間、ゼゼの手にあった銃が、ノアの胸に押し付けられ、発砲された。
何発も。
何発も。



最終更新:2013年12月14日 23:10