ジャック・アースガルドは、寝床で横になったまま、疑問に思っていた。
酷くクタクタだ。接客業はこんなに大変なものだったのかと思う。
今夜来てくれた客達は、最初に来た客を除けば皆父親の顔馴染みで、皆ジャックに暖かく接してくれた。
が、それはそれとして、店の商売は大変だった。
今までアルバイトはやったことがあったものの、ここまでてんてこ舞いになった事は無い。
今は夜も更けたため、もう休んでいいと父親に言われ、自宅のベッドの中だ。
父親の方はまだ店で、遅くまでいる常連の客と話し込んでいた。
ジャックはベッドの中で、不思議に思っていた。
普段なら、ここまで疲れていればベッドに入った途端に意識が落ちている筈だ。
だが、何故か眠れない。
店を開けて最初に来た客の話したことが頭にあるからかもしれないな、とジャックは思った。
結局、最初に来た二人の客は酒を頼まず、ジャックが淹れたコーヒーを一杯飲むと出て行ってしまった。
その客達は――
「クロウさんが、この町に…」
クロウ・エリュシオン。彼がこの町に来ているのだという。心当たりは無いかと尋ねられたが、ジャックは首を横に振るしかなかった。
父親も知っていたら絶対に自分に言うだろう。そう思った。
――本当にクロウ・エリュシオンがこの町に来ているのだろうか?
――来ているなら何故、自分の所に来ないのか。
この疑問が、頭に渦巻く。以前この町で起こった事件で、自分とケインはクロウと親しくなったのだ。
だから、彼がまたこの町に来たら、必ず自分の所に来てくれるだろうと思っていた。
「一体、どういうことなんだろう…」
そんなことをずっと考えていて、眠れなかった。
それに今夜は、酷く胸騒ぎがする。眠れないのはそのせいでもあった。
折角久々に里帰りしたのだ。夜中の町を歩くのも悪くないかもな。そう思い始めた。
あの様子だと父親はまだしばらく帰ってこないだろう。店が夕方からだから、今夜は遅くまで顔馴染みと飲んでいるつもりかもしれない。
吹雪いてきそうならすぐに帰ろう。そう決めて、ジャックは支度をして家を出た。
「お久しぶり…ですね…」
黒いローブで身を包んだ少女。
クロウは憶えていた。忘れられる筈がなかった。
ジョエル・クラウス神父――ロックマン・ハウエルが、引き取って育てていた少女。
以前見た時よりも短い、肩上で切られた金髪。翠色の瞳。
「…ゴースト…一体、何が目的だ…!?」
祭壇の前に佇むゴーストへと、クロウは鋭い視線を向けた。
「安心しろ。人質に取るだなんて何の面白味もないことをするために、この娘を連れてきたわけじゃねぇ」
言うと、ゴーストは一歩下がり、ミラに向かって手招きした。
ミラはゆっくりと歩いて祭壇の前まで来ると、改めてクロウの方へと向き直る。
そして、言った。
「どうしても…あなたの口から聞きたいことがあって…ここに来ました」
無表情のまま、しかし決然とした表情でミラは言う。
「それは…一体、何だ?」
唐突に現れた少女の存在に、クロウは尚もゴーストへと意識を向けたかったが、ミラの言葉を無視するわけにもいかない。
意識をゴーストに向けながらもクロウは応じた。
「何故…父を殺したんですか」
「…!!?」
クロウは、ミラの言葉に一瞬混乱した。
ミラの父親を殺したのは、ケフェウスという古き神々の一人だった筈だ。そして、何よりもその現場をミラ自身も見ていた筈。
彼女の言葉と、事実の食い違いを説明できるのは、一人の人物の存在しかなかった。
「ゴースト…貴様…!!」
ゴーストは、その顔に笑みを浮かべる。
「答えて…下さい…!」
クロウの意識がゴーストに向いたことが気に入らなかったのだろう。ミラは焦りを帯びた声でクロウに向かって言う。
クロウは目を瞑った。
ゴーストに、ミラが何かをされたことは明らかだ。だが、ここで激昂してもゴーストの思う壺だろう。
それに何より、自分が殺していないことは確かだが、彼女の父親を守れなかったのも確かなのだ。
クロウはミラの傍らに立つゴーストを一瞥すると、改めて彼女に視線を向け、静かに言った。
「…俺は、殺してない」
クロウの言葉に、ショックを受けたようにミラは固まる。そんなミラに向かって、クロウは尚も言った。
「だがお前の父親が死んだのは、俺の責任だ」
クロウの言葉に、ミラは固まったままだった。
ゴーストはその顔に笑みを浮かべたまま、そんなミラの耳元で囁く。
「…ああ言ってるが、どうだ?嘘だと思うなら、存分に奴へ憎しみをぶつけろ。そのためにここに来たんだろ?」
クロウは、そんなゴーストを無視して、ミラの眼だけを見据えた。
「真実かどうか…それを証明する方法は無い」
一泊を置き、尚も言葉を紡ぐクロウ。
「だが俺は…お前の父親と、言葉を交わした」
「お前の父親は…お前が憎しみに囚われることなど、望んでなかった筈だ…!!」
クロウの言葉に、しばし無表情だったミラ・クラウスの顔が、やがて苦し気に歪んだ。
「…何故…何故なの」
もう言いたいことは言った。ミラが何を言おうが、受け入れるつもりだ。
だからクロウは、ミラの反応を待った。
「…あなたが父を殺したと…ずっと、そう思ってたのに…」
言葉を紡ぐ度、ミラの眼から涙が流れる。
「今は、そう思えない…!!」
そう言うと、ミラはクロウではなく、傍らのゴーストへと視線を向けた。
「でも、あなたは…今まで、ずっと…」
ゴーストの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
ゾクリと、クロウの背筋に寒気が走る。
自分は、彼女にかけてやれる精一杯の言葉をかけた。
だが気づくべきだったかもしれない。ここに来て彼女と会った時点で、もう最悪の展開は回避できなかったのだと。
「ああ、そうだ、全て嘘っぱちさ。クロウ・エリュシオンがお前の父親を殺したわけじゃない」
ゴーストの宣告に、ミラが言葉を失う。
「だが、お前も悪いんだぜ?ミラ・クラウス」
「お前はこう思った筈だ。『何故自分だけがこんな目に遭わなければならないのか』ってな。…だからお前は記憶に蓋をして、憎しみの対象を探し求めていたのさ」
今度こそ、クロウが叫んだ。
「ゴースト!それ以上、言うな!!」
ゴーストは笑みを浮かべてクロウを一瞥すると、尚もミラに向けて言葉を重ねる。
「だからお前は、飛びついた。『クロウ・エリュシオンがお前の父親を殺した』なんて、自分が見た現実とは真逆の、偽りに」
「ゴースト!!」
クロウが、ゴーストに向かって走り出す。
ゴーストはクロウに向かって笑みを浮かべると、ポケットから幅広のナイフを取り出した。
「まぁでも、嘘を吐いたのは悪かったな」
そして、クロウが彼の元へ辿り着く前に、ゴーストはナイフの刃を『自らの』首に突き立てた。
「っ!!?」
頸動脈が切断されたのか、凄まじい血が噴き出し、傍にいたミラの服を、顔を濡らす。
「詫びだ、死んでやるよ」
その言葉と共に、ゴーストが力一杯首に突き立てた刃を振り抜く。
更なる血飛沫がミラの顔を濡らして、ゴーストの身体はそのまま仰向けに倒れ伏した。
一体、どういうことだ。
クロウの頭の中を、疑問が駆け巡る。
何故ゴーストは今、自殺など。
その時、気づいた。
惨劇を目の当たりにしてその場に崩れるように座り込んでしまったミラの、その頭髪の色が変わっていくのを。
「あ、あぁ…」
金色だった髪が、段々と、黒く変わっていくのを。
「あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「待っ…」
クロウがかけようとした言葉は、ミラの絶叫にかき消され。
そして彼の視界が突然、漆黒の闇に覆われた。
ミラを中心にして、突然ブラックホールのように発生した闇。
発生したのも一瞬なら、それが収まって元の教会内の様子が見えるようになるのも一瞬だった。
ただ、一点。
「…馬鹿な…!!」
無数の黒い羽根が、辺りに舞い散っていたのを除けば。
そしてミラの姿は、異形へと変わっていた。
その姿に、酷く見覚えがあり。
その名を、呟かずにはいられなかった。
「ロックマン・ジーザス…!!」
頭と背中に、漆黒の二対の翼。
ミラの身体に合わせて作られたような、すらりとしたデザインの黒いアーマー。
先程までの絶叫は無く、ゆっくりと立ち上がったその姿は、見る者に堕天使を想起させるものだった。
「そっか…私…最初から、間違ってたんだ」
そう呟くミラの瞳から、血の涙が流れていた。
「ああ…頭の中で叫んでる。全部、壊れてしまえと」
「もし、彼女が改造を受けていなければ、君の言葉を届いたろうよ、ミラージュ君」
山の中の屋敷、火のある書斎の中で、バアルは目を瞑ったまま、そう呟く。
「だが、もう言葉で止まる段階ではない」
その顔に感情の色が刻まれることは無く。
「自らが異形であると自覚し、更に憎悪の対象を失った彼女は、最早止まることは無いだろう」
その眼は、全てを見ていた。
「それにしても…あそこまで再現できるとはな。本人が近くに居たが故か」
周囲を黒い羽根が舞い、立ち上がったミラは虚空を見つめる。
どうにかできないか。クロウは考え続けるしかなかった。
「…ミラ・クラウス」
声をかけた途端、ミラの眼に殺意が宿り、それがクロウへと向けられる。
それを感じ取った途端、頭より身体の方が先に動き出していた。
真後ろへ、教会の扉の方へ、身体ごと突進する。
勢いよく扉が開き、クロウは雪に覆われた教会の庭へと身を躍らせた。
次の瞬間、先程までクロウのいた場所へ、紫色の光が殺到し、炸裂するのが見えた。
「やるしかないのか…!!」
後ろへ下がり続けながら、刀を抜いて構える。
このままでは、戦闘が発生するのは避けられない。もしクロウの直感が正しかったなら、ロックマン・ジーザスと同じ力を持つ相手に、市街地で戦ってしまうことになる。
悠然と教会から出てきたミラの顔には依然として殺意が宿り、その眼からは血の涙の跡が見える。
彼女の周囲に舞い散る黒い羽根が、拡散と集合を続けるのが見えた。
紛れもなく、あれはロックマン・ジーザスの力だ。クロウはそう思った。
あの羽根一枚一枚が小さなビームサーベルであり、それが集合するとより強力な光刃となって、対象を殺傷する。
今、その無数の羽根がミラの周囲の至る所で集合し、紫色の光が走ったかと思うと、幾本もの黒い槍が生成されていくのが見えた。
その全ての穂先がクロウへと向いている。
「くっ…!!」
駆け出したその瞬間に、今までいた所に槍の一つが射出され、凄まじい炸裂音と共に黒い槍が地面に突き刺さる。
突き刺さった槍はまた無数の羽根に分裂し、その場に何も残さなかった。
だが、それを見ている余裕はクロウには無い。黒い槍は続けて何本もクロウを追尾して射出され、それを必死に走って避け続けねばならなかったからだ。
走り続けていくうちに、昨日傷を負った肩が痛みだす。
「くそ、傷が…」
瞬間、急に目の前にミラが現れた。
無数の槍を避けながらも、ミラの居た位置は把握していた筈だ。だが、想像以上の身体能力で、ミラはクロウへと急接近していた。
「っ!!?」
ガードする前に、ミラの右足が突き刺さる様にクロウの腹を叩く。
そのまま吹っ飛ばされ、クロウの身体が教会の柵に叩きつけられる。
その衝撃に、柵が拉げるのが分かった。
「あぁ…あああああああぁぁぁぁぁ!!!」
更なる追撃。辛うじて構えた両腕に、ミラの拳が激突する。
その衝撃がとどめとなり、柵とそれを繋いでいた塀が千切れ、吹き飛ぶ。
轟音と共に、クロウの身体は教会の傍にあった民家へと叩きつけられていた。
「がはっ!!」
衝撃に血を吐くクロウ。
頭に巻いていた包帯が取れ、傷口が開いたのか、血が顔を流れるのが分かった。
これは、想像以上にロックマン・ジーザスの能力が再現されているらしい。強烈な痛みに支配される頭と裏腹に、冷静な部分の自分がそう告げる。
本人を相手にした時には、テスタメントとロードがいた。だが、今は一人だ。
相手が純粋なロックマンではないとはいえ、一対一で戦うには苦し過ぎた。
特にアーマーが無いのが痛い。こんな衝撃を何度も喰らえば、幾ら強靭なクロウの身体でも、内臓まで痛手が及ぶだろう。
「く、そっ…!!」
膝をつきそうになるのを堪えて、クロウは正面を見た。
ミラは、千切れた柵の傍を歩いて、どんどんクロウの方へ向かってくる。
その右腕に、紫色のビームサーベルを。その左腕に、5本の細いビームサーベルを発生させて。
その光景に、これは夢かと思いかける。まさか、ここまでジーザスの能力が再現されているとは。
これは、見立てが甘かったとクロウは痛感した。
『殺さなければ、殺される』。そんな確信が頭の中に浮かぶ。
そう思考している間に身体は動き、刀を抜いていた。
それに合わせるかのように、ミラが地面を蹴って跳ぶ。
次の瞬間、クロウの刀とミラのビームサーベルが交差していた。
が、右腕の力のみでクロウの刀を受けたミラが、左手から5本発生させているサーベルを振りかぶる。
「くっ…!!」
それを察知し、勢い良く刀を振り抜き、地面を蹴って後ろへ飛ぶクロウ。
だが、同時に周囲の羽根が小さなビームサーベルを発生させ、クロウへと追いすがる。
以前の戦いではアーマーがかなり阻んでいたが、今は違った。黒い羽根の刃はクロウの衣服と肌を易々と焼いていく。
顔をしかめ、クロウは周囲に刀を振り回して羽根を遠ざけた。
「はぁ…はぁ…」
息を整えている間にも、ミラの周囲に黒い羽根が収束し、無数の槍を形作っていく。
先程までとは違い、ミラの表情に感情のようなものは読めない。無表情というよりも、目が虚ろであることにクロウは気づいた。
「目を覚ませ!ミラ・クラウス!!」
クロウの叫びに、ミラの眼が僅かに見開かれる。
「父親を失って、お前は本当に一人だったか!?」
この町に来て、ケインに会い、ルーシーに助けられたことを思い出しながら、クロウは言葉を紡ぎ続けた。
「お前を支え、励ましてくれた人は、一人もいなかったか!?」
周囲に発生していた槍が、次第に黒い羽根へと分裂していく。
確かな感触を得て、更にクロウは話を続けた。
「いや、決してそうじゃない筈だ。今お前は、それを失おうとしてるんだぞ!」
「私、は…」
頭を抑え、ポツリとつぶやくミラ。クロウは、今度は静かに語りかけた。
「心を静めろ。きっとお前がその姿から戻れる方法が…」
瞬間、凄まじい衝撃にクロウの身体が吹っ飛ばされる。
それが、ミラに首を掴まれたまま背後の民家の壁に叩き付けられた衝撃だと分かったのは数秒後だった。
「が、はっ…」
身体が浮いている。ミラに首を掴まれたまま、持ち上げられ壁に押し付けられているらしい。
ミラは血の涙を流しながら、左手でクロウを持ち上げ、右腕のビームサーベルを発現させていた。
「もう…戻れない…!!」
「ぐ、うっ…」
息が止まりそうなくらい首を絞められ、もう少しで意識が落ちるところだったが、そこでミラはクロウの身体を路上へと投げ飛ばす。
路上に叩きつけられて、クロウは息を吐いた。
脳が新鮮な酸素を求め、激しく呼吸する。だがそれでも、クロウは何とか立ち上がった。
「くそっ…!!」
頭からの出血が酷くなり、右目の視界が赤く染まる。
見ると、ミラはその場に立ち尽くしたまま、憑かれたように何か呟いていた。
「駄目なの…」
「頭の中を…全て壊れてしまえって、声が…」
そしてミラは、やっとクロウに視線を向けると、言った。
「ころ、して…」
「!!」
「じゃないと…皆、壊してしまう」
言いながら、ミラは右腕に再度ビームサーベルを起動する。
同時に周囲に黒い槍を発生させ、クロウへと向けた。
どうすればいい。先程、確かに殺さなければ殺されると思った。だが、こんな展開は望んでなかった。
「ゴースト…!!」
怒りを抑え、クロウは判断に迷う。
だが、もう時間の猶予など無い。そして、答えは明らかなのだ。
その途端、無数の黒い槍が飛ぶ。ミラも地面を蹴ろうとしているのが分かった。
クロウは、地面を蹴った。前へ。
脳裏に、ケインが、ジャックが、ルーシーの顔が浮かぶ。
ルーシーに約束した。この町は守ると。
だから。
クロウは無数の槍を掻い潜り、不意を突かれたミラの胴へ、刀を振り下ろした。
鮮血が舞い、クロウの服を濡らす。
舞い散っていた黒い羽根が全て、浮力を失ったかのように地面に落ちる。
「ごめん、なさ…い…」
そして血飛沫と共に、ミラの身体が、そこに倒れた。
しばし、その光景をクロウは茫然と眺めていた。目に焼き付けるように。
この町を守ると誓った。守らなければならない人々がいた。
だが――この少女も守らなければならない者の一人だったのだ。
自分は間違っていたのだろうか。クロウは自然と刀を手放してしまっていた。
崩れるように膝をつく。
脳裏に、かつて死に様を見た少女の姿が浮かんだ。
――ああ、俺も同じだ。あの黒豹と。
クロウの眼から、止めどなく涙が溢れていた。
「クロウ…さん?」
数メートルほど後ろから、聞き覚えのある声がした。
それが、ジャック・アースガルドの声であると気づくのに、さして時間はかからなかった。
「…これが、ゲームとやらの結末か?」
火のある書斎で、バアルが問う。
不意に、風の無い室内で火が揺らめいた。
そして、揺らめく火に照らされ、ゴーストの姿が現れた。
「クク…これが結末だって?まさか!!」
手にしたステッキを振り回し、踊るゴースト。
「まだまだ…これはまだ序盤だぜ、バアル!」
酷く楽しそうに、揺らめく火に合わせてゴーストは靴音を鳴らす。
バアルはそんなゴーストの様子に目を細め、言った。
「ロックマン・ジーザスの再現か…序盤で切るのは早過ぎたのでは?」
「いいや」
踊りを止め、ゴーストは答える。
そして、狂気的な笑みを、バアルに見せた。
「本番は、ここからさ」
どうすればいい。心の整理もつかぬまま、クロウは目を瞑っていた。
それが、いけなかったのかもしれない。
「…え?…ミ、ラ…?」
「っ!?」
ジャックの声が、消え入りそうにそう紡がれる。
その瞬間クロウは、瞑っていた眼を開けた。
今しがた斬った筈のミラが、立ち上がっていた。
胸の斬撃の跡からは血の代わりに煙が出ており、傷は修復されかけている。
かつて、傷を負ったノアがそんな状態だったのを思い出し、クロウは自然と言葉を紡いでいた。
「ナノ…マシン…!?」
次の瞬間、ビームサーベルが、クロウの胸を貫いた。
最終更新:2018年04月17日 00:44