「漸く会えたな、クロウ・エリュシオン」
名刺を差し出しながら、彼はそう言った。
「スティーブ・ハント。私立探偵だ」
名刺を受け取ってその内容を読み、クロウは言葉を紡ぐ。
「私立探偵?さっきの言葉を聞く限り、ただの人間ではなさそうだが」
「まぁ、事情は聞いてる。お前の…ボス?からな」
「それは誰の事だ」
即座にそう聞き返したクロウに、内心スティーブは感心した。
――カマをかけたが、そう簡単には引っかからないか、と。
「二人のマザー。俺の依頼人だ。お前を見つけろと言われた」
「マザーか…」
そう呟いたクロウだったが、その途端に声を上げた。
「ゼゼはどうした!?」
「あのリーバード女のことなら、俺に聞かれても困るな。現場に着いた時はお前が救急車で運ばれていく所で、他にいたのはお前より若そうな男女二人だけだったんだから」
スティーブの説明に、しばしクロウは無言だった。
やがて、言葉を呟きながら考え始める。
「いない?あの場に…何故だ…?」
そんなクロウを見ながら、スティーブは言う。
「あんたに渡したいものがあるが、あのリーバード女がいないから渡すのは少し時間がかかりそうだな。何せ俺でも一つ持つのが精一杯の、でかいケースが3個分ある」
クロウはスティーブのその言葉に耳を傾けたが、返事は無言だった。
それを見て、スティーブはため息を吐くと、言う。
「カーネルに会った。奴が予想してたんだが、お前…誰も巻き込みたくないから今までずっと単独で行動してたのか?」
「それは…否定しないが」
言葉を濁すクロウに、スティーブは目を細める。
「言っとくが、それは傲慢だ」
「そんな事…!」
反論しようとするクロウに、スティーブは両手を広げて見せてから、言った。
「この状況はどうだ?」
「?」
「この病院。あの現場に駆け付けた警察。あのリーバード女や俺の依頼人も含め、お前を心配してた奴ら。お前がどう動こうが動くまいが、誰かを巻き込んでるのに変わりはない」
スティーブの言葉に、しかしクロウは納得がいかなそうな顔で言葉を返す。
「しかし…俺は、俺のせいで誰かに死んでほしくないんだ」
「…警察署長が拷問されてた映像、見たよな?」
そう問われ、クロウはすぐに思い出した。刑務所の面会室でマザーに見せられた映像を。
「…ああ」
「じゃあ聞くが、お前が単独で行動してりゃ、奴――ゴーストと名乗ったあの男が、お前だけを狙ってくれるような奴に見えたか?」
「い、いや…」
言葉を濁すクロウに、スティーブは尚も言葉を紡いだ。
「あの男はな、罪も無い何人もの人間を遺跡の中に突き落とし、その死に様を眺めるような事をやってた。それも商売としてだ」
「…商売だと?」
スティーブから教えられた情報に、クロウは驚愕する。続けてスティーブは言った。
「奴は他にも色々やってる。お陰であの街は今、滅茶苦茶だ。そういう相手なんだよ、あの男は」
「あのゴーストという男の事を、知ってるのか?」
スティーブは頷いた。
「一から話してやる。ここに来るまでの事を。そして…一人で何とかしようとしたお前の見立てがどんなに甘かったのかを教えてやる」
最終更新:2018年06月04日 21:41