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テレビに映っているのは、ライトアップされたステージのようだった。
周囲は近くに長方形の高台のようなものがあり、それ以外は空しか見えない。
中央に立つビートルジュースは恭しく礼をした。
『ごきげんよう、プリズナの町の紳士淑女諸君。楽しい楽しいゲームの、時間だ』
そして、彼は顔を上げ、口の端を吊り上げる。
『俺の名はゴースト。このゲームのプレゼンターだ。よろしくな』

そこで、カメラが切り替わった。

「な…!!?」
「やはり…!!」
驚愕するクロウ。先程の地震から、予想できていたらしいゼゼ。

テレビに映し出されていたのは、プリズナの町の中に出現した、戦闘端末の姿だった。

『さて、何人かは気付いていると思うが、こんな巨像が先程現れただろ?』
カメラは更に切り替わり、形の異なったもう一体の戦闘端末を映す。
『西、東、そして南。現れたのはこの三体の巨像だ。見えるな?』

即座にクロウは、走って店の扉から外に出た。スティーブもそれに続く。
アースガルドの酒場は、町の中央にある広場に面して建てられている。
そのため、店の前にある程度歩いて、彼らにも目視できた。
「マジかよ…!!」
スティーブがそんな言葉を漏らす。クロウも、歯を食いしばった。
記憶の中にある、1年前にこの町の地下で見た戦闘端末。
確かにそれが、町の東と西の端、そして南端の丘の上に、出現していた。
「まだ映像が続いています!」
店先からのゼゼの呼びかけで、二人は即座に店内に戻る。
やはりテレビでは、ビートルジュースが更に言葉を紡いでいた。

『さて、これらが地下から出現しているのを見た奴もいる筈だ。それに巨像を近くから見れる奴は、よく見てみるといい。アレの身体の表面に、見たくないものがあるだろう?』
そう言って、ビートルジュースは笑顔で頷く。
『そう、あの巨像はリーバードだと思ってくれて構わない』

クロウは目を細める。
ビートルジュースの言っている内容から、『見たくないもの』とは即ち、戦闘端末の各所にあるリーバードの瞳であることが察せられた。
嫌な予感が高まってくる。

『さて、ここで朗報だ。これから行うゲームに、アレキサンダー・マグナクス市長は賛同してくれた。盛大な拍手を送ってくれ!』
そう言うと、ビートルジュースはわざとらしく両手でパチパチと拍手を行った。
『しかしだ。市長は賛同する代わりに、自分と家族はゲームの参加者から外して欲しいと言ってきた。俺は喜んでそれに合意したとも。だから彼は、現在家族と共にバカンスの真っ最中だ。丁度今、空からこの町を眺めていることと思う』
ビートルジュースがそう言うと、再びカメラが切り替わる。
『そう…こんな風に、な』
今度は、プリズナの町の上空を映したカメラの様だ。画面の下方に町の遠景が見える。
そして、画面の中央には豪華な装飾の施された飛空船が飛んでいるのが見えた。

「市長…マザーの協力の要請を断ったという話でしたが…」
「初めから奴らの側だったってことか」
ゼゼの言葉に、スティーブが不愉快そうに舌打ちしながら返す。
「…これで、市民の混乱を収める人はいなくなりましたね」
ゼゼが、眼を細めながらそう分析した。


「馬鹿な…話が違うぞ…!!」
飛空船に乗っていた当のアレキサンダー・マグナクス市長は、モニターに映った自分の今乗っている飛空船を見て、狼狽えを抑えられなかった。
背後にいる、妻と今年で10歳になる息子を横目で見る。彼らも不安で自分を見つめていた。
今この船に乗っているのは自分と家族を踏めた三人と、パイロットの4人だ。
シートに座っているパイロットの方も声こそ出さないが、不安げにこちらをチラチラと見ている。
「何故、私達の話を持ち出すのだ…ゴースト…?」


『プリズナの町の住民よ。一つ聞きたい。これから行うのは、大事なゲームだ。それも、このプリズナの市民全員が参加する、大事な大事なゲームなんだ。それなのに、市民の代表たる市長が不参加表明だとさ。どう思う?自分だけ降りるなんて、つまらないと思わないか?俺は思うね。ナンセンスだ』
笑みを浮かべて、ビートルジュースはそう続けた。
『そこでだ。南にいる巨像を見てくれ』
そしてカメラは、町の南端にいる巨像を映し出した。

その巨像の頭部が、発光した。

『さて諸君、先に言っておく、あの飛空船には4人の人間が乗っている。それを念頭に置いて、ここから先を見てくれたまえ』

「おい、まさか…」
スティーブが、発光する巨像の頭部の映像を見てそう呟く。
クロウはただ、眼を見開いて映像を見つめていた。
発言しない他の者達も、同様に映像から目が離せない。


そして、巨像の頭部からレーザーが連続して発射され、その『4本』のレーザーは次々に、飛空船へと殺到していく。


「馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!ゴーストオオオオオォォォォォ!!!」
絞り出すようなその声が、アレキサンダー・マグナクス市長の末期の断末魔だった。

そして、町を照らすような大規模な閃光と共に、飛空船は爆発炎上した。

『ヒャハハハハハハハハハ!!ハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハ!!!』
爆発し、墜落していく飛空船を眺めてビートルジュースが笑う。
一頻り笑い終えると、彼は漸く言った。
『さて、見てたなプリズナの町の諸君。あの巨像だけじゃない、東と北の巨像も全て、この町の住民の生体反応に照準を合わせている。つまり…市長の様に目を盗んで逃げようとしても無駄ってことだ。それは肝に銘じておいてくれ』

その場の全員が絶句せざるを得なかった。
やがてポツリと、ケインが言う。
「おい…今のは現実の出来事か…?」
「爆発音は外からも聞こえてただろ。間違いない」
スティーブもそう言葉を返すのがやっとだった。そんな中。
「全員、落ち着きましょう。ああいう事をする男だと、警察署長の映像からも既に分かっていた筈です」
「そうだな…ここまでとは思わなかったが…!!」
冷静にそう言葉を紡ぐゼゼと、それに怒気を含んだ相槌を打つクロウ。
スティーブも頷きながらも、残りの三人を気に掛ける。
外から来た彼らとスティーブはそれで冷静になれたが、元々この町にいた三人の方が、今の光景はショックだったからだ。
そんな彼らの状態を他所に、ビートルジュースは話を続けていった。

『そしてだ!ここからが重要だぞ?今から2時間後…3体の巨像は、この町の生体反応全てに向けて、攻撃を開始する。この意味が、分かるな?』

スティーブの耳に、近くの民家から悲鳴が聞こえた気がした。

『おっと、話は最後まで聞けよ?俺もただ虐殺をしたいわけじゃない。ゲームの肝心な部分はここからだ』
そう言って一泊を置くと、ビートルジュースは人差し指を立て、画面に見せつける。
『一つだけ…いいか、一つだけ、3体の巨像のロックオンから逃れる術がある。これが肝心な所だ。くれぐれも、聞き流すなよ』

そう言うと、ビートルジュースは大きく息を吸い。

『自由にしろ』

「何…何を、言ってる…?」
クロウがやっとそう言葉を紡いだ。それに賛同するように、ケインやジャックもただ頷く。
ゼゼやミラも同様に、顔には疑問符を浮かべていた。

だがスティーブだけは、その言葉の意味を理解し、戦慄する。

ビートルジュースの言葉は、尚も続いた。

『どういう意味かって?言葉通りだ。何をしてもいい。遊べ、食え、歌え、愛せ、殺せ。何でもいい。周りのことなど考えず、理性のタガを外せ』

『そうして2時間、自由に過ごした奴だけが、生き残る。そういうゲームだ』

「い、一体…何を言ってるの…!!」
漸く絞り出すように、ジャックがそう言葉を紡ぐ。
そんな中、当のビートルジュースは尚も、その顔の笑みを絶やさなかった。

『まず初めに、俺からのサービスだ。感謝してくれ』

そう彼が言った瞬間、画面は警察署に切り替わる。

「!!?」
その画面を見た瞬間、驚愕、そして納得と共にスティーブは行動に移っていた。
携帯を取り出し、昨日遭遇した刑事――アクセル・ローズウッドの番号にかける。
「おい、早く…出ろ、出ろ、出ろ、出ろ…!!」
だが、コール音が鳴ったまま、相手が出る様子は無い。

そして、画面では――


警察署から閃光が迸り、轟音と共に炎が、全ての窓から噴き出ていた。


「!!?」

呆然としたまま、スティーブが携帯を取り落とす。

『今何が起こったか、分かるよな?』

店内に居る者達が事態を飲み込む前に、画面はビートルジュースの方を映していた。

『これで、自由だ。だろ?』

そして、彼は心底楽しそうに、最後の言葉を高らかに告げる。

『さぁ、テレビの前の諸君。この2時間、存分に楽しめ!!』
この言葉と共に、テレビは元の砂嵐へと戻っていた。

かに見えたが。

『おっと、追伸だ』
再び、画面にゴーストの姿が現れる。
その顔に、再び笑みが刻まれた。
『このゲームをぶち壊すつもりの奴が居たら、一つ忠告しておくぜ。町を囲む3体の巨像は、1体でも攻撃されたと判断すれば、そこで即座に町への攻撃を開始する』


今度は、クロウが目を見開く。
今まさに、ゴーストの言う通り、2時間のうちにあの戦闘端末を破壊する術を考えていたからだ。
とはいえ、もし自分が破壊しようと行動に出れば、ゴーストが黙っている筈の無いことは分かっていた。
しかし。
「…これで、単独での破壊は無理になったな」
距離を考えると、戦闘端末1機を破壊できても、残りの2機が攻撃を開始してしまえば、町への被害は免れない。


『そして追伸その二』
ゴーストがしばらくの沈黙の後に言葉を紡ぐ。

テレビを見ていた一同は、ゴーストが今度は何を言い出すのか、固唾を呑んで見守っていた。

『そろそろいいぞ』

『目覚めろ、リヴァイアサン』

その言葉が響いた瞬間、映像は今度こそ砂嵐に戻っていた。


全員が全員、考えを巡らせていたせいで、その場には沈黙が下りていた。
「…親父、どうしたの?」
そんな中で、ジャックは砂嵐となったテレビを呆然と見つめるケインの様子に何かを感じ取る。
「いや、でも、まさか…レナード…?」
ケインは、かろうじてそう口にしただけだった。
「…あのゴースト…知り合いだったか?」
「とても信じられねぇ、いや信じたくねぇが…あの声、それにあの顔のタトゥーのある側を隠したら…そうとしか思えなくなってきたんだ…!」
ケインに問いを投げたクロウも、今しがた観た映像を思い返す。
「よく似ていたが、教会で会った時と声や顔かたちが違うと言われたら…そう思えてくる」
そう言葉を紡ぐクロウ。だが、そんな彼の思考を遮る様に、ゼゼが言葉を紡いだ。
「ゴーストの正体についての検討は後にしましょう。今は一分一秒でも町の人々の命がかかってます」
彼女の言葉に、クロウはハッとして頷いた。
「ミラージュ、貴方と私で2体は倒せます。ですが、どうやらあのゴーストの話では、1体を攻撃すると残りの端末が攻撃を開始してしまう」
「つまり…3体同時に一撃で仕留める必要があるということか」
ゼゼが頷く。しかしその表情は暗かった。
単純に一人足りないのだ。戦闘端末を一撃で破壊できる力を持つ者が、ゼゼとクロウ以外に。

一瞬、クロウはミラの方に視線を向けそうになったが、辛うじて思いとどまった。

それにそれだけでなく、クロウの方もアーマーの無い今の状態では、一撃で戦闘端末を破壊できるかは怪しい所だと言えた。
「スティーブ・ハント、貴方の方に案は…」
ゼゼが視線を向けた先にいるスティーブは、考えに沈んでいる。

「目覚めろ…リヴァイアサン…?」
ビートルジュースが映像で最後に言っていた言葉が、引っかかるのだ。
いや、引っかかるどころの話ではない。自分の推測通りだとすれば、奴の言っている『リヴァイアサン』とは――

そこまで考えていた瞬間、取り落として床に落ちていたスティーブの携帯が鳴った。

スティーブは思考を続けながら、携帯を拾って耳に当てる。
「誰だ?」
「俺だ」

電話から響いた声は、レオン・トラヴァースからのものだった。

「テレビ、観たか?」
「観たからかけたんだ」
スティーブの問いに即答するレオン。
「今俺は、病院を退院してホテルに戻ってる。戻った途端この有様だ」
「ホテルに居るのか」
スティーブは顔を上げ、クロウとゼゼの方を見た。送話口を押さえて、彼はゼゼの方に呼びかける。
「レオン・トラヴァースだ。ホテルに居るらしい」
「!でしたら、アーマーを取ってきてもらいたいですね」
スティーブの言葉に、クロウを一瞥しながらゼゼが言う。
彼女の言葉を頭に入れつつ、スティーブは今の状況と、自分達がどう動けばいいかを思考した。

「よし、レオン、聞いてくれ。こうしよう」
言いつつ、クロウとゼゼの方を見る。二人も固唾を呑んでスティーブの様子を窺っていた。

「俺とクロウ・エリュシオンがそっちに向かう。お前はすぐ出れるように支度してくれ。そっちに着いたら、全員で打って出る」
言いつつ、スティーブはゼゼの方へ視線を向ける。
「ゼゼ、お前もあの巨像を壊せるって話だが、具体的にどうやってだ?」
「今は説明してる時間が無いですが…これで察して頂けると」
言いつつ、ゼゼは自分の額にあるリーバードの瞳を指差した。
スティーブは一瞬、疑問の表情を浮かべたが、それでも彼は頷く。
「よし、お前は町に出て、あの巨像に異変が無いかどうか観察しててくれ。何か分かったら連絡をくれ」
「承知しました」
そしてスティーブは、クロウの方に視線を向けた。
「よし、行くぞ」

「あのっ…!」
店を出ていこうとするスティーブ、クロウ、ゼゼ達の方へ、ミラの声が響いた。
クロウが振り向くのを待ってから、彼女は言った。
「私も、行きます…!」
「しかし…」
「何のためにだ?」
ミラの言葉に言い淀むクロウに対して、スティーブが低い声で問う。
「私は…」
「言っておくが、あの男…ビートルジュースを止めようとか考えるな。お前の身体を改造したのは、他ならぬあいつらだ。反逆された時の対策を考えていない筈が無い」
スティーブの指摘に、ミラはハッとなった。
自分が力を使えば、何とかできる自信は少なからずあったのだが、スティーブの指摘した点は全く考えていなかったのだ。
「ミラ・クラウス。お前も力があるから何かしたいと考えるのは分かる。だが、ここでこの店を守ってるのが一番良い選択だ。それで俺達も安心して行動できる」
スティーブの説得に、ミラは一瞬納得しかけたのだが。
「あの、でも…パメラさんが、心配で…」
ミラの出した聞き慣れぬ名前に、スティーブもクロウも疑問符を浮かべる。
「パメラ?」
「今この子を引き取ってくれてる人だ。商店街の方でパン屋をやってる」
カウンターの奥に居るケインがそう補足した。
「そのパン屋はここから遠いのか?」
「そうだな…歩きで10分弱ってとこだ」
ケインの言葉に、一瞬スティーブは思考した。
だが、答えが出ない。自分達は巨像とビートルジュースの相手で手一杯だ。誰をここに残し、誰を行かせるか。
スティーブが答える前に、ケインが言葉を紡いでいた。
「それについてはこっちで考える。あんた達は、もう行ってくれ。時間が無い」
「いいのか?」
ケインはスティーブの確認に、ただ頷いた。
「じゃあ任すぞ…!」
言いつつ、スティーブとゼゼは店の外へ向かう。クロウはその前に、ミラに視線を向けた。
「ミラ・クラウス。もうお前が戦う必要も、傷つく必要も無い。俺達が、必ずこの町を救う…!!」
そう言い残し、クロウも外へ出る。
その背中を、ミラとジャックはずっと見ていた。


そして、店に出たスティーブ、クロウ、ゼゼの三人は走り出した。
「ミラージュ、貴方のアーマーは私の部屋にあります…!」
「部屋番号は俺が知ってる。とっとと行くぞ!」
「ああ!!」
ゼゼは町の中心部まで行き、三体の巨像に変化が無いかどうか見極めるため。スティーブとクロウは、クロウの装備を取り戻して巨像を止めるために、各々走り出した。


スティーブの予想した通り、町は少しばかり混乱状態となっていた。
外に出て、町の外側に鎮座する巨像を見つめる人々の姿がそこかしこに見える。
だが、ここから事態が悪化するのはすぐだとスティーブは確信していた。
警察署が爆破される映像が町中に流されたのだ。もういつ暴動に発展してもおかしくない。
それはクロウも気にかかっていたようで、傍らを走る彼も周囲を警戒している様子である。

そんな中、二人がホテルに向けて走り続けている最中だった。

「伏せろっ!!」

傍らのクロウから声が飛ぶ。
スティーブはそれを聞いたと同時に、その場から地面を蹴ってその場に伏せた。
クロウの方は、いつのまにか片手にナイフを握り、それを左前方の2階建て民家の屋根の上へと投げつける。
投げ放たれたナイフが、一直線に屋根の上へと到達した瞬間。

そのナイフは、空中で静止した。

クロウは、空中で静止するナイフを睨む。
「その殺気、覚えがあるぞ…!!」

光学迷彩が解け、クロウの投げつけたナイフをキャッチした手から、紫のアーマーを纏ったファフニールの姿が現れる。

肩部には見たことのない装備が見えた。後ろ側に厚い円盤状の物体があり、そこから砲身が伸びている。
ファフニールは一言も言葉を発さず、片腕に取り付けた機関銃をクロウとスティーブに向けた。
「装備を整えるまで待ってはくれなさそうだな。俺達の居場所もバレてたか…!!」
「それなら俺が殺気に気づく前に仕掛けていた筈だ。俺達が動くのを待っていたんだろう」
スティーブの言葉にそう答えると、クロウは刀を構える。

「!!」

だが次の瞬間、何かに気づいたファフニールが背中のブースターを吹かし、その場から横へと弾くように移動した。

そしてけたたましい発射音と共に、それまでファフニールのいた辺りの空間を無数の銃弾が通過する。

スティーブは、大通りを挟んで向かい側――銃弾の発射元と思われる方へと視線を向けた。

そこに、片腕に回転式機関銃を装備したレオン・トラヴァースが立っていた。

「お前、ホテルに居たんじゃないのか!?」
「悪いな。ブラフだ」
笑みを浮かべながらレオンがそう言い切る。
そして彼は、自分の方を見下ろすファフニールの方へ視線を向けた。
「ここからは俺のリベンジのターンだ。お前らはとっとと準備に行け」
「しかし…」
「今はそうするしかない。行くぞ…!!」
言い淀むクロウを促し、スティーブはホテルの方へ向かう。
しかし一瞬だけ足を止め、スティーブは再度レオンの方へ顔を向けた。
「おい、今は昼間だぞ!そこかしこに民間人がいる!!重火器の使用は…」
「言いたいことは分かるが、悪いな。出し惜しみはできん相手だ」
明らかに殺傷能力の高過ぎる武器を装備したレオンに釘を刺そうとしたスティーブだが、期待した返事ではない。これは早急にクロウの装備を手に入れて加勢させるしかないか、とスティーブは判断した。
「仕方ねぇ、だが誰も巻き添えにするなよ!!」
「保証はできんが努力はするさ」
視線をファフニールから外さぬまま、レオンはそう答える。
やがてスティーブは再度走り出した。クロウもレオンの方にしばし視線を向けていたが、やがてスティーブを追って走り出す。

「さて、お前が覚えてなかろうが関係ない。俺の友の…弔いだ!!」
言いつつ、レオンは片腕の機関銃をファフニールに向けた。
ファフニールは舌打ちすると、そこでやっとレオンへと視線を向ける。

「弔いに意味など無い」


東の山の中腹に、ジョン・クラフトの家はあった。
北と東西を山に囲まれたプリズナの町の居住者の中でも、山中に家を建てているのは彼だけだ。
尤も、北の山の中腹に建ったと噂された館を除けばの話だが。
今朝病院から帰ってきた彼は今、ビートルジュースの放送を無言で見つめていた。
やがてテレビが砂嵐だけになると、彼はテレビを消して椅子から立ち上がる。
そして家の近くにある納屋へ行くと、そこからスコップとバールを持って出てきた。

やがて彼は、家の近くの地面を、黙々と掘り始めた。

何も言わず、ただただ延々と、ずっと集中して彼は掘り続ける。
その深さはやがて1メートル、2メートル、3メートルを超え、町からどんな音が聞こえてこようと、意識を乱さぬままずっと、掘り続けた。

やがて、スコップが何かにぶつかった。

ぶつかったものの表面の土を払い、彼はそれが目的のものであることを確認する。
そして、彼はその周りの土を掘ると、目的のものを掘り出した。

それは、大きな木箱だった。

蓋には四方に釘が打ちつけられている。
木箱を地上まで掘り出すと、その蓋を彼はバールでこじ開けた。

そして、木箱の中身を彼は見据える。

その中にある大小様々な、兵器の数々を。


最終更新:2019年05月12日 20:55