結局、病院に電話が繋がったのは、全てが手遅れになってからだった。
遺体を引き渡し、警察に事情聴取され、スティーブがホテルに戻ったのは朝方近くになってからだった。
まだ太陽は出てきておらず、暗い道をホテルまで帰り着く。
レベッカもまた意識を失ったままだったため、病院に搬送されていた。
クロウ・エリュシオンやレオン・トラヴァースには会えておらず、スティーブの方から連絡をつけようという気には到底なれなかった。
詰まる所、彼は一人だった。
「…」
前に部屋に来たのが随分前のように感じる。実際には丸一日しか経っていないのは分かっていたが。
ベッドも、テーブルも椅子も、部屋の隅に置かれたソファも、何も変わってはいなかった。
変わっていたのはスティーブ自身の方だったのかもしれない。
とにかく疲れ、全身が鉛のように重かった。
洗面所へ行くもシャワーを浴びる気力すらなく、スティーブは洗面台で顔を洗う。
何も考えたくないのに、色々な考えが渦巻いていた。
レイラとレベッカと、三人で過ごした時間が、幾度も頭の中に浮かび。
それを振り払うように、彼は幾度も水を己の顔に叩きつけた。
「…」
今すぐに暴れてしまいたい。室内の何もかもを打ち壊してしまいたい。そんな衝動を必死に抑える。
そんなことをしても何もならないと、目を瞑ってそう自分に言い聞かせた。
今の状態では頭が正常に働かない。寝よう。そう考え、彼は溜息を吐いた。
タオルで顔を拭うと、鏡を見る。
鏡に映った顔の片側に、幾何学模様のタトゥーが浮かんでいた。
最終更新:2019年09月08日 22:18