アットウィキロゴ
その日、エリス・ブラウン刑事は停車したパトカーの車内にいた。
時刻は午後9時を回っている。おまけに台風が上陸しようとしている気候。
サラリーマンなどの一般人ならば既に業務を終え、自宅に帰っている時刻である。
だが、刑事である彼女はそうは行かなかった。
「はぁ…」
今彼女は、パトカーの運転席で上司である警部を待っている。
本来ならば彼女も現場に行くべき状況なのだが、現場が狭いアパートである事から、このパトカーで待つ事となった。
バックミラーには、赤い照明を回している救急車が見える。
「何でこんな天気の日に犯罪が起きるのかしら…」
ガラスの外から強い風の吹く音が聞こえ、横殴りの雨がガラスに叩きつけられていた。

不意に彼女は、窓をコンコンと叩く音に気がついた。
外を見れば、警部が戻って来ており、窓の外からこちらを見ている。
窓を叩かれるまで気づかなかった辺り、少しボーっとしていたのかもしれない、と彼女は胸中で気を引き締めた。
エンジンを始動させ、窓を開ける。
「どうしました、警部?」
彼女の上司であるカーネル・ジョンソンは、僅かに疲労を滲ませた目で言った。
「無線を」
警部の言葉に応え、彼女は無線機を彼に渡す。
警部は無線のボタンを押すと、言った。
「被害者の遺体は収容。通報した第1発見者はショック状態で、救急車で搬送した。鑑識も大方の証拠を押収。現場の状況から一名の容疑者が浮かび上がった」
そこで言葉を切り、警部は言った。
「当該人物は現在逃走中。至急指名手配の要請と公道に非常線を頼む」
次の言葉で、エリス・ブラウンは驚愕せざるを得なかった。
何故なら、警部の言った重要参考人の名が、聞き覚えのあるものだったからだ。
更に言うなら、自分よりも警部の方が顔見知りだったと言っていい人物の名であった。
「容疑者の名はクロウ・エリュシオン。顔写真・個人情報等はそちらに資料がある筈だ。その他は署に戻って報告する」


最終更新:2012年01月22日 00:00