喉が渇く。
身体中が軋みを上げている。
口中には鉄の味しかしない。
視界はぼやけ、見上げれば木々の間から月の無い夜空が見える。
彼の周囲にはかつての仲間達が、身体中を血に染めて、倒れ付していた。
鮮やかな鮮血が、彼らを取り囲むように、地面を染めている。
それでも彼は立っていた。
片手には、酷使し続けてバチバチと異音を上げるビームサーベルを持ち。
その眼は、すぐ先にいる男に向けていた。
「見事だ、小僧。立ち上がってみせるとは」
男は、彼を見つめ、静かにそう言った。
「何故そこまでして闘う。ヘブンが、それほどの忠誠に応えるのか?」
彼は男を睨み、言った。
「ヘブンなど関係無い。お前は敵だ。だから斃す」
彼の応えに、男はほんの少し口元を歪めると、言う。
「名乗れ、小僧」
彼は震える手でビームサーベルを構えると、言った。
「ロックマン・ロード」
「ロックマン・ロード。気に入った。お前も刻め、私の名を」
そう言うと、男は傍らの地面に突き刺していた幅の広い大剣を抜き、ロックマン・ロードと名乗った者へ、その切っ先を向けた。
「ロックマン・シュミットの名を」
ロックマン・ロードは懸命に命令した。自分の身体に。
だが腕は上がらない。目の前の敵は、もうその得物を振り上げているというのに。
相手を懸命に睨みつけるが、身体は動いてくれない。
戦うだけの、空虚な人生だった。何も残さぬまま死ぬのかと、彼は思った。
「(まぁ、いいか。救いの無い世界だって、分かっていたのだから)」
全ての発端が、自然と彼の頭の中で甦る。
あの日、任務を終えて帰還したロックマン・ロードは、他の粛清官数人と共に早々にマザー・セラに呼び出された。
「ロード、招集がかかってるぞ」
「ああ、分かってる」
仲間の粛清官の声に、鏡の前で顔を洗っていたロードが答える。
彼は鏡に映った自分の顔を見た。人間で言えば20代前半といった年齢だろう顔には、疲労の跡がありありと見て取れる。短く切られた銀髪は少し汚れていた。
疲労が少しでも軽減される事を期待して顔を洗ったが、少しも効果は無いようだ。
そして、彼はマザー・セラに召集された部屋へと向かった。
「この中にはつい今しがた任務を終えた者もいると思うが、今からお主達に新たな任務を与える」
ホログラムに映し出されたマザー・セラの前で横に整列し、跪いた粛清官達。ロードは彼らの顔を見た。これまで共に任務をこなした者もいれば、そうでない者もいる。
窓も無い白い壁と床の室内に並んだのは6人。全員が一等粛清官だった。
やがて褐色で緑の短髪、赤い瞳の小柄な少女の姿をしたマザー・セラのホログラムは、粛清官たちの前に立つと、先程の言葉を皮切りに任務説明を始めた。
「今からおよそ10時間前、地上で任務遂行中だった粛清官5名が姿を消した。当初はイレギュラーによる奇襲かと思われたが、1時間後に1名がヘブンの施設に逃げ延びた。その者はそれから間も無く生命活動を停止させたが、その証言によれば…どうやら3名の粛清官がイレギュラー化し、1名を殺害、1名に重傷を負わせて逃走した様だ」
この時、ロードは任務を終えたばかりだったせいか、面倒だという思いが大半を占めていた。
その為か、ここまでの説明を聞き、「早く終わらせよう」と思っていたのは事実だ。
だが、その説明の続きを聞き、彼は一気に気を引き締める事となる。
「6時間前に4名の一等粛清官と2名の二等粛清官を派遣した。が、その全員が4時間前に消息を絶った。我々はこの事態を重く見て、新たにお主達6名を派遣する事を決定した。以上だ」
続けてマザー・セラは「質問はあるか」と全員の顔に視線を走らせ、言った。
そこで、一人の粛清官が腕を上げ、言った。
「イレギュラー化した粛清官の名を訊いてもよろしいでしょうか、マザー」
その質問に、セラは傍らに待機していたジジへと視線を向ける。
セラと同じ褐色の肌に腰まで伸ばされた緑の長髪、眼鏡をかけ、赤い瞳と額に第三の瞳を持つ高位のリーバード・ジジは、片手に持った端末で電子画面を展開すると、粛清官の質問に答えた。
「イレギュラー化したのは…『ロックマン・シュミット』、『ロックマン・カーティス』、『ロックマン・エナミス』の三名です」
ジジの言葉に、数名の粛清官が息を呑むのがロードには分かった。
「詳しい説明はお主達の電子端末に送る。それを読め。以上だ」
どうやら受け付ける質問は一つだけだったらしい。ジジの説明が終わると、セラはそう言った。
その言葉を受け、粛清官達は弾かれた様に部屋を出て行った。
シャトルポートへと向かうエレベーターの中、一人の粛清官が口を開く。
「やばいな…」
その言葉に、近くにいた粛清官が答えた。
「ああ、やばい」
「イレギュラー化した粛清官、そんなにやばい奴なのか」
電子端末で任務の情報を眺めていたロックマン・ロードは、そう訊いた。
最初に口を開いた粛清官が答える。どうやら彼は誰かに話したかったらしい。
「ロックマン・シュミットな…奴は教官として何人もの粛清官に剣を教えてた。この中にも彼に教わったという奴、いるんじゃないか?」
「他の二人はともかく、おそらくロックマン・シュミットという名は結構な数の粛清官が聞き覚えがある筈だ」
「どちらにしろ、先に消息を絶った奴らの生存は絶望的だな」
彼らの話を聞きつつ、ロードは任務の詳細を電子端末で眺め続けた。
だが、ある項目を見た瞬間、彼の思考は中断させられる事となる。
それは、先にイレギュラーの処分に向かい、消息を絶った粛清官達のリストだった。
■一等粛清官
ロックマン・エッジ
ロックマン・クレイス
ロックマン・ミラージュ
ロックマン・ブレイク
■二等粛清官
ロックマン・ライン
ロックマン・シード
ロードの様子に、近くにいた粛清官が声をかけた。
「おい、どうした?」
「いや…見知った名を見つけただけだ」
その粛清官がロードの電子端末を見て、心配そうな声をかける。
「消息を絶った奴らの中にか…」
「ああ。以前何度か任務で一緒だった」
ロックマン・ミラージュ。彼が既に死んでいる可能性が高い事を知り、一瞬ロードは胸中で呆然となったが、次の瞬間には益々気を引き締めていた。
やがて地上へと向かう船に乗り、船は出発した。
ロクに休む暇さえ貰えずに受けた命令。ロードは疲労を感じつつも、船内に座る他の粛清官達を眺めた。
他の5人の粛清官。まだ一等になったばかりで、明らかに若い者もいる。そうかと思えば既に幾度も任務をこなしたベテランもいた。
リーダーとなったのはロックマン・グリップという粛清官で、現状の戦力と相手の戦力をすばやく分析し、作戦を立案する能力に長けている男だった。
そんな彼が、まず最初に殺された。
先に部隊が行方不明となった森。そこに入ってしばらくしてからの出来事だった。
木々の間から突如飛んできた刃が、ロックマン・グリップの頭を薙ぐ。全員がそれに気づいたのは、続けて四方八方から攻撃が飛んできた後だった。
悲鳴。怒号。
その中で次にロードが見た光景は、多数の木々と共に高出力の荷電粒子砲に飲み込まれる仲間のうち二人の姿だった。
その時点でロードは撤退を決め、残った二人と共に急ぎ脱出しようとする。だが、もはや遅すぎる判断だった。
最初にロックマン・グリップの首を飛ばしたカッターがロードの背中を掠め、傍にいた粛清官の胸に直撃し、そのまま木に磔にする。
最後に残ったのは負傷したロードと、まだ一等になったばかりの粛清官だった。
敵の姿すらまだ一人も視認できない状況で、4人もの粛清官が瞬く間に命を奪われる。そんな光景を、背中からの激痛と共にロードは徐々に実感する。
「ここは食い止める。お前だけでも…」
最後まで言えなかった。
森の奥から突如出現した影が、手にした細長い棍棒のようなもので、新米の一等粛清官を串刺しにしていたからだ。
無造作に投げ捨てられる骸と化した粛清官の身体。それを気にも留めず、その影は腕を振り上げ、その棍棒をロードに叩きつける。
悲鳴すら上げられぬまま、ロードは背後の木に叩きつけられた。背中にできた傷を抉るように、枝が突き刺さる。
それでも咄嗟にビームサーベルを起動し、防ぐ事はできた。
そして今の一瞬で、相手の使っていた武器が鉄製の大剣だった事もロードは把握した。
だがたったそれだけだった。5人の粛清官を犠牲にして手にできた情報は。
叩きつけられた木から自然と体が離れ、ロードは地面に吸い寄せられるように倒れ付す。
だが、彼は立ち上がった。そして目の前の影を見た。
月も見えない森の中だったが、既に暗闇に眼が慣れていたため、相手の顔も把握できた。
ヘブンの粛清官が着用する白いアーマー。ただし、その全身に血痕と傷跡が散見される。
片手には鉄製の幅の広い大剣。その顔には深い皺が刻まれている。おそらく、年齢は40代を超え、50代半ばと言ったところだろう。頭髪は短く刈り揃えられており、口の周りには髭が生えていた。
その眼は、不気味なほどの鋭さを纏っている。
「見事だ、小僧。立ち上がってみせるとは」
「ロックマン・ロード。気に入った。お前も刻め、私の名を」
目の前の大男――ロックマン・シュミットが、腕を振り上げる。
「ロックマン・シュミットの名を」
回避か、反撃か。どちらかを行おうとする意思とは裏腹に、身体は動かない。
「(終わるのか?俺は、ここで…)」
そして、今にもロックマン・シュミットが腕を振り下ろそうとしていた時。
突如飛び込んできた影が、シュミットへ一撃を見舞った。
が、その一撃は直前で察知し、構えを変えたシュミットの大剣に阻まれる。
影は次の瞬間に飛来してきた大型のカッターを避けると、再びシュミットに飛びかかり、鍔迫り合いの形となった。
そこでようやく、ロードは飛び込んできた影の正体を見た。
「おやおや、あのまま気絶していれば良かったものを」
シュミットが挑発するように呟く。影は手にしたビームサーベルに力を込めたようだったが、シュミットの腕は全く押されはしなかった。
「なぁ、ロックマン・ミラージュ?」
今のロードや目の前にいるシュミットと同じく、ヘブンの粛清官が着用する白いアーマー。
ロードと同じ位の20代前半の年齢。彼よりも鋭い顔立ちをした、黒い短髪の男。
ロードは彼に声をかけようとしたが、その途端背中の傷が激しく痛み、声を出せなかった。
「お前達、手を出すなよ」
シュミットは背後の森の中へ向けて、そう声を上げた。
そして、ミラージュのビームサーベルを弾くと地面を蹴り、一旦後ろへと退いた。
だが、ロックマン・ミラージュは止まらなかった。
後ろへと退いたシュミットへ向けてビームサーベルを振る。だが一瞬遅く、彼の身体に傷一つ付ける事無くビームサーベルは空を掻いた。
そこでできた隙を、シュミットは見逃さない。即座に地面を蹴ると、サーベルを振ったばかりのミラージュの腹を蹴り上げた。
「がはっ!!?」
そんな様子を、ロードは冷静に見つめていた。そして彼は、ミラージュがいつもと様子が違う事がすぐに分かった。
いつもならば自分よりも何倍も冷静に行動する筈のロックマン・ミラージュが、明らかに焦っていたからだ。今も、無理に追撃を行おうとして反撃を食らっている。
やがて地面に倒れ付した彼を、シュミットは見下ろした。
「言った筈だ。刃に感情を持たせれば、必ず隙ができると」
いつのまにか、シュミットの両手に武器は握られていない。一旦ミラージュから離れた時、地面に刺していたのだろう、彼の遥か後方の地面に大剣は突き刺さっていた。
「今のお前など、素手でもこの通りだ」
呻き声を上げながら、ミラージュがビームサーベルを取り落とし、地面に両手を着く。だがその光景を見つめるロードには、若干の心理的余裕が生まれていた。
死んだと思われたミラージュが生きて現れた為だろう。
そして彼は冷静にシュミットの様子を眺める。彼は今、ミラージュに視線を向けており、こちらに注意を払っている様子は無い。既に戦闘不能だと思っているのだろう。
先程傷を負った背中からは定期的に痛みが襲ってくる。おそらく先程のカッターはアーマーを切り裂き、その奥の生身にまで達している筈だ。
ロードは、まだ自分がビームサーベルを握れている事に感謝した。
とはいえ、この状態でも不用意に斬りかかれば迎撃され、即座に斬り捨てられる事は目に見えている。
彼は覚悟を決めた。
「残念だ、ロックマン・ミラージュ。私自ら一から剣を教えたお前が、私に付いて来ないとは」
シュミットはミラージュを見下ろし、呟く。
「先程はすぐにお前を殺す事もできた。なのに私は殺さなかった。分かるだろう、私の情けが。それでも私の意思を汲み取る気は無いか」
ミラージュはしばらく息を整えていたが、やがてはっきりとした声で言った。
「命を賭けるに足る、己の信念を見出せ」
ミラージュの言葉に、シュミットは僅かに目を細めると、言う。
「覚えているぞ。かつて私がお前に言った言葉だ。だが…お前の見出した信念が、これか」
やがてミラージュは顔を上げた。シュミットへ向けられているせいで、ロードにはその顔が見えないが、はっきり発せられたその声は全て聞き取れた。
「俺の存在意義は、ヘブンを守る事だ。俺は…それに従う」
しばらく、シュミットはミラージュの顔を睨んでいた。
ミラージュもそうだっただろう。
「…救い難い奴だ、ロックマン・ミラージュ」
溜め息と共に、シュミットはそう呟いた。
「せめてもの情けだ。やはり貴様は、私がここで葬ってやろう」
そう言うと、彼は背後の地面に刺してある大剣を引き抜くため、振り返った。
その時を待っていた。
振り向いたとはいえ、こちらに注意を向けているのは変わらない。だがロードは、注意が自分には向いていない事を利用した。
スイッチが切れていたビームサーベルを起動させ、それを――投げつけた。
ビームサーベルが空気を切り裂き、ロックマン・シュミットへ向けて飛んでいく。
「ぬっ!!?」
その音を察知したシュミットは、振り向きながら体勢を崩す。
切っ先が僅かに彼の左肩を掠め、背後の木へと突き刺さった。
「ミラージュ!!」
激痛に耐えながら身体を動かし、ロードは吼えた。
その意図を察し、ミラージュは振り向くと同時に自身の持っていたビームサーベルのスイッチを切ると、ロードへと投げ渡す。
ロードはそれを受け取って起動させると、ミラージュの肩を担ぎ上げた。
そして、力いっぱい引き上げて立たせると、見当をつけておいた森の入口の方角へ向けて一気に走り出す。
途端に空気を斬り裂く音が聞こえた。
「っ!!」
背後から飛んできた、先程ロックマン・グリップを仕留めたカッター。ロードは振り返り様に、それをビームサーベルで叩き落した。
同時に、森の奥に一瞬閃光が走るのをロードは見て取る。幸いにも、これは肩を担いでいるミラージュも見ていたようだ。
「伏せろ!!」
どちらが先に言ったか。それを考える暇も無いまま、ロードとミラージュは足を縺れさせながら地面に伏す。
途端に、彼らの真上を極太の荷電粒子ビーム砲が駆け抜けていった。
だが、それを避けたからと安心する暇など無い。
ロードは地面に伏せた時、自分達の方へロックマン・シュミットが走ってくるのを感じ取った。
即座にロードは、近くの木へ向けてビームサーベルを薙ぎ払う。
「何!?」
その行為に対し、シュミットが声を上げた。木は熱で溶解し、根元から倒れ始める。それを見て取ったロードは再びミラージュを担ぎ上げ、走り出した。
背後を一瞥すると、倒れた木に一瞬道を阻まれたシュミットが立ち往生しているのが見て取れる。
後の問題はカッター。だがこれは周囲に気を配り続けていれば対処できる。荷電粒子砲は先程放たれたので再チャージには時間がかかるだろう。その間に姿を消す必要があると、ロードは分析した。
それから森を抜けるまで、ロードもミラージュも生きた心地がまるでしなかった。
倒れた木に足をかけ、ロックマン・シュミットは二人の影が走り去った方向を見つめた。
「ロックマン・ロードか…」
右手には大剣が握られ、左手には先程ロードが投げたビームサーベルを持っている。
そんな彼の背中に言葉を投げかける者があった。
「逃がしたのか」
森の奥から響いた声。だが、その声はシュミットの方へ近づいていく気配は無かった
シュミットは振り返り、その声に向かって頷く。
「エナミスは?」
「荷電粒子砲のエネルギーがとうとう尽きた様だ。最後の一発が誰にも当たらなかったとは、あいつも運が無いな」
「そうか」
向き直り、その声の方へ向かって歩く。
「とりあえず、死んだ粛清官の装備を貰っていくぞ。このままではジリ貧だ」
「これからどうする?」
声のする方とは別の方向の森の奥から、一つの影が歩いてきた。その影は、シュミットよりも大分背が低い。
その影を一瞥しつつ、シュミットは言った。
「ここから北に30キロ。そこにある施設に行く」
「徒歩では難しい距離だな。デコイに移動手段でも借りる他は無いか。そこに何がある?」
シュミットは一泊の間を置くと、言った。
「ヘブンの施設だ。普通の施設とは、少し違う」
森の奥から響く声は、呆れた様子でシュミットに言う。
「とりあえずシュミット、お前さんはその酷いアーマーを何とかしろ。粛清官にもデコイにも目立ち過ぎる」
シュミットは苦笑しつつ答えた。
「白いアーマーという時点で、目立つのは変わらなかろう。まぁいい、しばらく移動した後、川沿いで休もう」
そこまで言ってから、シュミットは小柄な影の肩に手を乗せ、それから森の奥に視線を巡らせてから、言った。
「よくやってくれた。カーティス、エナミス」
数時間後、ヘブン。
「以上が報告内容となります」
跪き、ロックマン・ロードとロックマン・ミラージュが順番に報告を行うと、それを見計らったジジが感情の無い声でそうマザー・セラに言った。
任務を伝えられた時とは違い、今回は直接マザー・セラが二人の前に立っている。
「一等粛清官が8人、二等粛清官が2人。僅か三人に、これだけの者達がやられるとはな」
ジジと同じく何の感情もない声で、セラはそう言った。
「イレギュラーは?」
セラの問いに、ジジが電子端末で情報を確認しつつ答える。
「つい1時間前まではエデンからの監視で居場所が特定できていましたが、その後姿を消しました。どうやら空から見えないように移動しているようです」
「粛清官達を相手にしたのが森の中だったのもエデンを警戒してか。あの三人はこちらの出方を熟知しておる様だな…厄介だ」
顎に手を当てて思案するセラ。やがて彼女はロードとミラージュに視線を向けると、言った。
「お主達、奴らと直接会ったのだろう?奴らの目的などが推測できるか?」
「いえ…」
「見当も付きません」
ロードとミラージュが口々に答える。
その答えに失望の色を隠そうともせず、不快感を含んだ声でセラは言った。
「分かった、もうよい。下がれ」
「死んだ奴らに一言も無し…か」
ロードは静かにそう呟く。胸中に、自然とロックマン・シュミットの言葉が甦る。
隣を歩くロックマン・ミラージュは相変わらず無言だ。
そんなミラージュに、ロードは言った。
「あのロックマン・シュミットに剣を教わったのか」
ミラージュは無表情で前を見据えたまま、答えた。
「ああ、殆ど全て。今の俺があるのはあの男のお陰と言っていい」
「なら、奴が何の目的で今動いているか、分かるか」
ミラージュはしばらく思案していた様子だったが、やがて言った。
「いや…分かるなら報告しただろう。正直、今は見当も付かない」
会話はそこで途切れた。そのまま二人は、応急処置で済ませていた傷を完全に修復する為、回復カプセルのある部屋へと向かった。
その数時間後、二人は再びマザーセラに呼び出される。
同時に、二人の耳に驚愕の情報が伝えられる事となった。
エデンが乗っ取られた、と。
最終更新:2012年01月29日 22:44