「やはりエデン内では下手に戦闘端末を使用する事もままならんか」
ロックマン・シュミットはそう呟いた。
周囲には斬り伏せられ、血塗れで倒れている者達がいる。
そこは管制室のような部屋だった。
エデン内の各所を監視するモニターが幾つも並べられ、キーボードと端末が幾つも置いてある部屋。
シュミットは振り向き、入口であるゲートへ呼びかける。
「済んだぞ。床が血で滑るから気をつけろ」
その言葉に反応し、ゲートが開く。
二人の人物が室内に入ってきた。
「ここまでは上手く行ったな」
「…本当にこうするしかなかったのか」
一人はシュミットと同じ位の壮年の男の声。もう一人はそれよりも大分若い声。
後者の言葉に、シュミットは言った。
「ああ。こうするしかなかった。お前も分かっていた筈だ。こいつらを殺さなければ、俺達が死ぬ事になると」
「殺そうと殺すまいといずれ、私達は死ぬ」
その言葉に、シュミットは僅かに目を細めると、言う。
「ああ、そうだな。だが…幾度も話し合った筈だ。我々が本当に使い捨てられるだけの存在なのか。それを確かめる為、こうして…ここにいるのだと」
シュミットの言葉に、ゆっくりと若い声の人物は頷く。
「納得したのなら、とっとと配置に付こうじゃないか。もうこの騒ぎはヘブンも感知している筈だ」
部屋に入ってきた、もう一人の壮年の男がそう言った。
その言葉に、シュミットは向き直ると、室内の端末のキーボードを叩き始める。
「待ってろ。エレベーターを起動する」
「死ぬのが怖いか」
壮年の男が、低い声でそう言った。
傍らにいた若い声の人物は、静かに頷く。
「そうさ。誰だって死にたくない。それを…ヘブンにも分からせてやるのさ」
「エデンとの通信が切れたのが30分前。この30分間は切断されていたエデンとの通信の復旧作業が迅速に進められた。そしてついさっき通信が回復、エデン内の監視カメラの映像が届き、今回の事態が露呈した」
再びロードとミラージュを呼び出したマザー・セラは、そう説明した。
数時間前に報告を行ったのと同じ、真っ白な部屋。今ここにロードとミラージュともう一人の粛清官が、マザー・セラの前に跪いている。
「何が映っていたのですか」
ロードの質問に、セラは相変わらずの無表情で答えた。
「ロックマン・シュミット。奴にエデン在住の職員が殺されていく映像だ」
セラの言葉に、ロードは頷いた。同時に、セラの傍らに立つジジからの、殺意を含んだ視線を感じる。説明中に割り込んで質問を行ったせいだろう。だがセラはそれは意に介さず、説明を続行した。
「奴らは既にエデンのシステムを掌握したと見ていい。復旧の後、およそ5分後に再びヘブンからの通信を受け付けなくなったからな。しかし…未だに奴らからは何の要求も出されてはいない」
ロードは説明を聞きながら、横に跪く二人を見た。
一人はロックマン・ミラージュ。あの死闘からたった数時間だ。まだ彼の顔には疲労の色が拭え切れないでいる。
もう一人はロックマン・フォート。ロードの知る名前の一等粛清官だったが、あまり付き合いは無かった。オールバックにした長い黒髪に、ミラージュほどではないものの、鋭い目。年齢はロードやミラージュよりも大分年上の様で、顎には無精髭が生えていた。当然ながら粛清官共通の白いアーマーを着けている。
「これ以上、事態が推移する前に、手を打つ必要がある。そこでだ、お主達に重要な任務を与える」
一拍置き、セラは改めて任務内容を言った。
「エデンのシステムを掌握されている現状では、粛清官の大部隊をエデンに派遣しても到着する前に撃墜されてしまうだろう。だから、まずお主らがエデンに潜入し、エデンのシステムを奪還するのだ」
セラはミラージュとロードにだけ視線を向け、言った。
「ロックマン・ロード、ロックマン・ミラージュ、お主らはシュミットの一派と戦い、生き残った。それがお主達を選んだ理由だ」
そしてロックマン・フォートに視線を向け、セラは言う。
「ロックマン・フォート。お主は潜入任務にかけては一等粛清官の中でも随一と聞いている。だからお主も加えるべきだとのジジの助言があったので選抜した。期待しているぞ」
「ハッ」
「シャトルポートにエデン行きのシャトルが控えている。それに乗れ。以上だ」
三人はやはり同じように返事をすると、次々と部屋から出て行った。それを確認し、セラも別の出口から部屋を後にする。
それを見送ったジジは、三人の粛清官が出て行ったゲートから廊下に出ると、廊下を歩くロックマン・フォートの背中へ向けて言った。
「ロックマン・フォート」
呼び止められたフォートは怪訝な表情で振り向くと、即座にジジへと近づく。
ジジはフォートが近づくのを待ってから、廊下の更に先を歩いていたロードとミラージュが角を曲がるのを一瞥すると、言った。
「あなたに極秘の任務を与えます」
『メインシステムに侵入した』
室内に響く声を、シュミットは腕を組み、目を瞑ったまま聞いている。
が、それを聞いた彼は、やがて口を開いた。
「分かっているな、エナミス。決してヘブンの奴らに気取られてはならない」
『分かってる』
エナミスと呼ばれた声の主は、あえて感情を押し殺したような声で答える。
微動だにしないまま、シュミットは言葉を紡ぎ続けた。
「セキュリティは突破できそうか?」
『…難しい。時間がかかる』
エナミスの返答に、シュミットは僅かに顔をしかめる。
『エナミス、時間はいくらかかってもいいがくれぐれも慎重に行け。失敗すればお前の脳が今度こそお釈迦になるだろうからな』
横合いから別の声が通信機越しに聞こえる。まるでそれを制するかの様に、シュミットは言った。
「落ち着け、カーティス。今はエナミスに任せるんだ」
カーティスと呼ばれた方の声の主は、緊張を帯びた声で「了解した」と手短に答える。
それからしばしの沈黙の後、不意にエナミスの声が、言った。
『シュミット、一つ聞きたい』
「何だ」
変わらず感情を乗せない声で、エナミスは口を開く。
『この作業と並行して、ヘブンのデータベースを少し漁るが、いいか』
「…何の為だ?」
『奴らから少しでも有益な情報を得る為』
エナミスの言葉に、シュミットはしばし沈黙していたが、やがて彼は答えた。
「好きにしろ。ただしヘブンの連中に決して気づかれない範囲でだ。興味深い情報を見つけたら俺にも教えてくれ。以上だ」
「…了解」
シュミットの言葉に、幾分嬉しそうな上ずった声で、エナミスはそう言った。
エデン行きのシャトル。その内部で、三人の粛清官が待機していた。
三人分設けられた座席には今はミラージュのみが座っており、フロントガラスから見える暗黒の宇宙を緊張の面持ちで眺めている。
ロードとフォートは奥にある、背凭れと肘掛けの無いベンチに似た椅子に離れて座っていた。二人とも黙ったまま、思い思いに思考を巡らせている。
「おい」
だがやがて、ロードはフォートに視線を向けると、声をかけた。
「おや、何だい?」
急に声をかけられたにも関わらず驚いた風も無いまま、笑みを浮かべつつフォートはそう言った。セラから命令を受けた時とは違い、今の彼は飄々とした雰囲気を身に纏っている。
「ジジから何を命令された」
意識して声を小さくしている訳ではなかったものの、雰囲気のせいかあまり高く声は上がらない。そのせいか、座席にいるミラージュには聞こえていない様だった。
フォートは若干の殺気が込められたロードの視線に、やはり笑みを浮かべつつ言う。
「安心しな。お前さんが気にするほどの事は言われてないよ」
「…何を言われた」
有無を言わさぬロードの低い声。フォートはしばらくロードを見つめていたが、やがて彼は言った。
「さて…どう言えば納得するかな?」
はぐらかそうとする気配に、益々ロードは殺気を帯びた視線でフォートを睨む。遂に根負けしたのか、フォートは溜め息と共に言った。
「今回のような事件は貴重だから、犯人は生け捕りにしろ。そう言われただけだよ」
「そんな命令なら俺とミラージュに聞かせない方が不自然だと思うが?」
尚も言い募るロード。だがフォートは顔色を少しも変えずに言った。
「生け捕りにするのは一人でいいそうだ。だからその役を俺が仰せつかった。これでいいかね?」
「…ああ」
苛立ちを押さえロードはそう答えると、視線をフォートから外し、前方へと向ける。
そして、思考に沈み込んだ。
「(ロックマン・シュミット、奴は何が目的だ?エデンなど占拠して…ヘブンに楯突くなど無謀としか言いようが無いが…)」
『それにしても、お前があのような施設を知っていたとはな』
室内に響く声。先程と同じ、立って腕を組んだ姿勢で、目を瞑ったままシュミットは答える。
「あの施設なら普通の地区とは違い、定期的にエデンから職員が訪れる。まだヘブンにいた頃、ある任務であの施設の存在を知ってな。役に立つかもしれんから覚えておいたんだ」
シュミットの言葉に、先程の声の主――カーティスは言う。
『戦闘端末を初期化に用いる施設か…あそこのデコイは哀れだな。まぁ、あの施設の存在のお陰でこうして船に潜入し、ここまで来れたわけだ』
そこで一拍を置き、カーティスは言った。
『それにしても、あの施設にアクセスしていたエナミスは、何をしていたんだ?』
「…それは俺も知らんな」
シュミットの返事。それにカーティスが答える前に、当の本人であるエナミスの声が出てきた。
『今から何百年後かに、あの施設の司政官を自動的に目覚めさせるようにした』
「ほう…何故そのような事を?」
エナミスの声はそれまでただただ無感情だったが、次の言葉には何らかの感情が込められているようにシュミットは感じた。
『別に深い意味は無い。ただ…正気に戻ってヘブンの事を判断して欲しかっただけだ』
「お前にしては珍しいな。まぁいい…それで、最初に処分された粛清官のデータはあったか?」
シュミットの問いに、エナミスは今度こそ無感情な声で答える。
『まだだ。もう少し待て』
それから数分後に、再びカーティスから通信が届いた。
『シュミット。かなり巧妙にデブリにカモフラージュしているが、シャトルと思われるものがエデンに接近してきている。どうする?撃墜するか?』
エナミスの言葉の後、しばらく沈黙していたシュミットだったが、不意にそんな報告をしてきたカーティスの言葉に我に返る。
「…勿論撃墜しろ。だが…手遅れかもしれん」
『何?』
カーティスの疑問の声に、シュミットは覚悟を決めながら言った。
「おそらく、それは囮だ。エデンを乗っ取ったからには、ヘブンの奴らも本気にならざるを得ん。となれば、こちらが気づく前に事を運んでいると考えた方がいい」
『つまり…どういう事だ』
カーティスの声に、若干の苛立ちを感じつつ、シュミットは言った。
「一応、そのデブリは破壊しろ。だが…俺の予測が正しければ、奴らは既に侵入済みだ!」
「何とか勘付かれずに着陸はできたな」
シートベルトを外し、ミラージュはそう言った。
その横の席に座るフォートはミラージュの発言が終わるか終わらないうちに、目の前のガラスを指差す。
窓の外の、上空に広がる宇宙で、微かに爆発が発生したのが見えた。
「囮はしっかり撃墜されたねぇ。だが、奴らはもう勘付いているかも」
フォートの言葉に、遠くに見える爆発のあった地点を眺め、ミラージュは息を呑む。
「どっちにしろ、ここで手を拱いていても仕方が無い。違うか?」
そう言いつつ、ロードは座席から立ち上がると装備を確認してさっさと出口へと向かって行った。
「…そうだな」
ミラージュもそう言うと、座席から立ち上がる。
そんなロードとミラージュの様子を見つめると、最後にフォートも座席から立ち上がった。
その口元に、若干の笑みを残しつつ。
「カーティス、エナミス、捕捉したか」
シュミットの声に、カーティスの方が先に返事を返す。
『いや、こっちはまだだ』
『今確認した。数は三人。シャトルから出た所だ』
「遅かったか。…まぁ、遅かれ早かれこうなる事は分かっていた」
シュミットの呟きに、カーティスもエナミスも黙り込む。だが、急にエナミスが口を開いた。
『ロックマン・ミラージュがいる。昨日そいつと一緒に逃げた奴も』
「やはりか」
シュミットはしばし顎に手を当てて思案すると、やがて言う。
「すまないカーティス。二人そちらに送る」
『構わんよ。元弟子なのだろう?お前自身で決着をつけろ』
カーティスの返事に、シュミットは目を瞑って微笑んだ。
「すまないな」
『何、お前と俺の仲だ。お前がいなけりゃ、俺もエナミスも今頃はこの世にいなかったろうしな。感謝してるぞ、お前には』
その言葉に、シュミットの微笑がたちまち苦笑に変わる。やがて彼は苦笑交じりに言った。
「喋り過ぎだ、カーティス」
『ハハハ、違いない』
「管制室の場所は分かってるな?」
「無論」
シャトルから出て、周囲を見回しつつロードは言った。それにミラージュが返答する。
「…監視カメラ、既に奴らの手に落ちていると思うか」
「おそらくな。気づかれずに着陸できただけ幸運だったと言えるだろ」
今度はミラージュの問いに、ロードがそう返す。
「管制室へは一本道だ。迂回ルートも無い。慎重に…進むしかないか」
シャトルポートから施設へ入る為のエレベーターを見つめつつ、ミラージュは言った。シャトルポートの構造はヘブンとあまり変わらない。
ロードは微かに嫌な予感を感じつつ、静かに頷いた。
「行くぞ」
背後のフォートへ向けて促す。フォートはただ無言で周囲を見回していた。
そして三人は歩き出した。
『もうすぐ奴らがそっちに着く』
「そうか。エナミス、この部屋に三人が入り、二人出た瞬間から、例のプログラムを実行してくれ。それ以外は通信も含めて、もうこの部屋へは干渉するな。以上だ」
『…了解』
エナミスの語調は、微かに何かを言いたそうだった。
「(…エナミスにも随分無理をさせたな)」
エナミスもカーティスの様に、己の心情を吐露したかったのだろうか、とシュミットは思う。
彼は傍らの床に突き刺していた大剣を握り締めると、視線の先にある扉を睨んだ。
三人の粛清官の足が止まる。
細い廊下だった為、三人は一列に先を目指していた。先頭にいたのは、ロックマン・ミラージュだ。
そのミラージュが、ある扉の前で止まった為、一行は止まらざるを得なかった。
「どうしたね」
怪訝な声で、ロックマン・フォートが問う。
だがミラージュは無言で、ひたすら目の前の扉を睨んでいる。
「(…居る…!)」
ミラージュの様子に、ロードも事態を把握した。
「居るな」
ここまで幾度も扉を越え、部屋を横切ったが、敵らしい敵も、警備用のリーバードさえ出てこなかった。
だが、この扉の先からは凄まじいプレッシャーが発散されている。ミラージュが止まった事で、それにロードも気が付いた。
真っ先にミラージュが気づいたのは先頭だった事と、こういう第六感は自分よりもミラージュの方が磨いているせいだろう、とロードは頭の隅で考える。
「…準備はいいな?」
目の前のミラージュと、背後にいるフォートに問う。
振り返れば、フォートは無言で頷いていた。
ミラージュも振り向いて、返事の代わりに視線で扉を開ける事を示した。
「よし…行こう」
ロードの言葉を合図に、ミラージュは扉を開けた。
『シュミット』
急に室内に、再びエナミスの声が響く。
「どうした。もう通信を寄越すなと言った筈だが」
シュミットの言葉に、エナミスは一瞬躊躇した様だったが、やがて言った。
『今しがた偶然、興味深いデータを見つけた』
その言葉に、シュミットは眉をひそめ、言う。
「この緊急時にわざわざ伝える必要のある情報か」
『だから言っている』
「…いいだろう、奴らが来る前に聞かせてくれ」
データを閲覧しているのか、数秒の間があった後、エナミスは言った。
『おそらく、まだヘブンが今の形になるかならないか位の頃のデータだろう』
「…一体何のデータだ」
シュミットの問いに、エナミスは一瞬迷った様だったが、やがて答える。
『おそらく、ヘブンの歴史上、最初にイレギュラー化した粛清官のデータだ』
「何…!?」
エナミスの答えは、シュミットを驚愕させるのに十分なものだった。
『削除されたデータを復元した中にあった』
「時間が無いから手短に訊くぞ…その粛清官は、どんな顛末でどのような結末を迎えた?」
一気に緊張を帯びたシュミットの言葉。その問いに再びエナミスは数秒無言になったが、やがて答えた。
『データには、「暴走し職員を殺害後、処分」とある』
続けて言われた言葉に、少し驚きつつシュミットは言った。
「暴走?粛清官がか」
『ああ、解読できる部分にはそう書かれている。処分者名の項目はデータが欠落していて読めなかった』
シュミットは顎に手を当ててしばし考え込んでいたが、やがて言った。
「その、暴走したという粛清官の名もデータが欠落しているのか?」
『…いいや、その部分は読める』
「聞かせろ」
シュミットの言葉に、エナミスは再び沈黙していた。
だがやがて、エナミスは意を決したように言葉を紡いだ。
『彼の者の名は…』
次の瞬間、扉が開いた。
床も壁も天井も真っ白な、正方形をした部屋。
視線の先には、扉と、その前に立つロックマン・シュミットの姿が見える。
シュミットは自分の前の床に大剣を突き刺し、その柄を両手で握っていた。
「間が悪いな。だが…待っていたぞ」
三人に視線を向け、シュミットが言う。
三人のうち、ミラージュが他の二人よりも一歩前に踏み出した。
「二人とも下がってくれ。そしてできるなら…隙を見つけて次の部屋へ行ってくれ」
そう言うと、ミラージュはビームサーベルを起動する。
ロードは小さく頷いた。フォートはシュミットとその背後の扉を交互に見つめている。
その様子を見て、シュミットは不敵に笑った。
「準備は万端の様だな」
「何が目的で、こんな事をした」
ミラージュの問いに、シュミットは肩を竦める。
「悪いがな、それは言えん。どうしても聞きたければ、力づくで聞き出す事だ」
「…そうさせて、貰うっ!!」
次の瞬間、ミラージュは跳びかかった。
振るわれるビームサーベルに、瞬時に床から引き抜かれた大剣が防御する。
今度は大剣が横に薙ぎ払われる。それを屈んでかわしたミラージュは、一気に突っ込んで行った。
再度振るわれたビームサーベル。今度は体重を乗せた一撃に、再び大剣で防御したシュミットはその身体ごと扉の横の壁に叩きつけられた。
「今だ、行け!!」
サーベルでシュミットを押さえつけるミラージュは、背後の二人に向かってそう叫ぶ。
ロードは頷くと、フォートを伴って扉を潜っていった。
それを確認したシュミットは、ミラージュに視線を向けると、言う。
「これで本気で戦えるか?」
その瞬間に大剣にかかる荷重が増え、不利と悟ったミラージュが剣を弾き、後ろへ飛び退いた。
「最初から行かせるつもりだったのか」
ミラージュの言葉に、笑みを浮かべつつシュミットは頷く。
ミラージュは溜め息をつくと、一瞬目を瞑った。だが次の瞬間、目を見開くと共に、バックパックに左手を入れた。
そして、もう一つ持って来ていたビームサーベルを起動し、両手に持った二本のビームサーベルを構えた。
「ほう、二刀か」
「お前を倒すには、この方法しか思いつかなかった」
楽しそうに、シュミットは大剣を構える。
「面白いぞ。さぁ来い、ロックマン・ミラージュ!!」
比較的広い廊下。部屋の先にはそれが続いていた。
ヘブンで見たエデンの内部構造の地図を思い返しつつ、ロードはこの先が管制室――エデンのシステムを奪還するにはこの場所の電子端末を制圧するしかない――である事を再確認した。
「少なくとも、敵は三人はいる筈だ」
「だったらあと二人。俺が一人、君が一人仕留めればいいわけだ」
口元に笑みを浮かべつつフォートはそう呟く。
そんなフォートに一種の不気味さを感じつつも、ロードは細心の注意を払って歩き続ける。
唐突に、空気を切る音が耳に入った。
「!!」
即座に反応し、視線を周囲に巡らせると同時にビームサーベルを起動する。
近づいてくる音。ロードは視界に現れた物体を躊躇無く斬り落とした。
地面に落ちたのは、鉄製のカッター。三日月のような形で、酷く薄い。
「一体どこから…!」
「まだ来るね」
背後でフォートが銃を取り出し、ロードが斬り落としたのと同じ、飛来するカッター二つを撃ち落とす。
その銃の発射音を聞き、ロードはフォートの方へ視線を向けた。
「見た事の無い銃だな」
「だろうね。レーザーじゃなく実弾だよ。こっちの方が性に合っててね。こういう潜入の際は消音器を付けてる」
ロードは、今度は廊下の先へと視線を向けつつ、言った。
「とにかく、ここで首を切り落とされるのを待つのは御免だ。この先は管制室まで一直線。走るぞ!」
「ああ、そうしよう」
そしてロードとフォートは、一目散に走り出した。
最終更新:2012年01月29日 22:45