「オレンジジュースぅ?」
 あたしは思わず声を上げた。訝しげなあたしの顔を、アンコウの端正な顔が覗き込む。
「何だよ、悪いかよ、さい。」
「でもさあ、なんだかオレンジジュースってアンコウに合わないよ。すっごい濃いブラックとか飲んでそうなのに。」
 彼の服装が黒いからだろうか。それとも天気が暗いからだろうか。それともアンコウに、何か暗いものを感じているから?
 そういえば、アンコウは何歳なのだろう。見た目は25歳くらいに見えるけれど、もっと幼いといっても通じるし、逆に36歳なんです、って言われても納得してしまいそうだ。
「俺はブラック嫌いなの。すっごい苦いし、現実以外にそんなに濃いもの要らないしさ。」





 ――アンコウ、あなたの現実って何?それはブラックコーヒーよりも苦くて、そして濃いものなの?



最終更新:2007年08月08日 17:27