一人の男が怪我をしていた。
 腹の辺りを切り裂かれ、クルしそうに、うめき声を上げている。
 そしてその男の方を持ちながら、さらに一人の男がいる。
 私はそれを見ていた。
 ――あの後、セネットのしたいから離れた私はこうしてここでこの二人の青年と会っている。
 何故こうなったか等知った事ではないが、偶々出くわしたのだ
 さて、とりあえず腹を切り裂かれた方はアストラルドートを傷口に塗っておけば、そのうち死ぬだろう。
「そこに寝かして」
 私は少し前に挨拶をしたシンとスバルに話しかける。
 スバルは直に寝かしつけられ、シンと私は座って、そのスバルの様子を見る。
「…とりあえず応急処置をしましょう」
 そう言うと私はアストラルドート(名前は書いてないので、ただの傷薬だと思うだろう)
 早速私はそれをスバルに塗りたくる。
「しみるかもしれないけど、がまんしてね」
 一応、塗る前にそう言って置いた…どうでも良いような…
 ううう…とスバルがうめく、さて、聞いているかな?そう思いながら、脱がしておいたスバルの服を巻き付ける。
 とりあえずコレで良いだろう、後は効果を待つだけだ。
 私はさて…どうしたものかと思案して直に思い当たる。
「ちょっと…この近くに屋敷みたいな大きな所があるから、そこに行って何か言い食べ物か何かが無いか探してくるわ」
 そういって私は立ち上がる。
 スバルが少し思案げな顔になるが、それに気付かないフリをして、先を急いだ


+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +


 結論から言えば、スバルにアストラルドートは凄まじい速度で効いて行った。
 数分で死亡直前のセネットのようにさえなってしまった。
 ――あの…彗星は…何を塗ったんだろう…
 シンはスバルを見ながら、そう思考する。
 あの傷でスバルがここまで衰弱する事は無い、となると、あの彗星が塗った薬のせいだろう、くそ、何故防げなかったのか



 シンはスバルを見る。
 ドンドン衰弱して、もう助かりそうに無い


「うううううううう」

 スバルがうめく、シンは悔しそうに拳を握りしめた。



 その時だった。
 スバルの様子が更に悪くなる。
 スバルは何かを悟ったのか、シンに話しかける

「…まって…る……か」
 そこまでだった。
 そこまでで、スバルは動かなくなった。
 最後の言葉もろくに言えずに
 そこまでで、スバルは動かなくなった。
 シンは悔しそうに、拳を握り締めていた。
 そして、動かなくなったのを確認して…


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ



 ううううううううううううううううううううううううううううあああああああああああああうあうあああうあうあうあうううううううううううううううううううくそくそくそくそクソガァァァァァァァッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「うるさいんだよ…ったく」
 レイスがそこに立っていた。
 シンはそれを見る
 振りかえり、鬼のように…それを見る
「何だ…お前は」
 既に戦闘モードで、剣を抜き去っている。
 レイスは驚いた様子でそのシンに話しかける
「いやいや、お前が殺そうとした相手を何でおまえが忘れるんだよ」
「…あの時の……!」
 レイスのツッコミにシンは反応して、目を見開く
「お前のせいで…!」
「…あのなぁ、何で私がお前の知り合いだか何だかを殺さなきゃいけないんだ?」
 あれを殺したのはさっきの女だろう…と呟きながら、レイスはため息をついた。
「うるさい!」
 シンは叫ぶ、鬼のような形相だ
「やれやれ、仕方ないな『本気で』相手してやるよ」




 勝負はあっという間に決着がついた。瞬殺といっても差し支えない
 まず両者が動く、一気に詰めよって剣を打ち合う、そのままレイスは横に飛ぶ、そこにシンはフレイムランスを撃ちこみ、炎上する。


「やったか!」
 シンが叫び、その炎を見る。
 少なくとも無傷ではすまないが、しかしレイスは無傷で出てきた。
(相当制限されてるけれども、普通の人間が普通にはなった初級呪文くらいなら無傷で受け止められるんだよな、コレが)
 レイスは何となくそんな事を考えた。
 シンはなっ!と更に叫び、反応しようとして、一個目の剣を受け止めるが、2つ目の剣は受け止める事が出来なかった。
 ザクリ、と腹の辺りを切られて、思わずシンは剣を落してしまう。その後、先ほどの1つ目の剣で心臓が突き刺された。

 一瞬の戦闘であり、瞬殺の戦闘であった。
 レイスは剣の返り血や、服の返り血を魔力で吹き飛ばすと、剣を鞘に仕舞、なにやら髪とペンを取り出しながら、歩き出すのだった。



【スバル・カミナギ@ラ ビ リ ン ス マ イ ン ド  死亡】
【シン・カミナギ@ラ ビ リ ン ス マ イ ン ド  死亡】


+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

 私は歩いていた。
 特にこれと言って目的は無い、あの二人のところに戻るつもりは無いし、館の方へいくつもりもない、とりあえずは町に行って見ようと思う。
 何かいい相手が居るかもしれない。
 …それにしても
 セネットを看取った時の、アの感覚は何だったのだろうか、苦しいような。切ないような、何故その様な感覚を持ってしまったのだろう
 私はみろるんのためならば人を殺す事ができる。私はみろるんのためならば、人を殺せと言われたら殺す事が出きる。私はみろるんのためならば死ねる。私はみろるんのためなら地獄に落ちてもいい、私はみろるんのためならばどんな拷問にも耐えきる。たとえ隣にいるのが私ではなくゴキブリでも、私はみろるんのためならば人を殺す事が出きる。
 間違い無い…殺せる…殺せと言われれば殺せる…死ねる…地獄に落ちれる…どんな拷問に耐える事も出きる…たとえ…たとえ…みろるんの……隣が…………私…じゃ…な…くて…も…得体の知れない薄汚いパシリに使われそうなゴキブリでも…
 そう、みろるんの為ならば…みろるん…の…た……めならば…みろ…るん…の……為ならば
 ミロルンノミロルンノミロルンノミロルンノミロルンノミロルンノミロルンノ





 タ    メ    ナ    ラ    バ    !   !



『ちょっといいか』

 イキナリ、いきなり、紙が降って来た。その紙にはそう書かれている。
 私は上を向く。
 丁度私の横には岩があって、その上に一人の少女が乗っていた。
 その少女はその岩から飛び降りる。結構距離があるのに中々凄まじい少女だ。
「貴方…誰?」
 私はとりあえずその言葉を呟く、しかし一応誰なのか…は知っているが、社交辞令と言う奴だ。
 レイス…このゲームの中で恐らく最強クラスの戦闘能力を持つ、この年齢で何で個々まで強いのだろう、という少女
 私はそれほど気にしてはいないが、さて、如何しようか
 みろるんのためにも、この少女は殺さなくては
 …しかし、何故いきなり紙を振らせたのだろう。
「私はレイスだ、お前は…ゲームに乗っているのか?」
 その問いに直に答える。
「私は流 彗星…彗星でいいわ、ゲームには乗っていないわね」
 少し言うのに辛かったが、それでも気にせずうそをつく
 レイスは何故か紙に文字を書き始める。
『そうか…じゃぁ単刀直入に言おう

 私達は盗聴されている』



 ――一応、頭の回転はそれなりに速いつもりだ、そして、そのレイスの発言が、私の頭をフル回転させる。
 盗聴されている?みろるんは損なこといって無かったぞ
 となると、あのゴキブリが勝手に?
 いやいや、それならば主催であるみろるんにも言うはずだ、そちらの方が効率がイイ
 …ならば何故私に教えなかった?
 理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…みろるんかわいいよみろるん…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…理解できない…みろるんハァハァ…理解できない…理解できない…理解できない…

『なんか色々葛藤があるみたいだな、少し話してみろ』
 その紙が渡されて、私は我に帰る。
 話すべきか………
『まぁいいさ、うんじゃ、話してくれよ、このゲームを順調に進めるために用意されたジョーカー…流 彗星…』
「おい、如何したんだ?」
 さらに声をかける。
 ああ、何だ知っていたのか、しかし何故知っているのだろう。
「ええ、何でも無いわ」
 とりあえず、双呟きながら、私は紙を取り出す。ペンも一緒にだ。
『簡単な話しだよ、お前、あの時の会場に居なかっただろ』
 …なるほど
『まぁいいわ、じゃあ、解りやすく書くから、待っててね』
「さて、コレから如何するんだ?」
「さぁ、とりあえずは町に行こうかしら」
「…あそこ四度目なんだがなぁ」
「あらそう?ならぐるっと半時計回りにここを一周してみる?」
「良いかもな、それ、じゃあいこうか」
 表面上の会話、しかし結構重要だった。
 今度の活動方針だ。恐らく、裏でこんな会話をしていなかったら、この島を一周する事は無理だろう、間違い無く私がレイスを殺すか、レイスが私を殺すか、又は別の誰かが私かレイスを殺すか…

 今の私は冷静だ、驚くほどに冷静だ、物事が凄まじいスピードで処理されていく、頭の回転が恐ろしいほどに速い、私は冷静だ、おかげでみろるんについてを凄まじいスピードで書き上げていく、みろるんの可愛さとか、みろるんに半殺しに去れた事とかを、卓さん書いた。
 そしてそれが大分歩いて、少し疲れが出てきた頃に完成した。
 この紙はメモ帳で、枚数が沢山あるタイプだが、私はそれを二十枚分使って、びっしりとみろるんの事を書き上げた。
 …15枚ほどみろるん可愛いよとひたすら書きつづけたのだが
「……」
 レイスはそれをぺらぺらとめくっていく…
 数十分して、全部読みきったようだ、レイスはげんなりとした様子で、その紙を捨てる。
 ついでに何やら書いて、落とした。
『何をしたのかしら?』
 紙にそう書いて、レイスに渡す。
 レイスも何やら書いて見せる。
『主催についての重要な情報あり、読め、と書いた』
『それ…疑われないの?』
 直に返事を出す。
『別に、疑われるのは私じゃないさ』
 そう言われて、更にレイスは何かを書く

『所で、あの主催、みろるんって、何だと思う?』

 いきなりであったが、少しも戸惑うことなく、書いて行く
『可愛い、最高に可愛い、みろるんかわいいよハァハァ』
 レイスはそれを見て、直に何か書く
『私が思うに』
 あ、スルー去れた。

『あれ、偽者じゃないか?』

 ああ、そうか…じゃあ
『何でこの時期なんだ?なんでこの時期にお前を殺そうとするんだ?お前を消す事も、何時でも出来たはずだ、ならばなぜ、この状況を作った?』
 うん、少しなら解る。
『偽者が、本物になるため?』
 レイスは頷いて見せる。
『そういう事も、あるだろうよ』
 そう書いた紙を、私に見せた。
 さっき書いた奴以外は、全部デイパックの中だ。
『さて、それじゃ聞こう』

『お前は、何がしたい?』

 うん、解ってる。答えは迷わない

『私は、確かめたい』

『何でみろるんがこんなことしたのか、確かめたい』

『だから、協力してくれるかしら?』

『構わないが…どうやってだ?』


『決まってるじゃない』








『私、裏切りが得意なのよ♪』





+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

【C4 草原・夕方】


【名前・出展者】レイス@レイスの短編帳
【状態】腹が切られてる(本人的には戦闘に影響無し) 精神疲労小
【装備】光墨@ハーフ 緋緋色金の光剣@世界樹の迷宮Ⅱ 諸王の聖杯 
【所持品】思い出の品@ハーフ 基本支給品一式
【思考】
基本、弱い奴を保護して、強い奴に引き渡す。中途半端、危険人物は必要無い
1、ナルホドな
2、さて、動こうか
※レイスは基本大剣を軽々と振りまわすタイプですが、二刀流もOKのはずです


【名前・出展者】流 彗星@リアクション学院の夏休み
【状態】健康 裏切りの決意
【装備】ワルサーP5@現実
【所持品】基本支給品一式 毒薬(アストラルドート@ゴキブリ)
【思考】
基本、何故みろるんがこんな事を下のかを確かめる。その為に、みろるんを欺き、対主催として行動する
1、まっててね、みろるん
2、さぁて、動くわよ



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最終更新:2008年12月27日 19:09