炎の納まってきた酒場の中を捜索している人影があった。 桐生院 黒影である。
すっかり焼け焦げているが崩れ落ちていない建物…しっかりとした造りになっているのだろう。 そんな事を思いながら、黒く焼けた"ソレ"を漁る。
理由は簡単だ。 焼け残っているものがあれば回収したい、自分には弾の切れたサブマシンガンしか武器は残っていないのだから…
恐らく人"だった"それを漁っている黒影は、ある事に気がついた。
死体が"一人分しかない"のだ。 あの炎と爆発から逃れられたとは考えにくいが、この場で死んでいないのは間違いない…
だとしたら、生き残ったほうが再度狙ってきてもおかしくない。 何の用意もなしに襲われては……
だが、残念ながらまともに武器になりそうなものは残っていなかった。 持っていたと思われる大半のものは焼けてしまい、ただの黒いススの塊でしかなかったのだ。
…こうなれば、待ち構えて迎撃するのは絶望的か。 相手を仕留められないどころか、無意味に自分の命を危険にさらすだけだ。
「……逃げるか」
相手の片方が生きているとなれば、このままこの場に留まるのはあまりにも危険すぎる。
そうと決まれば、黒影の行動は早かった――
* * *
「……チッ、影も形もありゃしねぇ。 てっきり小僧の死体漁りでもしてるかと思ったんだが」
一回りして広場までやってきた志々雄。 だが肝心の黒影の姿はどこにもなく、火の勢いが完全に消えた酒場の中には黒コゲリオンの死体が一つあるだけであった。
『荒らされた形跡はある。 …どうやら一足遅かったようだな』
「その様子だな。 全く俺とした事が、二兎を追う者はなんとやら…」
自らを嘲るように志々雄はくく、と笑いを漏らす。
「それにしても剣。さっきは口やかましく『止めろ』とか抜かしていた割に、どういう心変わりだ?」
『我の名はディムロスだ、志々雄真実。 …あの男は、一応リオンの仇だ。我とて少々の憤りはある』
「ほぅ。 まあ、生意気な糞餓鬼だったが、悪くなかったからな」
志々雄のその反応に、ディムロスは少し意外そうな口ぶりで返した。
『貴様の様な戦闘狂にもそのような物言いが出来るのだな』
「斬る事に迷いの無い太刀捌きだったからな。 全く、惜しい小僧だ」
『…………前言撤回だ』
溜息混じり(?)にディムロスは言った。
「まあ、そう言うな。 どうでも良いが剣、とっとと例の火の玉の出し方教えやがれ」
『教えて欲しいのならば、まず我の呼び名から改めよ』
「言い難い。 でむろすだか何だか知らんが、もっとマシな名前にしやがれ」
補足であるが、一応志々雄は幕末~明治時代の人である。
『ディムロスだ、我はソーディアン・ディムロス! 名前に関しては我がそもそも人間としてのディムロス・ティンバーを元として形成されたものであって――』
「あー、全くやかましいったらありゃしねえ」
そんないい合いがしばらく続いたらしい…
【F5 町の焼け落ちた酒場前・夕方】
【名前・出展者】
志々雄 真実@るろうに剣心
【状態】火傷(無いも同然)
【装備】ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー
【所持品】支給品一式、予備のマガジン、不明支給品
【思考】基本:所詮この世は弱肉強食… ゲームなんて関係ないが、強い奴が生き残るべき
1:さっきのあの男、どこに行きやがった
2:でむろすだかちんばーだか知らないがさっさと教えてくれ
3:この剣はなかなか喧しいが、使えるな
4:あの小僧(ルイス)、生き残ってもう一度刃を交えて見たいもんだ
【ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー】
【思考】
1:マスターとして志々雄は相性がいいのだが…
2:リオンを死なせてしまったのは我にも責任がある…
* * *
「……これは?」
街の外の草原まで逃げるように駆けてきた黒影の目に、あるものが留まった。
ぽつんと落ちているそれは、金槌だった。 何の変哲も無い、片手サイズの金槌。
何故……と考えても恐らく答えは出ないだろう。 きっと誰かが捨てたのは間違いない。迷わず黒影は拾い上げた。
ないよりマシだ。 もしかしたらこの金槌が自らの命運を分けるかもしれない…
【F5 町の外の草原・夕方】
【名前・出展者】桐生院 黒影@陽華がくえん☆ねこやしき
【状態】無感情モード、顔の右頬に火傷(戦闘に支障はない) 全力疾走の疲労
【装備】金槌@現実
河城にとり製光学迷彩スーツ@東方Project(焼かれたため使用不可能) サブマシンガン@現実(弾切れ)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:ゲームに優勝して、元の世界に帰る
1:サブマシンガンの予備のマガジンを探す
2:もしかしたら仕留めた奴が持っていたかもしれないな……
※志々雄かリオンが生きている事を知りました、ただしどっちが生きているのか知りません
* * *
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最終更新:2008年12月27日 19:11