「フッフッフッフ……我輩は運が良いようだな」

C6エリアの荒地で、サント・アンヌは三流の悪党の如く腰に手を当て高笑いしていた。
一応言っておくが、本人はハードボイルドなキャラを演じているつもりである。
どこが、と訊かれると返答に困るのだが――


それはさて置き、彼に支給されたのは指輪。
勿論ただの指輪ではない、精霊ヴォルトが召喚できる契約の指輪――サードニックスの指輪である。

添付されていた説明書によれば、魔力の無い人間でも召喚が可能と書かれていた。
ただし、精霊が従うかどうかは持ち主の力量次第であると最後のほうに書かれていたが、本人は気にしていない様子。

何と言うか、ものすごい自身だ――――その自身の根拠は分からないのだが――


(さて、これからどう動こうか……)

名簿には見知った名前があった――手下の暗闇 黒王。
やはり、ここは彼と合流すべきだろう。

その後は他の参加者も手駒にし、そして――あのみろるんにリベンジを仕掛ける。
なぜなら、アイアンクローを仕掛けてきた上に、その後は言葉では言い表せない地獄を見せられたのだ。
――なんとなく、逆恨みのような気もするが、気にしないでおく。

「フフフフ……覚悟するがいい、みろるん。君を完全に我輩の妹にして……登校前、なかなかトイレから出てこない我輩に『早く代わってよ、お兄ちゃん。学校に遅れるでしょ!』って言わせてやる」

サントは空を見つめながら、己の未来妄想ワールドを呟く。
ハッキリ言って、病院に行くべきだと思う――勿論、脳の病院に。


――しばらくしてから、試しに精霊ヴォルトを召喚しようと指輪に力を籠めた。

「さて、それでは戦いを始めようか。いでよ! ヴォル……ト?」

『¢%◇∝♭』

召喚をしたサントは――

『☆‡∵℃■』

目の前に広がる光景に――

『≒●@△♪』

統率しかけた。

――そこには、形容しがたい異様な外見と、何を言ってるのかサッパリ分からない言葉を叫んでいる謎の物体が、自らの存在を誇示していたのだ。


「ええいっ! 言うことを聞け、このッ……!」
『¥▽◎∂∬』

頭の上に乗っかるヴォルトをうっとおしく思い、デイパックの中身の確認ができたのは、実に三十分後の事である。

「はぁ……はぁ……な、何故だ……何故、我輩がこのような目に……」
『$*◆〒Å』
「だぁーーーっ! やかましいわっ、おのれはっ!」

理不尽に対する苛立ちが、サントの神経を刺激する。
その結果、シリアスに決めようとしていたサントが、いつものキャラに戻ってしまった。

最初は「こんな奴いらねぇー!」と思っていたのだが、それは無理な話だ。
いくら必死になって引き離そうとしても、ヴォルトは全く言う事を聞かない。
それどころか、サントが力ずくでヴォルトを捨てようとすると――

『#□★‰¶』
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」

――逆に、電撃を食らわされる始末。
まるでサントの敵意を察知したかのように、ヴォルトが攻撃を仕掛けてくるのだ。

「お、おのれぇ……!」
『&▼♯√∮』

だが、サントは諦めない。
みろるんの妹化を望む人間が逃走してはいけないのだ、と自分に言い聞かせる。

いわゆる自己暗示だ――なんとなく、ゲシュタルト崩壊が起きそうだが――

『○※≡∽∑』
「どやかましいわぁっ!」


――そして、出発の準備ができてから更に三十分後。

『£§∀▲†』
「……助けてください…………助けてください……」

ヴォルトの放棄を完全に諦めた、哀愁漂う情けない男の姿がそこにあった。


――サントの名誉の為に言っておくが、彼は決して馬鹿ではない。
ただ、オツムがちょっと足りないだけなのだ。


【C6 荒地・朝】

【名前・出展者】サント・アンヌ@リアクション学院の夏休み
【状態】健康、めっちゃ脱力
【装備】サードニックスの指輪@テイルズオブファンタジア
【所持品】支給品一式
【思考】基本:手下を集めてみろるんにリベンジしたい
1:ヴォルトをどうにかしたい
2:クロとの合流

【名前・出展者】精霊ヴォルト@テイルズオブファンタジア
【思考】不明だが、サントの頭の上が気に入っている様子?


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最終更新:2008年11月15日 17:56