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尽「あれ、さくらさん、何読んでるの?」

さくら「征界巨人の仕様書です。今の低い支持率のままではいつまでも戦えないと思いますから、何か対策をと思って。特に武器でもあれば……」

尽「何か、あった?」

さくら「いえ……武装のためらしいスペースはたくさんあるんですけど。」

片原「それは設計初期段階の名残ですな。セイカイオーには当初いろいろと固定武装が装備される予定でしたから。ですが平和主義を掲げるわが国の象徴たる国機が武装すべきではないという前総理の意向から、それらが排除されたのです。」

さくら「それでもセイカイオーが戦うしかないんですから。」

片原「仕方のないことですよ、垂木様。セイカイオーは兵器ではないのです。ここは防衛庁長官に自衛隊の緊急出動に関する法案を早く提出して頂いて……。」

尽「僕達はいい仕事をして支持率を上げるしかない、と。」

片原「はい。」

さくら(でもこの仕様書……何か、隠されている気がする。)

デスクワークに戻りつつ、チラチラとさくらの様子をうかがう尽。
さりげなく「さくらさん」って呼んでみたけど……全然変わらない。ガッカリ。



片原『総理、テロボットです。出動をお願い致します。』

自分の執務室にいる片原から通信が入った。

尽「はい……しかし、一人で仕事している時だったからいいようなものの。」

片原「申し訳ございません。」

尽「いえ、官房長官が謝ることじゃ……さくらさん、行って来ます。」

さくら「お気をつけて。それから、急いでください。仕事が押しています。」

尽(きっついなあ……。)





 飛行するセイカイオーからテロボットの姿が確認される。今度は両腕が長い円筒になっている機体だ。

尽「何だあれ……うわっ!」

敵機が円筒をこちらに向けたかと思うと、突然セイカイオーの背中で爆発が起こった。

尽「背中のロケットがやられた?敵は後ろにもいるのか?」

飛行が出来なくなり着地するセイカイオー。テロボットが再び腕をセイカイオーに向けると、今度は左腕が動かなくなった。尽は慌ててビルの陰にセイカイオーを隠した。

尽「どうなってるんだ!?」

片原『総理、そのテロボットの腕はレーザードリルです。』

レーザードリル。高出力のレーザーでごく小さな一点ではあるがあらゆるものを貫く光の錐だ。聖域バリアは目に見えないだけに可視光のレーザーは透過するし、厚い装甲もレーザーの前では無力。
レーザーはそれとわからないような小さな穴を開けてセイカイオーを貫き、背中のロケットノズルと左腕のモーターを撃ち抜いたのだ。

尽「そういうことか。しかしレーザードリルが兵器転用されているなんて……。」

片原『弱点を正確に撃たれなければ大丈夫なはずです。とにかく動いてください。止まると撃ち抜かれます。』

尽「わかりました!しかし、この距離を埋めないと、どちらにせよ勝ち目は無いな!」





さくらは官房長官執務室のドアを叩くと、返事も聞かずに開いた。片原は国機のオペレーション用のパネルに向かい、そのむこうにいる尽に向かって叫んでいた。

片原「垂木様?御用なら後に……」

さくら「官房長官。征界巨人仕様書のマスターを閲覧しました。『行征剣』の封印を解いて下さい。」

片原「……それは」

尽『さくらさん?何の話?』

さくら「総理、セイカイオーには武器があるんです。前総理と官房長官によって封印されていますが。それが『行征剣』。」

片原「……前総理は、最後まで国機に武器を持たせることに反対していらっしゃいました。しかし結局は押し切られ……前総理と私は、それを使う日が来ぬよう封印し、表向きの資料から削除したのです。」

さくら「論点のすり替えです。行征剣は国機の一部。セイカイオーの出動を承認された以上、官房長官にその使用を制限する事は出来ない筈です。」

片原「その通り……しかし……セイカイオーは、兵器ではないのです!」

さくら「そんなこと……このままじゃ、セイカイオーが、総理が!」

尽『……待ってくれさくらさん。それが官房長官と先生の願いなら、僕はそれを守りたい。なに、今のままで十分さ!』

セイカイオーが意を決し、ビルの陰からテロボットに向かって飛び込む。しかしテロボットはその直線的な動きの隙を付き、今度は左足を正確に撃ち抜いた。着地に失敗し崩れるセイカイオー。後退し再び距離をとるテロボット。

さくら「総理!」

尽『大丈夫だから!』

片原「総理……。」

片原はゆらりとパネルに向き直ると、何か打ちこみ始めた。
「総理……私は何にこだわっていたのでしょうな。セイカイオーが兵器かどうか、そんな事はどうでもよかった。
大切なのはそれを使うあなたを信じられる事、それだけだったのに。……総理、行征剣を託します。前総理も私も、それを望んでいる!」


尽「う……?」

セイカイオーの右手に巨大な刀が握られていた。「行征剣」が封印されていた総理官邸の地下から、一瞬にして転送されてきたのだった。

片原「総理、行征剣は目に見える刃ではなく、聖域のエネルギーフィールドを応用して物を切断します。エネルギーを与えれば刃は伸び、その程度の距離は難なく埋まります。」

尽「やってみます!」

刃先に発生したエネルギー刃の長さは600m。届く。しかし剣を持つ右腕がやられれば終わりである。

尽「……一か八かって事だぁ――っ!」

セイカイオーは、右足だけで再び跳んだ。相手に背中を向け、胴の陰に腕と剣を隠して。右足がレーザーに撃たれるのも構わず、空中で振り向きざまに剣を振るう。
テロボットは腰の下を横一文字に斬られ、倒れた。両脚の自由を奪われたセイカイオーもまた、着地する術を無くして重力のまま、墜ちていった……。

轟音。

片原・さくら『総理!?』

尽「いちち。大丈夫です……しかし、官房長官。これは確かに封印しておいた方がいいですね。危険すぎる。」

その瞬間、テロボットの後ろにあったビルが切り口からずれ、倒壊していった。


公康「今回のテロボット操縦者にはマエがあった。腕利きのスナイパーだ。」

片原「やはり。あのレーザー攻撃の正確さはそうでなければ考えられませんからな。」

公康「ですが、それだけでは説明はつかない。」

片原「ええ。いくら射撃が得意でも、セイカイオーの構造を精緻に把握していなければ、モーターのシャフトを正確に撃ち抜く事などできるはずが無い。」

公康「こちらの情報が漏れている。……おい尽、聞いてるのか。」

尽「へ……?」

財津原「聞いているのか総理倒壊させたビルの補償セイカイオーの修理費用ドカンドカン着陸させるだけで道路だって壊れるのだしクドクドクドペラペーラ……」

ついに財務大臣・財津原逸郎がキレた。


第五話『行征剣を行使』 完



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最終更新:2009年11月24日 22:21