尽「奴は、人を追いまわしてる!住民の避難ができなきゃ、戦えない……!」
セイカイオーはテロボットの後ろに取り付き、羽交い絞めにすると、その進行方向の反対側、既に住民が避難した区域に向かって投げ飛ばした。宙を舞うテロボットの腕がビルに接触し、崩れる。そのビルの破片が落ちる場所には。
尽「あ……人が!?」
女性が一人、瓦礫に埋もれていった。
セイカイオーはすぐに女性の救助にあたり、程なく救出に成功した。しかし女性は全身の骨折に加え、頭を強く打ち重体。回復は絶望的とされた。
平「晴海……晴海ィ……。」
静「昨日のテロの被害者、平君の妹さんだったって……?」
寺門「本当だ。おかげでずっとあのザマだ。……おいヒラ、もういいから病院行ってやれ。」
平「チーフ……いや、駄目っスよ。俺には、やらなきゃならないことがあります。」
平『妹は、優しい娘で……10代で両親を亡くして、兄妹ふたりで何とか暮らしてきたんです。それが、あの日、私のたった一人の家族が……。』
片原「マスコミ関係者の家族でしたか。……これは少し、厄介ですな。」
平はテレビに新聞と、さまざまなメディアで同情を引き、内閣の支持率を低下させていった。
平『あのロボットは確かにテロリストだったかもしれない。しかし国機が来るまで、あれは何もしてこなかった。国の取った方法は本当に正しかったのかと、私は……』
尽「僕のせいだ。僕が住民の避難をちゃんと確認していれば、いや、そもそもセイカイオーで戦おうとなんてしなければ……。」
内海「……。」
さくら「総理。記者会見があります。仕度を。」
記者A「では、あのまま戦闘行為に及んだ判断は誤りであったと、認めるんですね?」
尽「……はい。申し訳ありませんでした。」
記者B「あなた謝れば済むと思ってるんですか。国民の命がかかってるんですよ!」
尽「いえ、そんな事は……しかし私にできることは、もう……。」
記者B「あなた総理でしょうが。勝手なこと言ってないで責任取るのが筋なんじゃないんですか?」
さくら「ちょっと待ってください。総理だって人間です。今回の事は気に病んでらっしゃいます!」
記者C「ただの人間に、首相なんて務まんのかよ!」
尽「な……!?」
さくら「総理、気にしてはいけません。あの記者の発言は誰が聞いても見当外れです。」
結局あの後、すっかり動転してしまった尽に代わりほとんどの応答をさくらがこなした。
尽「それは、わかる……でも僕は、それに相応しい人間なのか……?戦えば怪我人が、死人が出る。わかってる、つもりだったけど……
こんな事になるまで、それが実際にどういうことなのか、覚悟なんてできていなかったんだ。僕に戦う資格なんて……」
内海「いい加減にしないか!」
さくら「内務大臣!?」
内海「それでどうするんだ?首相の座を降りるかね?冗談ではない。覚悟だの資格だのはもう関係ない。あんたはもう始めちまったんだ。
こんな時に政変のゴタゴタなど起こしてみろ、テロが横行国家はたちまち転覆だ。
あんたはこのテロ戦争に勝利するまで、血を吐いてでも政権を維持するしかないんだよ!」
尽「……ええ、その通りです……。」
尽は机に伏せってしまった。さくらの携帯が鳴る。
さくら「はい、あ、新村さん。はい……はい。総理にお伝えします。……総理、テロボットです。」
尽「……こちらから仕掛けなければ、彼らは事を起こさないだろう?」
さくら「駄目です。今回の敵は町を破壊しています。」
尽「……。」
テロボット襲撃の現場。寺門、静、平の三人が中継している。
寺門「総理は来るか?」
平「来ますよ。テロボットが派手に暴れてるのだって、奴を呼ぶためでしょう。あいつらの目的は、俺らと同じなんスよ。」
セイカイオーが飛来する。
平「やっぱり来やがった。あれだけ叩かれても、奴は懲りずに戦いたいらしいですよ。」
平はカメラを担ぎ、セイカイオーとテロボットの方へ走り出す。
寺門「おい、ヒラ!」
平「チーフたちは避難してください!俺は奴のせいで町が壊れるとこ、バッチリ撮って来ますから!」
片原『総理、支持率は過去最低です。これまでのように動かせるとは思わないように。』
尽「わかっています。それでも……やらなきゃ!」
両腕に回転ノコを装備したテロボットがセイカイオーに接近し、その刃を振り下ろす。聖域は発生せず、庇おうとする腕の動きすら追いつかないまま、セイカイオーは胸を切り裂かれた。
尽「無傷で勝てるとは、思っていない!」
ノコギリが振り下ろされた隙を突いて、セイカイオーのパンチが当たる。しかしその拳は遅く、テロボットに大した損傷はない。
尽「くっ!?ぐわぁっ!」
ドゴォ―――ンッ!
テロボットの体当たりを受け、後ろのビルに叩きつけられるセイカイオー。そこで尽は、尻餅をついたセイカイオーのすぐ下に人影を見つけた。その人物の声を、セイカイオーの外部マイクが拾う。
平『あ、あと50センチずれてたら……』
尽「!あなたは、平晴海さんの……?危険です、早く逃げて!」
平『何だよ、俺だから何だってんだ。助けて恩を売るか?目障りだから見殺しにするか?どっちにしたって俺は、絶対にお前を政界から抹殺してやる!』
テロボットが歩いてきて、座り込んだまま動かないセイカイオーの前で立ち止まる。しかし、テロボットが見下ろしているのは、セイカイオーではなかった。腕を振り上げる。
平「何……俺、なのかよ?ちょっと、待て、嫌だ、待ってくれ!うわぁぁぁぁぁっ!!」
ガキィィィン!
一瞬、気絶したような気がする。気がつくと平の頭上で、回転ノコのついた腕はセイカイオーの巨大な腕に掴み上げられていた。
平「ハァ、ハァ……お、俺を助けて許してもらおうったってそ、そうはいかねぇぞ。俺は絶対に、お前を許さねぇんだ!」
尽「……妹さんの事は、お詫びのしようもない。……戦うっていうことがどういうことか、僕にはわかっていなかった……でも、わかり始めた。
そして、改めて決めたんだ、戦うと。その結果誰かを傷つけ、不幸にさせたのなら、その罪は僕が背負う。例え地獄に落ちようと、僕は戦う。
そして今はあなたを守る。そう決めたんだ……内閣総理大臣として!」
テロボットの腕を掴んだまま、セイカイオーが一気に立ち上がる!
片原『総理、支持率が若干回復してきました。今回は敵の先制攻撃だったからでしょうな。』
尽「よし!セイカイオォォッ、パァ――ンチッ!」
グシャッ。テロボットの頭部がひしゃげる。しかし破壊するにはまだパワーが足りない。
尽「それなら!」
ノコギリ攻撃にもひるまず、セイカイオーがテロボットに抱きつき、鯖折りの形で持ち上げる。
尽「パワーは落ちても、ロケットの推力は変わらないはず……飛ぉべぇぇ――――っ!!」
テロボットを抱えたまま、セイカイオーは天高く舞い上がった。そして空中で反転すると、一気に降下する!
尽「セイカイオォ――――ッ、ドライバァァァ――――――ッッ!!」
地面に激突する直前手を放し、セイカイオーは再び上昇する。テロボットはそのまま大地に叩きつけられ――
ドォッゴォォ――ンッ!!
その轟音と衝撃で、平はまた気絶した。
寺門「まあ、間違いなく大迫力のレポートではあるけどよ……これじゃ支持率上がっちまうぜ。」
病院に運ばれて、警察にこってり絞られて……翌日出社した平に寺門は彼の撮った映像を見せた。会話もしっかり録音されている。
平「……そう言わず、使ってくださいよ。せっかく命懸けで撮ったんスから。」
寺門「あぁ……お前がいいなら、構わんけどな。」
そう言う寺門の後のTVには、既に件の映像が流されていた。平がそれに気付いた瞬間、寺門が肩を掴む。
寺門「いや、なかなかいい数字出してるぜ、ハハハ・・・・・・」
土田「道路に、大穴……あはははは、あは。大穴といえば、万馬券!」
さくら「国土交通大臣、お気を確かに!」
片原「本当にこれで、よろしいのですかな、総理?」
尽「内務大臣の言った通りです。今さら良いも悪いもありません、決めましたから。戦う事、誰かを傷つけ、不幸にする事。そして必ず勝つ事。幸せを……取り戻す事。」
第六話『巨大ロボットテロついに犠牲者 24歳女性重体』 完
最終更新:2009年11月24日 22:25