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物語中盤の一話を切り取った形で。

○月×日、民荷内閣発足後、初めて米大統領が会談のため来日する。

良「たまには総理らしい仕事もしろよ。俺の顔に泥を塗るような事だけはするな?」

 外務大臣外村良(とのむら りょう)もまた英武チルドレンの一人である。外交手腕と外面のよさは天下一品、現在のわずかな内閣支持率も彼のアイドル性に頼るところが大きいのだろう。その実かなりのいたずら好きで、チルドレンきっての問題児でもあったのだが。

尽「わかってるよ。迷惑はかけない。」

とはいうものの、尽の声はさえない。

さくら「総理、そろそろ。」

尽「ああ。……良、それじゃな。」

良は黙って親指を立てて見せた。グッドラック。いちいちポーズを決めたがる男だ。


尽「Mr. President, nice to meet you.」

大統領「Nice to meet you too, young prime minister.」

 高圧的な物言い。その上いきなり「young」を強調されてはいい気はしない。会談はのっけから険悪なムードに包まれていた。

大統領「What's with trouble?」

尽「You don't understand the difference of attitude to safety. Japanese request higher safety levels so far as foods concerned.」

大統領「Huh, you don't need such levels. You should have only foods we export.」

尽(こいつは……!)

話にならない。尽の我慢も限界に近付いたそのとき!轟音とともに部屋が揺れた!

尽「何だ!?」

尽が腕時計に組み込まれた通信機に叫ぶと、官房長官の声が返ってくる。

片原『テロのようです。まったくどこにでも現れる方々ですな……』

尽「くっ……とにかく、すぐにセイカイオーを発進させてください!さくらさん、大統領をシェルターに!」

さくら「わかりました。Mr. President, this way please.」

さくらが大統領やその秘書らを連れて出て行く。一人残る尽。



『征界巨人、発進します。征界巨人、発進します。』

国会議事堂の周囲に大音量のアナウンスが流れ、議事堂が左右真っ二つに分かれる。その間から地上に現れるセイカイオー。脚と背中から推進炎を曳き、セイカイオーが飛び立った!


尽「来た……!」

 尽が見つめる窓の外。キラーンと光が見えるや否や、尽は窓から飛び出した。飛来したセイカイオーの手がその体を受け止め、そのままコクピットハッチへ運ぶ。尽が乗り込むと、セイカイオーは地響きを立てて着地した。

尽「官房長官、敵はどっちから?」

片原『どちらを向いても、です。北から13、東から20、南から15、西から9。……まだまだ増えそうですぞ。』

尽「なっ……何ですその数!?いままで多くて2機だったのに!」

片原『このときを待って戦力を温存していたのかもしれませんな。来日した大統領がテロに巻き込まれたとあっては、この国を巡る状況は大きく変化せざるを得ませんから。革命家としては、最大のチャンスなのでしょう。』

尽「なんとしても、大統領を守らなきゃってことか。さくらさん、大統領は……って、さくらさん?さくらさん!」

片原「いかがなさいましたか?」

尽「さくらさんと通信ができないんです!大統領を任せたんですが……。」

片原「よろしい、垂木様にはこちらから連絡してみましょう。総理は戦闘に専念なさってください。間もなく会敵します。」

尽「お願いします!……敵は50以上、仕方ない、行征剣を使う!」

セイカイオーの手に剣が握られる。支持率は日米首脳会談への期待もあって幾分上がっているが、それでも34.7パーセント。1機や2機なら十分戦える数値だが……。


 その少し前。さくらを先頭に、大統領と秘書、通訳、そして部屋の前で待機していた5人のSSが廊下を走っていた。が、大統領が突然立ち止まる。

さくら「? President, hurry up please!」

しかし大統領は動かない。かわりにSSに何やら目配せをすると、突然指を鳴らした。

さくら「何を……はうっ!」

瞬間。SSの一人が当て身を食らわし、さくらは気を失った。

大統領「……I don’t trust the shelter “made in Japan.” And……」

大統領は倒れたさくらを見下ろしながらこう続けた。

「I know more safety place.」


尽「でぇいっ!これで2機、次は!?っとぐぅわっ!」

行征剣が3機目のテロボットを斬った直後、背面からの攻撃がセイカイオーを襲った。低出力ながらバリア「聖域」が発動しているため大した被害は無いが、尽は激しい衝撃に見舞われる。

尽「くっそぉ!3機目っ!……もうすぐ聖域も消えるな……!」

戦闘が始まれば支持率は瞬く間に落ち、既に30を切っていた。このまま25を切れば聖域を維持する出力が得られなくなり、それからセイカイオーの破壊まで、1分もかからないだろう。

尽「何か手は……あぁ、思いつかない!」

尽が諦めかけたその時、東の空から、何か巨大な物体が近付いてくるのだった!


尽「何だ……でかい?官房長官、そちらから判別できますか!?」

片原『どうやら……航空母艦のようですな、これは。』

尽「空母?空飛ぶ空母ですか。」

片原『はい……世界広しといえども、空を飛ぶ空母はただ一隻でしょう。空母は普通、空を飛ぶ必要がありませんからな。』

尽「そうですね。それじゃやはり……。」

そうこうしている間にはっきりとその形がわかるまでに接近した空母は、怪光線を発射してテロボットを攻撃していく。と同時に空母からは一機の艦載機がセイカイオーの守る首相公邸、つまり首脳会談会場に向け飛び立っていた。

尽「味方、と考えていいのか?さくらさんとの連絡はつきましたか?」

片原「申し訳ありません、こちらにも応答ありません。」

艦載機は首相公邸上空にしばらくホバリングすると、空母に戻っていった。

尽「いるのか、あの中に?」

艦載機が戻ると、空母に異変が起きた。艦尾が分かれ、艦全体が艦尾を下にして立ち上がっていく。艦橋が収納されると同時に艦首が割れ、左右に広がっていき……そこに現れたのはもう一つの艦橋、というよりもロボットの頭だ!

尽「米国機……星条機ゴッドジャスティスか!」


(筆者の英語力の限界により、これより先の英会話はすべて日本語となります)

ゴォォォォォッド・ジャァスティス!!

大統領「フン、若い総理大臣よ。同じ国機でもまるで違うという事を……見せてやろう!」

 空母から変形するだけあって、星条機は大きい。全高約340メートル、セイカイオーの8倍近い。また、セイカイオーと同様に支持率による出力の制御がされているものの、合衆国の国民性ゆえにその支持率は50~60パーセントで安定している。

尽「大統領!そんなもので出てきて……うちの秘書官を、さくらさんをどうした!?そこにいるのか!?」

大統領「まさか。他国民を国機に乗せたりするものか。ここにいるのは私の秘書官とSS達だけだ。彼女ならまだそこで寝ているよ。」

星条機が首相公邸を指差す。

尽「女性を気絶させて、そのまま危険な場所に放り出して来たってのか、あんた!」

大統領「この場を収めれば何の問題もあるまい。米国に牙をむく愚か者どもを討ち滅ぼせばな……ロックオン。ミサイル発射。」

尽「な……待てぇっ!」

セイカイオーがミサイルの目標に向け跳び、行征剣がミサイルを切り払う。そのまま狙われていたテロボットも倒す。

大統領「どういうつもりだ総理大臣?邪魔をするな。」

尽「冗談じゃない!そんなもので攻撃したら乗ってる人間が死んでしまう!町だってただじゃ……?」

尽が言葉を切ったのは大統領が突然大声で笑い出したからだった。

大統領「フフフ、ハハハハ!馬鹿か君は?テロリストなど人間ではない。わが米国民でないなら尚更だ。」

尽「何だと?てめぇ……!」

片原『いけません総理。今のテロをかばった行動で支持率が大きく下がり出しましたぞ。』

尽「そんなこと言ったって……この男にやらせるわけにはいかない!」

大統領「もう満足に動けんのではないかね、総理大臣?黙ってこのゴッドジャスティスの活躍を見ていたまえ。ロックオン!」

星条機からまたミサイルが放たれる。

尽「やめろと言ってるんだぁぁぁっ!!」

セイカイオーが跳ぶ。が、行征剣が振るえない。出力が下がりすぎているのだ。ミサイルをまともに受け、倒れるセイカイオー。



リポーター『これは一体どうしたことでしょうか?征界巨人が、コメリカ国機の攻撃から、テロボットをかばっています。首相にはテロと戦う気が無いというのでしょうか!?』
自衛隊員『危ないから下がって!』

アナウンサー『ありがとうございます。安全には十分注意してください!えー、日米首脳会談のレポートのはずが、大変な事になってしまいました。本日番組内容を変更してお送りしています。しかし朝江さん、首相のこの行動はどういうことなんでしょうか?』

政治評論家『そうですね、ここでコメリカの機体がテロを制してしまうと、その後の会談がずっと向こうのペースで進んでしまう、そういう事を懸念しているんではないかと思いますね。』

アナウンサー『なるほど。しかし日本の国機が破壊されてしまいでもしたら元も子もないのではないですか?』

政治評論家『えぇその通りですよ。ここは首相にもものの優先順位ってものを考えてほしいですね。……』

良「馬鹿野郎。不器用にもほどがあるぜ……!」

テレビ中継を聞きながら良は愚痴った。尽のやり方はあまりにも愚直にすぎる。政治家として、批判すべきは尽の方だろう。だが尽の友人としては……。


大統領「ようやく黙ったか、邪魔者が。ではゴッドジャスティスの力、存分に見せてやろう。オールロックオン!フルファイア!」

星条機から無数のミサイルが発射され、次々にテロボットが爆発していく。それらのパイロットの悲鳴が、尽には聞こえる気がした。

尽「やめろぉっ!……頼む、やめてくれ……!」

立ち上がる事すらできないセイカイオーの中で尽はうめいた。その声は国民に聞こえるはずもないが、町をも巻き添えにして破壊されていくテロボット達の姿は、マスコミによって国民の目にも届いている。そして、変化が起ころうとしていた。


尽「これは……?セイカイオーが、動く!」

支持率が急激に上昇を始め、見る間に30パーセントを突破する。再びミサイルの迎撃と斬撃によるテロボット撃破に乗り出すセイカイオー。

大統領「また邪魔を……!いやその前に、なぜ動ける征界巨人?テロリストを庇うような総理大臣が、なぜ支持されるのだ!?」

良『あんたのおかげだよ、大統領。』

大統領「貴様は、トノムラ!どういうことだ、何が言いたい!?」

良『あんた暴れすぎたんだよ。一方的な戦闘なんてただの虐殺だ、見たくもない。そうして生まれたあんたへの反感が、総理への支持に繋がった。』

大統領「バカな。戦争はボクシングではない。フィフティ・フィフティである必要などあるか!だいたい非合理だ。そんなことで支持率が変わるものか!」

良『そう、バカなんだよ、だから苦労してんだ。でも、それで助けられる事もあるんだな。……ついでに言えばあんた、ボクシングでも一方的な試合が好きなタイプだろ。』

大統領が刹那、ぐっ、っと息を呑む。そして
「愚か者ども……!やはり我が合衆国が、正しく導いてやらねばならぬようだな。その第一歩だ、このテロリストども、私が裁いてやる……ミサイル、一斉発射!」

尽「勝手なことを言うなぁっ!!」

セイカイオーが行征剣を一振りした。その一振りで星条機から吐き出されたミサイルはすべて破壊され、テロボットも一機残らず倒れた。爆発する機体はなく、めいめい脱出するテロリストたちが見える。見れば支持率は50を超えていた。

大統領「うぬっ、これほどの力……我が合衆国以外の手には余るな!消えろ、征界巨人!」

数えきれないミサイルがセイカイオーに迫る。が、セイカイオーは逆に突っ込み、ミサイルをかいくぐり、星条機に体当たりをかけた。セイカイオーの8倍の巨体がよろめく!セイカイオーはそのまま上昇し、星条機の頭の高さで行征剣を大上段に構えた。そして!

尽「メェェェェェェェェェンッ!」



大統領「う、うおぉぉっ!!」

コクピットで思わず頭を抱え身を守ろうとする大統領。しかし行征剣は星条機の目の前で止められていた。

大統領「す、寸止め……」

尽「これ以上この国を、国民を侮辱するなら、ただでは済まさない。」

数秒の間放心していた大統領ではあったが、すぐに平静を取り戻して言葉を次いだ。

大統領「『セイカイ』の意味、知っているぞ。Defeat……この力でまた、世界を侵略していくつもりか、世界大戦を繰り返すつもりか!」

尽「違う。Journey……いつまでもコメリカの子供じゃない、独立した国家として世界と向き合って征く、それが『征界』の意味だ!」

大統領「……。」

ビョン。星条機のコクピットに、再び良の顔が映る。

良『あんたの負けだ。世界最強の国機が、踏み潰せるほど小さな征界巨人に負けた。揉み消すつもりだろうが……わかってるよな、俺の顔の広さ?リークぐらいわけない。』

大統領「私を、合衆国を脅す気か、トノムラ?何が望みだ!?」

良『なに、世界最強のメンツに比べれば、大した事じゃないさ……。』


アナウンサー『今回の日米首脳会談、争点の一つだった「遺伝子組み替え牛肉の輸入自由化」については、入念な安全審査の態勢確立まで見合わせるという、コメリカ側の最大限の譲渡を引き出す事に成功したわけですが、山本さんこの点はどうですか?』

タレント『いやぁ、やっぱり安全が確認されない物を輸出されても嫌ですからねぇ……』

さくら「今回はご立派でした。見事な結果も残されて。」

尽「いや、さくらさんが無事だったのが何よりだよ……あ、良。」

良が総理の執務室に入ってきた。あれ、怒ってる?

良「この、馬ッッッッ鹿野郎っ!!あれほど俺に迷惑をかけるなと言ったろうが!米国機とやり合うとはどういう了見だっ!?」

尽「……ごめん。すまなかった……」

良「……とまぁ、外務大臣としては以上。ここからは日本人の一人として……ありがとな。スカッとしたよ。」

尽「……プッ、フフ、はははは、ははははは!」

片原(外村様、縁の下の力持ちですな。)

良(フッ、官房長官には負けますよ。)


第?話『「アイム総理」首脳会談放り出す』 完



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最終更新:2009年11月24日 22:38