○月△日、いまだ日本との緊張状態が続く隣国へ向け総理大臣が出発する。
翔「浮かない顔だな。ま、面倒な仕事なのはわかるがな、仕事の選り好みなんか出来る立場じゃないんだぞ、お前は。」
曽良宙(そら ひろし)は英武チルドレン一の熱血漢であり、宇宙開発技術庁長官である。
尽「そんなんじゃないさ。ただ・・・・・・苦手なんだよ、飛行機。」
宙「なにを子供みたいな事言ってんだ。さっさと行ってこい。」
尽「ああ・・・・・・。」
政府専用機々内。離陸を待つ尽と秘書官のさくらが座っている。
さくら「総理、少し落ち着いてください。」
尽「これが落ち着いていられるか!もうすぐ空を飛んじゃうんだぞ?おおお落ちたらどうするんだよ?死んじゃうじゃないか!」
さくら(・・・・・・意外な一面を見てしまったわ。)
子供のように喚き散らす尽を見ながらさくらは溜息をつく。
尽「そうだ、船!船で行こう!それがいい!」
さくら「総理、もっとわが国の航空技術を信用してください。それに今から船に切り替えるのは不可能です。予定もありますし、何より・・・・・・もう離陸しています。」
尽「んな・・・・・・何ィ!?・・・・・・いやだ、降りる!降ろせェェ――――ッ!」
さくら「離陸に気付かないくらいなら何も心配いらないじゃ・・・・・・きゃっ!」
そのとき機が大きく揺れた。
尽「それみろ、そーれみろ!やっぱり飛行機は駄目だ。降ろせ、オロセェェ―――――――ッ!」
さくら「総理、それよりも状況を・・・・・・こんな揺れ方おかしいわ!」
さくらが窓から外を覗くと、そこにはロボットの巨大な顔があった。
さくら「飛行型のテロボット・・・・・・あぁっ!」
また機が揺れる。さくらの通信機が鳴った。
片原『垂木様、応答願います。その機は飛行型のテロボットに狙われております。お気をつけなさいませ。』
さくら「官房長!気をつけろと仰られても、どうすれば?」
片原『現状では総理を人質にとられたも同然ですので、空自が使えません。既にセイカイオーを発進させておりますので、総理にはそちらに乗り換えていただきましょう。総理はどうなされていますか?』
さくら「総理は……取り乱しておられます。」
尽「仝×△゛〆z―――――ッ!!」
尽の奇声は既に言葉を成していなかった。
マッハ2で飛行するセイカイオーは5分とたたずに政府専用機に追いつき、飛行型テロボットに衝突した。テロボットが体勢を崩し、政府専用機から遠ざかっていく。
片原『今です、垂木様。総理をセイカイオーに。』
さくら「はい!総理、お気を確かに。総理!」
尽「えっ!・・・・・・何、さくらさん?」
さくら「テロボットです。セイカイオーが来ています。乗り換えてください。」
尽「乗り換えるって、どうやって?」
さくら「飛び移るんですよ。すみません、扉を開けてください!」
紆余曲折あったものの、何とかセイカイオーに乗り込んだ尽。
「死ぬかと思った・・・・・・さくらさん、意外と無茶するのね?」
片原『総理、敵が来ますぞ。』
尽「あっ、はい。ってうわっ!わっ!うわぁ―――っ!」
飛行型のテロボットは素早く旋回を繰り返し、大きな鉤爪でセイカイオーを攻撃する。
宙『ダメだ、セイカイオーで空中戦は無理だ。着陸しろ、尽!』
尽「宙か?しかし・・・・・・アッ、うわぁぁぁぁっ!」
テロボットの攻撃で致命的に体勢を崩したセイカイオーは、地上へと落下していった。
宙『言わんこっちゃない・・・・・・!』
テロボットは政府専用機から離れ、不時着したセイカイオーの目の前で、町を破壊していく。
宙『いいか、セイカイオーにできるのはロケットによる弾道飛行、頑張ってもホバリングだ。空中じゃ奴には勝てん。飛ぶなよ!』
尽「しかし、このままじゃ町が・・・・・・。」
片原『ふむ・・・・・・これはセイカイオーを出した事自体、失敗だったかもしれませんな。』
さくら『では、あのまま機内に残っているべきだったと仰るのですか?』
片原『もちろんそういう訳ではありませんが、あのまま機が墜とされていれば、国民の反テロ意識は高まったでしょう。対してセイカイオーの出撃後にむざむざ町を破壊されたのでは、反感はむしろ我々に向かいます。』
さくら『・・・・・・縁起でもない事を、言わないで下さい。』
片原『申し訳ありません。ですが、はじめから今の状況が狙いだったとすれば・・・・・・なかなか大衆の心理操作に長けた方々です。』
尽「とにかく、セイカイオーに空中戦が出来ない事には、こちらの勝ちは無いってことですか。」
さくら『そんな・・・・・・それってどうしようも無いってことじゃないですか!』
片原『それなのですが、丁度いい。曽良様、以前頼んでおいたもの、使用は可能ですかな?』
宙『えっ?あ、そうか。あれがありましたね。まだまだ改良の余地はありますが、十分いけますよ!』
片原『結構。では、すぐに発進準備にかかりましょう。』
尽「何の話ですか?」
片原『こちらで手を打ちます。総理はとにかく最善を尽くしてお待ちください。』
尽「はぁ・・・・・・はい。」
ほどなく、セイカイオーのレーダーが新たな機影をとらえた。
尽「飛行機?こっちに向かってくるようだけど・・・・・・」
片原『レーダー範囲に入りましたか。では総理、桐家門のボタンを押してください。』
尽「桐家門?これか。ところでこっちに向かってくる飛行機、あれは?」
尋ねながらボタンを押す尽。
片原『ご存知でしょう、古来より桐の木には・・・・・・』
尽「・・・・・・鳳凰が、宿る。あれが鳳凰?」
宙『そう、官房長からの要請でJAXAが開発していたセイカイオーの空中機動ユニット、「ほうおう」だ!』
それまでセイカイオーに一直線に向かってきていた「ほうおう」が複雑な機動を始める。同時にセイカイオーは尽の操縦を離れて動き出す。
尽「何だ?勝手に?」
宙『心配するな、ドッキングのためにこっちでコントロールをもらっただけだ。そしてセイカイオーは、翔ぶ!』
尽「セイカイオーガトブ・・・・・・」
セイカイオーが上昇する。それを察知したテロボットが攻撃を加えようとしたが、「ほうおう」がセイカイオーの背中にドッキングする方が早かった。セイカイオーは先ほどとは比べ物にならない機動性で巧みに攻撃をかわし、高速でテロボットから距離をとった。
尽「無明の闇を切り裂き、果て無き天空を征く・・・・・・征天巨人、鳳ッ!翼ッ!!セェェェィカァァァァァィ、オゥッ!!」
さくら『なっ・・・・・・なんですか今の名乗りは!?』
宙『官房長、俺たちドッキング後の名前まで決めてないですよね?』
尽「フフフ、飛んでる、飛んでる・・・・・・」
片原『ふむ、これはどうも・・・・・・総理、お気を確かに。総理、落ち着いてくださいませ。』
尽「僕が、セイカイオーが、飛ンだァ―――――ッ!!」
片原『駄目ですな、これは。』
さくら(・・・・・・意外な一面を見てしまったわ。)
尽「ほぉぉぉぉよくっ!ぎょぉぉぉぉせぇぇぇぇけぇぇぇぇぇん!」
セイカイオーが行征剣を構える。
片原『いけません総理。行征剣では威力がありすぎます・・・・・・』
ズバァ――ン!
テロボットは真っ二つ。パイロットが脱出するとそれを待っていたかのごとく大爆発を起こした。
尽「勝った・・・・・・。あれ?」
テロボットの破片は町へと降り注ぎ、各所で小爆発を起こしていた・・・・・・。
テロの影響で総理の隣国への訪問は延期になった。
アナウンサー『・・・・・・これに対し総理は「調子に乗りすぎた」などと発言しているとのことです。では被害のあった現場から中継です。太田さん?』
リポーター『はい。避難勧告が間に合ったため怪我人は出ませんでしたが、今回のテロで町には大きな被害が出ました。町の人に話を伺ってみたいと思います。』
住人1『おおぅ総理のヤツがビュンビュン飛び回ってよ、ロボットが爆発してさお前、俺の家のほうに落ちてくんだもん、見てらんなかったよォ。』
住人2『わざわざあんな羽つけてねぇ、町壊してるんですから。/あれも税金で作ってるんでしょう?/ホントやめてほしいですよねぇ。』
片原「この失点を取り返すには時間がかかりますぞ・・・・・・。」
宙「こりゃ『ほうおう』は封印だな・・・・・・。」
さくら「今回ばかりは、総理に問題があったと思います。」
尽「・・・・・・やっぱり空怖い。」
第??話 『“セイカイオー”が飛んだ・・・・・・』 完
最終更新:2009年11月24日 22:53