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ついに伝家の宝刀、自衛隊治安出動に踏み切った内閣。しかし強化されたテロボットの前に自衛隊は歯が立たず、
逆に被害を拡大させてしまう。この結果支持率は大幅に低下し、20パーセントを大きく割りこむ事態となってしまった。

そんなある日内閣に追い討ちをかける出来事が起きる。なんと総理秘書官垂木さくらの恋人である雑誌記者、
谷仁がテロ組織に通じている事を彼女に告げたのだった。

谷「このことが公表されれば内閣はもちろん、お前の将来も完全に終わりだ。で、相談なんだがな。」

さくら「……。」

谷「内閣の情報を流せ。そうすればこのことは黙ってる。どうだ?」

さくら「そうね……。」

この話を呑めば内閣は確実に倒れる。だが所詮秘書である自分の将来までが絶たれる訳ではない。
内閣と自分の両方が破滅する道と、内閣だけが終わる道。さくらは考える振りをしたが、その心は決まっていた。

さくら「情報は、流しません。好きに書くといいわ。」

谷「おい。」

さくら「テロに屈すれば今までの日本は終わりよ。私の将来なんて問題じゃないでしょう。」

谷「……惚れてるのか、民荷尽に。」

さくら「……あなたには、ゴシップ記事の方が向いているわね。さよなら。」


さくら「私を解雇してください。一刻も早く。」

尽「これのことかい?」

尽は辞表をつき返し、一冊の週刊誌を広げながら言った。開かれたページには「総理大臣主席秘書官はテロ組織に通じていた!」とある。

さくら「そうです。わかっているなら早く。」

尽は首を振る。
「できないよ。さくらさんは知らなかったんだろ?ましてその人に何か喋った訳じゃない。さくらさんの責任じゃないよ。」

さくら「そういう問題じゃありません!」

尽「君を解雇なんてさせない。テロに通じてたなんて事実もない。気にしなくていいよさくらさん、大丈夫。」

さくら「あなた、この状況を……!」

尽「新村さん、この記事を書いた記者の行方は掴めたんですか?」

新村「いえ。徹底的な捜索を行っているんですが。おそらく既に海外か、空の上……でしょうね。」

さくら「……。」





この報道はたちまち広まり、「テロは内閣の自作自演」とまで囁かれるようになった。当然、日に日に落ちていく支持率。

静「平君、これ、どう思う?」

平「……自作自演で、いままで国民を巻き込んできたっていうんスか。」

静「あ……ごめん。そんな風に思いたくないよね。」

平「別に。あの総理ならあるんじゃないんスか。」

静「そう、そうよね。あの総理だもんね。」

平「そうっスよ。その方が……簡単だ。」


そんな状況下で最も優先される首相の職務は、連立与党をまとめる事である。尽とさくらは各党を回って
今後の方針を確認していった。しかし、どこにいっても投げられる言葉は冷ややかで、これまで抱えてきた
内閣への不信感が一気に噴出したようだった。

党首「いや、我々はマスコミの報道など信じてはいないがね。それはそれとしてどうして彼女、垂木さんを解雇しないんだね?」

尽「潔白なのは彼女も同じです。解雇する理由がありませんから。」

党首「彼女は泥を被った。理由としては十分……彼女自身、そう思っている風だが?」

さくら「……。」

尽「そうかも知れません。しかし、私は嫌なんです。」

党首「……若いな。その若さは確かに君の魅力だ。だがこうも裏目に出てばかりでは、我々もついてはいけんよ。」

さくら「そう言わず、どうか!」

党首「君も、災難続きだな。責任を感じてしまうだろう。」

そこで時間切れだった。次の党に向かう車で、尽は言った。

「君の責任じゃないから。」

さくらはもう、事務以外の言葉を話さなかった。


夕暮れ。国内某所。

幹部「現在の内閣支持率が10.5パーセント。計画の範囲内です。」

???「よし。各部隊に指令。状況を開始せよ。」





 同じ頃、首相官邸総理大臣秘書官室。5人の秘書官が交代で総理大臣執務室に入り、
尽と打ち合わせをしていた。そこへアラームが鳴る。

新村「テロボット出現。一斉に……う、50を、越えます!」

尽「な……50!?」

開け放しの扉でつながった執務室から尽が駆けてくると、現場の衛星写真がディスプレイに映された。
おびただしい数のテロボット。飛行タイプも確認できる。通信機ごしに閣僚たちが言葉を交わす。

諭子『でもでも、大統領がきた時だって、似たようなものじゃない?』

衛『数だけならな。一機一機の武装が桁違いだぜ。一目でわかるほどな。』

尽「くっ……衛、陸自、空自の……治安出動を。」

衛『わかった。』


だが、装甲車、航空機――出撃した自衛隊のあらゆる装備は成す術も無く、テロボットの群れによって次々と破壊されていった。

四之宮「全く歯が立たない……!」

尽「……衛、隊を撤収させろ。このままじゃ犬死にになる。」

衛『馬鹿野郎!ここで下がって何のための自衛隊だ!』

尽「役に立たないんだから下げろ!嫌なんだ……こんな風に人が死んでくのは、もう!官房長官!」

片原「総理、今の支持率をご存知ですかな?」

尽「11……もう、10を切っているかも知れませんね。でも。」

片原「総理……。」

片原は尽の後ろに立っているさくらに目をやった。

「?……わかりました。承認致しましょう。」

尽「ありがとうございます!」

尽が駆け出していく。

片原「……垂木様。」

さくら「……何ですか?」

さくらは顔面蒼白し緊張に震えていたが、何か奇妙な自信と覚悟に溢れていた。





撤退していく自衛隊を、テロボット達は追わない。もとより自衛隊は目標では無かったし、本命であるセイカイオーが現れたからだ。

尽「この出力じゃ、行征剣は使えない。素手で、どこまでやれるか!」

数機のテロボットが機関砲を発射する。聖域の弱まったセイカイオーに、成す術はない。

尽「くそぉっ!これぐらい、覚悟はしてきた!」

片原『総理、残念ながら覚悟だけでは勝てませんぞ。』

尽「それでも!」

片原「参りましたな……垂木様、何かいい方法はありませんかな?」

さくら「……一つ、あります。」

片原「それは?」

さくら「支持率集計プログラムにハッキングし、支持率を……改竄します。」

新村「!きみ……。」

さくら「責任は私が取ります。免職でも逮捕でも……」

尽『待ってさくらさん!そんなの国民への裏切りだよ!駄目だ、絶対に駄目だ!』

衛『……本当にできるのか?』

さくら「セキュリティが異常を察知するまでですが。5分か、1分か、30秒か……とにかく、可能です。」

尽『駄目ださくらさん、やめろ!みんな止めてくれよ!』

誰も、何も言わなかった。

さくら「ごめんなさい、総理。あなたは、勝たなければいけないの……一番大切なものを裏切ってでも。」

尽『さくらさ……』

さくら「ごめんなさい。」


しばらく通信機からキーを叩く音が聞こえた後、支持率を示すゲージは急速に上がり始めた。

尽「支持率70パーセント。」

尽はセイカイオーを立ち上がらせた。数十機のテロボットが襲いかかる。しかし。

尽「……無駄だ。そんな攻撃じゃ今のセイカイオーには、傷一つ付けることはできない。」


 そこからのセイカイオーは、正に鬼神であった。その拳が飛びかかってきたテロボットを
粉砕したのを皮切りに、並み居るテロボットを打ち砕き、引きちぎり、踏み潰していく。

新村「強い。」

宙『あれで70パーセント?100パーセントになったら……そりゃ敵はないわ……。』

諭子『でも、なんだか怖い……。まるで、怒ってるみたい。』

さくら(違う、泣いているんだわ。)

3分30秒後、セキュリティに察知され動力が落とされたときには、50機以上いたテロボットは全て瓦礫と化していた。


さくら「すべては私の独断です。処分を。」

尽「……さくらさんの判断は正しかったよ。ああしなければ、セイカイオーは破壊されていた。」

さくら「総理。」

尽「さくらさんは悪くない!責任はあんな状況でセイカイオーを発進させた僕にあるんだ!」

さくら「……あなたはいつもそう。何でも自分のせいにして、私の責任を追及してはくれなかった。」

尽「何?」

さくら「確かに、私は秘書官に過ぎません。でも、私だって英武チルドレンです。責任を持って職務を全うしたい。
    なのにあなたは……いつでも自分ばかり責めた。」

尽「ちょ、ちょっと待ってよ。」

さくら「あなたの役に立ちたかった。苦しみを分け合いたかった。あなたが責められるなら、私だって……違う
    ……私、本当はあなたの邪魔をしたかったんだわ……。」

尽「な……」

 尽を妬んでいた。それがいつしか彼の実力と個性を認め、彼の補佐に全力を尽くそうと思った。……つもりだった。
しかしやはり自分の根底にはいつでも、尽を出し抜き、蹴落とそうとする意思があったのではないか。そしてそんな
自分が憎いから、さくらは責任を負いたがった。

岡「……ま、いっか。言わせて頂きます、総理。守るだけが愛情じゃないのですよ、時には罰せられる事で救われる
  事だってあります。特にこういう女の子はね。」

尽・さくら「岡さん?」

岡「三十ン年この仕事させて頂いてきましたが、総理にこんなことを申し上げたのは初めてです。
  ですから――四の五の言わず言う通りなさい!」

尽「は、はい!……さくらさん。」

さくら「……はい。」


手を握りしめ、唇を噛みしめてから、尽が口を開く。

尽「……君の、せいで、わが内閣はさらに困難な状況に追い詰められた。……責任を取ってもらう。」

さくら「はい。」

尽「この状況を乗り切るために、これからも僕の主席秘書官として、その力を貸して欲しい。それが君の処分だ。」

さくら「……総理。」

尽「この内閣には、いや、僕には……まだ、君が必要なんだよ。」

さくら「……この状況を乗り切る……何よりも厳しい処分ですね。」

さくらは目を潤ませたまま微笑んだ。


 内閣は即座に記者会見を開き、異常な上昇を見せた支持率が改竄によるものだと説明した。

尽『私は国民の皆さんを裏切りました。しかし、今政局が動けばテロに対し大きな隙ができてしまいます。
  だから……信じて欲しいとは言えません。ただ、あと少しだけ時間をください。』

もはや何と言っているのかすらわからない、おびただしい数の野次が飛ぶ。


 翌朝のニュースはもちろんこの話題で持ちきりだ。

アナウンサー『国機の出力は支持率によって制限されるという前提を裏切る今回の内閣の行為に対し、
         野党からは明日にも内閣不信任決議案が提出される見込みで……』

静「とうとうやっちゃったって感じですね、総理。」

平「しかし何てストレートな物言い。頭の悪さが透けまくりっスよ。」

寺門「いじりがいのあるバカだったんだがな。残念だ。」

支持率2.1パーセント。


幹部「あれだけの戦闘ロボット軍団の敗北が、予定内だったと?」

???「支持率の改竄。ありえる話だった。だが、今度こそ内閣に手札は無い。支持率は完全に地に落ち、
     改竄も二度とは使えない。政府は倒れ、俺はこの国を作り変える。」

幹部「見事です。あなたこそ、新たなるこの国の指導者に相応しい……。」

???「世辞はいい。あの機体の調整、完璧にしておいてくれよ。」


数日後、内閣不信任案は可決された。


第X-1話『内閣不信任案可決』 完



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最終更新:2009年11月24日 22:58