アットウィキロゴ


 黒いセイカイオーはその銃口をセイカイオーに向けたまま静止している。恐らくこのまま弾が発射されるだけで、すべては終わる。

平(このまま、アイツは死ぬ……このときを、俺は待ってたんじゃないのか?そうだ、死んじまえばいい……なのに何でこんな、恐ぇんだよ?)

静「今、セイカイオーが同じ姿をしたロボットによって、破壊されようとしています。これがこの国の……アッ、平君!?」

平「違うっ!うわああああああっ!!」

平が叫びながらカメラから離れ、そのフレームに入り込んだ。
「ハァ、ハァ、おい、総理!聞こえてるか民荷尽!平だ、お前に妹を殺された平恒夫だ!いいか、俺は一生お前を許す事は無いだろう!」

静「ちょっ、チーフ、いいんですか!?」

しかし寺門はニヤついた顔で腕を振り回しながら、カメラを覗き込んでいる。続けろ、といっているのだ。

平「お前言ったよな?妹の事、絶対に忘れない。罪は背負って生きていくって。……ここであっさり
  やられちまって、妹や、今まで犠牲になった人達のことみんな無駄にして、それで死ぬのが
  お前の償いなのかよ!?」

いつしか他局のリポーター達は言葉を失い、ぼんやりと平を見つめていた。あるカメラマンなどは、自局のリポーターそっちのけで平を映したりしていた。

平「そんなの許さねぇ……お前は、生きるんだよ。生きて、妹達の分まで生きて、苦しむんだよ!
  だから死ぬな。勝て。勝ってくれよ……頼むよ総理、頼む。」

リポーター1「……頑張って、総理。」

リポーター2「そうだ、頑張れ総理。」

それからだ。並み居るリポーターたちがこぞって総理の応援を始めたのは。そしてその姿はあらゆるTV局、ラジオ局にて放送され。


母親「あっ、マーくんまたこんなニュースなんか見て。」

子「でもおかーさん、これしかやってないんだよ?」

母親「ええ?……(チャンネルを替える)まあ。」


テレビを見ている社長。
「おいみんな―、仕事止めて集まれ。民荷がやべえぞ。」

元同僚1「え、マジっすか?」

元同僚2「頑張れ民荷ー!俺たちゃみんな応援してっぞー!」

おばちゃん「民荷くーん、アタシがついてるわよー!」


それぞれの場所でTVに喰らいついている人達。
ケン一「頑張って、総理のお兄ちゃん。」


トレーナー「ファイトだ、総理。」


エンジニア「そうだ、負けんな総理。俺達のセイカイオー、壊したら承知しねえぞ。」


奇跡が、起ころうとしている。





征界『……国民が騒ぎ出したか。さんざん蔑み、虐げておきながら他に頼るものが無いと見れば即座に手のひら返す。
    これがお前の守ってきたものの正体だ。……気付くのが遅すぎたが。』

コクセイオーの機関砲が火を噴く。だが弾はセイカイオーの表面で弾けた。

征界『何……聖域か?』

尽「あなたらしくも無い……忘れたか?僕が乗っているのはただのロボットじゃない。みんなの想いを力に換えることの
  できる『国機』、征界巨人セイカイオーだってことを!」

さくら『支持率、68、69……70を突破しました!』

征界『……1%が、あっという間に70だと?ふざけるな。これだから国民という奴らは!真面目にやれよぉ―――っ!!』

征界の叫びとともにコクセイオーの全砲門が吠える。だがセイカイオーはその攻撃をものともせず立ち上がる!

尽「確かに理不尽だよ……あなたが怒る気持ちもわかる。でもこれが国民の想いなんだ。例えどちらに正義があろうとも、テロという
  暴力を許しておけない優しい心。この国の何が間違っていようと、それだけは絶対に揺るがない……揺るがない真実なんだ!!」

征界『黙れっ!そんな奴らの気まぐれで、俺の親父は殺されたぁっ!!』

砲やミサイルが効かないと見るや、コクセイオーはセイカイオーに殴りかかった。


さくら「85パーセントを突破!」

稔「何だ……セイカイオーが、光ってる?」

宙「多分、オーバーフロー起こしてんだろ。出力が有り余っちゃって、光にして放出してんだよ。」

片原「果たして、そうですかな?ご覧ください。」

そう言って片原がディスプレイを指した。そこにはコクセイオーの攻撃を甘んじて受け続けるセイカイオーの姿が。

宙「聖域が……消えかかってる?出力は上がってるのに?」

稔「聖域を弱めて、そのエネルギーで光ってるってことですか?何の意味が?」

衛「だいたい何で尽は反撃しないんだ。」

片原「さて……?」

さくら「97、98、99……ゼロ!?あ、いえ……支持率、100パーセントです。」

諭子「……こんな事って、あるの?」

稔「……支持率が100となったとき」

宙「征界巨人の前に敵は、ない。」

官房長官執務室は静寂に包まれた。部屋に響いていた戦闘の音も止んでいる。ディスプレイの中でコクセイオーは
その動きを止め、セイカイオーはただ強く、輝いていた。



良「……何が、起きたんだ?」

片原「何も。」

稔「でも、コクセイオーの動きが……。」

片原「それは、支持率が100パーセントですからな。」

さくら「……あ」

宙「征界兄さんも」

衛「日本人」

稔「……敵は無いって、そういう意味だったんですか?」

片原「私はそう思っておりましたが。皆様は何を想像されていたのですか?」

稔「はは……」

宙「もっと派手なものを、期待してました。」

良「俺達みんなガキだった、な。あれこそ最強の力だ。」


尽『そうさ、もう聖域なんて必要ない。』

征界「負けたよ、尽。親父にできなかった事、お前にならきっとできる。――ありがとう。」

尽『兄さん――』

政界はボタンを押した。テロ組織のボスを消滅させ、英武総士郎とチルドレンの名誉を守るボタン。だがコクセイオーは、何の反応も示しはしなかった。

征界「……なぜ。」

公康『……ふぅ。尽、何とか間にあったようだ。……兄上、自爆装置の信管は外した。兄上が消えて終わり、など、
    誰も望んではいないのだぞ。』

尽『よくやってくれた、公康。』

征界「……自爆も、読まれていたのか。フ……完敗だよ。」


支持率は先ほどの数値が幻だったかのように下がり、60代となっている。セイカイオーを格納庫に戻し、尽が戻ってきた。不思議そうな顔をしている。

片原「お疲れ様でした、総理。……前総理があなたを指名した理由、もうおわかりでしょう?」

尽「え……どういう意味ですか?」

片原「国民の心を一つにまとめ、世界にセイカイオーの光を見せた。誰にでもできることではありません。」

尽「……そうか、それが先生が僕に望んだ、僕にしか出来ない事。それなら、もうこの内閣は……。」





 翌日、各国務大臣の辞表が提出され、内閣総辞職が発表された。しかし続く内閣総理大臣指名選挙にて選ばれたのは、やはり民荷尽。

尽「どうしよう、もう僕は……。」

片原「総理。今度は前総理の遺志ではありません。みんなが、あなたを選んだのです。あなたの望む未来、それが今、みんなの望みなのですよ。」

尽「……そう、ですよね。よぉし、そうと決まれば、やりたい事は山ほどあるんです、山ほど!あ、そうださくらさん、
  今度は大臣、やるでしょ?何がいい?」

さくらは微笑みながら首を振った。
「私はまた、総理の秘書をさせていただきます。だってあなたには私が必要、でしょ?」

尽が赤面する。
「あ……そんなこと、言ったっけ……ご、ごめんさくらさん!あ~僕ったらなんて事を!」

さくら「何で謝るんですか?嬉しかったのに……ちょっ、外村君、何がおかしいのよ!?」

良「いやいや、本当はファーストレディの方が良かったんだけど、なんちゃって?」

さくら「ななな、何を言うの!」

尽「ええ、ええ、えええ!?」

岡「あらあら。微笑ましいですわねぇ。」

稔「ううう、さくら先パイ、お幸せにっス。」

公康が入ってくる。
「おい尽、兄上が喋ったそうだ。兄上の組織のスポンサー……『お隣さん』だと。」

一同の笑顔が凍りつく。南北がまた一つになり、脅威は取り払われたかに思えた隣国。しかし統一によって国力を倍化させた隣国はひそやかに、この国への歴史的な憎しみを募らせ続けていたのだ。

尽「……戦争に、なっちまうのか。」

外務省からの総理秘書官参内が読んでいた電信をさくらに手渡す。なぜか頬が緩んでいる。

さくら「え、なんです?……あら、隣国からです。『貴国で起こった連続巨大ロボットテロの黒幕がわが国であることを認め、
    謝罪します。どうか今後も良好な関係を築いていきたいと……P.S.貴国機の見せたあの光は素晴らしかった。』」

衛「何だ、それ?」

良「兄貴が逮捕されて観念し、先手を打って謝罪した……ともとれるが、その場合しらばっくれるのが普通だな。」

諭子「じゃあ、そのまんまの意味なんじゃない?これからは仲良くしましょ、って。」

宙「……マジで?」

参内「その他にも各国から似たような文面が来ていますよ!」

片原「或いはあの、セイカイオーの見せた輝きには、人の憎しみを洗い流す力でも、備わっていたのかもしれませんな。」

尽「……はは、そうか。いいじゃないそれで!許し合うことですべてが始まる、それがこれからのこの国、この内閣なんだから!」


人がいる限り、争いが絶える事はない。しかし少なくとも今、世界はそれを忘れる事ができたのかもしれない。しばらくはこの平和が続くのだろう。人々の心に、セイカイオーのあの輝きが灯っている限り。


最終話『内閣総辞職 最高支持率100㌫』 完


征界巨人セイカイオー    完


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年11月24日 23:03