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 内閣不信任案が可決された。内閣は10日以内に総辞職か、衆議院解散をしなければならない。
テロが終結しないまま政変を迎えれば、国家は転覆の危機を迎える。つまりテロにとってはあと10日、
身を潜めているだけで日本を容易に崩壊させられるのである。

幹部「どうしても、行かれるのですか。もう我らの勝利は決まったというのに。」

???「俺は、お前たちが思うほどよく出来た人間ではない。征界巨人をこの手でねじ伏せねば気が
     済まないのだ。……万一のときは、組織は解散してくれるか。」

幹部「……わかりました。いってらっしゃいませ、ボス。」


 内閣総辞職が決定した今、法案を煮詰めても仕方がない。暇になった何人かの閣僚が総理官邸の秘書官室で茶をすすっていた。

稔「だぁれも、わかってくれなかったんですね。」

源「この内閣と一緒に、日本国もおしまいだ。おいチルドレン、辞表の書き方を勉強しておけよ。」

尽「みんな、すまない……。」

衛「お前一人のせいじゃない。この国全体が選んだ道だ……。」

新村のデスクの電話が鳴った。

新村「はい……総理、テロボット出現です。」

良「悪い冗談ですよ。このタイミングで仕掛けてくる意味がどこにあります?」

新村「いえ、本当です。しかも……」

新村が部屋のスクリーンを操作し、テロボットの映像を大映しにする。色は違うが、そこにいるのは見慣れた形の巨大ロボット。

諭子「……何コレ。」

宙「黒い……ニセセイカイオー?」

尽「これは……官房長官。」

片原「行って、どうなさるおつもりですか?今のセイカイオーには、牛歩戦術すらできはしません。」

尽「だけど、こいつは明らかにセイカイオーを待っている。」

片原「ふむ……まあ、これ以上悪くなりようのない状況です、承認致しましょう。ただし総理、必ず無事で
    お戻りください。これで怪我でもしたらつまらないですぞ?」

尽「官房長官……ありがとうございます。行ってきます。」





 セイカイオーが着陸し、黒いセイカイオーと対峙する。

???『来たか総理、そして内閣の諸君。俺は諸君がテロボットと呼ぶ組織のボス。わかっているだろうが
     我々の勝利は既に決まっている。それをわざわざ出てきた理由は一つ……征界巨人の破壊である。』

黒いセイカイオーがセイカイオーを指さした。

???『我々に煮え湯を飲ませ続けてくれた征界巨人。この手で破壊しなければ気が済まんのだよ。』

尽「この声……まさか!?」

???『気付いたか尽。そう、英武征界だよ。』

内閣一同『な、なんだって―――!?』

英武征界。前首相英武総士郎の長男にして衆議院議員。英武の子供達であるチルドレンにとっては実の兄同然の人物であり、世間でも「0番目のチルドレン」と呼ばれている。しかし前首相の死後、謎の失踪を遂げていた。

さくら『ウソ。嘘でしょ、兄さん!?』

征界『さくらか。悪いがすべて事実だ。あの記者をお前に近づけたのも、な。』

さくら『そんな……。』

片原『――なるほど、こちらの手を容易く見抜いたり、セイカイオーの設計を詳細に知っていたり。近しい人間、
    それも優れた政治家に内通者がいるとは思っていましたが、あなたでしたか。しかも首領とは。』

征界『ご無沙汰しています、片原先生。……尽、わかっていると思うがこれはお前たちにとって最後にして最大の
    チャンスだ。ここで俺を倒せばテロは終わる。』

尽「……なぜだ、なぜこんなことを。」

征界『決まっている。英武総士郎はこの国を腐敗させた。だからだ。』

尽「馬鹿な……じゃあ、兄さんが先生を……殺した、のか?」

征界『安心しろ、俺にも親殺しまでは出来ない。それは別組織だ。既に消えてもらったがな。』

尽は先月テロ組織アジトで起きた爆発事件を思い出した。爆発物の扱いを誤った事故として処理されたが。

征界『尽、お前大統領に言ったそうだな、征界の意味。一つの国として世界と向き合って征く、だったか。
    ならばこの機体こそまさに世界を「制する」巨人……「制界巨人」コクセイオーだ。』

尽「制界巨人……?」

征界『そう。知っているか、尽?お前の乗っている征界巨人は前総理英武総士郎の独善のため、設計段階で
    一切の固定武装を排され今の姿になった。コクセイオーはその葬られた本来の姿。』

尽「本来の姿、だって?違う。間違っているからこそ武装は外されたんだ。そんなのは本来の姿なんかじゃない!」

征界『ならばなぜ征界巨人は剣を持つ?英武総士郎も奇麗事を掲げながら結局は武装を認めているではないか。』

尽「知ってるんじゃないのか?先生は行征剣を作ることに最後まで……」

征界『その剣を振るってきたお前にそれを言う資格はない。』

コクセイオーの右肩から発射された二発のミサイルが命中し、セイカイオーが倒れる。起き上がる力すらないセイカイオー。

尽「くっ!……何でだ、何で兄さんが先生を否定する?誰よりも先生を尊敬していた兄さんが!?」

征界『英武総士郎は間違っていた。その遺志を継ぐお前達も。』






静「総理の駆るセイカイオーは、全く戦う様子がありません。このまま降伏し、日本をテロリストに明け渡す
  つもりなのでしょうか?」

 喋っていることはどこのリポーターも似たり寄ったりだ。セイカイオーの出力が支持率に制限されている事、
セイカイオーの敗北が意味する事を知っているのかいないのか、とにかく内閣を糾弾する。それが今の世の
流れだ。だが、平にとってそんなことはどうでもいい。

平(そうだ……俺はお前の苦しむ姿が見られればそれでいい。)


征界『聞こえるか尽、国民の声が?今まで誰が自分たちを守ってきたかも考えず、誰もがお前を否定している。
    これでもまだ、お前はこの国を肯定できるのか?』

尽「当たり前だ!この国は、僕らの国じゃないか!」

征界『そう、俺たちの国だよ。……一見すると立派な社会だ、だが恵まれすぎた暮らしの中で、国民は徐々に
    堕落していった。英武総士郎の政策が、この国を腐らせてきたんだよ。』

尽「本気で、言ってるのか、兄さん?」

征界『おう!だから憎む、否定する。英武総士郎の残したすべてをな!』

尽「違う、そんなの本心じゃない!」

征界『決め付けるな!』

コクセイオーの全身から砲身が伸び、セイカイオーを撃つ。

尽「うあぁぁぁぁぁぁっ!」


テレビを見ている小さな少年。母親が洗濯かごを抱えて通りかかる。

母親「あっ、ダメよマーくん、総理のニュースなんか見て。」

子「おかーさん、そーりってわるいひとなの?」

母親「そうよ、みんなからお金もらってるくせにね、みんなに嘘ついたのよ。」

子「じゃあ、てろりすとのほうがただしいの?セイカイオーはまちをまもるためにたたかってたんじゃないの?」

母親「……世の中はね、いつもどっちかが正しいとは限らないの。総理も、テロリストも、どっちも悪い人なのよ。わかったらそんなニュース見るのやめなさい。」

子「ふーん……。」





 穴だらけになり、全身から煙を上げるセイカイオー。

征界『そうだ、この国のためなんだよ!だからすべてを消し去る。征界巨人も、お前達も、そしてこの歪んだ社会も!』

尽「ぐぅっ……ハァ、ハァ……やっと、わかったよ兄さん。兄さんは、誰よりも先生を、自分の父親を愛していたから
  ……先生を死に追いやったその『業績』を、憎んでるんだ。この国のためなんて方便だ。兄さんは先生を殺した
  ものに、復讐をしたいだけなんだ!」

征界『……決め付けるなと言った。』

コクセイオーが、その手首の部分に据えられた砲門をセイカイオーの胸の桐家門に向けた。その向こうにはコックピットが――尽がいる。

さくら『ダメッ、総理、逃げて!』

尽「……駄目だよ、さくらさん。僕は先生を、この社会を、国民を信じてるから、このままで……兄さん、それが僕の闘いだ!」

征界『……好きだよ、お前のそういう所。だから撃ちたくはない……だが。』

尽「……!」

第X-1話 『黒いセイカイオー出現』 完


次回予告 「さあ、大変な事になって参りました。只今謎の黒いセイカイオーはその銃口を本物のセイカイオーに向けて
        います。対するセイカイオーは依然として一切の反撃を見せません。わが国の国機はこのまま破壊されて
        しまうのでしょうか?次回征界巨人セイカイオー最終話、続報をお待ちください!」


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最終更新:2009年11月24日 22:52