第一話『そいつの名、忘れがたし』
メガロポリス。
その完全に統治された都市に、疑いをもつ者はいない。
すべてのことが整い、正され、流される。
異を唱える者はいない。
なぜなら、ここにはまともな人間など、いない。
「いよいよ明日だってよぉ、いや、まったく……楽しみだ!」
「今年はどいつが一番だ!?」
「そりゃあ、こいつにきまってんだろ!!」
機械的な声が街の一角から溢れる。
いや、機械的という表現は正しくないだろう。
話しているのは、ロボットだからだ。
子供「……あ、あの」
ロボ1「ぎゃははははは!!……あん?」
ロボットが見下げると、男の子が立っている。
ロボ1「なんだ人間のガキか。何のようだ」
子供「じ、10分の……ボディ洗車で、200カム……」
ロボ1「あ、ああ!? てめえ、俺の自慢のボディが…汚いってのか!?」
見上げる少年の近くで貧乏揺すりをするロボ1。
地面が揺れ、怯える少年。
子供「あ、ああ……ち、違います!」
ロボ1「このガキ、俺達ロボットがてめえらを飼ってやってんだぞ。それを…!」
ロボ1が足を踏み出そうとする。
ロボ2「まあ待てや、相棒……。許してやろうや、まだ十年生きてないガキじゃねえか」
ロボ1「で、でもよ…」
ロボ2「なに、ただって訳じゃねえよ。そうだな……有り金全部置いてってもらおうか」
子供「そ、そんな……か、母さんが病気で…」
ロボ1「母さん?」
顔を見合わせるロボ二人。
そして、突然笑い出す。
ロボ1「はははははははは!! 母さん……母さんか。人間は大変だなまったく…」
ロボ2「人間様には感情があるからな。俺達のように正確な数値で意志を構築出来ない……だから臭い。みっともない……ははは」
子供「う、うぅ……」
ロボ1「ははは、まったくだぜ。さぁ…土手座でもして、有り金全部だしな」
子供「…………」
財布を取り出し、地面に突っ伏す少年。
???「……やめな、そいつらの言うこと聞くこたぁねぇ」
ロボ1「あん?」
声の方を振り返ると、壁にもたれかかる男が一人。
ロボ1「……なんだてめぇは」
???「俺? フン……俺は…」
瞬時、俺の姿が消える!
不意に吹き飛ぶロボ1!
巻き起こる砂塵に包まれる少年は、倒れ伏すロボットを見た!
ロボ1「ぐおぉぉぉぉぉぉ!?」
???「……『正義の味方』だ…!」
砂塵が風に吹き消され、男の姿が現れる!
ロボ2「な、なんだてめぇ…!」
???「ああ、確かに人間は臭ぇ。やっちゃいけねぇ時、感情一つで何かにぶっ飛んで行っちまうこともある……今の俺のようによ」
ゆっくりとロボ2に近づいて来る男の顔は、笑っていた。
???「でもよ、てめえらみてえな芯から鉄でできてる馬鹿にはわからねぇ……力があんだよ」
ロボ2「て、てめぇ……くんな、てめぇ!!」
ロボ2が足元の少年を見る!
子供「ひ、ひぃ……!」
ロボ2「こ、こいつ殺すぞ! い、いいのか!!」
???「できねえ事もできるようになっちまう、まるで魔法だよな……そう、魔法だ」
男は躊躇せずロボ2へと近づく!
ロボ2「……く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ロボ2の足が、子供を踏みつぶそうと踏み込まれる!
駆け出す男!
地響きが鳴り、砂塵が再び辺りを包む!
ロボ2「く、くそ……ハァ……や、やっちまったじゃねぇか……、……あ?」
ロボ2が足の裏の異変に気づく!
???「……やっぱ人間てすげぇよな、こんなことまでできちまうんだからよ!」
ロボ2「ば、ばばば……」
ロボットの足裏!
男がいた!
奴は二本の“腕”で、“巨大ロボットの足”を受け止めた!
驚き、目を見開く少年!
???「そして……なにより!」
男は支えるだけではなかった!
二本の腕で、押し上げていく!
ロボ2「ば、バカなぁぁぁあああああああああ!!?」
???「こんなことができちまう“俺”がぁぁああ!! 一番すげぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
ロボットが吹き飛んだ!
――投げ飛ばされた!
衝撃は粉塵と地響きと、少年の意識に炸裂した!
???「……くそっ、またいらねぇ時間とっちまった…いそがねぇと…」
少年「あ、あの……」
立ち去ろうとする男を呼び止める少年。
???「…なんだよ」
子供「……あ、ありがとう…」
男は振り向かず、立ち止まらない。
未だ去らぬ粉塵に男の姿が消えたとき、声は返ってきた。
大五郎「……大五郎!……覚えときな」
次回予告
荒廃した世界に現れた一人の漢、大五郎。
立ち止まらない。
振り向かない。
男が姿を表すとき、天地一変の大事が起こる。
なぜ奴はやってきた…なぜ奴は強いのか!
次回『男、思い出す』
最終更新:2009年12月05日 14:14