「メガロポリスは、六つのエリアに分かれている」
老人は、窓の外を眺めつつ語る。
「それぞれが螺旋になって、最深部……中央都市へと行く道になっておる。必然的にすべてのエリアを通ることになるだろう。エリアには……蛮族も徘徊しとるし、おぬしと同じ人間もいるじゃろう。いいか、下手なことはせんことだ」
「下手なこと?」
老人の背後に立つ男が一人。
「お前さんが目指すメガロトーナメントじゃが……もちろんお前さん以外の参加者があそこを通る。わかるか、あそこは都市部以外は“無法地帯”だ。都市部へ行くあの道、それ自体が“予選大会”なんじゃ……」
「……っ…はは……ははははは…」
男が笑い出す。
「……何がおかしい」
男は笑みを浮かべながら言った。
「……愉快だな、この世界はよ」
第二話『男、思い出す』
「ぐあぁぁぁぁあああああああああっ!!!」
悲鳴が風の唸りとともに、荒れ果てた大地に響いた。
男の悲鳴だ。
耳をつんさくそれに満足できないのか、盗賊は三度、鞭を振るった。
「や、やめてくれっ! それは大事な資源なん……ぐあぁっ!!」
鞭が唸り、別の男がまたうつぶせに倒れる。
盗賊は男たちを怒鳴り散らした。
機械的な声でだ。
盗賊ロボ「貴様等…俺たちにたてつくってのはどうなんだ!! ああ? 」
男1「だ、だが…この石油はやっと掘り当てたんだ! 冬に向けて貯めなけりゃ……」
盗賊ロボ「うるせぇ!! てめえらはクズだ、水気を含んだ果物と同じだ。生臭せぇしきたねぇ……害虫め!! そこらへんで……ぐちゃぐちゃにしてやろうかぁぁ!!」
???「……果物だぁ? 俺にもよこせや…」
この場にそぐわない、呑気な声。
一人の俺が、ゆらゆらと怪しい足取りで盗賊ロボに近づいた。
盗賊ロボ「…おい、貴様。どこから」
???「あ、これ…なんだ? 水か?」
ドラム缶に溜まった液体を掬い、それを飲む男。
中身は石油なのだが。
???「…まずいぞ、すんませーん」
盗賊ロボ「馬鹿かてめぇはっ!!」
???「ぐっ!?」
鞭が男の頬を弾き飛ばし、男は体ごと宙に浮き、地に叩きつぶされた。
男の頬に伝わる、赤い大地の暑さと、鞭の痛み。
盗賊ロボ「もうてめえら容赦しねぇぇ!! みんな死ねやぁぁぁあ!!」
鞭が人々を襲う。
悲鳴。
???「あーー……」
男は思い出していた。
三年にも、同じことがあったのを。
「うぉおおおおらああああああああああああ!!!」
「せぇやあぁぁぁあああああああああああああ!!!」
大地が割れ、空が裂けた。
2つの拳が生んだエネルギーは、壮大なうねりとなってぶつかり合った。
男は互いのプライドを載せた拳を、二本の足をしっかり踏み込め、ぶつけた。
やがて、弾け飛んだ。
「――ぐっっはぁぁあああああああああ!!!」
弾け飛んだ体。
叩き伏せられる体。
砕け散るプライド。
「……ふん、勝負は見えていた」
対峙する男はそっといたわるよう拳をさすると、背を向け立ち去った。
敗者が生まれ、勝者は去った。
盗賊ロボ「うははっは…はははははは!! おらどうしたよ、ええ!? はははははは!!!」
???「ぁーーーー…」
男はただ“あ”とか“う”とかを延々と口に出していた。
ぴくっと一度痙攣したかと思うと、男は立ち上がり、盗賊ロボに三度近づいた。
盗賊ロボ「あっひゃははははっははははははははは!! は?」
大五郎「いてぇだろてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
今度は盗賊ロボが宙に舞った。
盗賊ロボは二度と鞭を振るうことはなかった。
大五郎「……くそっ、手ぇ痛ぇじゃねぇか」
次回予告
広大な荒野、メガロポリスのファーストエリアで、男は背負う。
男が何かを背負う時、それは覚悟を決めるとき。
見せろ大五郎の必殺拳!
次回『その拳、ただ重く』
最終更新:2009年12月05日 14:16