第一話 嵐を呼んだ転校生?
東京都立杯恵那学園。
通称、ハイエナ高校。
全国の悪がやってくると言われるような言われないような、まあ普通のこの学園に、転校生がやってきた…
「きりーつ、れーい」
担任の登場と共に、教室は沈黙する。
メガネをかけた女教師が、壇上で生徒達に笑いかける。
担任の金目千尋、学園の数少ない女性だ。
けっこう美人なのだが、彼女に近づく野郎は少ない。
まあそれは追々話すとする。
千尋「ぐっもぅにーんっ! 今日はこのクラスに転校生がやってきまーす!」
教室の各所から、喜びの声が挙がる…ことはない。
ここは男子校なのだ、当然やって来る転校生とは言ってもむさい男が一人増えるだけ。
適当な相づちが教室各所からあがり、千尋先生はとりあえず納得したようだ。
しかし!! 我々はその後衝撃の光景を目撃するッ!!!
千尋「んじゃ、紹介するねぇ。『相沢ユウ』さーん?」
最初は、んん?と疑問の声があがった。
それが次第に、沈黙へと変わったのは…
出てきたのが“美少女”だからか…
出てきたのが“二次元美少女”だったからなのか…
今の僕たちには、判断し得ないだろう。
これからも、今も…
そう…転校生は美少女だ。
ただ…青い髪で……なんだかセル画っぽくて、ちょっとロリが入ってるだけだ。
制服もただのセーラー服じゃなくていろいろと手が込んでいる。
彼女が口を開いた。
ユウ「あ、あの………相沢ユウですっ。 よろしくお願いしますっ」
甲高い、所謂ロリボイスが男子校の教室にむなしく響いた。
ユウ「あ、あれ?」
千尋「あ、あらん? どうしたのかなーみんな?」
皆、黙りきっている。
騒ぐべきか…?
というか、つっこむべきか…?
神谷「先生、彼女に質問なんですが…」
おお神谷! えらいぞ!
クラス一くそ真面目なガリ勉野郎だとは思っていたが…出来る奴だ!!
というわけでメガネが立ち上がる。
千尋「んー何かなー神谷君」
神谷「……………」
クラスの全員が、神谷の言葉を待っていた。
そして、次に彼はとんでもないことを口走ったのだ!
神谷「…どこから転校してきたんですか?」
そこからいくのか神谷。
がっかりした。
猛烈にクラス全員の志気が落ちた。
いや、まて。
あくまでも神谷の質問は、“どこから”転校してきたんですか?だ。
つまり、あの二次元美少女がどんな俺たちの知らない世界から来たのかッ!?
なるほどな神谷、さすがクラスのヘッドだ。
クラスの意見が(おそらく)纏まったところで物語は動き出す。
ユウ「あ、はい。首相官邸からですっ」
……首相官邸?
えらいとこが出てきたな。
あの首相め、いなくなる前にとんでもないものを作ってやがったな。
しかし、ある程度の前進を得たナイスな質問だった。
それでも俺たちは彼女のことを、なにもわからないのだが。
千尋「んー…なんだかみんな緊張してるみたいだしぃ、ユウちゃん? 自己紹介でもしてみたらん?」
ユウ「あ、はいっ」
先生がこの場を動かすのは予想外だったが、自己紹介か、なるほど。
俺たちはあまりにも情報が少ない。
へたにこちらから手を出せば、何かとんでもないことが起こる。
そんな寒気に近い予感が俺たちを包んだ。
彼女はすらすらと黒板に自己紹介を書いていく。
ユウ「よっと…できましたぁっ」
俺たちは首を一斉に動かし、上から順に黙読する。
名前 相沢ユウ
通称 U―1
品名 妄想具現化回路内蔵汎用人型決戦兵器
趣味 おかし作り
好きなもの カメラ
嫌いなもの 怖いもの
丁寧な字で書かれているので、一分とかからず俺たちは内容を理解した。
よし、この女はヤバい。
俺たちは一歩づつ危ない道に踏み出している。
後には退けないような気もするが、男のプライド捨ててまで己の延命処置を考えなくてはならないようだ。
だが運命は俺たちを飲み込んでいくのだった。
じりりりりりりりりりりりりりりりりりりり…
耳障りなベルが鳴り響いた。
まあいわゆる一つの、火災警報だ。
校内放送が連なって流れる。
校内放送の人「大変ですー街に巨大ロボットが現れましたー。生徒の皆様は、慌てず騒がず、おかしもの魂忘れずににげてくださーい」
な……
クラスの皆様「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
みんな息のあった連携で窓際に一人残らず顔を寄せ、目を凝らす。
あ、ほんとだ。
ユウ「あっ…あれは悪魔電通っ!?」
ヤバい女がなんか口走りやがった。
激しくイヤな予感。
神谷「な、なんですか悪魔電通って!?」
聞くなよバカヘッド!
こういうとき質問返すのは、メガネキャラのお家芸だな!!
ユウ「は、はい…実はあたし…奴らにねらわれてるんですっ!」
千尋「狙われてるって…どういうことっ!?」
うわ、悪のりしだしたよ。
千尋先生もノリノリだ。
ユウ「あ、あたし…実は政府で作られた…軍事兵器なのっ…!」
あの二次元顔で泣き出すヤバい女。
いやドラマやってんなって、逃げろよ。
ユウ「あたし…ただの兵器なのっ! 学園に来たのは…博士が、いい気晴らしになるからって…」
気晴らしで俺たちの命が大ピンチか。
気楽でいいよな特殊な立場のキャラって。
神谷「そんなことはないですよ!! 君は…人間だ!」
ユウ「め……メガネ君…」
ユウは神谷の手を取ると、なんだか目をシャキッとさせて街を破壊するロボットに目を向けた。
神谷、死んだな。
ユウ「……ゴッド…シグマリオン…!」
神谷「な、なんですって?」
ユウ「みんなの妄想エネルギーを糧にして…ゴッドシグマリオンを呼ぶのっ!! みんな…力を貸して!」
とりあえずヤバい女がこちらを見てる。
…貸した方がいいのか?
とりあえず神谷は死亡確定か。
適当にクラスの全員が手をかざす。
ユウ「…妄想エネルギー変換…具現化…5…10…」
ヤバい女が輝きだした。
とりあパターン通り、グラウンドに目を落とす。
グラウンドになんか足みたいなのが、光とともに出てきてた。
光はどんどん膨らみ、形を形成していく!
ユウ「…できたわ、ゴッドシグマリオン!!」
俺たちは(とりあえず)その巨体を教室から見上げた。
眼孔は鋭く、勇ましい顔立ち。
色とりどりのボディや各所にあるバーニアが実にメカメカしい。
神谷「……えと、これに乗れば…」
ユウ「……頑張って!」
おいおい巻き込んどいて頑張れだけかよ。
おい、いくなー神谷ー。
数分後。
事態は恐ろしさを増した。
神谷「ぐぅっっ…こ、こいつぅぅぅ!!」
巨体な恐竜ロボの火炎放射に身動きがとれないゴッドシグマリオン!
なにか…なにか手はないのかっ!?
ユウ『……くん、神谷くん!?』
神谷「ユ、ユウさん!? これでは…!」
ユウ「近づいたらダメ…なら、“飛翔拳”を使って!」
神谷「飛翔拳だって……!? わ、わかった!!」
ゴッドシグマリオンが、恐竜ロボに蹴りを放つ!
よろめく恐竜ロボを後目に一歩二歩、後退するゴッドシグマリオン!
神谷「エネルギーチャァァァァァジっ!!」
ゴッドシグマリオンの右手が回転し、暴れ出す!
眼孔が敵をとらえ、拳が空を裂いた!
神谷「飛翔拳…クリティカルナァァァァァァァァァァァァァァァァックルぅぅぅぅぅぅ!!!」
飛び出した拳は恐竜ロボの胴を捉え、腹をえぐり、地を引きずり回す!!
そして拳は、恐竜ロボの胴を貫いた!!
神谷「……撃…裁っ!!」
恐竜ロボは木っ端みじんに吹き飛んだ!!
ユウ「…これから、始まるのね……あたしたちの戦いが…」
爆炎に向かい手を合わせ祈る彼女を見て、みんながこう思った。
続かないでくれ、こんな現実。
最終更新:2009年12月05日 14:56