第二話 成功せよ! シグマ合体!
惨劇から一夜が明けた明け方。
巨大なその鋼鉄の巨人を見上げ、人々は呆然とした。
赤を基準に統一されたヒーローチックなカラーリング。
武者の鎧を思わせる頭飾りや、ジェット機のそれに近い翼。
足にはキャタピラーが付き、腕にはバーニアが見えた。
巨人は今は眠るように、その意志を停止させている。
杯恵那学園3年B組教室。
そこからも巨人の姿は眺められた。
昨日の大惨事の後、皆家を焼かれ、結局学園に泊まることになった。
朝日が照り、皆自然と起きはじめる。
皆が起き、教室ではいやな沈黙が漂っていた。
なにぶんあの事件の後、クラスの男どもはみなこぞって志気を削がれていた。
なにより、朝日に照る巨人を神々しい笑顔で窓際から見上げるあの女の存在が、一番重かった。
「……よかった…皆さん無事で」
よくねえよ。
皆内心、こう思っただろう。
8時45分。
普通なら、一時間目の開始時刻。
いつも通りに、千尋先生がやって来た。
ああ、この二四時間前だ。
俺達がこんな目に会うと、だれが予期していたか。
いや、無理だろう。
これは夢だ、そうみんな思いたかった。
普段とは違い、非常に千尋先生の表情は重かった。
「…んーと、じゃあ今の状況をみんなに教えるねぇ」
千尋先生の話はこうだった。
現在、自衛隊及びアメリカ空軍が日本各地に出現した怪敵と接触。
奮闘したものの、その戦力差は圧倒的で、こちらの兵器は一切通用せず。
現在比較的安全圏なのは、奇跡的に勝利した東京お台場地区と、いま自分たちがいるこの場所である。
「そ、それってつまり…まさぁか…」
クラス一の口達者、士殿海が割り込んだ。
「そうねぇ…人類大ピンチってことかしら」
軽々言い切ったが、空気は重い。
「大丈夫です…ゴッドシグマリオン。 その力は世界のために…使うのです」
なんかまたしゃしゃり出てきたので、話を続ける。
「あ、でも国の救援隊がこちらに向かってるみたいですよ。 三十分後くらいには、皆さんアメリカに国外逃亡ということですね」
クラスの各所から喜びの声があがった。
なにも問題ない、国が助けてくれる。
しかし俺達はまた思い知らされるのだ。
この女の危険に。
三十分後。
クラスのメンバーの緊張は次第にとけ、各々が談笑していた。
もっぱら、話題の主役は『地獄から生きて戻った男・神谷』の話題だった。
教室のドアが開き、隣のクラスの社会科担当の教師が入ってきた。
「せんせ、千尋せんせ。 どうやら救援隊のヘリがもうすぐ到着みたいですよ!」
クラスのメンバーは、まさに命を拾ったがごとく、教室を駆け回り、喜んだ。
ある者は廊下を全力疾走し、ある者は隣のクラスと合流し喜びを分かち合った。
士殿海も同じように喜び、窓際に立ちそとに向かって叫んだ。
「やったぜぇぇっ!! まだ生きれるぞぉぉぉぉぉぉ!!……あ、あれ?」
士殿はしばらく硬直したのち、顔を青くした。
即倒しかねない意識をなんとか踏ん張り、奇声をあげた。
「で…でででででででだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
クラスのメンバーに、うっすらとだが嫌な空気が戻ってくる。
今朝と同じく、全員で窓の外を眺める。
「か…怪獣だぁぁぁぁぁぁ!?」
「うそだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再びの恐竜ロボットの出現。
野郎どもはあれよあれよと生き心地を失い、狂気に走りそうになった。
「あ、あらあら…救援隊はもうすぐですよ! 皆さん気を確かに!」
千尋先生がみんなを扇動するも、もはや干上がった蟹。
ピクリとも動かなかった。
「まだ…手はあります! ゴッドシグマリオンで奴を倒せば…ヘリにも乗れるはずですっ」
はっ、その手があったか。
何やらあの女に操られた気分だが、ここは一蓮托生。
こぞって神谷に視線が向く。
当の神谷はというと。
「クラスのみんなの命だ…僕が守ってみせる!! 命に代えても!!」
なんて熱い台詞を吐くもんだから、勝手に気分は盛り上がっていった。
「しかし実は…一つ、お話しなければならないことが」
ピタリと盛り上がりは停止した。
激しく嫌な予感。
「奴らに対抗するためには、もっと強力な…掛け替えのない物が必要だと思って…! その…」
その先の言葉は、あまり聞きたくなかった。
が、俺達は後には退けなかった。
「さ、『三人乗り合体機能』を…付けてみました…!」
メンバー選出はあみだくじでやった。
最終更新:2009年12月05日 14:58