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つぐむ「そう言えばさ」

下校途中のたわいもない話の途中で、つぐむは思い出したように話を区切った。

つぐむ「今日歴史で習ったんだけどさ、勇者ロボってそんなに多くなかったんだろ?」

車内はクーラーの音だけがいやによく聞こえた。

つぐむ「トギ=ハジメって人が勇者社員隊を結成して、その当時猛威を振るった悪徳企業を成敗した……ってことらしいけどさ、ゲイザーはそのときなにしてたの?」

ゲイザー「……トギ、ハジメ…か」

終始無言だったゲイザーが一言、呟いた。
つぐむは答えを期待したが、結局サフランデーに着くまでゲイザーは一言も喋らなかった。

トギ=ハジメというのは……いわば英雄である。
かつての日本。
ロボット産業の拡大に伴って生まれた爆発的な経済発達の中、私欲のためにあらゆる手段で海外への闇ルートへと金を流し、兵器を売り歩いた存在があった。
邪悪企業ブラックデクターと、その存在は呼ばれた。
政府はこれに対抗しあらゆる政策をとったが、効果は出なかった。
そんなとき、邪悪企業ブラックデクターに真っ正面から挑んだ男がいた。
それがトギ=ハジメ。
そして、勇者社員隊であった。
トギ=ハジメは積極的にブラックデクターに戦いを挑み、ついに壊滅させた。

トギ=ハジメの正体は不明で、一部では政府が表で暴れるという面子つぶれの行動を隠すための、ダミーのようなものだとも言われていた。

???「トギ=ハジメが、ダミーだと……?」

高層ビルの最上階。
街を見下ろすは、深紅のマントを羽織った男。
真っ黒なスーツに、赤い刺繍のネクタイ。
刺繍の柄は、ドクロ。

???「ダミーなど、幻などではない……! 奴は、この街に実在する……!」

片手に握ったワイングラスが、割れ、散る。
赤いワインが手を伝いカーペットに染みを作る。
それはあたかも、血のように、赤い。

???「決着をつけるぞトギ……二十年の時を俺は飛んできたのだ……! 貴様にはわかるまい、その孤独……寒気……教えてやる……教えてやるぞぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」








研一「ぶえぇっくしょいぃぃぃッ!!!」

勇者企業の社長室。
大きなくしゃみをし、鼻をすするのは、平社員にしか見えないが……社長、平野研一。
四十代に突入し、けだるさが抜けきらない夏。

研一「あーー…冷房効かせすぎたか」

???「温度を上げましょうか、社長」

研一のデスクにあるパソコンからの声。
研一「いや、風力落としゃいいや……任せる、キリュウ」

キリュウ「は、了解しました…」

疑似人格AI、最古の勇者。
この会社のシステムを動かすキリュウマルは、研一の右腕のような存在だ。
もちろん例外なく、この会社に所属している疑似人格AIであるので、勇者である。
しかし、その勇者ボディはつぐむに見せたことはない。
この数ヶ月、様々な戦いがあった。
時にはガンドジムやレイの力を借りても相手にならないような敵もいた。
しかし、勇者達は力を合わせそれらの危機を撃破してきた。
その中で、キリュウマルは未だに戦いにでたことはなかった……。

研一「いやあ……んふふ、あの坊主が来てからというもの……いやあ儲かる儲かる」

キリュウマル「ガンドジムの復興作業、レイの宣伝効果と、つぐむ様からの支払いプラス、色々と仕事が増え収入も増えましたからな」

研一「いやぁ~かっかかかか!! 儲かるっつうのは気持ちがいいな! ははははははは!!」

キリュウ「こんな利益、二十年前以来ですな」

研一「ははははははは…………は、なに?」

二十年前。
その言葉に、研一は自然といやな汗が出るのを背中に感じた。

研一「……二十、年、前……」

研一は飛び起き、パソコンから預金を確認し……





時は遡ること二十年前。
平野研一、二十歳のことである。


昔の研一「よし、こちらの契約も取れた、こっちも無事に納入できた……!」

キリュウマル「今のところ、研一様が実績トップです」

昔の研一「今日はちょっと贅沢をしたい気分だな……高い料理でも食いにいくか…」

二十年前。
このときも、確かに景気がよかった。
大学を中退し、実力をかわれ某企業へと入社。
有能であった彼はみるみるうちに頭角を表した。
まさに、彼は幸せ絶頂期。
彼が預金を確認する、直前までは……


研一「ぐっっっぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!?」

研一は卒倒しかけた。
預金の欄に記されるは、たったひとつのゼロ。
ゼロ、ゼロ円。

研一「ない………無い、亡い……ゼロ!? お、俺の……全財産……がっ」

二十年前。
彼はこうしてあることに巻き込まれた。
そのことを次第に、思い出してきた。
そして、研一にとっては……二度と、死んだ後にも聞きたくない、死刑宣告とも言える声が、ビルの谷間にこだました。

???『ふはははははははははははははは!! 出てこい、勇者ぁぁ!! 貴様の金は、このギルドバーン様が頂いたぞ!!』

キリュウマル「研一様、あれを! 窓の外をご覧ください!!」

研一「…………いい、見たくねぇ……聞きたくねえ…………………生きたくねぇー…」

研一は思った。
カムバック俺の青春。
そして、俺の青春を奪った、すべての出来事……。
あの日、あの頃、確かに青春真っ只中だった。
それをぶち壊した、悪魔の宣告を、四十になってまた聞くことになろうとは……。
ああでも行かなきゃいけないんだろうなぁ。
自社ビル壊されちゃたまんないしなぁ。
ぶつぶつと呟きながら、とぼとぼと社長室をでる研一だった。


研一は驚いてもいた。
目の前にあるのは、二十年前と変わらぬはずなのに、有り得ないことがあった。
ビルを出て、それを目で確認するまで……それは信じたくなかった。

巨大な赤いロボット、鋭く尖った肩が動いただけでビルを削る。
赤い眼孔を燃やし研一を見下ろすそれは、不気味なまでに二十年前と同じだった。
そして、ロボットの手の上にのる男も。

研一「……久しぶりだな、亀崎……! 二十年ぶりだな……」

ギルドバーン「老けたな、平野研一……いや…トギ=ハジメ!!」

研一「四十行きゃよ、だれだって老けるっつうの……、お前は変わんねぇな…相変わらず趣味の悪い格好しやがって…」

ギルドバーン「人の趣味格好に口出しするとは、大人気ないところは変わらぬようだな……」

互いに沈黙し、視線はぶつかり合う。
二十年という時間を確かめ合うように。
やがて、研一が先に口を開いた。

研一「……死んだはずだ、二十年前……」

ギルドバーン「我が企業は二十年前、クローン事業にも手を出していたのは忘れたか?」

研一「クローンだというのか!?」

ギルドバーン「……いんやぁ?」

ちっちっち、と口をならし、ギルドバーンはマントを脱ぎ捨てた。

ギルドバーン「貴様への憎悪を捨て置き、私ではない他人に任せる私ではない……んふふ。 私の体は完全に失われたが……知性の部分だけを抜き取り、クローンボディに移植した……目覚めるのに時間は掛かったがね」

研一「知性を、だと……そんなバカなことが…!?」

ギルドバーン「……ふ、ふふ…貴様の活躍は聞いているぞ。私のいない間に新しい仲間も増やしたようだ、な……。 死ぬ間際の記憶によれば、キリュウマルは仕留めそこなったがたしか……ガル…」

ギルドバーンは言葉の途中、体が浮くように感じた。
見てみれば、研一は銃口をこちらに向けており。
肩を見れば、綺麗に打ち抜かれていた、からだ。



ギルドバーン「………? ぐっ……」

研一「………てめえに続きは言わせねえ……約束なんでな」

ギルドバーン「……くっ……ふはははは!! そうだったな……俺たちの戦いに言語は不必要!! 容赦なく、残虐にあるべきだな……だな、トギぃぃぃぃぃいいいいいい!!!」

研一にとって慣れている相手、ギルドバーン専用ロボット・シャラグーン。
そのミサイルが、研一に降り注ぐ!
研一は微動だにせず!

爆発が六回!
それらすべては、着弾したわけではない!


キリュウマル「――無事ですか、社長!」

研一「アルマーニが台無しだ、買ったのは……十年前だけどな」

ミサイルは切り捨てられた!
立ちふさがるは、黒き鋼のサムライ。
小鉄勇者キリュウマル!

研一「生き返ったというのなら、もう一度死んでもらうだけだ……邪悪企業ブラックデクターッ!!」


ギルドバーン「役者は揃った……“我が青春よ、再び”……!」


第五話『蘇った悪夢! ギルドバーンの復活!(前編)』



戦え勇者企業!
負けるな社員、シャインゲイザー!


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最終更新:2009年12月06日 13:37