元来、部活動というのは学問と健全なる身体の両立を目的としているはずである。
運動部でなくともそれは同義で、何かの目標に向かって一致団結だとか、自分のやりたいことを好きなだけうちこむというのは、大きな労力となる。
もちろん、楽しければ苦ではない、苦ではないのだが……
勘太郎「部長ぉぉぉぉぉ!! 腕立て50×10セット終わりましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……わかってるのか、この熱血バカ。
ここ、文芸部だぞ。
麗子「素敵だわ勘太郎くん♪ 次は校庭100周ね」
勘太郎「はいぃぃぃぃぃ!!! わかりましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
……部長、あんたもか。
倶楽部戦記リードナー
第二幕『やつは!? 熱血対天才!!』
互いに競い合うものの中でも、因縁とも言える間柄を、『ライバル』と言う。
ユナイトロン制度に参加したということは、全国のあらゆる倶楽部がライバルということになる。
こうなってしまえば、強豪と呼べる相手とも戦うこともあるだろう。
そんなとき、せめて恥ずかしい試合はせぬよう、本日も僕はライフワークをこなすのだった。
優太「こんなもん……かな」
画用紙にびっしりと書かれた武器の数々は、事情を知らぬひとからみれば頭を疑われるような数だった。
しかも、どれも溢れ出るアイデアと苦悩を混ぜ合わせた、中には形容しがたいものもあった。
……自分で描いて、なんだこの武器。
だが仕方ないのだ……なぜなら、リードナーに吸収された内部情報が、すべて把握できてないからだ……。
この文芸部にある本をすべて吸収したリードナーは、いったいどんな能力を発揮するかわからない、あけてびっくり状態なのだ。
もちろん、吸収したぶんの本は目を通した、しかし……
優太『……っと、ふぅ……半分くらいは終わったかな』
虹絵『お疲れ様、ちょっと一息――』
紀伊子『おっすぅ新入生! なにやってん!』
虹絵『あ、副部長。 こんにちわ』
優太『こんちわ――あ、いや……一応、リードナーに組み込まれた分の本だけでも把握したほうがいいと思って……』
紀伊子『あ、部長また情報入力してたよ』
優太『は?』
紀伊子『たぶん……200冊分くらい追加してたかな』
虹絵『にっ――』
優太『にひゃくさつぅぅぅぅぅぅぅ!!?』
こうして僕の些細な努力は綺麗さっぱり無駄となり、リードナーの情報網はさらにカオスを極めんとしている……!
いい加減、危ない橋はやめましょうよ、ほんと。
――ところで、部活というと、練習試合である。
文芸部にはあまりそういう考えはないのだが……案の定、部長は厄介事を引っ張り込んできた。
優太「……練習試合?」
麗子「そう。どの部活もまだユナイトロンを把握していないから、生徒会で指示があったの。今日の放課後、全部活で」
今日は本屋に行くつもりだったのだが、仕方あるまい。
断る理由もなく、僕たちは承認した。
今思えば、断るべきだったか……。
紀伊子「へぇー……なんだががぜん、部活って感じがしてきたねぇ!」
虹絵「相手は誰なんですか?」
麗子「生徒会のほうで組み合わせるらしいから、“その時”になれば、わかるんじゃないかな?」
この時、すでに彼女の計画は、動き出していたのである……。
それに気づくのも、手遅れであることを悟るのも、彼女のいう“その時”、初めてわかったのだ……。
校庭に集まる生徒の群れは、ある意味壮観だった。
南平路の生徒数は、普通校の平均の二倍とは聞いていたが、多種多様な部活動としての格好をした生徒達には、自信が満ち溢れていた。
特に、南平路が誇るテニス部の、その桁違いの規模は、一見の価値がある。
ずらっとならんだテニス野郎に飛ぶ黄色い声援を生徒会がやっとの思いでやめさせると、前口上が始まった。
桜庭『――さて諸君、よく集まってくれた。 すでに選手組み合わせはこちらで選出している。 我が校の部活動がいかに他校とやり方が違うかは……このユナイトロンでも証明せねばならないだろう。 皆、張り切ってくれ』
短くも長くもない、それでいて分かりやすい前口上お疲れ様。
さて、本日の相手は……
麗子「テニス部」
優太「……本気ですか」
麗子「練習試合ですもの。やりがいのある相手とやりたいと思いません?」
優太「思うかッ!!」
冗談じゃない――全国レベルを常に保つ、有数の有力部であるテニス部が相手か。
紀伊子「安心し。 テニス部はユナイトロンの反対派だったから、ユナイトロン自体が強いとは限んないって!」
優太「……そうなんですか?」
紀伊子さんの話を聞いても、安心は出来なかった。
何故なら……部長姿見麗子が、嫌に眩しい笑顔をしていたからだ。
ああ、何も起こりませんように!
虹絵「そういえば、勘太郎くんは?」
優太「試合直前に来るように言ってあります。下手に置いておくだけでも、なにかやらかす雰囲気ですから。万全を期して」
紀伊子「あそこにいるよ?」
優太「なっ――!?」
迂闊だった!
あまりにキャラが濃すぎて逆に気づかなかったのか!?
あわや拿捕5秒前で、そいつが大人しく仁王立ちしているのに気づいた。
優太「って、今日はやけに大人しいな」
勘太郎「いや、あのテニス部――何か、嫌な予感がしてな」
お前がいること事態が不吉だよと心で呟きつつ、それは自分でも薄々思っていた。
勘太郎「見物客が多くないか」
優太「そりゃ、相手があのテニス部だからな」
勘太郎「……女子が、多くないか」
優太「ま、まあ……」
何が言いたいんだ、と思いつつ周りを見ると――なんだこりゃ?
横断幕が貼られ、女子生徒がメガホンを――大会じゃないんだが。
横断幕には『SSK』と書かれていた。
試合はすでに開始されていたが、テニス部側の作戦会議が嫌に長い。
やがて、テニス部側のユナイトロンが姿を表した……。
細身の流線型のスタイル。
武器は恐らく、手持ちのラケット。
紀伊子「タイプは生徒会のプリズナードに似てるね」
優太「どうでますかね。 ちゃんとやれよ、勘太郎!」
勘太郎「わぁってますって、毎日トレーニングも――」
その時だった!
閃光が走り、リードナーの体を撃った!
勘太郎「ぐっ……なんだと!?」
優太「なっ――不意打ちだぞ!!」
勘太郎「んなろぉぉぉっ!! 捻球弾!!」
右手にエネルギーが集まり、球体になる――リードナーの新兵器が作動する!
勘太郎「だりゃぁぁああああああああ!!」
放った球を、バットで“撃つ”!
しかし――
???「相変わらずのワンパターンだな、熱血勘太郎!!」
優太「なっ――」
捻球弾が、ラケットによって打ち返さる!
勘太郎「そ、その声……お前は……」
テクノ部のユナイトロンが、ホームラン宣言をした!
剣悟「私は、『スーパー・セクシー・キラー』!! 超・天・才! 『祭織剣悟』――その人だ」
黄色い声援が校舎を揺るがした。
勘太郎「剣悟だとッ………き、貴様……俺と……」
剣悟「フン、我がユナイトロン『タクティカ』に打ち返されたのが、よほど悔」
勘太郎「俺と同じ高校だったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
優太「――学校始まって何週間だよ」
とりあえず、自分の中のバカカウントにプラス1。
まさか天下の南平路テニス部にバカがいるとは、誤算だった。
麗子「二人とも、頑張ってくださいねぇ」
勘太郎「は、はいっ! 麗子さん!!」
剣悟「あなたの笑顔のためなら……姿見さん!」
勘太郎「…………」
剣悟「…………」
勘太郎「――今日こそ死んでもらうぞ剣悟ぉぉぉぉぉぉ!!!」
剣悟「貴様のバカさ加減もここまでだ勘太郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
いい加減にしろよバカども。
ついでに部長、頼みますから、やめてください。
剣悟「さあ、受けてみろ熱血勘太郎……! タクティカ最大奥義をな!」
タクティカのラケットから、無数に放射されていくそれは、まるで虹のよう!
剣悟「くらえ……クリスタルスワロォォォ!!」
強烈なスマッシュで放たれた七色の矢が、リードナーへと突き刺さる!
勘太郎「ぐ、うぉぉぉぉぉお!!?」
優太「か、勘太郎!!」
剣悟「ははっ、文字通り串差しだな勘太郎……。 さあ、もう一撃で、あの世に送ってやろう!!」
優太「……本気で言うなよそういうこと」
タクティカが再び、七色の光を放った!
勘太郎は――
勘太郎「――七色の弾丸には、七色の遊撃手だぁぁぁぁぁぁああああ!!」
勘太郎は捻球弾を、通常の数倍に膨らませる!
剣悟「ま、まさか――」
勘太郎「うおぉぉぉおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
捻球弾を握りつぶし、エネルギーが四散する!
散ったエネルギーとクリスタルスワローがぶつかり合い、相殺する――
勘太郎「捻球弾――七分返しぃぃぃぃぃぃぃぃいいああああ!!!」
散ったエネルギーの塊を、タクティカへと打ち返す!!
タクティカへと命中し、だが――
剣悟「……すでに、エネルギーは散っていた、か」
優太「タクティカは、ダメージなし……か」
初の練習試合は、引き分けに終わった。
だが、テニス部へ喧嘩を売ったとして、我々文芸部は、いろんな意味で見方を変えられたようだった。
剣悟「……フン、勘太郎……次はこうはいかんぞ。 そのバカさ加減、必ず絶ってやろう……!」
最終更新:2009年12月06日 14:40