「はぁ……」
思わず溜め息が出てしまう。
まわりはいつの間にか受験モード。
みんなやりたいことを決めている。
自分は? ……何もない。
現在高校三年生の南部 新(なんぶ・あらた)は、
今まで進路というものを考えたことはなく、周囲から浮いた状態にいた。
先生からも、お前はからっぽだ、とはよく言われる。
全くその通りだ。
今を生きる事しか頭にないし。
とりあえず、学校終わったしゲーセン行くか。
ガンシューティング、全クリ。
狙撃ゲーム、ハイスコア。
連○2、バ○ターで7連勝。
駄目だ、極め尽してる。
そう、こんな俺も無駄にゲーマー。
射撃にかけては負けないぜ。
狙う前にやられたら仕方ないけど。
帰路ではすっかり日も暮れて。
やばい、また小言だよ。腹も減ってきたし、帰ろう。
……そんな思考回路で海沿いの道をぼーっと歩く俺。
そんな俺の目に、流れ星がひとつ。
「進路とか手っ取り早く決められますように」
速攻で願かけをした。どうせ無駄だけど。
さて、また小言言われに帰るか……あれ?
流れ星が消えてない。
普通一瞬で消えるだろうに。
というか……
だんだん近付いてきてませんか!?
目を擦る。錯覚じゃねえ。
数秒後、激震。
俺は飛ばされた。
次に目が覚めた時は、何処かの病院だった。
「大変です、司令!」
「何だね、騒がしい」
「こちらへの核ミサイルの発射が観測されました!」
「な、何処から!」
「アメリカです!」
―――神奈川は横須賀にある、対宇宙寄生体防衛組織「APH」。
三ヶ月前、超大国アメリカは謎の寄生体に飲み込まれた。
『彼』が言うには、それはデトニクスという生物だという。
そのデトニクスに対抗するため、他の誰より先に動いたのは日本だった。
「どうやら、あれの出番のようだね」
『はい』
スピーカーを通して声がする。
自動翻訳機能の技術、これは宇宙からの贈り物だ。
「しかし、本当にいいのかね?
彼は何の特訓も受けていない普通の少年。問題は多分にあると思うが」
『脳をスキャンさせてもらったところ、彼はあの機体に異常なまでの適正が見られました。
彼程のパイロットはそうそういないでしょう。
それに、今日は彼にテストをしてもらう心算で此所に越させている筈です』
「―――仕方ない。託してみるか、我が国の命運」
最早彼らには時間がない。
そして直後、『パイロット』が今、機体に乗ったとの連絡があった。
そう、これが対デトニクス用の機動大砲。
「頼むぞ、バントライン。我々の未来、預けた」
膝にはバカでかくいびつなシールド。
両肩にはキャノン砲。
胸には二本のレールと、何かのレンズみたいなもの。
「……ひ、人型ロボ!?」
何で俺、こんなところにいるんだ。
「時間がない。乗れ」
「は、はいっ!?」
軍人さんに後押しされ、無理矢理だけど乗り込む。
すげえ本物。これで脅しとかなかったら神に感謝してたけど。
「さて、動かし方は……」
すると、画面にマニュアルが映る。やけに親切設計だな。
一通りマニュアルが流れたあと、座標が送られてきた。
『この座標で、我が国に接近するミサイルを叩き落としてくれ』
……我が国に? 少し気になるが、今はやってみよう。
「動けよ……!」
―――動いた!
右、左。右、左。右、左。
少し動くと、まるで狙撃の為に用意されたかのようなステージがあった。
ここが座標か。
『脇の赤いレバーを引け』
「こうか……って、のうわっ!!」
いきなり下に視点が落ちた。
『今ので変形完了だ。この部分に関してのマニュアルを開く、確認してくれ』
……変形機能がついてたらしい。
あのでかい膝アーマーが横にずれて、
通常の両脚が逆脚みたいなたたみかたをして、
キャタピラの膝アーマーと折り畳んだ足でちょうど機体を支えるような感じか。
『それでは、制限時間以内に腹部狙撃砲でミサイルを撃ち落としてくれ』
そう言うと、機体の画面が変化して、遠くにミサイルが見える。
狙撃モードが展開する。
「―――なんだかよくわかんねーが」
ごく自然に手を動かし
ごく自然に倍率を高め
ごく自然に計算を終え
ごく自然にトリガーを構えて
「狙撃は俺の得意分野だ」
腹部レールが展開する。
肩のキャノンがレーザーサイトとなる。
エネルギー充填、70、80、90。
「だから、ここで外すわけにはいかなくてさ!」
―――100になった瞬間、放った。
―――程なくして。
「あれ、もしかして核ミサイルでしたか。」遠い海上にきのこ雲が上がっていた。
『そうだ。協力感謝する、我が国の平和は守られた』
「核なら核って早く言ってくださいよ」
正直、今頃になってビビってきた。
というか、テストじゃなかったのかよ。
その名目で連れてこられたのに、話が違う。
『ついては、一度帰還してもらいたい。どうせなので変形状態で』
「……わかりました」
キュラキュラキュラ。
退院初日をこんな結果で飾ってしまった俺、南部 新だった。
―――かくして、寄生体デトニクスと人類の戦いの火蓋は切って落とされた。
だが、知らぬは本人ばかりなり。
ともあれ、デトニクスの脅威に立ち向かうのはこれからだ。
明日も撃ち抜けバントライン!
寄生体を地球から根絶する、その時まで
最終更新:2009年12月09日 22:08