PM11:30 月見山登山コース
瑠那「あれー?ペンダントどこに落としたのかなぁ?」
秦月「なあ、なんでオレがお前の探し物に付き合わなきゃいけないんだ、月乃輪?」
瑠那「お願いだよ、あたしクラスで仲良いの御架付君くらいしかいないんだから」
秦月「親に頼めば良いじゃないか」
瑠那「だってあれあたしがお母さんから受験の合格祝いに買ってもらったんだよ?失くしたなんて言ったらぶっ飛ばされるもの」
この二人は「路掛学園」の二年生、月乃輪瑠那と御架付秦月、共にB組である。
実は、瑠那が母親から買ってもらったペンダントを山で失くしたと言うので秦月が仕方なく付き合っているのである。
ちなみにこの路掛学園は小中高一貫制であり、瑠那は父親の仕事の都合で転校してきたばかりなので友達も少なかった。
秦月「ん?おーい、月乃輪。ペンダントってこれじゃないか?」
瑠那「あー!それそれ、ありがと御架付君」
秦月「じゃあ、とっとと帰ろうぜ……ん?」
その時、秦月が異変に気付いた。
瑠那「どうしたの、御架付君?」
秦月「いや……あの流れ星……」
瑠那「あ、ホントだ。きれー」
秦月「いや……そうじゃなくてさ……」
瑠那「なに?」
秦月「あれ……こっちに近づいてきてねえか……?」
瑠那「まっさかー……って、本当だ……」
瑠那もハッキリと見た。
白く、大きな流れ星が想像もつかないような速さでこちらに近づいてきているのを。
秦月「まさか、ぶつかったりしねえよな……」
瑠那「まっさかー……」
秦月「…………」
瑠那「…………」
秦月「……月乃輪、走れるか?」
瑠那「……うん」
秦月「……逃げろぉぉぉ!!」
瑠那「きゃああああ!!!」
瑠那と秦月は走った。とにかく走った。
どこへ行くでもなく、走った。
瑠那「きゃあ!」
秦月「月乃輪!バッカお前何こんな何もねえ所で転んでんだよ!」
瑠那「ご、ごめん……」
秦月「謝るのは後だ!早く逃げねえと――」
秦月は、空を見上げた姿勢のまま動かなくなった。
その表情は、何かに怯えているようだった。
瑠那も気になり、空を見上げてみた。
瑠那「え…………?」
そこにあったのは、非常に奇妙な光景であった。
先ほどの流れ星が、瑠那達の1~2m前方、2~3m上方で静止していたのだった。
目測ではあるが、その流れ星は直径60mはあるように思えた。
瑠那「…御架付君。これ、何……?」
秦月「……俺が、知るかよ……」
瑠那「……!御架付君、あれ!」
瑠那が指差した先を秦月が見ると、流れ星から一筋の太い光が降り、その中に影が現れた。
瑠那「……宇宙人?」
秦月「ばか、そんなもんいるわけねえだろ」
瑠那「でも、前にテレビでやってたよ。宇宙の外には外宇宙ってのがあって、そこにはまだ人間が住める星があるかもって……」
秦月「……月乃輪、アニメの見過ぎじゃないか?」
瑠那「あたしもそう思いたいけど、アニメはサ○エさんやド○えもんしか見たこと無いよ……」
秦月「…………」
その時、謎の影がこちらに歩いてきた。
瑠那「!来るよ、御架付君……」
秦月「ぐ………ん?」
瑠那「……え?」
二人の緊張感は一瞬にして解けた。
何故なら、その影は、とても恐ろしそうには見えなかったからである。
長い耳、丸いしっぽ、白い体、赤い目、ややツルッとしたところを除けば、それはどうみてもただのウサギであった。
ウサギ「むう、反応はここから動きませんね。ということは、『月帝』の適合者はここにいるということですな……」
瑠那「……なんなの?」
秦月「さあ……」
ウサギ「む、むむ!そこのあなた!」
ウサギは秦月を指差した。何故か手だけは人間のような形である。
秦月「俺?」
ウサギ「はい、あなたです。さっきからこの計測器の反応がビンビン来てるのですよ。つまり!
あなたこそ『月帝』の適合者なのです!!」
秦月「……げってい?」
マンゲツ「あ、申し遅れました。私、『月帝』の保管者でマンゲツと申します。以後お見知り置きを」
瑠那「その前にさ、その『月帝』って何なの?」
マンゲツ「人の話に割り込んでこないで貰えますかね」
瑠那「あ、すいません……」
瑠那は内心、「何であたしロボっぽいウサギに怒られてるんだろう」と思った。
そんなことを知ってか知らずかマンゲツと名乗ったウサギは勝手に話し始めた。
マンゲツ「実は、私の故郷は月なのです」
秦月「月?月ってあの月か?」
瑠那「他にどの月があるっていうの?」
マンゲツ「あなた方地球人はご存じないでしょうが、月には高度な文明が栄えていたのです」
秦月「いぃっ!?マジかよ!?でも過去のロケットとかでは……」
マンゲツ「地下に文明を築いたのです。そして月の守り神として、魔人『月帝』を建造しました。
しかし、三日ほど前の話です。ある侵略者が現れ、月文明を破壊したのです」
瑠那「え、その『月帝』ってので戦わなかったの?」
マンゲツ「適合者が居なかったのです。調査により、地球のこの島国にいることは分かったのですが……」
秦月「でもよ、何で『月帝』の適合者が日本にいるんだよ?」
マンゲツ「『月帝』の創造主が誤って適合者の資格、『半月印』を地球へ落としてしまったのです。
半月印が体内に取り込まれるとどこかに半円の痣が浮かぶはずですが……ありますか?」
そう言われて秦月は思い出したように右袖を捲った。
すると二の腕に、半円の痣がくっきりと残っていた。
秦月「これかな?」
マンゲツ「む~、少し違うような……まあ大丈夫でしょう」
瑠那「大丈夫って何が?」
マンゲツ「やはりあなたが『月帝』の適合者でしたか!」
秦月「俺が?」
マンゲツ「……む!」
瑠那「どしたの、マンちゃん?」
マンゲツ「不名誉なあだ名をつけないでくれるか!例の侵略者が地球に降りて来たのですよ!!」
瑠那「ええ!?」
突然、町の方から爆発が起こった。
煙が晴れると、そこには巨大な影があった。
瑠那「いやああああ!!蜘蛛じゃないあれ!!何で侵略者が蜘蛛なの!?」
マンゲツ「寄生型ですからね。この星の生物に寄生して細胞分裂を活性化させ、巨大化させて大暴れ。
他の生物を嬲り殺すというわけです」
秦月「あれが……俺の敵……」
瑠那「御架付君……」
秦月「よし!俺以外に出来ないっていうんなら、俺がやる!月乃輪!安全な場所に避難してろ!」
瑠那「う、うん!」
秦月「マンゲツ!その『月帝』は!?」
マンゲツ「これです!」
マンゲツは先ほどの球体を指差した。
と、その瞬間、球体が変形して巨大な人間となった。
秦月「こいつが『月帝』か!…ん?マンゲツ?」
マンゲツ「装甲変形!!」
秦月「うわ!」
マンゲツがバラバラになったかと思うと、秦月の体に次々装着されていった。
秦月「なるほど、マンゲツ自身がスーツになって適合者を護るってわけか。
操縦方法は?」
マンゲツ「秦月様のイメージ通りに『月帝』は動き、戦います」
秦月「へえ、簡単だな。おい『月帝』!てめえの適合者様はここだぜ!とっとと乗せろ!」
すると『月帝』の両手がゆっくり動き、秦月を持つとまたゆっくりと胸まで持っていった。
そして秦月は『月帝』の体内へ消えていった。
瑠那「……御架付君……あれ?そういえば……」
瑠那は思い出して服を脱ぎ、自分の体をまじまじと見つめた。
秦月「やれ、月帝!アッパーだ!」
月帝の拳が蜘蛛型侵略者の土手っ腹に命中した。
蜘蛛型「ギイイッ!」
秦月「効いてねえ!?」
マンゲツ『まずい!』
蜘蛛型が糸を吹き、月帝を雁字搦めにした。
そして、鎌と化した足で月帝を切り刻んでゆく。
秦月「うわああっ!!」
マンゲツ『何故だ!ちゃんとした適合者だって乗っている!何故なんだ!」
瑠那「……やっぱり」
瑠那は夜中の山中で衣服を全て脱ぎ、自分の下腹部を見据えていた。
そこには、あの半円の痣が秦月のそれよりくっきりと残っていた。
瑠那「月帝の適合者は御架付君じゃなかったんだ……こうしちゃいられない!」
秦月「どうするんだマンゲツ!このままじゃあ……!」
マンゲツ『何故……何故……何故……』
蜘蛛型「ギグガガガァァ!!」
瑠那「御架付くーん!!」
秦月「月乃輪!?安全なところに居ろって………ってなんだその格好!!?」
瑠那「ごめーん!上まで着るひまなくってー!!」
秦月「いや、でも取り敢えず着ろよ!女の子だろ、お前!!?」
瑠那「いいから!早くあたしを月帝に乗せて!」
秦月「え?」
瑠那「さっきスッパになって調べたのー!そしたらあたしの……えと……アソコら辺にあったのー!!
半円の痣ー!!」
マンゲツ『なんですと!?』
秦月「マジかよ!だったらさっさと上着て乗れ!多分背中からも乗れる!だよな、マンゲツ!」
マンゲツ『はい、月帝は変幻自在ですからな。では、装甲解除!』
瑠那「御架付君!」
秦月「イメージ通りに動くってよ!後はマンゲツから聞いてくれ!」
瑠那「わかった。マンちゃん!」
マンゲツ「その名で呼ぶなと!!装甲変形!!」
先ほどまで謎の沈黙を保っていた蜘蛛型が突然動き出した。
蜘蛛型「グガァァァ!!」
その鎌が月帝に振り下ろされる!
蜘蛛型「……ギガッ!?」
瑠那「……行っくよぉぉぉ!!」
マンゲツ『凄い……あの鎌を受け止めなおへし折るとは……』
月帝のパンチやキックが蜘蛛型に容赦なく降り注ぐ。
蜘蛛型「ガグググゴォォォォ!!!?」
瑠那「…あ、そうだマンちゃん」
マンゲツ『もう諦めました……で、何ですか?』
瑠那「月帝って変幻自在なんでしょ?」
マンゲツ『はい、そうですが?』
瑠那「変身後の姿をイメージすればいいの?」
マンゲツ『何がです?』
瑠那「月帝変身!巨拳!!」
瑠那が叫ぶと月帝は巨大な拳に姿を変えた。
瑠那「貫けぇぇぇぇぇ!!!」
蜘蛛型「ギルギルゴルガロッ!!」
ズッという音がしたかと思うと蜘蛛型は土手っ腹を貫かれ息絶えた。
そして、淡い光となって消滅した。
マンゲツ「いやはや、まさか私が適合者を間違えるなど」
瑠那「でもさ、御架付君の痣はなんだったの?」
秦月「ああ。今思い出すとガキん頃スッ転んでできた痣だった」
マンゲツ「さて、月乃輪瑠那様。これからはあなたが月帝を駆り侵略者と戦ってください」
瑠那「……わかった。あたししかできないんでしょ?だったらやる」
秦月「あ、そうだ。今日から、瑠那って呼んでいいか?」
瑠那「え?」
秦月「いや、だから、今日からお前のこと瑠那って呼んでいいかって聞いてンだよ」
瑠那「……いいよ。あたしも秦月って呼ぶね」
マンゲツ「では瑠那様。侵略者が現れた際は、この腕時計の文字盤を軽く三回押してください。
私と月帝が飛んで参ります」
瑠那「わかった。じゃあね、マンちゃん」
マンゲツ「結構気に入りましたよ、その呼び名」
第一話終了
最終更新:2009年12月10日 08:24