月帝ノ唄
其ノ弐「スバルとホシガミ」
私立路掛学園高等部1年B組。
瑠那と秦月の教室である。
秦月「よう、瑠那」
瑠那「あ、おはよ、秦月」
あの一件以来二人は随分と仲がよくなっていた。
親しげに話す二人の前に、ある一人の人物が現れた。
秦月「お、どうした委員長?俺になんか用か?」
昴「君じゃなくって月乃輪さんに用があるんだよ。月乃輪さん、もう学校には慣れた?」
1年B組学級委員長星野昴は秦月をあっさりかわすと瑠那に尋ねた。
瑠那「ええ、大体は」
昴「そうかい、ならいいけど」
秦月「…………」
瑠那に親しげに接する昴を、秦月は「面白くねぇ」という顔で見ていた。
秦月(あの野郎、瑠那に馴れ馴れしくしやがって……)
秦月がフラストレーションを溜めだした、その時。
男子生徒α「お、おい、なんだあれ?」
女子生徒α「え、どれ?」
男子生徒β「うわっ!か、怪物…!?」
窓際にいた生徒が騒ぎ出した。
何かと思い秦月も窓際による。
秦月「! あいつぁ……」
秦月の視線の先には巨大なムカデが横たわっていた。
侵略者である。
秦月「瑠那!」
瑠那「分かった、秦月!」
二人は屋上へと駆け上がっていった。
しかし、生徒達の目は百足型侵略者に釘付けになっており、それを見た物はいなかった。
ただ一人を除いて。
昴「……ふぅん、月乃輪さんか御架付か……アハッ、面白くなりそうだね」
昴は小さく笑うと生徒達に指示を出した。
昴「みんな、規定のルートに従って避難して!」
瑠那「えーと、文字盤を三回だったよね……」
瑠那は腕時計の文字盤を軽く三回押した。
すると学校の上に巨大な球状の物体――「月帝」が出現した。
マンゲツ「お待ちしておりました、瑠那様!さ、早く!」
瑠那「了解!」
瑠那は装甲化したマンゲツを着込み、月帝に乗り込んだ。
そして、突然現れた異形に、百足型は少しビビっていた。
瑠那「あ~あ、今度はムカデかぁ。なんで侵略者ってウサギとかに寄生しないの?」
文句を垂れつつ瑠那は月帝に指示を出した。
瑠那「やっちゃいな!月帝!」
月帝が鋭い右ストレートを放った。
しかし、そこに百足型の姿はなく、月帝の拳は空を切るばかりであった。
瑠那「あ、あれ!?確かここに……」
秦月「瑠那、上だ!」
瑠那「上!?」
瑠那が見上げると、そこには確かに百足型がいた。羽の生えた。
瑠那「な、なんでムカデに羽が!?」
マンゲツ『恐らく『二重寄生』…』
瑠那「『二重寄生』!?何よそれ!?」
マンゲツ『寄生した後に侵略者が何か生物を捕食すると侵略者はその生物の能力も得る。
それが『二重寄生』です。おそらくあれは猛禽類に寄生した後にムカデを捕食したものと思われます』
瑠那「そんな……」
激闘が続く最中、体育館の屋根から一人の人物が呟いた。
昴「……屋上に御架付がいるってことは、あれは月乃輪さんか……。
苦戦してるみたいだし、助けてあげるか」
そう言うと昴は懐からキーを取り出し、こう呟いた。
昴「星神、光臨」
すると、昴の後ろに巨大な影が現れた。
サイズは月帝と同じほどの60m、月帝とは対照的に機械的なデザインであることから、
恐らく重さは向こうの方が上であろう。
瑠那「な、なんなの……」
秦月「…なんだぁ、ありゃあ…」
百足型「…ガガルギギグラ……?」
瑠那も、秦月も、百足型さえも驚愕した。
それを後目に昴は背中から星神に乗り込んだ。
そして、先ほどのキーを前方のユニットに突き刺した。
すると、星神の目が赤く光り、動き出した。
昴「見せてあげるよ、僕と、この星神の力を」
次の瞬間星神は大きくジャンプし、百足型を蹴りで叩き落とした。
百足型「ゴグッガリルルル!!」
昴「あれ、もうおしまいかい?星神、流星槍」
星神が自身の背中から射出された棒を掴むと、それは槍に早変わりしていた。
昴「止めだ」
星神が百足型を滅多差しにしていく。
そしてついに百足型が消滅した。
昴「ふう、運動にもなりゃしない」
昴はつまらなそうに吐き捨てた。
瑠那「……もしかして、星野くん?」
瑠那が恐る恐る尋ねた。
昴「あ、やっぱり月乃輪さんだったんだ。うん、僕だよ」
秦月「委員長!?なんで委員長が……いやその前に、そいつはなんなんだよ!?」
昴「これは僕専用の巨大ロボット、『星神』さ。政府が造ったのを僕がテストパイロットしてるんだ。
親父は政府に顔が利くからね」
瑠那「…………」
昴「ま、安心しなよ。君たちには手は出さないから。だって、敵は同じだろう?」
秦月「…………」
昴「これほどの騒ぎだからね。今日はもう帰っていいと思うよ。じゃあね、月帝さん♪」
そう言うと昴は星神と共にどこかへ飛んでいってしまった。
あとに残されたのは秦月と月帝だけであった……。
瑠那「……ねえ、秦月」
秦月「あ、どうした?」
瑠那「考えたら……そうだよね」
秦月「何が?」
瑠那「きっと他の人でも侵略者と戦えるよ。星野くんみたいにさ。
あたしじゃなくてもできるんだよ。きっと……」
秦月「お、おい瑠那…?」
瑠那「じゃああたしがいる意味って何!?月帝やマンちゃんは何のためにいるの!?
分かんないよ……分かんないよ……」
秦月「瑠那……」
其ノ弐 完
最終更新:2009年12月10日 08:27