アットウィキロゴ
月帝ノ唄

其ノ終「シンゲツと    」



瑠那「侵略者が集まってきてる!?」
昴「ああ、おそらくは君と月帝を危険視して一斉攻撃をかけるつもりだろう」
マンゲツ「この反応は……!瑠那様!地球上に潜伏していた全ての侵略者がこの地に集まっています!」
瑠那「そんな……でも、やるしかない!地球のために、みんなのために!」
マンゲツ「来ます!」

マンゲツの言葉と同時に、四方八方から大量の侵略者が出現した。
その光景はさながら、黒い津波が押し寄せてくるようであった。

昴「月乃輪さん!僕の背は任せるよ!」
瑠那「う、うん!分かった!」
昴「よし!天川砲!!」

星神の胸部から放たれた光が数体の侵略者をかき消していった。

瑠那「私も負けてられない!月帝!右手ドリルの左手斧!」
侵略者・蠍蛙型「ゲゲギャガアァァァァァァ!!」
侵略者・蛾蜂型「ググゴジェアァァァァァァ!!」

月帝のドリルが蠍蛙型を貫き、斧が蛾蜂型を両断した。

秦月「くそ……委員長も瑠那も戦ってるっていうのに、俺はこんな所で指くわえて見てるしかできねえのかよ!?
俺にも……俺にも力があれば……委員長や瑠那と一緒に戦えるのに……!!」

屋上で秦月は腹を立てていた。
侵略者と戦う力を持たない、無力な自分に。

秦月「……瑠那……」

瑠那「はぁ、はぁ、はぁ……」
昴「…ッ!?弾切れか!月乃輪さん!そっちは!?」
瑠那「月帝には弾切れはないけど……もう、限界かも……数が多すぎるよ……」
昴「くそっ!来やがれ!流星槍!!」
猿蟹型「ビビバァァァァ!!」

星神の流星槍を間一髪で避けた猿蟹型は他の侵略者に向かって咆哮をあげた。
それに反応して多数の侵略者が一つの場所にかたまっていく。

瑠那「な、何……!?」
昴「まさか……それぞれで捕食しあい、一体の巨大な侵略者となる気か……!?」



その光景はあまりに凄まじく、瑠那も、昴ですらも身動き一つ出来なかった。
やがて、動きが止まり、一つの巨大な影がゆらりと立ち上がった。

融合体「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……」
瑠那「か……勝てない……」
昴「やばいな……月乃輪さん、一八だけど、突っ込むよ」
瑠那「え……?」
昴「こいつは生きて帰ろうなんて甘い覚悟じゃあ倒せない。
 下手すれば僕らが命を散らせてまでしないと倒せないかも、いや、それでも倒せないかもしれない」
瑠那「そんな……」
昴「でも、やるしかないんだ!この星を守るために!僕らの命で助かるなら安いもんさ!」
瑠那「……分かった。一緒に、『逝こう』……」

瑠那は呟いたあと、携帯電話を取り出し、メールを送った。

秦月「な、なんだ……あいつら、様子が変だぞ……!?
  なんか、突撃していきそうな……!?」

そのとき、秦月の携帯電話が鳴った。

秦月「メールだと?こんな時に?」

FROM:瑠那
TITLE: NO TITLE
本文: ごめん

その文章を見たとたん、秦月は表情を一変させた。

秦月「瑠那!?」

瑠那「はああああああああ!!」
昴「おおおおおおおおお!!」
融合体「ヴォオォォォォォォォォ!!」

二人は融合体に向かって全速力で突進していった。
そして、巨大な爆発が起こり、秦月の目の前に星神の前腕が飛んできた。

秦月「………!」



秦月は地に膝を着いた。
オレンジの炎を上げて燃え盛る星神の巨体が遠めに見える。
あれでは昴が生きている保証が無い。

秦月「う、うわああああああああ!!」
瑠那「……し、秦、げ、つ……」
秦月「!?」

秦月は驚いて声のするほうを向く。
そこには、瑠那が立っていた。左足を大怪我しながらも、彼女はここまで歩いてきたのだ。
秦月に、自分の無事を伝えるために。

秦月「瑠那、生きてたのか……」
瑠那「うん…右手と左足、もってかれちゃったけどね……」

口から血をたらしつつ瑠那は答える。見れば、彼女の右手はなく、そこから血が滴るばかりであった。

秦月「瑠那……もういいんだ。侵略者は倒した。お前の右手と左足は、俺が補う」
瑠那「え……?それって……」

苦しそうな顔で尋ねた瑠那に、秦月はこう言った。

秦月「俺はお前が好きだ。ずっと、一緒にいよう……」
瑠那「秦月……あたし、うれしいよ……」

瑠那は一歩、また一歩と少しづつ秦月に歩み寄っていく。しかし、

侵略者「ミュギルルギャアァァァァァ!!」

ズン、という鈍い音がした。
侵略者の破片の一つがまだ生きており、体の一部を槍のように変化させ、瑠那のムネを突き刺したのだ。

瑠那「あ……れ……?」


秦月「! 瑠那ァァァァァ!!」

秦月は瑠那に駆け寄っていく。

瑠那「し、秦月……ごめんね……せっかく、星野君が生かしてくれた命なのに……」
秦月「そうか……あいつがお前をかばったから、お前はなんとか生きられたってわけか」
瑠那「うん……星野君は、『やっぱ死ぬのは僕一人で十分だ、君を待っている人がいるだろう』って……」
秦月「……もう、喋るな……。お前は……俺が……護る……絶対に!」
瑠那「……秦月……ごめん、もう、お別れ……だ……よ……」

そう言ったきり瑠那は硬く目を閉じ、もうその輝くような瞳を、秦月は見ることができなかった。
しばらく泣き崩れていた秦月は、侵略者の破片に向かっていった。

秦月「……こいつが、こいつが瑠那をォォォォォォ!!」
破片「ミュギュルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

秦月は力任せに破片を踏み潰した。
そして、また、泣いた。


それから数年後、秦月は社会に出ていた。
政府は星神の量産化を決定、今後の事態に備えると発表した。

秦月「…………」

バス停でバスを待つ秦月の後ろに、三人の高校生が並んだ。
かつて秦月が通っていた路掛学園の制服であった。

秦月(懐かしいな、あの頃は俺もこうして通ってたっけ)
高校生A「ねえ委員長、宿題見せてくれない?」
高校生B「あのね立花さん。そういうのは自分でやってよね」
高校生C「そーだよ、椿?」
高校生A「なによ、瑠那まで!」
秦月「え……?」

懐かしい声、懐かしい名に、秦月は思わず振り返っていた――――。


    完


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年12月10日 08:36