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月帝ノ唄

其ノ終「マモルとタメス」



昴「御架付君かい…!?その機体は!?」
秦月「俺の力……常夜だ」
椿「常夜……」
秦月「って、立花!?良かった、生きてたのか」
椿「うん。何とかね」
秦月「まあいい。今はこいつをなんとかしねえとな」
白夜『無理でしょうね』

意気込む秦月に、白夜が冷たく言い放つ。

マンゲツ『ほう、お前もそう考えるか、白夜』
白夜『当然だ』
瑠那「ど、どういうことよ!?」
秦月「説明しろ、マンゲツ、白夜」
マンゲツ『何故なら、貴方がたは月帝と常夜の真の姿を知らない』
白夜『その役目すらもね…』
秦月「真の姿に…役目?」
瑠那「それってどういう……」
融合体「ヴォォォォォォォォォォ!!」

瑠那の問いかけは、融合体の叫び声にかき消された。

昴「来るぞ!」
白夜『昴殿に椿殿。申し訳ないが、少し時間を稼いでもらいたい』
椿「少しって…どれくらい?」
マンゲツ『彼等次第ですね…。瑠那様、秦月殿。今からあなた方と月帝、常夜の意識をリンクさせます。
    そこで真実を知り、それでなお戦おうと言う強い意志があれば月帝と常夜は答えてくれるでしょう』
白夜『準備はよろしいですね?』
瑠那「え?ちょ、ちょっと待ってよ!整理する時間くらい……!」
秦月「意識をリンクさせる…?真実…?どういうことなんだよ!?」
白夜『我々には時間がないのです!ハァッ!!』
秦月「うわぁぁ―――――――!!」
瑠那「きゃぁぁ―――――――!!」

二人の声はしだいに遠ざかっていき、やがて月帝と常夜は動きを止めた。

秦月「……うう……ここは……?」
???『気がついたな、御架付秦月』
瑠那「……あ、あれ…?どこなの……?」
???『月乃輪瑠那、貴様も気がついたようだな……』
瑠那「あ……この声は……月帝?」
月帝『ほう、覚えていたか』
秦月「…ってえと、お前は常夜か」
常夜『そういうことだ。さて、マンゲツと白夜から話は聞いているな』
瑠那「うん。真実を知っても戦えるならって……」
月帝『理解はしているようだな。では、始めよう。約一億六千万年前、月には高度な文明が栄えていた』
常夜『一方で地球はようやくできたばかりの岩の星であった』
秦月「…………」


月帝『月の民はそんな地球を見るに見かね、大小様々な幾多の魔人達を生み出し、地球に送った』
常夜『私もそのうちの一体だった』
瑠那「じゃあ、その中の小さいのがあたしたちの先祖ってこと?」
月帝『そうなるな。ところが誤算があった』
秦月「誤算?」
常夜『その中に修羅という奴がいたのだが、その修羅が地球に降りた途端暴れ始めた』
瑠那「なんで?」
月帝『恐らくは地球のまだ整っていない大気に触れ、修羅の体が拒絶反応を起こしたためであろう』
常夜『修羅は辺りの物質を有機無機、地球のもの月のものを問わずに取り込んでいった』
秦月「!?」
月帝『我々は辛うじて生き残り、どうにか修羅を眠らせた』
常夜『そして大量の岩を取り込ませ、完全な岩の塊になったところで宇宙に打ち上げた』
瑠那「流れ星にしたってこと?」
月帝『まあ端的に言えばそうなる。ところが、これが運悪く衛星の周回軌道に乗ってしまったのだ』
常夜『この修羅は定期的に地球に接近し、その度に少しずつ自分の体の一部を落としていった……それが侵略者だ』
秦月「!!」
瑠那「! じゃあ……侵略者の正体は……あたしたちの先祖…!?」
月帝『星を護る役目を持つ『守護者』である私はこの事を知らせるため月に戻り…』
常夜『星の生物を試す役目を持つ『試験者』である私は有事の際に目覚めるべく地球で眠りについた』
秦月「……『守護者』に『試験者』……」

融合体「ヴォォォォォォォォォ!!」
椿「きゃぁっ!」

華奢な白薔薇の体は融合体の正拳突きを喰らい吹っ飛んだ。

昴「立花さん!」
椿「だ、大丈夫……」
昴「大丈夫じゃないよ!血が出ているじゃないか!」
椿「いや、本当に……大丈夫、だから……」
昴「無理しないでよ!君に死なれたら僕は……!」
椿「……たいの…」
昴「え?」
椿「戦うなら好きな人の隣で戦って!死ぬなら好きな人の隣で死にたいの!!」
昴「……なぁんだ。僕の片想いかと思ったら、僕たち本当に気が合うね」
椿「フフッ、本当に…。いくよ、昴!あいつらが戻ってくるまで持ちこたえるんだ!」
昴「…了解さ、『椿』…!」

瑠那「……できない」
秦月「ハァ!?今更何言ってんだよ、瑠那!」
瑠那「だって、侵略者はあたしたちの先祖だった……それを倒すってことは、先祖を否定すること……つまり、
  あたし達自身を否定するってことなんじゃないの!?」
秦月「……いいじゃねえかよ」
瑠那「え……?」
秦月「いいじゃねえかよ!否定したって!俺たち人間は、肯定と否定を繰り返して進化してきた!違うか!?
  異国の文化を肯定したから文化が進化した!異国の勧告を否定したから戦争が起こってまた文明が進化した!
  否定することをやめちまったら!俺たちはここでずっと足踏みして先へ進めなくなるんだ!」
瑠那「……そっか……『否定することも必要』ってことか……秦月らしいね」
秦月「あ?」


瑠那「分かった…道が見えてるのに、その手前でずっと足踏みってのはもどかしいもんね…」
秦月「瑠那?」
瑠那「秦月、戦おう。椿や星野君も心配だし」
秦月「おう!」
月帝『答えは見つかったか…』
常夜『ならば、我々の真の姿を見せよう……』
瑠那「きゃああっ!?」
秦月「うわああっ!?」

まばゆい光が二人を包んだかと思うと、二人はそれぞれの操縦席の中にいた。しかし。

瑠那「あ、あれ…!?ちょ、何で秦月が月帝の操縦席にいるのよ!?」
秦月「そりゃこっちのセリフだ!なんでお前が俺の隣に……! まさか!?」
マンゲツ『気づきましたか、秦月殿』
白夜『瑠那殿はまだなようですがな』
秦月「瑠那……よく聞けよ。月帝と常夜が……合体してやがる」
瑠那「え……えええ―――!!?」
???『これこそが、我らの真の姿よ!』
瑠那「だ、誰!?」
大帝『我らが名は大帝。貴殿等と共に進化の道を歩む『同伴者』である』
秦月「よし、わかった!行くぞ!」
大帝『しかし、我らを操るには、貴殿等二人の思考を一致させなければならん』
瑠那「二人で同じことを考えろってこと?」
秦月「やれるな、瑠那!」
瑠那「おぉし!やったろうじゃんか!」

二人は大帝が右足で地面を強く蹴る姿をイメージした。

昴「! あれは!」
椿「月帝と常夜が……合体してる!?」

驚く二人を尻目に大帝は跳びあがり、そのまま融合体にとび蹴りを喰らわせた。

融合体「ヴヴヴッ!?」
瑠那「よぉし、順調順調♪」
秦月「委員長、立花。遅くなったな」
昴「君、今日だけで二度目の遅刻だよ?遅刻届ちゃんと出してくれないと困るんだよね」
秦月「わぁってるよ。こいつを片付けたらしっかり出すって」
椿「よし、行くよ!ローゼスドリルウィィップ!!」

白薔薇の触手が地中から融合体に襲い掛かり、その体を貫いてゆく。
始めは全く動じなかったが、眼球を貫かれさすがにその場に突っ伏した。

昴「ブラックホールバスター!!」

続いて星神の背部から放たれた二つの黒いエネルギー体が融合体を直撃する。
もうもうと舞い上がる土煙の中、体のいたるところから血を流す融合体が立ち上がる。

昴「しぶとい…!」
椿「……瑠那!秦月!白薔薇を使って!」
瑠那「白薔薇を?」
秦月「……なるほど。分かったぜ、立花!やるぞ、瑠那!」
瑠那「え、ええ!?ちょ……ああ、了解!」
椿「行っくよぉぉぉ!!」

椿が叫ぶと白薔薇が姿を変え、一本の巨大な剣となった。


そして大帝はその剣をしっかりと握った。

昴「んじゃ、僕は支援にまわらせてもらうよ!」
秦月「ああ、頼んだ!」

直後、星神は跳びあがり融合体の背後にまわった。
そして、星神の最終兵器発射体勢を組んだ。

昴「行くぞ!」
瑠那「おう!」
昴「ビッグバンキャノォォォォォン!!!」
瑠那「大帝!」
秦月「断罪ザぁぁぁぁぁン!!!」
融合体「ヴォォォォォォォォォ!!!」

三体が交わり、巨大な爆発が起こった――――。

侵略者との戦いから数年後。
世界は平穏を取り戻していた。
政府は星神の量産化を決定、有事の際に備えると発表した。
そして、日本のある家庭で……。

テレビ『…三年前より発足した星野内閣の支持率は三年連続で70%を上回り、
   過去最高の内閣だと言われています。これに対し、星野首相は、『私一人の力ではない。
   妻、椿のおかげでもあり、国民の皆さんのおかげでもある』と話しております。続いてはスポーツです……』
妻「もー、またテレビ点けっぱなし。もったいないじゃない」
夫「おお、悪い悪い。んじゃあ、そろそろ行ってくるわ。じゃあな、パパ行ってくっからな、十六夜」
十六夜「だー」
妻「行ってらっしゃい…あ、今日は早く帰ってきてね、秦月」
秦月「わぁってるよ、瑠那。俺が結婚記念日を忘れるかってんだ」
瑠那「ふふっ、それ聞いて安心した」

秦月は軽く手を振り、扉を開けた―――。


完


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最終更新:2009年12月10日 08:44