月帝ノ唄
其ノ五「シンゲツとトコヨ」
瑠那「侵略者が!?」
昴「おそらくは月帝を危険視していかなる犠牲を払ってでも破壊する気だろう」
瑠那「そんな……」
マンゲツ「…反応!来ます!」
マンゲツのその言葉を合図に、四方八方から侵略者の大群が現れた。
その光景はさながら、黒い波が押し寄せてくるようであった。
昴「月乃輪さん、後ろ任せてもいいかな?」
瑠那「絶対…って保証はないけど……」
昴「よし、十分だ!天川砲!!」
星神の額から放たれた光が、数体の侵略者をかき消してゆく。
瑠那「月帝!右手ドリルの左手斧!」
犬蠍型「ガガギャアアアア!!」
蜘雉型「ギギギギギグガァァァァァァ!!」
月帝の腕が二体の侵略者を引き裂いていく。
秦月「……俺は、こんなところでこんなことをしていていいのか……?
委員長も、瑠那でさえ戦ってるってのに……俺は……うわっ!?」
昴「! 月乃輪さん、あれ!」
瑠那「…! 秦月!?」
秦月は、余所見をしている間に大猩々型に後ろからつかまってしまった。
秦月「こ、こいつ!放せよ!放せって……うわぁぁぁぁぁ!!?」
瑠那「秦月うぅぅぅぅぅ!?」
大猩々型はその強肩で秦月を思い切りブン投げた。
秦月の体は弧を描いて飛んでゆき、あっという間に見えなくなった。
瑠那「よくも秦月を……だあああああ!!」
大猩々型「ゴグゴォォォォォォ!!」
瑠那は月帝の両腕を巨大なクローに変化させ、大猩々型の胸に突き立てた。
そして、そのまま左右に腕を振り、腹を引き裂いた。
秦月「……いっつぅ……あんにゃろう……おもっきしブン投げやがって……ん?
なんで俺こんな投げられて無事なんだ?……うわぁぁ!?」
秦月は自分の足元を見て驚く。
秦月が立っていたのは、岩肌ではなく、黒い羽毛であった。
秦月「……!…なんだ……俺は……こいつを……知ってる……!?」
???「む!?そこのあなた!」
秦月「! 誰だ!?」
瑠那「くっ、数が多い……!」
昴「こりゃあ、きついかな……?」
蛇型「ジャアアアアアア!!?」
蜻蛉型「ブブバァァァァァ!!?」
瑠那「え!?」
昴「な、何だ……!?」
月帝と星神を取り囲んでいた侵略者を薔薇の棘が縛り付けていた。
???「……ま、間に合った、ね……」
昴「その声は……」
瑠那「椿!?生きてたの!?」
椿「まあね……あの胸像はただの飾りで、ちょっと出て行きづらかったのよ……」
瑠那「よかった……生きてたんだ……」
椿「感動の再開は後。さあ、あたし達も本領発揮だよ、『白薔薇』!」
椿の叫びと共に、薔薇型の死体の中から、一輪の可憐な白い薔薇が咲いた。
そして、それはみるみるうちに姿を変え、人型に変化した。
椿「それそれそれそれぇぇ!」
昴「こりゃ負けてられないな!」
瑠那「あたしだって!」
三人は怒涛の勢いで侵略者を倒していった。
すると、部隊のリーダーと思われる猿蟹型が周囲の侵略者に号令をかけた。
その号令に従い、侵略者が一つの場所に固まった。
椿「な、何……!?」
昴「まさか……互いに互いを捕食しあい、一体の巨大な侵略者となる気か……!?」
やがて不気味なうごめきは終わり、一つの巨大な影がゆらりと動いた。
融合体「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……」
瑠那「! か、勝てるの……!?」
昴「わからない……下手すれば、僕らがそろって自爆しても勝てないかもしれない……」
椿「そんな……」
白夜「申し遅れました。私、白夜と申します。ここで『常夜』の護りをしております」
秦月「とこよ?」
白夜「月の月帝と対となってこの星を護るものです」
秦月「月帝と!?」
白夜「ええ。私もマンゲツ殿とは古くからの付き合いでして」
秦月「あんた人間みたいだけど……」
白夜「私は好きでこの姿をしているんです。で、話を本題に戻します。
あなた、右腕に『あなたから見て右側がかけている黒い半円の痣』がありませんか?」
秦月「あ、あるけど……まさか!?」
白夜「そう、あなたこそ常夜の適合者、月帝の適合者と共にこの星を護る者なのです」
秦月「……常夜と融合するにはどうすればいい?やはりお前を装着するのか?」
白夜「さすが理解がお早い。では行きます。装甲変形!」
瑠那「きゃあああ!!」
昴「月乃輪さん!」
椿「…だ、駄目だ。全然歯が立たない……」
融合体「ヴヴヴヴヴヴ……」
三人が絶望したのを確認したように、融合体は大量の分身を生み出した。
そして分身は、一斉に三人へとかかっていった。
昴「やられる!?」
椿「くっ…!」
瑠那「い…いやっ…秦月…!」
分身『ヴァアァァァァァ!!!』
瑠那が目を閉じようとした、まさにその瞬間、黒い影が瑠那の視界に現れ、
腰に差した二本の刀で分身を切り刻んだ。
融合体「ヴヴヴ……?」
???「呼んだか、瑠那?」
瑠那は泣いて喜びたい気持ちを抑えてその声の主に精一杯の憎まれ口を叩いた。
瑠那「誰もあんたなんか呼んでないわよ、遅いじゃないの、バカ秦月!」
完
最終更新:2009年12月10日 08:39