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目の前を炎が包み込む。
そして俺は死んだ―


…はずだった。


「ついに来たか…。」

『輪廻の階層 第1カイ/地獄の巨人』



どれぐらい経っただろうか。
俺は目を覚ました。

周りは何一つ無い漆黒の世界だった。
「これがあの世ってやつか…?」
俺の呟きは周りの静寂にかき消された。


とにかく俺は死んだ。
それだけは何故かはっきりとわかる。
しかし問題は何故こんなところにいるのか、ここは何処かだ。
もし本当にあの世なら閻魔様でもなんでも出てきて欲しいぐらいだ。
それぐらいさっきから何も起こらない。

といっても時間を示す物が無いので感覚でしか時間を計れない。
そもそも感覚が生きているのが疑問だ。
何もしないと頭がおかしくなりそうなので、俺は目印も無いこの暗闇の空間を歩く事にした。

歩きながら俺は何故死んだか考える。
ぼんやりとイメージは出てくるものの今一つはっきりと思い出せない。
とにかく俺はひたすら歩いた。
「はぁ…だるいぜ…。」
つい疲れが声に出る。
それを自分で聞いてこの状況で疲れていることを改めて確認する。
俺はとりあえず何も無いその場に座り込んだ。

「くそっ!どうなってやがるんだ!!」
反応が欲しくて思いっきり叫んでみた。
だがやはり返事は無い。

死んでいるのに生き地獄とはどういうことか。
これが普通に地獄という奴かもしれない。
そう思ったときだった。

いきなり目の前が歪んだ。
毒々しい光の斑点のような景色が広がり出す。

そして大きな唸りを上げながら巨大な何かが現れた。
「グオォォォ!!!」
体が途中でちょん切れたような、でかいムカデみたいな奴だった。
いきなり現れたそいつは俺のほうに向かって来た。

とっさに逃げるが相手も追ってくる。
だがその差はどんどん縮まる。
振り返れば巨大なアゴが迫っている。
殺される―
殺される?
死んでいるなら構わないんじゃないか?むしろさっきまでの何も無い空間から逃れられるんじゃないだろうか。
そんな考えが脳裏によぎると俺は足を一瞬止めてしまった。

「残念だがそれは違うな。」
声と共に目の前に巨大な影が現れるともう一つの巨大な物体を吹き飛ばした。
「グギャァァ!!!」
不意に吹き飛ばされた例のムカデはすぐさま体勢を立て直すと、俺の目の前に現れた巨大な影―赤い巨人に向かって飛び掛った。
「温い!!」
凄まじい音と共にムカデにカウンターの拳が炸裂した。

「ギギ…グバァァァ!!」
奇妙な断末魔をあげ巨体は裂け、崩れ落ちた。
俺はただ呆然としているしかなかった。
だが異変はまだ続く。

巨大な骸がスッと消えると、再び目の前が歪みだした。
その時巨人の胸が割れ、先の声が飛び出した。
「早くこいつに乗り込め!!」
現れたのは仮面の男。
俺が状況を飲み込めずポカンとしていると、いきなり巨人の手が俺を掴んだ。
「世話の焼ける奴だ。」
開いた胸の穴に投げ込まれた。
穴の中は意外と広く、前には乗り出していた仮面の男の後姿。

「なんなんだよてめぇ!」
「話は後だ!!」
俺の言葉を遮ると、巨人は凄まじいスピードで動き出した。


どんどん加速していく。
すると先に壁のような物が現れるがまったく止まる様子も無く、巨人はそれを突き破った。

するといままでいた不気味な空間を抜け、何も無い始めの空間に戻っていた。
出てきた空間のほうは歪みながら無に消えていった。

「いきなり消えるところだったな。」
仮面の男が落ち着いた様子で語りだす。
「何わけわかんねぇこと言ってやがる!なんか知ってるな!?」
フフンと鼻で返されるが、それは肯定の態度。
混乱の連続、疑念にかられる俺は頭で考えるより先に、そのはけ口を求める。
「ここは一体何処なんだよ!!」
「何処だと思う?」
いきなり聞き返されて戸惑った俺はようやくそれで冷静さを取り戻すと、「地獄」と答えた。

すると男は少し間を置いて再び仮面の下で口を開く。
「そんなものより性質が悪い…。ここは『輪廻の階層』だ。」


こうして俺と謎の男と巨人との奇妙な旅は始まった。

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最終更新:2009年12月11日 08:15