「ハァ……死ぬかと…思った…暑ィ…。」
熱のたちこめる中俺は腰を上げる。先の衝撃でぶつけたのか背中が痛む。
「…。」
男は一撃を放った後の体勢のまま、まったく動かない。
「死んだ…のか?」
まさかと思いつつ恐る恐る、後ろから覗き込むべく体をよじる。
と、急に目の前の腕が動いて壁を叩きつける。
「クソ…過負荷状態か…。」
「おわあぁぁ!!」
『輪廻の階層 第3カイ/虚空の絡繰り』
「吃驚したじゃねぇか!いろんな意味で死んだかと思ったぜ…。」
「死?…そうか、まだ話してなかったな。どの道こいつも一時は動けない。丁度良い、少し話してやる。この世界について。」
人が聞いたときは無視しておいて勝手な奴だ。
しかし気になる事ではあるので黙って聞くことにする。
「此処は輪廻の名が指す通り、死後の世界であり来世へ生まれ変わる為の場所のようなものらしい。」
「『らしい』ってあんた知ってるんじゃないのかよ。」
宗教的なくだりよりその言葉に反応する。
「俺もお前と同じ外から来た者だ。完全に把握はしていない。それより、重要なのはそんなオカルトチックな事じゃない。」
何か弄っているらしく此方には見向きもせずに淡々と話を続ける。
「生まれ変わるというのが本当かどうかは別だがこの世界にはその為の場所と言われる出口がある。が、其処に辿り着けるのはごく一部だ。」
出口…ここから出られるならそうしたい。この男もそうなのだろうか?
しかしごく一部とは何故なのか。男が会話に区切りを入れたので俺は自分なりの推測を述べる。
「今さっきみたいな怪物に殺されるってことか。」
「…理由として半分はそうだな。俺が戦う前に言った事を覚えているか。」
此処に居ると次第に記憶を失うこと。
俺もこの男もそうであること。
そして怪物も…?
「この世界での肉体は自我と記憶によって保たれている。だが何も無い空間に居続ければ自我は狂い出すし前に言った通り此処では記憶も失われていく。
すると肉体が原型を保てなくなり最終的には意思が肉体に飲まれ肥大化する…つまり単純に言えば怪物になる。」
なんとなく男の言った言葉が繋がってきた。
なるほどそうなると最早自らの意思で出口を目指せなくなる。
「そろそろ時間だ。最後に一つ、此処で死ぬと完全に消滅し輪廻からも外れる…といっても輪廻自体自分で実感できる物じゃないからな…とりあえず此処でも死は存在する事とそうなると消滅するということは覚えておけ。少し留守を頼むぞ。」
そういうと男は巨人の胸部を開き外に降りる。
「ちょっと待て、何処行くんだよ。それに死んだら消滅するっていうがこの二匹の死体は残ってるじゃねぇか!」
「出口に着く為に必要な物を取りに行く。その為にそいつらはわざと生かしてあるから消えてないだけだ。何、瀕死で動く事はない。」
即答すると男は行ってしまった。
「訳解んね。」
とは口にしてみたもののただ待つのも暇なので結局今までのことを整理することにした。
怪物がそういう経緯で生まれるのだとしたら今まで襲ってきた怪物も何らかの意思と記憶を持った俺と同じような存在だったのかもしれない。
逆に俺もこのままだと消えるか怪物になるかという事になる。
これはますます出口とやらに行かなければならない。
「…こいつロボットっぽいけど何だろ。」
なんとなく男の真似をして前の座席らしき場所に陣取り壁を触ってみる。
流石に動かない。
そういえば息子がこういうの好きだったな。
この世界から出られたら家族にまた会えるだろうか。
と、その時壁伝いに空気が変わるのを感じた。
嫌な予感がして壁の外を映し出す部分から足元を見る。
ガキガキガキィ!
予感は的中した。獅子と鳥の怪物が結合していく。
やばいッ!
そう強く感じると今まで固まっていた巨人が怪物から身を引いた。
「動いた!俺に反応…したのか!?」
ほんの少しの感動もつかの間、結合を終えた怪物が体を起こした。
「ギアァァァァ!!!!」
鳥の頭と翼に獅子の体。瞳の無い目からは反射的に殺気が伝わってくる。
周りを見渡すが男は帰ってこない。
此方の焦りを察したのか怪物が突進してくる!
「うお…ガハッ!」
重い衝撃が内部にも直に来る。まるで直接自分が攻撃を受けたようだ。
怪物は倒れた巨人に食らいつこうと飛び掛る。
「くそ…邪魔だッ!」
ドガッ!
巨人の腕が怪物を払い飛ばす。
「やっぱり動かせるのか!」
不意の一撃を食らった怪物だがくるりと弧を描くように着地すると此方を威嚇するように翼を広げ、雄叫びを上げる。
「こいつぁ…俺がやるしか無いみたいだな…!」
最終更新:2009年12月11日 08:22