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最終話「太陽系ブルース」



 死闘の末「もっとも凶暴な宇宙探偵」ゴッドハーケンの逮捕に成功したディプロスたち。ディプロスの親友、

宇宙刑事アレックスはゴッドハーケンを護送して宇宙に帰っていった。そして僕たちにも、別れの時が迫っていた。

 ディプロスたちが地球に来てから一年。――宇宙怪盗ガンフリートの予告の期日まで、あと一日。

「結局予告状なんか関係なしにいろんなもの盗もうとしてたけど、やっぱりやるのかな、明日?」

「やるだろうな。この一年で奴がもっとも貴いと思ったものを。」

「もっとも貴いもの、か……。」


 次の日、予告当日。放課後。

「小林君、事務所行くんでしょ?」

「うん。家にランドセル置いてくるから、先に行っててよ。」

「わかった。じゃ、あとでね。」

花咲さんと別れてから僕は家に向かって駆けた。その途中道に止まっていた大きなトレーラー……。

「……ガンフリート。」

「よく、わかったな。」

「百段変形とか言っといて、実際は大して変わってないからね。」

「フフフ、地球人は目がいいなあ。」

「何を、盗む気なんだ?」

「教えてやってもいいが、聞いても仕方ないぞ?なぜなら……。」

「!?」

トレーラーのコンテナが突然展開して、僕に向かって巨大な腕が伸びた!

「はなさきさぁーん!ディプロスに、伝えて……!!」

「チッ、小僧!」

まだ別れたばかりだ。大声で叫べば、きっと花咲さんにも届くはずだ……。



 ……僕は、どうしたんだろう?変な椅子に縛り付けられて、頭にも何か、付けられてる……?
そうだ、僕はガンフリートにさらわれた。ここは多分、ガンフリートの中。エンジン音が聞こえるし震動もある。
どこかへ移動しているんだ。

「ガンフリート、僕をさらってどうするつもりだ。何を盗む気なんだ?」

「……持ち主には、話しておかなければな。私がこの星で見つけたエルキーダタ。それは君と宇宙探偵たちとの

 ……友情だよ。」

「友情?」

「この星に来てからの私の行動は、全く私らしくないものだった。予告の期日より先に行動を起こしてしまったりね。
 そして、それをいちいち宇宙探偵どもに阻止され続けたのも、これまでには無かったことだ。私はその原因を
 考えた。探偵どもがこの星で新しく得たものは何だったか?」

「それが、僕たち……?でもそんなもの、どうやって盗もうっていうんだ!」

「そう、そこで私も頭を捻ったのだがね……結局、君の中から彼らとの記憶を、頂くことにした。」

「記憶を?」

「今、決戦に相応しい場所に向かって移動している。彼らが君を助け出すのと、君が彼らのことを忘れるのと、
 どちらが早いかね?」

忘れるなんて嫌だ。ディプロス、みんな、助けて……。


 ガンフリートのエンジン音が止んだ。決戦の場所についたんだ。ガンフリートが変形して人型になると、トレーラー
のコンテナは展開してマントになり、僕はそのマントの内側に椅子ごとぶら下がっていた。

「ここは……。」

「君も覚えているだろう?我々が始めて会った港だよ。安心したまえ、名探偵たちだからね。ノーヒントでもすぐに
 嗅ぎつけて来るさ。……と、もう来たか。」

「推理っ合体!勇者探偵……ディィィィィプロッテクタ――――!!!」

「推理合体!超音速探偵、ソニィッック、ランナ―――ッ!!」

「推理合体!豪腕探偵、ディ―――――――プ、バァトラー!!見損なったぜガンフリート!ただのコソ泥なら
 可愛げがあったもんを、人さらいとはな!」

「確かに、私にしてはいささか暴力的だったかもしれん。だがエルキーダタは、彼から直接頂くしかないのでね。」

「翔太から?何を奪おうというんだ!?」

「コイツは、僕の中からみんなとの記憶を盗ろうとしているんだ!」

「翔太!」

ガァン!

ガンフリートの拳銃ワルサーカノンが火を噴き、ディプロテクターの足元に火花を散らす。

「おおっと動くなよ。諸君の大事な翔太君は私の懐にいるのだからね。……翔太君。考えようによっては、
 こんな平和的な取引はないんだよ。君がただ記憶を渡しさえすれば、すべては無事に収まるのだからね。
 それもすべてじゃない。彼らとの記憶だけだ。何も困ることはあるまい?」


そう言われれば、そうかもしれない。でも。

「……嫌だよ。みんなのこと、忘れたくないよ。」

「わがままな子だ。それなら、これでどうだい?」

ガァン!

ワルサーカノンがまた吼えて、……に当たった。……が倒れる。……あれ、誰だっけ!?

「……!?」

「ハハハ、順調に記憶が私のものになっていくよ!歯痒いだろうから教えてあげよう、今倒れたのは
 『ディープバトラー』だ。」

「ディープバトラー……。」

その名前は僕の頭の中で遠く響くだけだった。このまま忘れてしまえば……彼らは無事で済むし、僕だって忘れ
ちゃうんだから悲しいことだって、ない。だけど……涙が零れてきた。

「嫌だっ!ディプロテクター、ソニックランナー、ディープバトラー!リニアランナー、ジャイロランナー、
 スカイランナー、バーンランナー!ロードバトラー、パワーバトラー、エイドバトラー、ドリルバトラー!
 アレックス……ディプロス―――――――ッ!!」

「翔太―――っ!!」

「うるさいんだよ。」

ガァン!

駆け出そうとしたディプロテクターに、またワルサーカノンが放たれる。でもそれをソニックランナーが受け止めた。

「ソニックランナー!?」

「いいから行きな。少年を助けられるのは君だけだろう、『勇敢』?」

ソニックランナーが倒れる。走るディプロテクターを、さらにワルサーカノンは捉えた。

ガァン!

「ディプロテクター!」

「まだだぁぁぁぁっ!!」

崩れ落ちるディプロテクターから飛び出したのは、オンボロのクラッシックカー。

「しつこいな。」

ガァン!

ワルサーカノンが脇腹を抉っても、ディプロスは止まらずに……。

「取ったぞ。」

ズギュン!ズギュン!ズギュン!

ディプロスがガンフリートに、至近距離からフィールドマグナムを撃ちこんだ。

「……く、フフ、やるじゃないか宇宙探偵。だが残念だったな。エルキーダタは既に私の……何ィ!?」

「忘れたくない、絶対に忘れるもんか!」

「吸い取っても吸い取っても、記憶が溢れ出してくるぅ!?や、やめろ小僧、思い出すのをやめろ!」

「嫌だッ!」

「やめろ……マシンの容量が……頭がぁぁぁぁっ!?」

ボンッ!

僕の頭に嵌められていた機械が煙を出して外れると同時に、ガンフリートは頭を抱えて倒れた。

「翔太!」

ディプロスが僕を受け止めてくれた。

「僕は大丈夫……ディープバトラーと、ソニックランナーは?」

「俺たちも、生きてるよ……だが、この体はもう、限界みてェダ、な……。」

「体が、限界?」

「ああ、私もだ……翔太、そろそろ、お別れのようだ。」

「ディプロス?」

「君たちのおかげでガンフリートをつかまえる事もできたし、我々はこの星で少し騒ぎすぎたしな……。」

「待ってよ、みんな、いなくなっちゃうの……?」

「翔太、君のおかげで私達は、この星で……いやきっと宇宙で一番素敵な宝物を分かち合うことができた。そして、
 それを怪盗の手から守り抜いたのは誰でもない、君の力だ。ありがとう。」

「ディプロス……。」

「そうだ、これを……預かっていてくれないか?」

ディプロスは体からナンバープレートを外して僕に差し出した。鉄製だから本物より重い、偽造のナンバープレート。
何で、涙が出るんだよ。笑わなきゃ。

「うん……これが無きゃ、地球の公道は走れないもんね。」

「そうだな。……それでは、さよならだ。」

オンボロ車から、リニアモーターカーから、ヘリコプターから。それぞれ色の違う九つの光がガンフリートの体を
囲み、空に上っていった。あの光の一つ一つが、宇宙の名探偵たちなんだ。

「……さようなら。また、会えるよね……?」

「……あいつ、上手くやったかのぅ?……何じゃ、騒がしいな。」

「旗面 相さん、警察です。違法巨大ロボットを暴れさせた容疑で、あなたに逮捕状が出ています。」

「……そうか。ま、よく一年も見つからなかったもんじゃよ。」

 正直、少し残念だった。目当ての宝が「友情」だと聞かされたときには。そんなもの、お前は既に持っている
じゃないか。なあ、ガンフリート?


「そう、みんな帰っちゃったんだ。……探偵事務所も店じまい、か。」

「そうだね。……そうだ、これ。二枚あるから、一枚は花咲さんが持っててよ。」

「これ、ディプロスの?」

「お、いいとこであった翔太!サッカーやるからお前も来いよ。」

「あ、井上……。うん、僕も行こうかな。花咲さんも来ない?」

「うん、行く!」

「まったくお熱いぜお前らはよ。よぉ、それ、何だ?ナンバープレート?」

「これ?これはねぇ……僕の宝物!」

「お前、6年にもなってそんなもんをさぁ……。」

「わかんなくてもいいよ。でも、これは宝物なんだ。」

僕と、花咲さんと、ディプロスたちとの。いつか、宇宙規模の大事件があったとき、彼らはきっとやってくる。
そうしたらこれを返して、また探偵事務所をやるんだ。そのときは……この井上や野呂たちも、誘ってやろうかな。



勇者探偵ディプロテクター 終



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最終更新:2009年12月11日 09:02