第3話「最高速の宝」
「花咲さん、アパートのこと、ありがとうね。お母さんに説明するの、大変だったんじゃない?」
「……ううん、そうでもない。気にしないで。」
花咲さんにアパートの部屋を借りて、ディプロス探偵事務所は開局した。看板もつけていいし、家賃は出世払い
でいいって、すごいラッキーじゃない?でも……。
「暇ね……。」
「そりゃいきなり看板出しただけで、お客さんが来たりはしないよね。」
「ふむ、仕方ないな。翔太、花咲さん、出かけよう。こんな時はパトロールだ。」
「いえ、私はいいです……。」
「なんか花咲さん、おかしくない?あんなに積極的に協力してくれてるのに、嫌々してるみたい。」
「……翔太、まったく心当たりがないのか?」
まるであって当然みたいにディプロスは言う。
「ないよ。ディプロスは何か知ってるの?」
「ああ。そのことは、私から話しておくよ。」
「うん……?で、ディプロス、どこへ向かっているの?」
「うむ、エルキーバタが何なのかはわからないが、この近くにあって価値の高いもののはずだ。そういうものの
場所に向かっている。」
「近くで価値があってこの方向?……リニアモーターカー!」
「ご名答!スピード上げるぞ!」
僕の町の近くにはリニアモーターカーの実験場があるんだ。確かにこの辺じゃ一番宝物らしいかも!
リニアモーターカー!さすがにすぐそばまでは近付けないけど、自由に見ることはできるんだ。
「でも、宇宙怪盗ってこういうの欲しがるの?すごいメカっていうんなら、ディプロスのランドテクターとかの
方がずっとすごいじゃない。」
「確かに、宇宙にはもっと優れた技術もある。だが、現在のこの星で最高を目指すもの。そこには技術だけでは
計れない価値がある。」
「計れない、価値?」
「作った人たちの想い、情熱。奴がもっとも好む至上の宝石さ。」
「へえ、怪盗って、意外とロマンチストなんだ?」
「だからといって、盗んでいいわけがない。」
「そりゃ、わかってるさ。」
「リニアモーターカーを盗むのか、ガンフリート?」
「そのつもりは無い。まだ予告の時まで時間があるからな。だからただの下見……思わず欲しくなる情熱にあふれてはいるが。」
「なら、ちょっとくらい予定を早めてもいいんじゃないか?」
「え?そう……うん、そうだな!探偵だってもう来てるもんな!」
「では、エレクトロイドを発進させるぞ!」
「よし!頼むぞ旗面博士!」
ゴゴゴゴ……ドガァ!
「何?」
「あれは!」
地面から、巨大ロボットが!
「リニアモーターカーを狙ってるの!?」
「そのようだ。行くぞ!」
ここからじゃ見えないけど、今ごろ駐車場にあるディプロスの本体は変形して……
「トォッ!」
巨大ロボットに飛び蹴りだ!でも、やっぱり効いてない。
「やっぱりディプロスのままじゃ……。」
「私も今そう思ったところだ。ラァ―――ンドッ、テクタ――――ッ!!」
宇宙からランドテクターが降りて……。
ビシャァァァン!
「ギャアアアーッ!」
「ディプロス!」
敵ロボットの頭から雷が落ちて、ディプロスに直撃してしまった!
「ディプロス、ランドテクターが来てるよ!」
「体が痺れて動けん……。」
「ディプロス~!」
ああ、どうしよう……リニアモーターカーが盗まれちゃう!と、その時!
「まったく、この僕から一番乗りを奪おうとなんてするからこうなる。」
今の声、誰?
「そうだろ、『勇敢』?」
「お、お前は……。」
「チェ――ンジッ!もっとも速い宇宙探偵、リニアランナー!!」
リ、リニアモーターカーが……変形した!?
「予告までまだ一年もあるってのに、僕より気が早いんじゃないのかガンフリート?だが残念だったな、こうして僕が乗り
移ってしまった以上、もう盗めはしない!」
「それでは、代わりにお前が盗んだようなものだろうが……。」
「い、いいんだよ僕は!ことが終わったらちゃんと返すから!……わあああっ!?」
ビシャァァァン!
あ、のんびり話してるからリニアランナーまで雷を……。しかも、連続だ。
ビシャァァァン!ビシャァァァン!
「……フッ!」
あれ、平気、なの?
「僕はリニアモーターカーだぞ……こんな電撃は……いいごちそうだよ!」
フワッ!
リニアランナーが、浮いた!?
「倍返しだ……リニアカタパルト!電撃ッ、キィィ―――ック!!」
巨大ロボットに突っ込んだ……の?見えなかったけど!
「まるで、稲妻……。」
敵ロボットはものすごい衝撃を受けて吹き飛んだ!でも、まだ立ち上がる……。
「チッ、やはり電撃使いにはあまり効かないか。僕と同じだ。」
「よし、痺れが取れてきた……!推理・合体!ディプロテクタァ―――ッ!大発剣、一発快トォ――――ッ!!」
ズバァァァッ!ドッカァァァン!!
……ディプロス、なんか、ずるくない……?
「ベルキーバタって、リニアモーターカーのことだったんだね。」
「いや、まだ油断はできん。奴は名前だけ付けてモノは後から決めるような奴だからな。」
「やーぁ、ディプロス。さっきはおいしい所をもっていってくれたな。」
「フッ、お前の詰めが甘かっただけだ。」
「言ってくれるなぁ、僕がいなければどうなっていたかわからんものを。」
「怪盗のターゲットを自分で盗む泥棒に私が助けられたとでも?もういいからリニアモーターカーに戻ったらどうだね?」
「……フン!」
リニアランナーは線路の方に歩いていった。
「仲、悪いんだね。」
「私も、ああいう悪漢との付き合いには慣れていなくてね。しかし、確かにリニアモーターカーはもう大丈夫だ。帰ろう。」
「とんだ不良品だったではないか、博士。」
「何をぅ!標的のリニアが突然ロボットになるなどと、誰が予想できたものか!」
「それはまあ確かに、私も予想外だった。無茶な探偵もいたものだ。ともあれ、これからもよろしく頼むぞ、博士。」
「おう、任せておけい。」
次回予告
「よし、人気もないし次で一気に最終回だ!」
「そう……なんだか寂しいね。」
「ちょっと待て!俺たちまだ登場もしてないんだけど!?」
「うるさい。完結だけはさせるんだ!次回勇者探偵ディプロテクター最終話『太陽系ブルース』!」
「待てといっているだろぉ――っ!」
最終更新:2009年12月11日 09:02