第二話「血と汗と涙」
川に俺の血が流れこんで、鉱人ソーディムが生まれた。爺さんが言うには、俺の血中のナノマシンが
水中のミネラルを結晶化させて鉱人ができるんだと。で、後で爺さんとモメた。
「爺さんあんた、ぶつかっていけって言ったよな?その後でただの準備だって、言ったよな?」
「う、うん……どうだったかのぉ?」
「俺はただ川に血を流すだけのために敵に突っ込んで撲殺されそうになったと、こういうことだよな?」
「う、うん……そうだった、かも……」
「それが一人しかいない戦士にさせる戦い方なんですかぁ?」
「一人?君、それは違……ム?」
またひとりでにTVが点いた。
『大変です!怪獣です!怪獣が現れました!』
「怪獣だぁ?」
TVが10階建てくらいのビルの屋上を映す。その陰には、確かに怪獣……巨大なピュアハンターが映っている!
「な、何だよ爺さん!でけえぞ!?」
「やはりな。先日のはただの小手調べ。これが本来のピュアハンターなんだ……!」
「ば、バッキャロウ!ソーディムであんなの倒せるわけねえぞ!どうやって戦うんだよ!?」
「それなんだがな……うむ、いい時間だ。とにかく行こう」
「イヤだ。俺死にたくないよ!」
「大丈夫。私が死なせん。必ず勝てる!」
「……」
さあ、怪獣の近くまでやってきた俺たち。で、どうする?
「とりあえず血を流せ」
「やだよ。痛いもん」
ボゴッ!爺さんに顔面殴られた。
「いってぇ……あ、鼻血……」
「よし、水場にレッツゴー!」
爺さん、いやクソジジイが俺の襟首をつかんで走り出す。この野郎、ソーディムにはまずてめえを殴らせてやる。
「うわっぷブクブクブク……」
ジジイは持参した洗面器に水をためると、俺の顔を押さえつけた。俺はもがく。もがく。
やべえ、敵より前にこのジジイに殺される!と、思ったあたりで頭を押さえる手は放された。
目の前にはもうソーディムがいる。
「うむ、成功だ!さあ、反撃開始だぞ!」
「……おう」
ジジイの体が宙に舞った。
「おし、恨みも晴らしたし、いけソーディム!」
ソーディムが果敢にも怪獣に向かって突っ走っていく。まったく頼もしいぜ!
ペシャ。
「ソ、ソーディムゥゥゥゥゥゥッ!」
ソーディムは踏み潰されて溶けてしまった!
「じ、爺さん起きろ!想像通りの展開になっちまったぞ!?」
「むぅぅ……とりあえずもう一体作り直して待つんだ。そろそろ来るはずだから」
「何が来るってんだよぉぉぉっ!?」
「フン、一人じゃ何も出来ない腰抜けか」
「言い換えれば、私達が来たからにはもう大丈夫、ってことね」
「だ、誰だお前ら!?」
そこに現れたのは、見るからに暑苦しいアゴの割れたデブと……おお、もう一人は金髪碧眼の美少女だ!
「イワン・ボルビック」
「私はクリス・エビアン」
「おお来てくれたか!ささ、挨拶はいいから早く鉱人を」
「了解でさ!おおおおおおっ!!」
そう言うとイワンとかいうデブは突然筋トレを始めた。一方美少女はといえば……いきなり泣き出した!?
「な、な、何だこいつら!?」
「彼らは君と同じ、ナノマシン被験者の子供達だ。彼らの媒介はそれぞれ、汗と涙」
「そうか、それで筋トレしたり泣いたり……ってそれじゃ何で俺だけ血を流さなきゃなんないんだよ!」
「安心したまえ、体液に近い分だけソーディムは他の二体より強めだから」
アバウトな表現。っていうかそれあんまりフォローになってないし。と、そうこうしてる間に。
「博士、できました」
「こちらも、カルシオン結晶完了です」
ソーディムとは違う、二体の鉱人が生まれていた。
「よし、鉱人戦隊、突撃だ!」
「おうっし、いけ!マグナイト!」
作り直したソーディムと合わせ、三体の鉱人が怪獣に向かって突っ走っていく。頼もしいぜ……って。
ペシャ。
あ、やっぱり。
「どうすんだよ爺さん!数が増えたってしょうがねえよ!」
「う~む、やはりな……それでは三人、ちょっと集まって。うん、そうそう、ひとかたまりに。……どっせい!」
ザッパーン!
ジジイは俺たちに、いきなり水をぶっかけやがったのだった。
「な・に・し・や・が・ん・だこのクソジジイ!!」
俺はジジイの襟首を掴まえて問い詰めた。しかしこのジジイとぼけたもんで。
「……なんだ、おかしいと思ったら流くん、鼻血が止まっとるじゃないか。」
俺は身の危険を感じて跳びすさった。また殴られちゃかなわない。
「何をおびえておるのだ……クリスくんを見たまえ」
「なに……ってうお!?」
美少女の服が透けてる!そこでようやく事態に気付いた美少女が胸を押さえるが、もう目に焼き付けちまったもんね!……
とろーり。
「あ、また鼻血……」
「よぉし揃った!リ・クリスタライズだ!」
「今度は何だ……うおおっ!?」
俺とデブと美少女と、足元の水溜りが集まって盛り上がっていく!?町並みがぐんぐん下に遠ざかっていって、止まったときには怪獣と目が合う高さだった。
「何だこりゃぁぁぁぁ!?」
「君たち三人のナノマシンを合わせて生まれた、まさに血と汗と涙の結晶!名付けて超硬水、クリスタルガイザーだ!」
「巨大ロボットォ?」
「ヘン、まったく何も知らねえんだな、お前」
「なに?てめえ、そういうキャラが許されんのは二枚目だけだぞ!?」
「なら何の問題もねえじゃねえか」
「この野郎世の中なめてんのか……」
「いいかげんにしなさい!むこうも本気になったみたいよ!」
「うるせええええ!こいつの弱点はもうわかってんだよおおおお!!」
クリスタルガイザーも俺の考えたとおりに動くみたいだ!殴れ殴れ殴れェ!
「お、おい!腕溶けてるぞ!?」
「構わねえ!」
バシャン!バシャン!バシャン!
「何なのこの人……あら?イワン見て。ピュアハンターが、崩れてくわ!」
「そうさ!こいつと鉱人は、対消滅するんだ!」
「なるほどな、伊達に一足先に実戦を経験してたわけじゃねえんだ……て、おい。対消滅、って言ったか?」
「それがどうした!?」
「私たち、クリスタルガイザーの中にいるんだけど……消えちゃうわけ?」
「あ」
とっさにパンチを止めたが、それがとどめの一撃になっちまった。
ザバァァァァァ!!
座席も足場も水になって、俺たちは――
「落ちるぅぅぅぅ――っ!!?」
やべえ、勝ったのに、死ぬ――
「そうだ、この水!二人とも、いま俺たちの周りにある水!クリスタルガイザーが溶けた、ミネラルたっぷりのはずだ!こっから鉱人を……!」
「そ、そうか!」
「死にたくない……!」
恐怖の涙と冷や汗から、鉱人が生まれる!で、俺は……
「血が、出ねえ―――――――っ!!?」
「ナガル、こっちへ……!」
カルシオンに抱えられたクリスが、手を差し伸べてくれる。助かっ……うおっ!?
透けた服を隠す余裕も無いらしいうえ、位置的にスカートの中まで丸見えだ!
ぶおっ!
「すげえ……鼻血って、こんな勢いで出るもんなのか……」
よく覚えてないが、このあと俺はソーディムに助けられたらしい。
「いやあ、よくやったよ諸君。大したもんだ」
「フ、まあ当然です」
「何言ってやがる。お前は基本的に来ただけじゃねえか。なあクリス?」
「こっち見ないで」
「とにかく、君達にならできるかもしれん。いや、きっとできる!」
「当たり前だぜ!これからも俺達が人類の、地球の水を守ってみせる!」
超硬水クリスタルガイザー 終 ご愛読ありがとうございました!
最終更新:2009年12月12日 22:18