市民「かぁっー!まぶしいなぁ。」
眩しいほどに街に照りつける太陽に向かいハンカチで汗を拭きながら中年の男性がつぶやく。
朝の時間だ。多くのサラリーマンが忙しそうに道を横断して行く。
市民「最近まで戦争やってたとは思えんな。」
市民「ですな。ここまで戦闘が及ばなかったのは幸福でしょうな。」
市民「もう戦争は終わるでしょう。」
市民「ああ、そうですな。ん?あれは・・・?」
市民「どうされました?ん?あ・・・あっ!」
まるで急に時間が止まったようだ。
今まで忙しそうに歩いていた人々は皆空を驚愕の眼差しで見つめている。
今までアスファルトをガンガン照らしていた光はみじんもなく全てが影に覆い尽くされていた。
そして急に時間が動き出したかのごとく・・・
市民「キャーーー!」
市民「うあー逃げろー!」
街中から悲鳴という悲鳴がたちこめる。
車はすぐ渋滞となり耳をつんざく程のクラクションが鳴り響く。
男性が一人地面にひざまずいてつぶやく。
市民「もう・・・終わりだ・・・何もかも・・・絶望だ・・・」
巨大な影が先刻の太陽よりも眩しく見える光を放つ。次の瞬間、混沌、悲鳴、雑音、そして絶望に満ちた街は灰の街と化していた・・・。
『英雄兵器ヴァーンサイク』第0話「絶望」
鳥のさえずる声が聞こえる。
ここは森。人気のないひっそりと木が茂る森である。
その美しさと静けさを兼ね備えた空間に雑音が鳴り響く。そしてその森の美しさとは対照的な不恰好なジープが走っていった。
男「おいよ?今度こそここであってんだろうなぁ?」
若い男がイライラした様子で質問した。
男「貴様が手に入れた地図だ。保障はできん。」
大柄な男が淡々とした口調で返す。
若い男「チッ!もう迷うのは御免だからな!」
大柄な男「全部貴様が手に入れた地図だぞ。俺は知らん。」
若い男の因縁をつけるような態度に憤りを感じつつ大柄な男は言った。
若い男「てめぇはいいのかよ。例の物を拝めなくてもよぉ。」
大柄な男「黙らんと車から放り出すぞ。」
若い男「チッ!」
男は舌打ちをするとレモンガムを取り出し口に放り込んだ。
未知の力「ヴァーン力」。
人気のない洞窟へと自然墜落した地球軍の新型兵器に付着していた謎のエネルギーである。そしてその洞窟の奥には古代文字で「禁忌」と書かれた謎の兵器設計書があった。
そのヴァーン力を発見したエネルギー学者であった男、見羅国(みらくに)慎(しん)。彼はそのヴァーン力の研究のため森林の奥深くに大規模な研究所を建設した。
その名は「見羅国科学研究所」である。その研究所では世界各地に現れた謎の黒い影の対抗策として「禁忌」を創り上げる研究をしていた。
それには犠牲も出た。見羅国の息子秀樹(ひでき)である。突然現れた黒い影に試作された「禁忌」に乗り込み突っ込んでいった。それから彼は帰っていない。
研究室で働く職員達を見る見羅国にメガネの男が話しかけた。
メガネの男「博士。機動は順調です。これなら成功するはずです。」
見羅国「そうか。秀樹の犠牲は無駄にはできん。今度こそ必ず成功させるぞ。」
メガネの男彼の名はヴァーザス・ロゥク。かつて地球軍軍属で開発技術の発展に手を貸してきたエリート技術士である。
戦争が膠着状態に入り黒い影による世界各地の被害を知った彼は軍を抜け見羅国研究所へ移籍した。ヴァーザスは単に単に興味があったからである。絶望に立ち向かう研究に。
ヴァーザス「で、博士。話とは?」
見羅国はヴァーザスに改まった様子で言い放つ。
見羅国「単刀直入に言おう。君にはアレのパイロットになってもらいたい。」
ヴァーザスはとぼけた様子で返す。
ヴァーザス「冗談でしょう?私はただの一技術士ですよ?」
見羅国「君ならばアレの癖を良く知ってるはずだ。いかんせんパイロットになってくれる人物がいないのでな。」
少し考え込んだ後苦笑を浮かべながらヴァーザスは言う。
ヴァーザス「そうですか。仕方ありませんね。分かりましたやりましょう。」
見羅国「ありがとう。助かる。」
その時森林の上空では不審な黒い影が蠢いていた・・・。
―その時森を走る不恰好なジープにて
若い男「おい、なんだありゃ?」
大柄な男「どうした?何かあるのか?」
若い男は突然叫びだす。
若い男「ありゃぁ影だ!あの黒い影だ!」
大柄な男「マジか!」
ジープは速度を上げ走り去っていった。
ピィーフィーピィーフィーピィーフィーピィーフィーピィーフィーピィー・・・
突然研究所のサイレンが鳴り響く!
オペレーター「博士!博士!聞こえますか?例の化け物がこちらに接近中です!」
見羅国「何だと!よし戦闘態勢映れ!出撃準備だ!」
研究員「し、しかし・・・パイロットが2人足りません。」
見羅国「うむ・・・。」
―その時研究所エントランスにて・・・
若い男「頼む!頼む!通してくれ!」
若い男が強引に研究所に侵入し警備員と揉み合っていた。
警備員「だめだ!関係者以外通すわけにはいかん!」
大柄な男「堪忍な!」
大柄な男のエルボーが炸裂し警備員は気絶した。
若い男「おし!急ぐぞ!」
見羅国「やむ終えん・・・。私が1号機に乗ろう。3号機は自動操縦だ。」
研究員「は・・・博士が?ん?慌しいぞ!どうした!」
研究員「お、男が2人研究所に強引に・・・」
兵器庫への巨大な扉が勢いよく開く・・・そして2人の男が現れた
若い男「突然悪いが頼みがある!聞いてくれ!」
研究員「部外者は出て行け!」
若い男「俺たちは元地球軍パイロットだ!ロボットの操縦はできる!俺たちをそいつのパイロットにしてくれ!」
兵器庫は騒然としている。その中見羅国は2人の男に歩み寄り話す。
見羅国「君たち。名は?」
克哉「俺は如月克哉だ!こいつはチェイン=ルーフェイだ!」
叫び散らしながら自己紹介をする克哉を見ながら少し考え込むと見羅国は重く口を開き・・・
見羅国「よし・・・任せよう。」
凄い剣幕をしていた克哉達の顔が和らぎ笑顔となった。しかし笑顔もすぐなくなり・・・
克哉「例のモンはどこだ!」
博士「こいつだ!」
克哉「へ?戦闘機ぃ?」
ヴァーザス「いいから乗れ!時間がない!ヘルメットは被れよ!」
克哉「おう・・(偉そうなメガネだな。)チェイン!行くぞ。」
チェイン「・・・。」
ヴィィィィィィン・・・
3機の戦闘機を載せたカタパルトが上昇する。
克哉は息を呑み、ヴァーザスは軽くため息を吐き、チェインはまるで仏像のごとく押し黙っていた。
カタパルトは所定の位置についた。外にこちらに向かってくる黒い影が見る。
克哉「いよいよか・・・。」
チェイン「・・・。」
オペレーター「出撃を!」
ヴァーザス「ヴァーサイク!出撃!」
3機のエンジンが唸りを上げる。そして大空へ・・・
『英雄兵器ヴァーンサイク』第0話「絶望」終
次回へ続く
最終更新:2010年01月03日 16:59