麻里達はマルタルドを駆るブザンを辛くも撃退した。
次に現れたレイファは、グラーマンを裏切りカリグラ要塞の座標を教え逃げようとした。
しかし、その行動を見透かしていたジュバフは衛星砲でレイファを瞬時に消滅させた。
麻里達は教えられた座標を頼りにカリグラ要塞へ突入する。
そこで再開した少女・リュノは、実はグラーマンの実の娘にして地球圏到達を目前にして病死した
グラーマンの影武者を務めていた。
リュノは地球攻撃を取りやめてくれると約束したが、ジュバフが一人でそれに反対。
大量の戦闘兵のコントロールを手中に収め、帝王専用の戦闘兵『エンペラトーレ』を強奪、リュノへ反旗を翻した。
激戦の末に亜紀斗のリオレイオ、ウィリスのエアジェスは倒れこみ、帝王護衛戦闘兵『エンペラナイト』を駆るリュノと麻里も、
最早虫の息となっていた……。
「……はぁっ……はぁっ……」
麻里は痛みに耐え切れず、地面に手をついた。
その目の前には、巨大な影。――カリグラ帝王専用戦闘兵『エンペラトーレ』。
「もう諦めたらどうだ? ……リュノ様、今回の件は委員会に報告させていただきます」
エンペラトーレのコクピットから、ジュバフは冷たい視線を投げかける。
最終話「復逢、日迄!」
「くっ……動け、動けよリオレイオ!」
亜紀斗はコクピットで懸命にもがくが、蒼い獅子は完全に力尽きている。
そして、それは隣にへたり込む真紅の天使も同様らしかった。
「駄目だな……エアジェス、今までご苦労様……」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないよ、ウィリス! このままじゃ、麻里が……!」
亜紀斗は声を荒らげる。
「……お前は信じていないのか? 麻里を」
「……!?」
ウィリスは、そのまま涼しい声で続けた。
「私は信じてるよ。あいつは……死なない」
亜紀斗はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「……そうだね、なら、僕も信じるよ……」
「ジュバフ、今一度言います。地球への修正は取りやめです。彼女を見れば分かるでしょう?
地球に棲む人の中には彼女のような人もいるのです。そのような人が少しでもいれば、
まだ望みはあります!」
リュノは必死に叫ぶが、ジュバフは耳を貸さない。
「これは決定事項です。それに、あなたのお父上の遺志でもあるのです!
愚劣な地球人から地球を、ひいては宇宙全体を守るために!
それでも分かってくださらないと仰るのでしたら……クラッシュプラネット!!」
エンペラトーレの胴体から巨大な鉄球が打ち出され、エンペラナイトへと向かっていく。
「……ッ!」
「さようなら、リュノ様……カリグラは、私が立派に引き継いでみせます……」
ガッ、と鈍い音が要塞内に響いた。
「……?」
エンペラナイトには当たっていない。不思議に思ったリュノが、顔を上げた。
「!? ま、麻里さん!」
打ち出された鉄球を、アテナスが抱きかかえるようにして止めていた。
『……ギリギリだったぞ。タイミングも装甲も』
「うっさい」
ラシュアの言葉に、麻里はいらついた口調で答えた。
「……なかなかやるな。だが、これならどうだ? バーストレーザー!!」
エンペラトーレが広げた翼から、無数のホーミングレーザーがアテナスへと放たれた。
『まずい、麻里! 避けきれないぞ!』
「なら、避けなきゃいいっ!」
言うが早いか、麻里はエンペラトーレへ向かって全力疾走を始めた。
レーザーがアテナスの肩へ、腹へ、膝へ、頭へと命中していく。
「ぬあぁぁぁぁぁぁ!!!」
麻里はそんなこともお構いなしに、痛みなど感じていないかのように直進を続ける。
「ばっ、バカな!? あれだけのレーザーの中を突き進んでくるのか!? ……やはり、
悪逆な地球人だからこそ出来る芸当なのか!?」
「言うなぁっ!!」
ジュバフに向けて、麻里は叫んだ。
「人のことを、愚劣だとか! 悪逆だとか! そんなこと、言うな! それに……
例え愚劣で悪逆でも、私は……そんなみんなが好き。だから、守る。家で待ってる、
お兄ちゃんのためにもね……」
「好き……だと? そんな一時の感情で、ここまで出来るのか? やはり、
地球人という人種は凡……」
「言うなって言ったぁ!!」
麻里は再び叫び声をあげた。
「ジュバフ! アンタはお仕置きだ! ギガント・デストロイヤー!!!」
アテナスの胸から放たれた白い光線が、真っ直ぐエンペラトーレへと向かっていく。
「しまっ……!」
ジュバフは慌てて腕を交差させ防御体制をとるが、タッチの差で間に合わず、
光線はエンペラトーレの胸へ突き刺さった。周囲が粉塵に包まれる。
「……まだ……まだ、か……」
『帝王専用機は伊達ではないな……』
粉塵が晴れると、そこには胸部を軽く陥没させたエンペラトーレが立っていた。
「……許さんぞ、地球人に裏切り者が……殺す! 徹底的に殺す!! バーストレーザー!!」
再びエンペラトーレの翼から無数のレーザーが放たれる。そして、
『チャンスは今しかない! 装甲の弱った部分を狙え!』
「了解! でぇぇあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
麻里は再び走り出した。
レーザーが命中し、左肩と右脇腹、頭が消し飛んだ。
「麻里!」
「ちょっと!?」
「もういいです麻里さん! 止めてください! 死んじゃいますよ!?」
亜紀斗、ウィリス、リュノの制止の言葉も耳に入らない。麻里は変わらず突き進む。
そして、エンペラトーレの足元まで到達すると、胸の高さまで大きくジャンプした。
「何っ……」
『今だ、やれ!』
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!! アタッカァァァァァァ! パァァァァァァンチッ!!!」
打ち出されたアテナスの右腕は、エンペラトーレの胸の装甲を確実に射抜いた。しかし、
「……残念、だったな……薄皮一枚、という奴だ……」
厚い装甲に阻まれ、アタッカーパンチはエンペラトーレを討ち取ることは出来なかった。
『……馬鹿な……』
ラシュアの落胆した呟きが、アテナスのコクピットに虚しく響く。
「麻里、逃げて!」
亜紀斗が叫んだが、アタッカーパンチで全てのエネルギーを使い果たしたアテナスに、
それは不可能だった。
「止めを刺させてもらうぞ、地球人。シックルフィン……」
「……アンタの負けだよ、ジュバフ」
ジュバフの言葉を、麻里が遮った。
「何……? 何を言っている、どう見ても……」
「もっとも、私の勝ちでもないけどね。……私の後ろ、見てみなよ」
「後ろだと……? ……!」
アテナスの後ろを覗き込んだジュバフの表情は、即座に凍りついた。
アテナスを追ってきたホーミングレーザーが、今まさにアテナスへ命中しようとしていた。
「もう分かったでしょ? 自分で撃ったホーミングレーザープラス、アテナスの爆発……
勝ちは無理でも、相討ちくらいなら……出来るでしょ?」
『……相変わらず無茶をするな、お前は。まあ、それに乗った私も私か……』
「あれは……レーザー?」
「まさか、麻里!?」
「麻里さん、逃げて!」
「自己を犠牲にするだと!? やはり地球人は、愚れ……」
「言うなって……言ったでしょ……?」
……後に『第一次異星間戦争』と呼ばれることになる騒動が終結してからまる一年。
俺――谷口神夜は、平凡な食品会社への就職を決めた。大学まで行って習ったことが台無しだ。
あれから、要塞から救助されたカリグラの首領だという少女は、地球へ技術的な支援を約束してくれた。
その時提示した条件はたった一つ。『地球人の心を今より豊かにすること』だった。
地球側は、よく分からない条件に首を捻りながらもこれに承諾、宇宙時代の幕開けを予感させた。
その他、小さな変化といえば……家が少し、寂しくなった。
両親は相変わらず世界を飛び回り、たった一人の妹は地球を救おうとして生死不明。
要塞は洋上に浮かんでいたので、まだ死体は見つかっていない。
ただ、あいつらのトンデモパワーなら、人間一人くらい助けられても不思議はないな、と思う。
俺は、麻里が帰ってくることを信じている。
そうだ。今夜はあいつが好きだった、総菜屋のコロッケにしよう。
……あいつが帰ってきていてもいいように、二つ。
完
最終更新:2010年01月15日 07:19