大地から噴出すは地球の膿「バゴラ獣」。
そしてバゴラ獣の出現を機に地上侵攻を開始した「ザルガン帝国」。
地上は奴らに焼き尽くされてしまうのか…。
『マグマダイバー・プラグマ』
「暑い…つーか熱い。漢字違いのほうの熱い。」
ここのところの猛暑は異常だ。もう秋口だってのに気温はあがる一方で冷房がバカ売れ。
それでも我が家には不思議と無いもので、俺は授業が終わるといつものように近所の大学の研究室に涼みに行っていた。
「豪くんはさ、ロボットとか好きだったよね?」
「…そりゃ子供の頃の話でしょう。」
「だってまだ子供でしょ?」
研究所に勤める大塚助教授(万年)は俺の叔父。最近見ないと思ったら急に現れて突拍子もないことを言い出した。
バクォオオオオン!!!!!
すさまじい爆音が鳴り響いた。
それと同時に外の景色は真っ赤に歪み、今までの暑さが笑えるほどの熱さが訪れた。
「なんだ・・・これ…!」
「やっぱり来ちゃったね。豪くん、すまないけどとりあえず一回だけ乗ってくれないかな。」
「へ・・・!?」
そんな…いやまさかな。そう思いながらも叔父さんについていく。
しかし叔父さんはただドアを開けただけ。
その先の小さな部屋で立ち止まった。
「ちょっと座って。」
パイプ椅子を顎で指す。
「なんだ…てっきり目の前に巨大ロボットでも出てくるかと思いましたよ。」
「んーちょっと惜しい。」
そういうと叔父さんは壁に空いている穴に指を突っ込んだ。
ゴゴゴ…
突如として地鳴り。一体外はどうなってしまったのか。
そんな俺の心配を察している様子はないが、叔父さんは部屋の窓を開け始めた。
すると…
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁ!!!」
いつの間にか俺は巨大ロボットのコックピット(四畳半)のシート(パイプ椅子)に座っていたのだった。
「はいこれ、じゃーよろしく。」
叔父さんはそういって俺にゲームの専用コントローラーのでかいバージョンみたいなものを渡すと、いつの間にか装備していたパラシュートで降りていってしまった。
呆気に取られていると、いきなり部屋がグワンと揺れた。
地震…じゃなくてロボットに乗ってるってことは…
「ぐぎるぎぐー」
開け放たれた窓から見えたのは真っ赤な怪獣だった。
「これって…やっつけろ…ってことか!?」
考えてる余裕はなかった。怪獣は再びこちらに飛び掛ってきた。
「どうやって…こいつ!!」
でたらめにレバーを回してボタンを叩いた。
ウントモスントモ…
間抜けな音がするだけだった。そんなことお構いなく怪獣の体当たりで部屋は揺れた。
これだけの衝撃でパイプ椅子から転げ落ちるだけですんだ事を驚く余裕もない。
「がるがごげー」
怪獣と目があった。やばい、死ぬ。
バズゥーン!
また新しい爆音と共に怪獣の顔が窓からそれた。
「今の内よ、はやく!!」
いきなり耳元で声がして振り返ると部屋に誰もいるわけでもなく、代わりに空いた窓の外大学校舎の屋上に人影が見えた。
でかい筒もった女だった。煙がでている。バズーカ持った女だ。
「何やってるの!あなた『プラグマ』のパイロットなんでしょ!?」
耳元で怒鳴られて驚いたもんで、コントローラーを落としてしまった。
すると目の前に女のズーム映像が出てきてもっと驚いた。
結構好みの顔だけどこの状況では微塵も好きになれない。
「なんだよいきなり!わけわかめだろが!!」
「いきなりってあなたが通信してきたんでしょ!?早くしないと、この弾じゃバゴラ獣の足止めだけで精一杯なんだから!」
「ごめんコロナ、豪くんには今さっき乗ってもらっただけで何にも教えてないんだ。」
いきなり叔父さんが割り込んできた。もう驚かないと思いつつも驚く。
「叔父さんどこにいるんんだよ!?」
「大学の外だよ。」
「なんであなたがプラグマに乗ってなくてそんな所にいるのよ…。」
「僕高いところ苦手。」
ズガーン!!
そんなやりとりの間に怪獣(バゴラ獣?)は襲い掛かってくる。
体当たりで吹き飛ばされたロボットの正面から奴の真横まで裂けた口が開くのが見えた。
「ぐるぎー」
でかい火の玉が飛んできた。
「あぶなっ!!」
とっさに身をよじると火の玉は横をかすめて飛んでいき、遠くで爆発する音が聞こえた。
「あれ!?避けれた?」
「そりゃあそうだよ椅子が動きを感知してくれるもの。」
「じゃあこのコントローラーはなんなんですか!!」
思わず突っ込むと
「え?通信機だけど。」
「ちょっと、前、前ー!!」
女の声で慌てて我に返るとまたもや怪獣が突っ込んでくる。
「やり方さえわかればっ!!」
怪獣の下あごにロボットのキックが炸裂した。
怪獣は初めての反撃に戸惑ったのか一瞬体を退いた。
「こんのぉー!!!!」
逃さず追撃のパンチ!
「がらら…」
もう一発!!
「げ…げ…ぐるー!!!!」
珍妙な声をあげると怪獣の口から先の2倍はる火の玉がはみ出していた。
こういう時って…
「よし、豪くん!ブレイザーナックルだ!!」
『ブレイザーナックル』
それは俺が子供の頃大好きだったロボット、『ブレイザー8』の必殺技だ。
今の俺なら…
で き る ! !
「うおぉぉぉぉぉ!!!!ブレイザアァァァナックルゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
夕日よりも、怪獣よりも、火の玉よりも赤い、紅い紅い拳が、貫いた。
ズバババーン!!
怪獣の肉体が噴水のように噴き出して、穴の中に消えていった。
穴…?
「倒した…のか?」
「ちょっと、あれ「うんま、倒したには倒したよ。お疲れだね豪くん。いやはや助かったよ。」
なにか言いかけた女を叔父さんが遮っている気もしたが、その一言でどっと疲れが押し寄せた俺は、四畳半にぶっ倒れてしまった。
「あれはまだ使えないから今回はしょうがないよ。豪くんには悪いけどあのバゴラとはもう一回戦ってもらうしかない。」
――――――
俺はその後ずっと寝てたらしく、そのところを家まで運んでもらったらしい。
目を覚ますと布団の上だった。
気が付けば外は静かな夜で、それでいてとても涼しかった。
「豪くん起きました?」
この声が聞こえるということはこれが夢オチという一縷の望みもほぼ0なわけで。
言いたいことも聞きたいことも山ほどあるので、ふすまをピシャリ開ける。
「あのね、さっきの怪獣はバゴラ獣といってね、生命の循環構造において…」
「今起きた脳に分かるよう3語でまとめてください。」
「怪獣 危険 対抗」
「まぁ要するに地球の膿みたいなものかな、バゴラに関しては。地球の奥深く溶岩の中から誕生して、この地上に這い出てくるんだ。」
「バゴラ獣は地上の命すべてを焼き払うつもり。だけどそんなことはさせない。」
「ちょっとまて、なぜ見知らぬ女が平然と我が家で味噌汁すすってるんだ。」
「あらやだ豪、コロナさんがあなたを家まで背負ってきてくれたのよ?」
余計なことを聞いてしまったというか、既にお袋と女の空気が馴染みすぎてる気がしてなんともいえない気持ちになった。
「でね、実は地表のすぐ手前、溶岩の最上層には人が住んでいてね。」
「ザルガン帝国。はるか太古に地下に幽閉された人々が、炎熱コントロール技術により作り上げた帝国。それがバゴラ獣を上手く利用して地上を支配しようとしているの。」
「そそ。で、彼女コロナちゃんは『そんなのよくない!』っていって先んじて地上にやってきたわけ。で、彼女の持ってきた理論物質その他もろもろで作ってたのが『マグマダイバー・プラグマ』。まぁ今日はこの辺で…豪くんが見事この町を守ってくれましたのでかんぱーい。」
「カンパーイ。」「乾杯。」
「…もうどうにでもなれ。完敗。」
その後いろいろ話を聞いたが突拍子もないことや訳の分からないことばかりで寝ぼけた頭にはぜんぜん入ってこなかった。
あ、とりあえず叔父さんがあの時大学の外にいて町の人たちを避難させていたということをお袋から聞いたのは覚えてる。
かなり適当でムカっときてたけどそれを聞いてちょっとだけ見直した。
話半分で聞いても意味ないし時間が時間だったので、俺は麦ご飯だけいただくと再びふすまの向こう、布団の中にもぐりこんだ。
「やっぱり涼しいと寝心地がいいな…」
次の日から何が起こるかなんて考えもせず、俺はまぶたを閉じた。
最終更新:2010年01月15日 22:37