巨大な敵を前にして、並び立つゲンカイザー、テッケンオー、ヨユウダー。
突然、空から放たれたビームに呑まれ消えるゲンカイザー!
秀一「ヤブルゥゥゥゥゥゥッ!」
ヤブル「いやぁ、死ぬかと思った」
黒焦げになってゲンカイザーから這い出してくるヤブル。
秀一「無事か、よかった……テッケン、あぶない!」
同じビームが今度はテッケンオーを襲う!
テッケン「うおぉぉぉぉぉっ!」
ヨユウダーの貸したシャクトゥーソードを使って、テッケンオーはビームをはじき返す!
秀一「すごいな、もう使いこなしているのか。次は、私か!」
空からビームがヨユウダーに向け放たれる。テッケンオーと同じようにシャクトゥーソードを構えようとするヨ
ユウダー。そこへ。
秀一「何っ!?」
突如現れたワーウルフェンに腕を噛み付かれ、ヨユウダーが剣を取り落とす。ビームの閃光が目前に迫り――
「うわあああああああああああああっ!!」
秀一は自分の叫び声で目を覚ました。茫然と周囲を見回す。自室のベッドの上、シーツは汗でぐっしょりと濡れ
ている。窓の外では小鳥がさえずる、いつもどおりの朝。
「夢……か」
サイドボードの水差しからコップに注いで一息ついていると、ドアがノックされ、返事も待たずに慌て気味の声
がかけられた。
つかえ「秀一さま、どうかなさいましたか!?」
秀一「ああ……少し夢見が悪かっただけだ。心配かけてすまない」
つかえ「何か、お持ちいたしましょうか?」
秀一「いや、大丈夫……朝食を少し遅らせてもらえるかな、気分を落ち着けたい」
つかえ「かしこまりました」
つかえの足音が遠ざかっていったのを確認して、溜め息をつく。
「こんなんじゃ、パパの役になんか立てないよ……!」
第31話「実はギリギリ?余裕崩壊10秒前!!」
秀一「なぜだヤブル、なぜ合体が失敗した!!」
ヤブル「……すまねぇ、なんか、俺……」
秀一「貴様がやらねば、誰が……何がお前をそうさせているんだ!」
ヤブルは修理と強化改造の済んだゲンカイザーの合体訓練に幾度もトライしていたが、そのたび失敗していた。
益子「やめて秀一くん!ヤブルくんの身体はまだ」
秀一「ゲンカイザーはテッケンオーではない!全快しなくても操縦はできるはずだ!」
ヤブル「……くそっ」
益子「ヤブルくん!」
ヤブルが駆け出し、益子が追いかけていく。
秀一「あいつは、あいつの限界はあんなものじゃないはずだ……!」
ダン「お前はどうなんだ。らしくないな、そんなに声を荒げて」
秀一「くっ……失礼する!」
死の商人「まさかワーウルフェンでも駄目とは、予想外でしたよ」
サタデス「だが、奴らも無傷じゃねえ。たたみ掛けるときだな」
『ならば、魔闘メカを1体譲り受けたい、魔皇帝サタデス』
サタデス「フ・カノーか。お前がリ・タイアの頭ごしなんて珍しいな、ええ?」
フ・カノー『そんなことはよろしい。魔闘ウツノイドの作戦、賛同頂けるのか』
サタデス「わかったよ。こちらにとってもチャンスだ、選りすぐりを贈ってやる」
フ・カノー『感謝する』
「熱傷といっても実際に焼けたわけじゃなく、そういう感覚を受けたことによる精神的なものが原因なんだ。
拳児のことは心配ない。それより、もう一人の子の容態はどうなんだ?」
秀一が病院を見舞うと、鉄野鍛造博士はそう説明した。
ワーウルフェンとの戦いで大気圏再突入並の摩擦熱を体感したテッケンは、重度の熱傷を負って入院している。
そしてバンパイオーのエネルギーである血液を使い果たした抜人は、失血死寸前の状態で収容された。
秀一「一命は取り留めましたが、当分は目を覚まさないでしょうね……」
鍛造「あんたの相方の、あの元気のいい奴は?」
秀一「あいつも今は……」
そこへ、携帯電話使用可能エリアで待機していたつかえがやってきた。
つかえ「秀一さま、敵襲です。種別は、魔闘ウツノイド」
秀一「……こんな時に、いや、だからか」
触手の生えた城。それが魔闘ウツノイド・ウェアリネスの姿だった。抜刀し駆け寄ろうとするヨユウダー。
秀一「移動する脚をもたないようだな。手数で補うタイプなのだろうが――ぬ!?」
すぐ側の崖を突き破り、触手がヨユウダーに襲い掛かった!これを切り払い、崖から距離を取ると、今度は地面
から触手が飛び出した。
秀一「なるほど、既に辺り一面に根を張っているというわけか」
超高速の剣さばきで襲ってくる触手をなぎ払い続けているものの、その数はあまりにも多く、既に周囲がほとん
ど見えない。その隙間に一瞬見えたのは、飛来する大型のミサイル!
秀一「!?」
ドッッグワァァァァアアアン!!
周囲の触手が吹き飛んで一時的に攻撃が止んだ中、黒焦げになったヨユウダーが立っていた。持ちこたえたもの
の、損傷は小さくない。
秀一「数で押さえ込んでミサイルで攻撃、か。強引だがなかなか手ごわいな」
「ハハハハハ、苦戦しているようだな涼茂の跡取り!」
地中の触手の5、6本をちぎりながら、地面を割って飛び出したのは漆黒のスーパーロボット!
秀一「……君か」
リュウ「漆黒の薔薇の騎士、テンサイダー見ッ参!!」
名乗る間にも襲い掛かる触手を、テンサイダーは鋭い手刀でつぎつぎと叩き切る!
リュウ「フム、たしかに扱いやすさが違う」
秀一「上機嫌だな、雷場の御曹司?」
リュウ「うむ、実はこんなことがあってな……」
わが邸の門を叩く老人の姿があった。警備員が声をかけても「御曹司を呼んでもらおう」の一点張りだ。
じいやは普段ならそんな客は取り次がないのだが、そのあまりのしつこさにただならぬ気配を感じ、私を呼んだ
わけだ。私が出向いていくと、老人は言った。
「あのスペシャルデラックスかっこいいテンサイダーのパイロットの雷場竜様でいらっしゃいますね?」
秀一「……君の思い込み、捏造、願望を除いて話してくれないか」
リュウ「すべて事実なのだが……」
鍛造「あの役に立たないテンサイダーとかいうののパイロットはお前だな?」
リュウ「そんなテンサイダーは存在しないが、テンサイダーのパイロットはいかにもこの私だ」
鍛造「俺は鉄野鍛造。テッケンオーを作ったのが俺だ。お前のも強化してやるから、見せろ」
リュウ「無礼な老人だな。テンサイダーはコンツェルンの機密でもある。おいそれと見せるわけにはいかない」
鍛造「拳児は今動けん。俺に今できるのは、似たタイプのお前さんの機体の強化くらいなんだ。……頼む」
鍛造は深々と頭を下げた。
リュウ「どうだ、我が完璧なテンサイダーをこれ以上強くなどできたのか?」
ふん、と鍛造は鼻を鳴らした。
鍛造「操縦者の動きをトレースするのが『マスタースレイブ』方式だが、俺のは感覚までリンクする『ツイン
バディ』システムだ。武道の腕前を活かすなら段違いになる。お前も、拳児ほどじゃなくとも腕は
立つんだろう」
リュウ「そんなことはない、私はテッケンに劣りなどしないぞ?」
鍛造「もっとも、こいつにはビームだのミサイルだの積んでいるせいで完全なものを搭載できなかったんだが。
まったく腕一つで勝負すればいいものを、しょせんは黒帯どまり」
リュウ「い、いちいち奴と比べるな!」
鍛造「だいたい、複数の技師に作らせたんだろう、接合部に非効率的な箇所がいくつもあった」
リュウ「ほう?そこまでわかるものか」
鍛造「まあ、それなりに腕ききのに作らせたみたいだが、結局は秀才どまりだな。天才の俺にはかなわんよ」
リュウ「――というわけで、悔しいが事実テンサイダーはパワーアップしたわけだ。まあ天才の私には、天才の
作ったマシンこそが相応しい。それがたまたまテッケンの祖父であっただけのこと。
テンサイダービィィィィム!」
飛来した2発目のミサイルを、テンサイダーのビームが撃ち落とす。遠くで爆発したミサイルはヨユウダーたちに被害を与えなかった。
リュウ「見ろ、剣しかない貴様の機体にはこんな芸当はできまい?」
秀一「そう、だな……」
その瞬間だった。
触手を切り払うヨユウダーの腕の動きがわずかに鈍り、仕留め損ねた触手がヨユウダーの腕に巻きついた!
秀一「しまった――ぬぅわっ!」
腕に巻きついた触手はそのまま地面に引っ込み、引きずられたヨユウダーが倒れこむ。
リュウ「おい……ええいっ、邪魔だ!」
テンサイダーとヨユウダーを遮るように無数の触手が地面から伸び、テンサイダーの援護を阻む。ミサイルがヨユウダーを襲う!
秀一「くぅっ!」
ドォォォォォォォォン!!
大爆発。
爆心地には、うつ伏せで無防備に倒れたままのヨユウダー。
基地で戦闘の様子を見ているヤブルたち。
秀一『壊れたのか?動け、動けヨユウダー!』
ヤブル「そんなに慌てて、ヨユウダーが動くわけねえだろ!?」
秀一「私の、余裕が……?」
ヤブル「秀一、いったいどうしたってんだよ?」
ダン「……お前のせいだ、ヤブル」
ヤブル「俺の?」
ダン「秀才は天才には、それがトリガーだったんだな」
リュウ『なんだ、私のせいか?また私のせいか!』
益子「雷場くん、邪魔」
ヤブル「……どういうことだ」
ダン「奴がヨユウダーを操るためにどうしているか、憶えてるな?」
ヤブル「当たり前だ」
――奴は自分で余裕であるために、日頃の努力を惜しんだことはない。余裕でいることは即ち、地獄だ、生き地獄だ。真の余裕とは、天才なんかじゃ、無い。
ダン「奴の余裕は矛盾してるんだ。結局は戦闘中に余裕が崩れないように、普段の自分を追い詰めているだけ」
ヤブル「お前が言ったんじゃねえか!」
ダン「本物の天才であるテッケンとの出会いもあり、奴は努力が必要なこと自体に、余裕を失いかけていた。
そこに、お前だ。毎度毎度ギリギリと言いつつも土壇場で限界を超えてみせるお前は、秀一にとって
コンプレックスであり、支えでもあった」
ヤブル「俺が……?」
ダン「そのお前が、限界にぶつかったままいつまでも飛べねえから!奴は、余裕の拠りどころを失くしちまった
んだよ」
ヤブル「……俺、行ってくる!」
秀一「……私が、ヤブルに依存しているだと?」
ヤブル『うわぁぁぁぁぁぁっ!』
ズドガガバガァァァァン!
秀一「ヤブル!」
ヤブル『ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!何でだ、何でできねえんだっ!?』
秀一「……」
ヤブル『すまねえっ、秀一。お前の期待に応えてやれねえ……でもよぉ!何で俺なんかに引きずられてんだよ。
お前はすげえ奴じゃねえかよ。天才とか秀才とか、そんなどうにもならねえこと無理矢理ねじ伏せて、
いつも余裕で笑ってやがる。
お前の方がずっと、限界に挑んでる男じゃねえかよ!!』
秀一「私が、限界に挑んでいた……?そうか」
ヨユウダーの指先が動いた。
秀一「余裕とは、信じる心から生まれる……努力も才能も、最終的にはそれを裏打ちする目安でしかないのだ。
自分を、限りなく信じ抜くことができれば、余裕は、枯れることはない」
ヤブル『秀一!』
巻きついた触手を引きちぎりながら、ヨユウダーが、立ち上がる!
秀一「やっと気づいた。真の余裕もまた、限界を超えた先にある……フッ、限界突破、だな。それからヤブル」
ヤブル『なんだ?』
秀一「お前などに責任を感じてもらうほど、私は落ちぶれてはいない」
ヤブル『……へっ、そうこなくっちゃな!』
リュウ「……話は終わったかね?」
秀一「何をやっているのだ君は?」
全身に巻きついた触手に引きずり込まれ、半分土に埋まったテンサイダーが、どうにか右手を動かしてヨユウダーを指差す。
リュウ「ご挨拶だな。貴様の方に飛んでいったミサイルをすべて撃ち落としていたのはこの私だぞ?涼茂秀一」
秀一「それは助かった。恩に着ておくよ、雷場竜」
リュウ「わかればよいのだ、とうっ!」
絡まった触手をヨユウダーが切り解くと、テンサイダーが跳ね起きた。
リュウ「さあ、どうやって料理する?」
秀一「考えるまでも無い。つかえ、あれを落としてくれ」
つかえ『秀一さま?しかしあれは、出力不足で一度も試射に成功して……』
秀一「平気だ、今の私に撃てないわけが無い」
つかえ『……では。3、2、1、投下!』
秀一「つかえは話が早くて助かるよ。雷場、受け取るから援護を頼む」
リュウ「何だかわからんが、よかろう!」
テンサイダーがビームを乱射して触手をけん制し、その隙をついて跳び上がったヨユウダーの手が、上空の飛行船から投下されたそれを掴む!
――次の瞬間。
ビビビビッ!ドワゥ!!
空中にいるヨユウダーから放たれた無数のビームが、テンサイダーの周囲の触手を一掃していた。
リュウ「何だ?それは」
秀一「ヨユウダーに隠されていたゲンカイザーの内部火器の設計図を基に、ヨユウダー用にも作ってみたのだ。
名づけて……」
ヨユウダーが両手に持った2丁拳銃をかざす。
秀一・つかえ「『シャクトゥー・マグナム!』」
つかえ『きゃっ、きれいにハモっちゃった!』
秀一「つかえ、はしゃぎ過ぎだぞ」
つかえ『申し訳ございません』
リュウ「なんだ、余裕だな」
秀一「ヨユウダーだからな」
リュウ「フッ、ならば私もテンサイダーの天才ぶりを見せ付けねばな!見よ、科学力アターック!!」
魔闘ウツノイド本体に向け、テンサイダーのビームとミサイルが乱れ飛ぶ。それらはすべて触手によってブロックされたが、触手が吹き飛んでから次が生えてくるまでの、まばらになる一瞬……
リュウ「バカめ。今のはまだまだ食前酒だ!テンサイダー・ビッグ・ミサァァァァイルッ!!」
大型ミサイルが発射され、残った触手を根こそぎ吹き飛ばす!テンサイダー、ヨユウダーと魔闘ウツノイドの間に生まれた、開けた一本の、道!
リュウ「これがオードブル!涼茂、メインディッシュのシェフは譲るぞ!」
ZENZENYOYU!
秀一「了解した!ヨユウダー、メテオォォォォォォォォル!!」
装甲を赤熱させ、燃える風となったヨユウダーが、疾る!
魔闘ウツノイドの懐に飛び込み、シャクトゥーマグナムを撃ち込む。魔闘ウツノイドが、わずかに体をくねらせた。
秀一「つかえ、レプリカ射出だ、15本ほど頼む!」
つかえ『了解!レプリカ投下、いきます!』
秀一「よし!」
ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!
魔闘ウツノイドの体を駆け上がりながら、連続してシャクトゥーマグナムを撃ち込んでいく!
堅い体表にいくつも穴を開けられた魔闘ウツノイドは、鳴き声らしき音を発しながらムチのように触手をしならせ、ヨユウダーを払おうとする。
ヨユウダーは魔闘ウツノイドの体を蹴り、後ろに飛び退いてこれをかわすと、離れた場所に着地した。
リュウ「おい、せっかく近づいたのに離れてどうする!」
秀一「慌てるな。もう、終わっている……3、2、1」
ゼロ。空から落下してきた無数の剣が、装甲を破られた魔闘ウツノイドの本体を刺し貫いた。
秀一「わが財閥で開発していたシャクトゥーソードのレプリカだ」
魔闘ウツノイド本体が沈黙、爆発し、周囲の触手は塵と化していく。
リュウ「本体から伸びていたのではなく、土壌を触手に変質させていたわけだな。せっかく強化してきたのに、
援護で終わってしまった……」
テンサイダーが帰っていく。
秀一「……つかえ」
つかえ『はい?』
秀一「自分を信じることが余裕になる。それは、仲間を信じることでも同じだ」
つかえ『ヤブルさん達のことでしょうか』
秀一「それもあるがな。……つかえ、いつもありがとう」
つかえ『なっ、そんな秀一さま、も、もったいないです!』
秀一「フッ、我々も帰ろうか」
その晩、ゲンカイザー秘密基地。ダンは一人、通信をしていた。一枚の文書を破りながら。
ダン「人にこんな伝言押し付けて、さっさと自分から言わないから、ヤブルに取られっちまいましたよ?」
???『それならその方が良かったのだ。彼の口から出た方が重みがあったし、できれば私からあいつを認める
発言は避けたい』
画面の中の相手は微笑んだ。
???『私の跡を任せるには、秀一にはもっともっと励んでもらわなければならないからな』
ダン「……厳しい親父さんだ」(つづく)
最終更新:2011年12月07日 20:11