フ・カノー「なぜ咎めなしなのです!こやつは明らかに私の作戦を妨害したのですよ!?」
リ・タイア「では、エクシードの妨害が無ければ作戦は成功したか?アキラーメ砲の一射目は防がれたが」
フ・カノー「ぐ……ですが、それが理由にはなりますまい?敵を助けたことは事実。所詮この男はあの地球
の……」
リ・タイア「そうか?エクシード」
エクシード「……利敵行為であったことは認めましょう。あのようなつまらぬ作戦で終わらせてしまうには
惜しい相手たちでしたので。他意はございません」
リ・タイア「ふむ。では、エクシードは当分拘禁する。その間アキラーメ砲の使用は禁止だ」
フ・カノー「な、なぜです!?」
リ・タイア「フ・カノー。貴様余のくれたゼンカイダーを捨て駒にしたな?」
フ・カノー「……は。申し訳ございません」
リ・タイア「処分は決まった。退出せい」
フ・カノー「ハハッ」(なぜだ、なぜ皇帝はこうもエクシードに……!)
同じ頃、地球の衛星軌道から離脱していく巨大な十字架型の宇宙船が、魔帝城から観測されていた。
サタデス「宣教師ども、この星の制圧を諦めたのか」
十字架型の宇宙船は、宇宙の宣教師クロイツ人のものである。
死の商人「物騒なことを仰いますな、陛下。彼らの目的は、あくまで布教ですよ。地球を断念したというのは
同じですが」
サタデス「クロイツ人は星の支配を諦めた場合、殲滅戦に移行するはずだ。なぜこのまま去っていく」
死の商人「彼らとしても、先日のクレリッカ部隊の敗北がこたえたのでしょう。こちらの提案を二つ返事で
聞き入れて頂けました」
サタデス「提案、だと?」
死の商人「地球はサタデス魔皇帝陛下によって制圧されます。彼らが手を下す必要はありません、とね」
サタデス「貴様、俺の名を勝手に使いおったな!」
死の商人「お許しください。お詫びと言ってはなんですが、彼らから置き土産を受け取っていますので」
その言葉を合図に、死の商人の背後に2機のロボットが現れた。それぞれ銀色と灰色の2機が、攻撃的な目でサタデスを見下ろす。
サタデス「これは……」
死の商人「『リュカーオン』と『ルーガルー』です」
サタデス「これだけのものを、どうやって引き出した?」
死の商人「ご存じないのですか?彼らは敬虔な信徒に対しては、限りなく優しいのです」
サタデス「敬虔な信徒?どこにそんな奴がいるんだ」
死の商人「フフフフ……」
第30話「月光」
ヤブルが退院した。
秀一「早いな」
抜人「早すぎでしょ!」
乙女「ヤブルさん早すぎますわ」
テッケン「その言い方やめろ!」
そんなやり取りも耳に入らない様子で、ヤブルは自宅、ギリギリ遊園地の入り口を見つめていた。「人類の敵」「裏切り者」そんな落書きに加え、今は「役立たず」といった言葉も書き込まれている。
テッケン「……すまねえ、俺たちも手伝ってるんだが、消す量より書かれる方が多くてな」
抜人(おい、書かれる方が多いは追い打ちだろ!)
テッケン(あ、そうか!?)
秀一「ヤブル、ゲンカイザーの復元が進んでいる。リハビリも兼ねて調整に協力してくれないか?」
テッケン「おい、涼茂……」
退院したとはいえ、ヤブルはまだ全身包帯、ギプスに松葉杖の状態だ。
ヤブル「ああ、いいぜ」
ギリギリ遊園地敷地内。ヤブルの乗り込んだカイザートッパーを遠巻きに見つめるテッケンたち。
テッケン「おい涼茂、どういうつもりなんだ?いくらヤブルでもあの状態じゃ無理だろ」
秀一「……ダン司令から頼まれた。無理なうちに確かめたい、と」
テッケン「なんだそりゃ?」
乙女「少なくとも、拳児くんよりはまともなお考えがあるのでしょう」
抜人「まあ、鉄野よりは……でもあの人、そんなに信用できるの?」
ダン「始めるぞヤブル。カイザーマシン、発進!」
ヤブル「おぉおおおおぁおお!!!」
カイザートッパーが胸に!
カイザーハッサンが腕に!
カイザーリンカーが足に!
その瞬間、ヤブルの脳裏に「ある光景」がよみがえる。
――『み、見るな、見ちゃいかんヤブル!』
『あ、ああ……あなた……あなた……あ、あぁ……』――
ヤブル「お、おあぁぁぁあああ!?」
ドォォォォォォズゥゥゥゥゥゥザアァァァァァン!!
それぞれ変形を完了したカイザーマシンは空中で突然失速し、ボトボトと相次いで落下した。
益子「ヤブルくん!?」
ヤブル「うおぉ……いや、大丈夫……」
ダン「うむ、さすがに無理か。すまん、悪かったなヤブル」
益子「まったく、無茶させすぎです!ヤブルくんも、断らなきゃダメよ!」
ダン(直前までは問題ないのに、合体の瞬間、やる気が極度に低下した……やはり、そうなのか)
その夜は、満月の晩だった。
益子「あら、電話……はい、こちらゲンカイザー秘密基地……了解。司令、敵襲です。数2。この基地で感知
できなかったため、カテゴリー不明の新タイプと思われます」
ダン「わかった。秀一たちに連絡……」
益子が電話を切った途端、また鳴り出した。
益子「山村隊長……了解。伝えます……司令、抜人くんが姿を消しました!」
ダン「……ってことはバンパイオー絡みか!秀一、敵襲だ、奴が暴走する前に急げ!」
気がつくと抜人はバンパイオーのコクピットにいた。ちょうど中にいた研究員が驚いてひっくり返る。頭痛をこらえながら話す。
抜人「うぅぅ、出てください、バンパイオーが飛びます……」
山村『小森!すぐ輸血パックを用意する、少し待て!』
抜人「無理です、これ以上バンパイオーを抑えられないし、多分どっちみち、そんな暇ありません!」
研究員たちが離れたのを確認して、抜人が少し力を抜くと、バンパイオーはもう別の場所にいた。
高層ビル。摩天楼。マンションというよりはオフィスビルで、昼間ほど人はいないのだろうが、灯りの点いた窓も多い。
抜人「どんな奴……っぅうっ!」
様子を見ようとした瞬間、バンパイオーはもう背後に一撃を受けていた。左腕で裏拳を繰り出しながら振り向いたが、もう敵の姿はない。
抜人「速い……上!?うわぁぁぁっ!」
姿を消した敵はビルを壁を駆け上がり、宙に跳び上がっていたのだった。落下してきた敵のパンチを受け、バンパイオーは頭から地面に突っ込んだ。
顔を上げ、相手を見る。バンパイオーを見下ろしているその顔は、獣――狼。抜人の頭に響いてくる言葉があった。
抜人「ワーウルフェン……こいつの名前か」
秀一「抜人、大丈夫か!」
抜人「心配して、くれたんですか?」
テッケン「勘違いすんな。お前が瞬間移動すると、たいていバンパイオーが暴走するからな」
抜人「そういうことかよ。それなら何とか大丈夫だけど、敵が……」
テッケン「何……うわっ!」
抜人が言い終わらないうちにテッケンオーが攻撃を受け、吹き飛ばされてビルに激突した。
秀一「テッケン!今のは何だ、弾丸……ぐぅぅぅぅっ!」
ヨユウダーが地面に這いつくばる。それをワーウルフェンが踏みつけ、動きが一瞬止まった。
テッケン「涼茂、そいつ捕まえとけ!ぶっ飛ばしてやる……ぐわぁっ!」
その隙を見逃すテッケンではなかったが、ワーウルフェンは2機いた。瞬間的に横に現れたもう1機のパンチを受け、テッケンオーは再びビルに叩きつけられた。
抜人「涼茂さん!鉄野!……うわぁぁっ!」
(滅ボセ……ワーウルフェン……滅ボセ!)
頭の中に語りかける声は大きさを増し、抜人の意識を乗っ取ろうとしている。
抜人(バンパイオーの好きにさせた方が、力は発揮できる。その方が、いいか?)
ワーウルフェンの一機が地を蹴り、ビルの壁を蹴ってバンパイオーに向かう。そのとき、抜人は見てしまった。蹴られて崩れたビルの、窓の内側にいた人影を。あれでは、間違いなく――。
(滅ボセ……滅ボセ!)
バンパイオーが暴走すれば、周囲の人命などに斟酌しない。それどころか喪われた命を糧にするようなロボットだ。
抜人「俺は、俺は嫌だッ!敵は倒すさ、でも!絶対、お前には渡さない!」
テッケン「3度目は無え!」
背後の気配を感じ取り、テッケンオーが振り向きざまに見舞った正拳が、相手の顔面を捉えた。殴られた銀色のワーウルフェンはその衝撃を受け流すように飛び退き、宙返りして着地すると、また見えないスピードで走り出した。
テッケン「右!はいぃ!!」
ビルを跳び越えて死角から現れた相手を迎撃した回し蹴りが完全に入り、灰色のワーウルフェンが地面に落ちる。ワーウルフェンは獣そのもののように四つ足で立ち上がると、テッケンオーを睨みつけながら距離を取り、高速で跳び去った。テッケンオーの周囲から獣の気配は消えた。
テッケン「涼茂、そっちいったぞ!」
秀一「わかった。……ぐぅっ!」
またも背中に一撃を受け、よろめいたヨユウダーの目の前にもう一機のワーウルフェンが現れた。
秀一「シャクトゥーソォォォド!」
斜め上段から振り下ろされたシャクトゥーソードはしかし空を切った。垂直に跳んで剣をかわしていたワーウルフェンは、その刃先を足場にしてヨユウダーの頭部を蹴り上げる。のけぞったヨユウダーの左腕にもう一機のワーウルフェンが噛みつき、左手に握られていたシャクトゥーソードが落ちた。
追撃しようとするワーウルフェンを、走ってきたテッケンオーが追い払う。
テッケン「どうした涼茂、動きが鈍いぞ?」
秀一「私が……?」
テッケンオーとワーウルフェンが睨み合う。すでにテッケンオーの格闘能力の高さを学習したワーウルフェンたちは距離を保ったまま、四足獣型に変形し、2機同時に吠え始めた。ワーウルフェンを中心とした道路や建物がひび入り、破壊されていく。
秀一「音波兵器か!」
咆哮による破壊がヨユウダーたちに迫り、到達する――!
テッケン「うるせぇぇぇぇぇぇぇ!!」
抜人「待てぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
バンパイオーが上空から斬りかかり、ワーウルフェンはそれぞれ別方向に飛び退いた。音波攻撃が止む。
抜人「二人とも、無事ですか!?」
テッケン「耳がガンガンするぜ……」
秀一「マニピュレーターが……繊細な部分はやられてしまったようだ」
ヨユウダーの右手が握力を失い、残っていたシャクトゥーソードを取り落とした。
ワーウルフェンはビルの陰から顔を覗かせ、バンパイオーを注視している。
抜人(奴ら、バンパイオーを警戒している?)
(ワーウルフェンヲ滅ボセ、ワーウルフェン……)
バンパイオーの声は変わらず頭の中で響き続けているが、抜人は既に慣れ始めていた。そして、気づいた。
抜人(なんか、今までの敵のときと、違うな……?)
意識を乗っ取ろうとする憎悪や殺意がそのまま自分の中にもぶつかってくる。しかしその黒い感情に混ざった、今までに無かった感覚は?
抜人(悲しみ、切なさ……いや、哀れみ……?)
2機のワーウルフェンが跳びかかる。バンパイオーはマントを翻してそれを制し、跳んだ。ヨユウダー、テッケンオーから孤立したバンパイオーを、銀色の方のワーウルフェン『リュカーオン』一機だけが追う。
抜人「しめた……!涼茂さん、灰色の奴は任せます!」
秀一「抜人!一人で大丈夫なのか!?」
抜人「確かにこいつらは並の敵じゃない……でも、俺のバンパイオーなら、今のワーウルフェンには、
負けない!」
ワーウルフェンの正体。バンパイオーの感情。想像に過ぎないが、抜人には見えていた。かつて、ノーライ・フキングは言った。
――バンパイアだけじゃない。スケルトン、フランケン、ワーウルフ……いくつもの星が奴らに滅ぼされた。そして滅んだ星の戦力は奪われ、次の星の制圧に使われる。
バンパイア星のバンパイオー。ワーウルフ星のワーウルフェン。バンパイオーが古くから崇められていた神像だったというように、ワーウルフェンもまた、星の守り神だったのではないだろうか。それが星を滅ぼした者に奪われ、侵略の尖兵となっている。
そこまで考えたとき、ふっと一瞬、意識が飛んだ。輸血パックも無い状態で、既にエネルギーとして血液を使い過ぎているのだ。そしてその隙を見逃すほど、ワーウルフェンは甘い相手ではない。リュカーオンの爪がバンパイオーの脇腹を抉り、血のように紅い、正体不明の液体が噴き出す。
秀一「抜人……」
テッケン「涼茂!奴なら何とかする、こっちに集中しろ!」
二度、三度と跳びかかる灰色のワーウルフェン『ルーガルー』の攻撃をぎりぎりでかわしながら、テッケンが怒鳴る。
テッケン「ちくしょう、返すのが精一杯だ。あの速さに追いつけないと、こっちから叩けねえ!」
秀一「披露院嬢は来ないのか?」
テッケン「スーパーテッケンオーは直線の加速なんだよ。こういうすばしっこい相手じゃ、かえって荷物だ」
秀一「まあ、それでなくてもこんな状況に彼女は呼べないがな。……テッケン、追いつくだけなら、手はある」
バンパイオーのダメージをトレースするように、抜人の脇腹からも血が噴き出す。まとまらない思考の中、抜人はやっとのことでバンパイオーをビル陰に移動させた。
その一瞬後、現れたリュカーオンが爪を振るい、バンパイオーの首をかき切った――。
秀一「ヨユウダーのメテオールならば、スピードは奴に劣らない。だが、ヨユウダーはもう剣が持てない」
テッケン「だったら何でもっと早く……まあ、そんな暇なかったか」
秀一「それに、私の剣が奴に通用したかどうか。だからテッケン、ヨユウダーの背中に乗れ。同じスピードで
お前なら、当てられる」
テッケン「そうか!よし!」
言うが早いかテッケンオーはヨユウダーにおぶさった。
秀一「メテオールのスピードは大気との摩擦熱が問題になるほどだ。テッケンオーだと、熱いぞ?」
テッケン「上等だぜ、涼茂、出せ!」
秀一「OK。ZENZENYOYU……ヨユウダー、メテオォォォォォォォル!!」
テッケンオーを背負い、ヨユウダーが跳ぶ!
テッケン「こ、これは!」
ヨユウダーとテッケンオーが、みるみる赤熱していく!
テッケン「熱ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
首を刎ねられた瞬間、バンパイオーの腹部から刃が飛び出し、リュカーオンの体を貫いた。さしものワーウルフェンもこれには驚いたようだった。
抜人「ぉぉぉ……」
声にならない叫びを上げながら、抜人はリュカーオンを押し倒し、貫いたブラッディブレードを地面に突き刺す。首の無いバンパイオーは黒い液状の物体に変わり、後ろにいる本物のバンパイオーの背中に流動すると、元のマントに戻った。抜人は敵に隙を作るため、マントをダミーのバンパイオーに変化させていたのだった。
しかし地面に釘付けにされたリュカーオンは、まだ戦意を失っていなかった。ブラッディブレードが貫いた傷は、そのまま刃を食いちぎろうとするかのように修復していく。
抜人(とどめがいる……)
ダミーを作るのにも血液を消費し、もう満足な攻撃を重ねられる力は無い。だが、ここでとどめを刺せなければ意味がない。抜人は考え得る最大の武器を使うことにした。
……あるいは、自分とノーライが共に美しいと思った銀河の輝きを、ワーウルフの遺産にも見せたかったのか?
抜人(ギャラクシーバスター……)
無数の光線がリュカーオンを貫く光景を、抜人が見届けることは無かった。
テッケン「見えた、涼茂、下だ!」
秀一「おう!」
テッケンオーを背中に載せたヨユウダーが軌道を修正し、ルーガルーに相対速度を合わせる。疾走中に追いつかれるとは思っていなかったのか、一瞬迷いを見せたルーガルーに、テッケンオーが鉄拳を叩き込む。
ルーガルーは咄嗟に急所を外す動きをしたが、テッケンはそれを察知して軌道修正し、見事にルーガルーの頭を捉えた。
吹き飛ぶルーガルーをヨユウダーが先回りし、テッケンオーがさらに殴る。そうして4発ほどのクリーンヒットを与えると、いよいよルーガルーのスピードが落ちてきた。
テッケン「とどめだ、いくぞ涼茂!」
秀一「ああ!……なぜだ?まだ時間はあるはず……」
テッケン「どうした!?」
秀一「メテオールが終わる。とどめはヨユウダーを蹴って跳べ!」
テッケン「っしゃぁ!うおおおおおおおっ!!」
テッケンオーが跳ぶ。蹴られてバランスを崩したヨユウダーは、メテオールの速度の慣性を持って道路に突っ込んだ。テッケンオーは大気との摩擦で赤熱し、塗装を燃え上がらせていた。
テッケン「熱ったああああぁぁぁぁっっ!!」
燃える鉄拳が心臓をぶち抜き、一気に減速した2機はひとかたまりになって落下し、転がる。
お互いに倒れたまま、テッケンオーが胸から腕を引き抜くと、ルーガルーの体に火が点いた。テッケンオーから燃え移ったのではなく、死の兆候として内部から発火したらしい。
グゥゥ……
最期に呻き声を上げ、燃え上がる灰色のワーウルフェンの目から、光が消えた。
秀一「……テッケン、やけどは大丈夫か?」
テッケン「それより小森を早く……本当に死んじまうぞ……」
秀一「ああ……助けは呼んである……」
道路に仰向けになったヨユウダーから、秀一は夜空を見上げた。
秀一「全然余裕、無いな……」(つづきたい)
最終更新:2011年12月07日 20:12