4話「銭湯の戦闘」
前回までのお話
涼介
「明日から天国だぜ!」
戦闘後
涼介
「明日から地獄だぜ…」
十束家の食卓とみんなの平和を守れ!ユンガー50
源三郎
「銭湯って言うのはな、男の戦場なんだ涼介」
俺は今顔馴染みの銭湯『心の湯』にきている。戦士の束の間の休息という奴だ。
俺もユンガーのパイロットになってすっかり有名人になった。
だもんで顔パスでいけるかなって思って番台素通りで行こうと思ったら―――
源三郎
「この番台を素通りして、風呂に入ろうたぁいい度胸してやがる」
涼介
「ほら、有名人になったし。タダで入らしてくれるかなーって…」
源三郎
「はぁー…、アタタタタタタタタ!!ホォタア!!」
涼介
「あべし!」
源三郎
「例え○ョニー・デップでも、例え○ディー・ガガでも。何人たりとも湯代を払わずして門をくぐることはできん!」
案の定源さんにボッコボコにされた。
人生そんなに甘く行かないよね。
源さんは昔気質で職人肌だ、そんな人は決まって頑固一徹と相場が決まっている。
オヤジがそうだからだ。
涼介
「源さん、話はもういいでしょ?これ以上浸かってたらのぼせちゃうよ」
源三郎
「バッキャロウ!!限界を迎えても。あれ?これまだいける、と思えたらまだまだいけるもんなんだ」
涼介
「生命の限界迎えちゃうよ…」
アキラ
『情けないわね、男のくせに』
壁一枚の向こうからアキラの声が聞こえた。
そう、アキラも一緒に心の湯に来ているのだ。
俺は壁をよじ登り女湯を覗いた。
涼介
「男湯の温度はな、そっちより熱く設定されてんの!」
アキラ
「な、な、なにやってんのよおおおおおお!!」
涼介
「そんな薄っぺらいのになに気にしてんだよ」
その瞬間桶という桶が俺の顔面めがけて飛んできた。
涼介
「あだ、あだ、う、うあああああ!」
俺は壁の頂上から真っ逆様、おかげで頭上でお星様が回っている。
源三郎
「よくやった涼介、覗きは銭湯の醍醐味だ!」
涼介
「や、注意しないんかい!?」
戦場とはこういうことだったのかな?…
銭湯からの帰り際アキラは不機嫌極まりなかった。
ま、そりゃあそうだよな。
今回ばっかりは俺が悪いってことでご機嫌とりに勤しむことにした。
涼介
「なあ悪かったって、小さいときは一緒に入ってたんだし別にいいだろ?」
アキラ
「…」
涼介
「それにあの頃よりはほんのちょっと大きくなってたと思うぞ」
ピクッと立ち止まりゆっくり振り向いたアキラ、その顔は満面の笑みだった。
と言うことは許してくれたのか?
アキラ
「サイッッテー!」
…悪化した。
これ以上なんか言ったら顔面にパンチが飛んできそうなのでやめとこう。
と、ここで俺が有名人になった実感がわく出来事が。
青年A
「あー!君ってユンガー50のパイロットじゃない?」
青年B
「握手してくれ!」
涼介
「まいったな」
青年A
「頑張れよ、応援してるから!」
ギャルA
「あれユなんとかの子じゃね?」
涼介
「ユンガー50です」
ギャルB
「まじで!?ウケるwてか写メとろーよ」
ギャルC
「てゆーか結構可愛いじゃん」
道行く人々が俺を期待の声と尊敬の眼差しで迎えてくれる、これが有名人ってやつか。
涼介
「なっハッハッハ!」
アキラ
「…」
家まで後少しという所でオヤジがすっ飛んで来た。と言うことはつまり―――
工造
「涼介、バケモノがでたぞ!」
涼介
「でやがったか、すぐでられるのか?オヤジ」
工造
「それが今回は少しばかり勝手が違うんだ、とにかく家に行くぞ」
涼介
「アキラ!お前は避難していろ」
アキラ
「りょ、涼介…もう」
俺はアキラをその場に残し家へ急いだ、今思うと何故アキラを連れて行かなかったのか?後になって後悔する事になるのだった。
家についた俺はオヤジに促されるままテレビを見た。
そこにはこの町の上空三千メートル以上もの高さに飛んでいる鳥の形をしたバケモノの姿があった。
涼介
「こんな高いとこにいたら戦えねぇ」
工造
「そう言うことだ、こっちも空を飛ばない限り倒すことは不可能だ」
涼介
「じゃどうすれば…」
工造
「安心しろ、幸い遠距離の敵に備えて狙撃兵器を造っていたんだが」
涼介
「だが?」
工造
「砲身がまだ完成してない」
涼介
「あちゃー!」
工造
「なにか代用できるものがあればいいんだが」
涼介
「んー…あ!あれがあるじゃん!!」
工造
「あれ?」
俺は今さっき来た道を引き返し、心の湯に到着した。
あるものを貸して貰うために。
源三郎
「なんだ、忘れ物か涼介?」
涼介
「源さん、煙突貸してくれ!」
源三郎
「なんだと!?」
涼介
「テレビ見ただろ?この町の空にバケモノがいるんだ、そいつを撃ち落とすには町一番のでっかい筒がいるんだ!お願い源さん」
源三郎
「うーむ、よっしゃ!持ってけ!」
涼介
「いいの?あれがなくなったら銭湯が」
源三郎
「煙突がなくなる前にこの町がなくなれば本末転倒だ、それになくなりはせん。お前が使うんだからな」
涼介
「げ、源さん!!」
俺は源さんの信頼に応えるためにも、この町を守るためにもバケモノを倒す!
こうして借りた煙突をトラックで家の工場に運んで急ピッチで作業に取りかかった。
殆ど完成していたからそれ程時間はかからなかった。
そして出来上がったのがユンガー・マネー・ホットウォーター・バスターだ!砲身が長いだけあって名前も長い、なんちゃって。
とにかく、こいつは名前負けしない物凄い武器だぜ。
なんてったって源さんの熱い魂も篭もってるからな。
俺は新兵器を携え出撃した。
工造
『前回の戦闘を踏まえ、ヘルメットを作っておいた。お前の操縦じゃ危なっかしくてしかたがねえや』
涼介
「サンキューオヤジ!」
これか、なかなかイカしてんじゃん。
俺は操縦席の脇にあるヘルメットかぶった。
工造
『いいか?一撃でしとめろよ?あと頼むから無傷で倒してくれよ』
涼介
「誰に言ってんだオヤジ?」
工造
『ふん!いっちょ前なこと言いやがって、ユンガーGO!』
外にでた俺はオヤジの指示を受けながらスナイパースコープでバケモノの位置を把握した。
そしてロックオン、後は狙いを定めて引き金を引くだけ。
涼介
「こいつを食らいやがれ!ユンガー・マネー・ホットウォーター・バスタァーーー!!!」
バケモノ
「ギャーーースッ!!」
バケモノはひらりとかわし、お返しとばかりに羽を飛ばしてきた。
その羽は鋼鉄の弾丸となりユンガーに襲いかかる。
俺はそれを間一髪で避けることに成功、煙突しょってるから動くのにも一苦労だぜ。
涼介
「ふぅー、危なかった」
工造
『バカヤロウ!一撃でしとめろって言っただろうが!』
涼介
「次は当てるって、…ん?」
俺はユンガーの足元に逃げ遅れたアキラを発見した。
涼介
「お前そんなとこでなにやってんだよ!?」
アキラ
「あんたが心配だから、来たんでしょ」
涼介
「逃げろっていったろ!」
そうこうしてる内に第二波の攻撃が飛んできた。
涼介
「く、危ない!」
アキラ
「キャーーー!!」
ドゴォォォォオオ!!
涼介
「大丈夫かアキラ?」
アキラ
「涼介、…うん」
俺はユンガーでアキラを覆い被さり盾となった。
ユンガーの背中には無数の羽が突き刺さっている。
アキラを非難させようにもここは家の近くの河川敷、アキラを家に連れて行く暇はない。
仕方なくコクピットにアキラを入れることにした。
涼介
「何で言うこと聞かなかったんだよ!?」
アキラ
「あ、あんたが心配だったから」
涼介
「逆にこっちが心配したぜ!最近お前なんかおかしいぞ」
アキラ
「おかしくなんかない」
涼介
「じゃあなんでそんな冷たい態度なんだよ!」
アキラ
「私は、私は…」ポロポロ
あ、あっちゃー。
泣かせちまった、昔っから女の子の涙と母ちゃんの説教は苦手なんだよなぁ…
涼介
「胸のことなら謝るから、な?このとうり」
アキラ
「私はそんな事で怒ってるんじゃない!」
涼介
「え、違うの?」
アキラ
「あんたが最近ちやほやされて調子乗ってるから、うっ…うっ………」
涼介
「…ごめん」
アキラ
「別にちやほやされるのはいい、私昨日町で聞いたの。ユンガーのせいで家を滅茶苦茶にされたとか、ユンガーが助けてくれなかったから娘が怪我したとか…」
涼介
「え…!?」
アキラ
「私それ聞いて無性に腹が立った、でもこれはあんたが有名になるにつれて、戦うことでもっと増えると思ったら私…。あんたこうなること考えたことあんの!?」
涼介
「それは…」
確かに、俺は有名になることで少し調子に乗ってたかも。
俺のやってることは必ずしも正しいことじゃないかもしれない、ただの自己満足なのかもしれない。
町の被害や守れなかった人のことを考えもしなかった。
アキラ
「それだけじゃない、あんたが前の戦いでケガしたとき心臓が止まるかもって思った。もうあんな思いするの私はごめんよ!!」
涼介
「…アキラ」
こんな時どうすればいいかわからない、ただアキラに泣いてほしくないってことは確かなことだ。
俺が戦って誰かが傷つくなら俺はもう戦わない方がいいのかもしれない。
だけど、だけど!
バッ!
涼介
「俺は負けないぜ。ちゃ、ちゃんとお前を守ってやっからよ」
アキラ
「涼…介………」
所謂一つのハグってやつだな、ちっさいときからアキラはこうしたら泣き止んでくれたんだ。
アキラ
「バカ!スーパーバカ!!あーもう心配して損した」
涼介
「あははは…」
工造
『お二人さん、いいとこじゃまして悪いんだけどよ。空の上にいるやつなんとかしてくれねえかな?』
涼介
「よっしゃ、じゃあ仕切り直しといきますか?」
アキラ
「絶対勝ちなさいよ!涼介」
涼介
「おう!」
俺は再びバケモノに照準をセットした、さっきはロックオンをしたたまま撃ったから外したんだ。
風向きや奴の行動を計算して撃たなきゃだめだ。
俺はあえてロックオンせず、奴の上方を狙った。
今度は何故か当たる自信しかなかった、根拠はないが次は当てる!
涼介
「いっくぜえええ!!ユンガー・マネー・ホットウォーター・バスタァーーー!!!」
ドゴォォォオオ!!
見事命中、奴の腹に風穴を開けてやったぜ。
バケモノはゆっくり落下しながら徐々に空で燃え尽きた。
バタッ!
涼介
「アキラ?おいアキラ!!アキラァーーー!!」
春平
「もう大丈夫、心配かけてすまなかったね涼介君」
俺はあの後倒れたアキラを青海病院に連れて行った、アキラの家は病院の自営業をしている。
俺もよくお世話になってる。
アキラはケガしていたらしく疲労も相まって倒れたんだそうだ。
俺は病室にいるアキラにお見舞いしにいった。
アキラ
「なんて顔してんのよ」
涼介
「俺はお前に合わせる顔がねえ」
アキラ
「これは私の自業自得だし、たいしたことなかったんだから」
涼介
「本当に悪かった」
アキラ
「バカ…」
俺は今回自分の無力を痛感させられた。
テレビアニメのヒーローはカッコ良く勝って万事解決、でも現実はそう簡単に上手くいかないよな。
幼なじみ一人守れないんじゃヒーロー失格だぜ。
自覚が足りなかったみたいだ。
戦う者の自覚が…。
それから一日立って、煙突を源さんのもとに返しにいくことにした。
流石に煙突返さないとマズいだろ。
と、なぜか心の湯はすごい人だかりができていた。
源三郎
「よう、涼介。お前のおかげですげぇ商売繁盛だ。お前は特別タダで入れてやらぁ」
すげー現金だなぁ…
騒ぎに駆けつけたテレビ局のリポーターが俺にインタビューしてきた。
ちょっと前の俺なら浮かれ気分で答えてたけど今は違う。
リポーター
「この町のヒーロー、あのユンガー50のパイロット十束 涼介君です、カメラに向かって何か一言お願いします!」
涼介
「…ごめんなさい!」
リポーター
「ふえ?」
涼介
「守りきれなかった人や、俺のせいで家を壊してしまった人。すいませんでした!だけど、俺は約束します、絶対負けないって』
ピッ
帳
「―――以上がユンガーのパイロットの調査結果です、首相」
首相
「…」
帳
「私はこれ以上彼だけに任せるのはいささか危険だと判断しました。よって我が社のプロジェクトを推進させたいと思います」
首相
「わかった、早急に手を打ってくれたまえ。次にあの謎の生物についてわかったことはないかね?」
帳
「ええ、判明したことがいくつか。彼らは未知の細胞で生成されていて驚くことに全ての数値においてマイナスを示しています。よってこれからはこの怪獣のことを『マイナス獣』と呼称することに決定しました」
続く
最終更新:2011年12月08日 08:11