地底からの侵略者・ザルガン帝国のロボットアイスマンに、帝国が利用を企む怪獣バゴラ。
立て続けの戦いになんとか勝利し、束の間の平穏が…?
「目立った外傷はないが、実際はあちこちに疲労が蓄積されて諸症状を起こしているようだ。それと脳と心臓――健康的には問題ないレベルだが、この二つに偏ってこんな負荷がかかる状態なんて今までに類がないぞ。一体何をしたんだ?」
「それを調べるために、バイタルデータをとってもらっているんですよ。心苦しいけど、ゆったりテストをしている時間はもうない。」
「……それじゃあ、手配はしておくぞ――マサル。」
暗がりの一室で演算処理を繰り返す機械装置、画面の光とともにその駆動音が消えると、室内は夜の闇と静寂に同化した。
僅かに聞こえる息遣いも重い鉄扉の開閉とともに、遠くへと離れていく。
「それでまた筋違えて一週間? だっはっはっは! なんじゃそりゃ!!」
ようやく出てきたんだから退院祝いの一つでもくれりゃあいいのに、やっぱり賢には期待するだけ無駄だった。
笑い事じゃないっての、笑いすぎて脱腸しろ。
「それにしてもお前がロボットの、ねえ。」
「お前にゃ信じてもらわなくてもケッコーだ。」
「別に疑っちゃねえさ、あんな怪獣間近でみた後だし、例の叔父さんもテレビに引っ張りダコだし。」
俺をプラグマのパイロットに選んだ……と言っていいんだろーか、その叔父さんは色んな所に飛んでバゴラ獣についての説明をやっていた。
最近ようやく家(つってもウチの居候)に帰れるほどに落ち着いてきたとか。
「……じゃあもっとねぎらえよ。」
「ふてぶてしい奴だなあ。折角の大役なんだからそういうのは黙って隠しとけよ。」
「うるせぇ、良いんだよ別に俺はヒーローやってる訳じゃねーし。俺は正当に評価されたいだけなの。」
「ははは、じゃあ内申書にでも書いてもらえ。じゃあな。」
くそう最後まで人を小バカにしやがって、相変わらず過ぎる奴だ。
「あーせっかく退院したってのにヒマだぁー!!」
学校もようやく再開して町の復興もひと段落はついてる。
だから一応はいつも通りの日常のはずなんだけど、なんかなあ。
「あ……そうだコロナちゃんこれ。この前出先でもらったんだけど折角だから息抜きしてきなよ、最近根つめすぎだし、どうせ今はバゴラ獣の調査とプラグマの修理ですぐ動く事ないから。」
「でも……」
「大丈夫大丈夫、お偉いさんに掛け合って必要な人員は補充してもらったし。それにコロナちゃん地上に来てからゆっくりしてないでしょ、見学みたいなものだと思って! ああ、そうだ。多分今頃――」
「――暇そうにしてるだろうって、コレ。」
こっちは入院あっちはプラグマ周りであんまり会ってなかったけど、家に帰るとコロナも居候しているワケで。
んで、いきなり目の前に出てきたのが遊園地のペアチケット。
うん……ペア……?
「でっ……えっ……デ、デートかぁ!!?」
テンパって思わず口走ってしまった。
「え? あっ……そっか、これデートになっちゃうよね!? えっ、どうしよう!!?」
つられてなのか遅れて気づいたからなのか、コロナまで顔赤くしてしまう。
そうか、コロナは地底生まれだからやっぱ文化とかビミョーに違ったりするんだ。
「どうするって、でもホラ! 叔父さんが見学って言ってるならそれでいいんじゃないか。そういうので遊んだこととかないんだろ?」
「じゃあ、その……一緒に来てもらっても大丈夫?」
「だっ大丈夫! そこ小さい頃行ったことあるし、案内するよ!!」
全然大丈夫じゃない。
いや、だって今までほとんど意識してなかったし、っていうか一杯一杯でそんなヨユーなかったし。
逆に意識しすぎなのはわかってるけど、その日の夜は小学生ばりに寝れなかった。
よくよく考えればコロナ隣の部屋で寝てるわけだし!
で、次の日の朝。
「おうプラグマの少年少女! 朝から早いな。」
「あれ、自衛隊のえっと……雨城さん。なんでこんな所ブラついてるんですか」
「ああ、この前のアレ、独断で機体持ち出してやったもんだから謹慎食らってるんだわ。お前等こそなんだ? まあデートって柄じゃないよな、がはは。」
返す言葉が見つからない。俺の周りはこんなのばっかりか。
それから何年かぶりに電車を乗り継いで目的の遊園地に。
チケットがタダとは言えこれなら近場を探したほうが良かった気もしなくはない。
「あ、でもすごいね。私こういう建築物データでも見たことなかった。」
「とりあえずなんか乗ってみる? ベタにジェットコースターとか。」
入り口からすぐに見えるものをそのまんまチョイス。しかし……
「……なんか、思ったほどでもなかった、かな?」
「うん、まあ短かったしね……。」
別にしょぼいわけじゃないけど、まあ、なんていうか……慣れてしまったのだ。
巨大ロボットの後じゃかすむ。
「じゃ、じゃあ次いこ次!」
「あ、これ面白そう。」
指差したのはガン・シューティングのアトラクション。どうやら割と新しい奴らしい。
っていうかやっぱコロナはこういう系が好きなんだろうか。
初めて会ったときもバズーカ持ってたし。
バシュバシュッ!
「よっしゃ12機!」
バシュバシュバシュッバシュ!
「右2の上から流れて1、乱数調整入って次でた所からズレてループが3パターンってトコかな。」
「マジかよ……。」
まあこんなでいいトコ見せようというのが土台無理なハナシ。
コロナのぶっちぎりハイスコアを残して適当に次を探し歩く。
「よ、よし……じゃあお化け屋敷行こう、お化け屋敷!」
別にきゃーって抱きつかれる展開を期待しているわけじゃない。
だってコロナの反応がまず「お化けってどういうものだっけ?」だ。
「――つまりえっと、アディーマ……じゃなくて霊魂の事ね。」
「なんか説明すると変な感じだなあ。しかも作り物見に行くわけだし。」
言いながらずいずいと前に進む。
コロナは興味津々、さらに先へと進んだかと思えば立ち止まってじろじろとセットやお化け役の人やらをながめてて、やっぱ怖がる気配なんてない。
「あ、あそこ隠れてる。なにかな?」
「え、暗くて何にも見えないけど……。」
「うーん私たちザルガンの人間は地底生まれで育ちだから、暗視能力が高いみたい。逆に明る過ぎる場所だと色とかの区別が弱いんだけど。」
「へぇ、やっぱ違うんだ。お……お疲れ様です。」
そのままスタンバってた最後のお化けに挨拶して出口へ。なんだこれ。
「あっ……いや、違うってのはなんていうかその、見た目普通に一緒だと思ってたから……悪い意味じゃなくて、全然!」
「あはは……気使ってくれてありがと。」
「いや、変な事言ったの俺だし。でもやっぱ、同じ人間だよな……地底とか地上とか関係なしに。」
「そうなんだよね、元をたどればそう変わりなんかないはずだもの。違うのは中身だけ。それだけなのに……。」
うつむくコロナ。当たり前だよな、誰だって戦争みたいな事望んじゃいない。
まして、コロナは一人で自分の生まれ育ったトコを飛び出してきたんだ。
それって誰よりも、戦いをして欲しくないって事じゃないか?
「……中身ならさ、地上のみんなだって違うよ。それでも一緒に……コロナともこうやって、遊んだりアイス食べたりできるわけだからさ、他の人たちとだってできない理由はないだろ?」
んなクサい台詞で片付かれらるような話じゃないのは分かってるけど、そういう理想、あってもいいはずだ。
「うん、そうだね……そうだよね。目の前の事ばっかで、大事な事忘れてたのかも。」
時刻の変わり目ぴったりに、広場の噴水が動き出した。
「豪くん、今日はありがとう。こんな事言うと迷惑かもしれないけど……。」
「……?」
「プラグマに乗ってくれてたのが豪くんで良かったなって、そんな気がする。」
「えっ……あっ……あはは、そう、そうかな!!」
危ねー……ちょっとドキッとしてしまった……。
いや、そういうの来ないって、ね。丁度その時。
TELLLLLLLL! TELLLLLLLL!
『もしもしコロナちゃん、緊急事態だ。街が攻撃を受けている。急いで戻ってきてくれ!』
「まさか、もうバゴラ獣が復活して!?」
『いや、違う。街を攻撃してるのは……ザルガン帝国のアイスマンだ!!』
――最悪のタイミングだった。
つづく
最終更新:2011年12月08日 09:39