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「気配」がした。
これの正体をわたしは知っている。
転送が始まるんだ。
ああ、そっか。
今日、今から、わたしは死ぬんだ。
お兄ちゃんを。
お父さんを。
田中さんを。
友達を。
この地球(ほし)を。
大切なものたちを守るために、私は死ぬんだ。
怖くなんかない。
覚悟はできている。

だからお父さん、そんな顔しないで。

「お父さん、ありがとう」


宇白可奈の景色が完全に切り替わったとき、彼女は大きな違和感を覚えた。
通常ならばジアースの操縦席として馬蹄形に列を作っているはずの「椅子」が無い。
そして、ここコックピット内に転送されてきたのであろう人間の数。
見渡しただけでもざっと50人前後――が、輪を作っている。
みんな状況が飲み込めていないのか騒いでいる者が多い。

いったい何が起きているんだろう?
もしかして、ここはジアースのコックピットじゃないんだろうか?

「皆さん、お静かに」
中央に見覚えがある存在が姿を現した。
黒くて、小さいお人形のような。
たしかコモさんの戦闘のときに、わたしたちのコックピット内に割り込んできた他の地球の――
「私のことは、コエムシとでもお呼び下さい」
「で、そのコエムシさんとやらが、オレに何の用だ?」
「一方通行さん、でしたか?そう急かないで下さい、ちゃんとお話しますから」
黒コエムシに物怖じせずに唯一言葉を返したのは、真っ白な男の人。
とても綺麗な白い頭髪、白い素肌は、まるで黒コエムシを挑発しているみたい。
どうやらアクセラレータ、という名らしい。外人さんかな?

「今回貴方がたには、強制的にとある契約を結んで頂きました。
 皆さんの首にあるそれは契約の証です。各自確認してみて下さい」
言われて初めて気付く。
いつの間にかわたしは、他の人たちも、同じ鉄製の首輪をつけていた。
ひとつだけ違う点といえば、首輪の中心部分で光るランプの色。
「お気付きかと思いますが首輪のランプ、これは全部で12色あります。この12色は地球の種類とお考え下さい。
 では地球の種類とは何なのか?皆さんにして頂いた、契約の内容とは?いったいこのふたつは、何の関係があるのか?」
多分、わかる。わたしには。
ジアースのパイロットを担うわたしには何となく想像できた。
「ここに居る貴方がた55名にはこれより、ご自身の地球のため…ご自身の生命のために、殺し合いをして頂きます」
不穏な響きに周囲がざわめく。
これが慣れ、というものだろうか。わたしはなぜか、妙に冷静なままで居られた。
「ここには12種類の地球から、各1~6名の者が集められています。
 貴方がたの敵は自分以外の他11種類の地球の者。参加者が1名も居なくなった地球から消滅していきます。
 もしも72時間以内に2種類以上の地球の者が生存していた場合は、ここに居る全員の首輪が爆発し、必然的に12種類全ての地球が消滅してしまいます。
 まあ、簡単に言えば地球の存亡をかけて72時間以内に12チーム同士で潰し合いをしろ、ということです。
 役目を果たしたチームのみ、ご自身の地球に還ることが可能となります」
今までの戦いと大きく違うのは、その地球の中で選ばれたパイロット1人を倒せばいいという話ではないということ。
逆に、参加者が1人でも生き残っていれば、その地球は存在し続けられるということ。
「それからもうひとつ、勝利した地球の者たちには褒美が与えられます。
 死者の蘇生。黄金の山。不老不死。ひとりひとりの願いを全て叶えることを約束しましょう」

「ハッ、くだらねェ」
アクセラレータさんが黒コエムシに向かっていく。
「ンな糞つまンねェゲーム、ぶっ潰してやンよ」
2人の距離があと一歩というところまで縮まったとき、黒コエムシを捻り潰そうとアクセラレータさんが腕を伸ばす。
「…!」
でも、届かない。届かなかった。届くことを、許されなかった。
各所から悲鳴が上がる中、さすがにわたしも息を呑んで一瞬顔を逸らした。
「過ぎた真似はよして下さい。せっかく収集をかけた意味がなくなるでしょう、学園都市第1位」
「な…にィっ!? がァッ!?」
首から「虫」を生やしたアクセラレータさんがゆっくりと倒れていく。
アクセラレータさんという障害物が無くなったことで、二人の間に介入していた人物の存在を、わたしはようやく認識した。
「貴方もですよ、白。
 そこまでしなくとも、生命(いのち)の巫女は必ずこのゲームが終了した後にお渡ししますから私の指示に従って下さい」
「ふん」
白と呼ばれた人は仏頂面のまま、黒コエムシの背後に身を退いた。

「嘘、嘘…アイツが…あの一方通行が…私でも敵わなかったアイツが…!」
わたしの隣で震えている女の人。見た目はお兄ちゃんより1歳、2歳ほど上の。
アクセラレータさんの知り合いだろうか。
「ええ、たしかに彼は強い。彼が本来の力を出しきれる状態であったとしたら、いくら私と言えど危なかったでしょう」
本来の力?どういう意味だろう。
「先程説明した契約の証…皆さんがつけているその首輪。
 それは一定以上の強さや能力を持つ者の力を制限する機能が設けられています。
 ゆえに、彼は私を殺すことができなかった。
 心当たりがない方や無関係の方にとっては、制限の意味がわからないでしょうけれどね」
ということは、わたしは該当者ではないということ。
そして、少なくともこの中に1人は該当者が居るということ。

「この首輪には他にも、禁忌を犯したときに爆発する仕組みになっています。
 今から6時間以内に1名も死者が出なかった場合。
 禁止エリアに一歩でも踏み込んだ場合。
 72時間経過後2チーム以上が生存していた場合。
 マップ外エリアに出ようとした場合。
 主催側に反抗した場合。
 首輪を力ずくで外そうとした場合。
 禁忌というのは以上の6点になります」
禁止エリア?
「言い忘れていましたね。
 6時間ごとにこちらで死亡者の発表を行います。
 その際にこちらで禁止エリアを指定します。
 後に支給されるディパックの中に参加者名簿と行動可能範囲が載ったマップが入っていますから、各自チェックして下さい。
 名簿に関してですが、最初の段階では51人の名前しか記載されていません。残り4人の名前は第一回目の死亡者の発表の時に呼ばれます。
 この名簿とマップの他にもランダムアイテムが1~3つ、ルールブック、食料、水、懐中電灯、コンパス、腕時計なども用意されておりますのでご安心を」
アイテム?懐中電灯?コンパス?
どうして戦闘をするのに、そんなものが必要なの?
そういえば首輪のランプもだ。そんなことしなくたって、戦闘機で他の地球の人間だという判別はできるはずなのに。
「では皆さん、地球を救うため、ご自身の生命をかけて戦い抜いて下さい」


疑問はそのままに転送は始まった。
行き先はきっと、地獄。

【一方通行@とある科学の超電磁砲 死亡】
【主催】
黒コエムシ@ぼくらの
白@結界師
【人質?】
ルリ・サラサ@東京アンダーグラウンド

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最終更新:2011年05月11日 12:10