「あれー、変なところでお会いしますね。
あっと、高いところから失礼します、ですねっ」
「それは別に構わんが。何をやってるんだ? このブラストはどこから沸いた」
「整備班さんたちと話してたら、
余剰部材で二機は組めそうだっていう事になって、ちょっとお手伝いを」
「シュライク系列機はいくらあっても困らんか。で、整備の連中は?」
「これを使うための事務手続きを。だから電算室か通信室じゃないかなーと思います」
「その間、お前さんはブラストに登ってチェックリストの処理と。ボーダーにやらせるなよ、あいつらも」
「簡単なとこだけですもん。出撃前確認がちょっと複雑になったくらいです。
こういう作業好きですしねー」
「分かったが、手を振ってアピールしなくて良い。落ちるぞ」
「話が戻りますけど、そちらは何しに来たんですか?」
「若い連中の宴会、盛り上がりが天井知らずなんで抜けてきた。
予備部品しかないこっちのハンガーなら静かだろうと思ってな」
「あは、今回は文句なしの圧勝でしたしね。
あれ? そいえば、宴会にあんまり長くいらっしゃいませんよね、いつも」
「ああいう場も悪くはないが、俺は本来、ひとり静かなのが好きなんでね」
「えー、それは不健康ですよ。『ひとりぼっちの人間は人間ではない』んですよ?」
「テニスンか? また極端な。『幸福になろうとする者はまず孤独であれ』とも言うぞ」
「ハーマーリングでしたっけ。
失礼な言いになりますけど、そういう知識もある方だったんですねー。ちょっと意外です」
「こんなものは一般教養のうちだ。お前さんがどこでこの手の知識を得たのかは知らんがね」
「あたしはお気に入りがあるので。ちょうど今持って……落としますから、ちゃんと受け取って下さいよ」
「……アンソロジーの詩集? いつも何を持ってるのかと思ったが、またリリカルだな」
「サバイバルキットと一緒に機内へ持ち込むのに、ちょうどいいサイズなんですよ。
聖書はちょっと柄じゃないですし、なんといっても乙女ですしね!」
「言ってろ。ときにヲトメとやら、この後は宴会か?」
「顔くらいは出すつもりですけど」
「勧めんぞ。今繰り広げられているのは魔女の宴だ、確実に玩具にされる」
「あー……」
「外出して来たらどうだ? 最近ベース詰めだっただろう」
「んー、あたしこの辺りに明るくないんですよね。知らない街をうろうろするの好きですけど、
次の移動開始までの時間を考えると新規開拓も難しそうですし」
「ふむ……」
「さて、そう言ってる間に作業完了です。どうしましょうかねーっ、と、」
「おい!」
「――えへへー、ナイスキャッチです」
「お前な……」
「ほっといても大丈夫だったんですよ?
自分から飛び降りたんですし、軽くてやわらかいのが自慢なので」
「普通、いきなりあの状況なら反射的に受け止めようとするだろう、誰でも」
「そうですね。だから、ありがとうございます、です。
ところで気付いてます? この体勢、あたしがこうするとお姫様抱っこぷぎゃ」
「――――」
「いま躊躇せずに手を離したでしょう!? ひどいですよぉ」
「いらんことを言うからだ。軽くてやわらかいのが自慢なんだろう?
……いつまで座ってる、行くぞ」
「ふぇっ?」
「さっきの話だ。お前さんがここらに詳しくなくても、俺はそうじゃない。
良い店を教えてやるから、さっさとそれ整備に渡して来い」
「もしかしてお酒ですかっ? 大人の階段?」
「まだ明るいし、酒は静かに呑む主義だ。甘味だよ。
甘過ぎなくて美味いザハトルテと、天然物の紅茶を出す店がある」
「喜んでお供しますっ!」
「さしずめ、『ついて来る 犬よおまへも 宿無しか』ってところかね……」
「あたし犬型ですかね? 特に自覚ないんですけど。
あ、でも『芸術家は猫を愛し、兵士は犬を愛する』んですよねー。そういう事なら犬でも良いかなーなんて」
「…………」
「ああん、ごめんなさい冗談ですってばぁ」
年の差コンビ(カップルじゃなくても)って良いよねって話
最終更新:2009年12月13日 13:08