「おっす。今日はまだインテリだけか?」
「あ、おはようございます熱血さ…あれ? ジャケットにヘルメットまで持参だなんて、今日は随分重装備ですね?」
「ああ、ここんとこ連続で出撃してて、支給されてきた服にもろくに目をくれなかったからな。
ただでさえ怪我も多いし、気分転換もかねて、頑丈そうな服を選んでみたんだ」
「顔の絆創膏はそのままなんですね」
「ははは、確かにここは変わってないな」
「…ちょっと失礼しますよ?」
「(べりっ)痛てっ! お、おい、なにするんだよ」
「これをですね、私の鼻の上に…(ぺた)…どうです? 私もちょっとワイルドに見えませんか?」
「ワイルドってお前なあ…。むしろ、慎重派のお前がつけてると『何かドジったか?』って逆に心配になるな」
「ドジっぽく見えますか。…それは熱血さんと同じように?」
「む…お前、そういうこと言うか?」
「おや? この絆創膏は熱血さんがつけていたんですよ? 同じ場所に私がつけてそう思ったのなら、
熱血さんもそういうイメージで見られてる可能性があると思いませんか?」
「むっ」
「熱血さんはいつも単騎で突撃していますが、それじゃ怪我だって減りません。何を着込んだって
心構えや行動が変わらなければ同じです。確かに切り込み隊長としての熱血さんの実力は認めてますけれど、
もっと他の人たちと連携をとって効率よく進まないと、何もできずに撃墜されますよ?」
「そ、そうは言うけどな、ちまちま攻めるのは俺の性に合わ」
「一人で突っ込んで、何かする前に囲まれて撃破されたでは絆創膏だけでは済まされないんです。
才能の上にあぐらをかいて、なんでも一人ですませようというのは傲慢でしかありません。
もっと私たちに援護させてください、でないと私の絆創膏だって冗談ではなくなります」
「やれやれ、まいったな…まさか朝から説教くらうとは思わなかったぜ」
「別に説教というほど大層なものではないんですが。私はあなたを心配しているだけですよ?
私の顔の絆創膏を見たら、前に出過ぎないように気をつける。条件反射も考慮した上での
ちょっとしたおまじないみたいなものです」
「了解、了解だよ。でも早めにはがしてくれよ? 女の子に怪我させたみたいで気分が悪い」
「それが目的です。あなたが変わったと思ったらはがしますから」
「まいったな…それよりいいのか? 俺が貼ってた絆創膏なんて汚いだろ、ほら、新しいのがあるぞ」
「いえ、これでいいんです。…前から欲しいなって思ってたし…」
「ん、なんだって?」
「なな、なんでもありません! しゅ、出撃しますよ!?」
「お、おう…って、まだ時間あるだろ。どうしたんだあいつ」
「あ、熱血お兄ちゃん、そのメットどうしたの!?」
「ん? これか? 今日はこいつをかぶって出撃しようと思うんだ」
「見せて! 見せてー!」
「ああ、いいぞ」
「あれっ? 熱血は今日はジャケットなんだ」
「おう、ずっとボール箱の中に腐らせてたからな。思ったよりなかなかいいぞ、これ」
「へーえ。ねえ、ちょっと貸してくれる?」
「お、おう…」
「結構重たいのね…わ、ぶかぶか」
「あら熱血さん、今日は軽装ですの?」
「いや、まじめと少女が俺のジャケットやメットを珍しがってるんだ」
「まあ…ところで熱血さんのインナー、結構いい生地ではありませんこと?(さわさわ」
「そ、そうか? 安物だけどな」
「わたくし今日はオフですの。これと同じものを買ってきますので、一日だけ貸してくださらないかしら?」
「お、おい!? そんな強引な…」
「では、お借りしますわね♪」
(…ちょっと…なんで熱血さんがひん剥かれてるんですか…)
「参ったな…なあ二人とも、俺の服早く返してくれないか」
(…お兄ちゃんの体、あんまり見たことなかったけど…)
(…思ったよりも逞しいんだ…)
(…眼福眼福、ですわ…)
(…カメラ持ってくれば良かったですね…)
「…おい! 聞いてるのか?」
「あ、ご、ごめんなさい!」
「し、失礼しますわ!」
「あ、あたし、出撃してくるね!」
「わ、私も出撃します!」
「おい!? 服! 服返せ! おおい!」
「おや。熱血君、上半身裸とは…今日はランボースタイルかなにかですか」
「そういう予定じゃなかったんだけどな…」
* 熱血はマスク(白)を手に入れました *
「ぶ、ぶぇっくしょい!」
「まあ、あの格好でブロア河に落ちたら風邪をひくに決まってるな…」
「ずずっ…すいませんベテランさん」
「とりあえずゆっくり休め。俺が何か作っ」
「おかゆ作ってきました!」
「…まじめ…」
「お薬用意してきました!」
「…インテリも一緒か」
「汗をかいてませんこと? 下着を取り替えてさしあげますわ!」
「あたしも! あたしも手伝うー!」
「………」
「…いや、風邪がうつるからお前たちは」
「わたくしにうつして治るのなら望むところですわ!」
「そんな非科学的な根拠のない治療法はありません!」
「第一そんなことしたって喜ばれないわよ! あ、りんごとか食べる? 飲み物は?」
「お熱ない? タオル絞ってあげるね!」
「…俺はお邪魔なようだな…」
「いやいやいやいやベテランさん勘弁してください助けてください…」
「で、結局みんな追い出されたわけですが…元はと言えば、3人がこぞって熱血さんの服を剥いだのが
原因じゃないですか!」
「くっ…否定はしませんわ…」
「ご、ごめんなさい…」
「あたしはメットだからそんなに関係ないんじゃ…」
「怪我でもされたら一大事です。頭は最も守るべき体の一部ですよ?」
「…ところでインテリさん、その鼻の絆創膏はいったいどうしたんですか?」
「え? こ、これ? これは」
「なんか…お兄ちゃんと同じのじゃない?」
「…そういえば、彼もいつの間にか絆創膏をはがしてましたわね」
「もしかして…インテリお姉ちゃん、お兄ちゃんの絆創膏とった?」
「ち、違います! これはかくかくしかじか…」
「…結局とったんじゃない」
「しかも暗に私を見てくださいと言ってるわけですわね」
「インテリさんも人のこと言えないじゃないですか!」
「ふ、服じゃないし、私の場合は励ましとかも…」
「もんどーむよーだよっ!」
「その絆創膏、おとなしく渡しなさいっ!」
「な、なんでそうなるんですかーー! みなさんも熱血さんから貰ってくればいいじゃないですか!」
「そうよ! ほら、古い絆創膏はこっちのゴミ箱に…」
「そう言って回収する気でしょー!?」
「まじめさんも抜け目ありませんわ!」
「べべべべべべつにそんなつもりは」
「インテリさん! 逃げようったってそうは行きませんわよ!」
「な、なんでこうなるんですかーーっ!」
* 翌日 *
「熱血さんおはようございます。風邪の具合は如何ですか?」
「ああ、だいぶよく…って、インテリ! どうしたその眼帯は!」
「…えーっと、その…猫にひっかかれまして…」
「大丈夫か? そういやほほとかあちこちひっかき傷だらけだぞ…」
「へ、平気です! 大丈夫です!」
「そうか? 戦闘に影響するようならすぐに後退しろ。くれぐれも無理するなよ」
「はいっ!」
「そうだ、切り傷に効く薬を持ってるから、あとで部屋に来い」
「は、はいっっ!!」
(いいなあ…心配してもらって、いいなあ…)
(うまくやりましたわねあの人…最初からそういう策略だったのかしら)
(インテリお姉ちゃんばっかりずるい…!)
「なにやらあちらから物凄い嫉妬のオーラを感じますねえ」
「傍から見てる分にはいいんだがな。巻き込まれるなよ」
「ええ、やつれたあなたを見れば理解できます」
最終更新:2009年12月13日 17:31